機動戦士ガンダム 静かの海の守り人   作:ミズナス

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インダストリアル5 三番ターミナル周辺宙域

「隊長、いまターミナルの管制室から通信が。諸々の掃除が終わったので、出航可能だそうッスよ」

 ジム・グランツァに搭乗し、ターミナルの輸送艦ストラダーレ号の側面で待機していたジャン・ミンウェイから報告が入る。

 既にプルス・ディアスでターミナルの外に待機していたアラン・ダレンはそれを聞き、ストラダーレ号の操縦室にいるアキオ・サザナミへと通信を繋げる。

「わかった。アキオさん、ストラダーレ号を出航させてください」

「──了解だ」

 船の操縦は本来AIが行うはずであったが、アキオが何もせずに待っているのも性に合わないとして、自ら申し出たのだ。

 

 まずジム・グランツァが、次にストラダーレ号がゆっくりと動き始めた。

 ターミナルの中からゆっくりとストラダーレ号が顔を出すのを、その外でプルス・ディアスとデミ・ドーガが見ている。

「隊長、出航を見合わせていた一番および二番ターミナルの貨物船も、我々と同じく出航するようです」

「そうか……」

 デミ・ドーガで周囲を警戒するマリアの報告を聞く前から、アランは嫌な胸騒ぎがしていた。

 自分たちを襲ったガザC、ゲルググやザクⅡ改といった旧式の機体を駆る残党勢力とは名ばかりのごろつきども。

 あんな寄せ集めの集団が、敵の本隊であるはずがない。

 アランはそう確信していた。

 代わり映えしない宇宙。無重力と静寂が支配する、黒と白の海。その海を行くストラダーレ号と、三機のモビルスーツ。

 しかし、何か良くないものが自分たちを飲み込もうとしているように、アランは感じられた。

「敵の増援や、待ち伏せに注意しろ。さっきの連中は陽動、あるいは先遣隊である可能性が高い。アナハイム本社が警戒するレベルの相手が、あの程度の質と量であるはずが────」

 

「こ、こちら二番ターミナルから出航した貨物船! 正体不明のモビルスーツに襲われている! 至急、救援を────!」

 

 アランたちの間を駆け巡った、広域の通信。

 すぐさまアランたちは、モビルスーツ三機でストラダーレ号を守るように囲み、敵襲に備える。

「通信が切れた? やられたのか」

「残党共の増援、ッスかね。出航した船を手当たり次第に撃墜(オト)すってことは、こっちを探してる?」

 一瞬の静寂。

 そして。

 

「────上ッス!」

 

 はじめに気づいたのは、ジャンだった。

 アランたちの頭上に、二つの光。

 それが星の光ではなく、モビルスーツのスラスター噴射による光だとアランたちが気づくのに、そう時間はかからなかった。

 アランの全天周囲モニターの正面に、ズームアップされた映像が映し出される。

 そこに映っていたのは、ザク・トーテンコップとガ・ゾウムであった。

「敵はガ・ゾウムと……、あと一機はなんだ? 頭部や胸部の形状はザクⅢのものだが、武装が明らかに異なる」

「ガ・ゾウム、SFS(サブフライトシステム)を捨てて変形! ザクⅢの改造機と思しき機体は、こちらに武装を向けています! あれは敵です!」

 マリアの通信が聞こえた瞬間、アランはプルス・ディアスのスラスターを全開にして、ザク・トーテンコップの方へと切り込んでいく。

「船を守るんだ! 俺がザクの方を抑える! マリアとジャンはガ・ゾウムの方を! 機動力で敵の方が優っている、油断するな!」

 ガトリングの射線がストラダーレ号やマリアたちに被らぬよう、アランは時折プルス・ディアスを左右に振りながら、ザク・トーテンコップとの間合いを急速に詰めた。

 プルス・ディアスの柔軟な機動力があって初めて実現可能な回避と直進を混ぜた動き。

 ただ直進するだけの安直な速度ではなく、宇宙という立体的空間に対応した本当の機動力である。

 ザク・トーテンコップはガトリングの弾をアランの方へ向けて撃ちこむが、銃口を左右に振られるばかりで、一向に命中する気配はない。

 ザク・トーテンコップのパイロット、サルバ・ダグランはにやりと笑う。

「いいねぇ、こういう活きのいい敵を待ってたんだよ!」

 その瞬間、プルス・ディアスのクレイ・バズーカから放たれた炸裂弾が、ザク・トーテンコップの乗っていたSFSへと直撃。

 ザク・トーテンコップはすんでのところで爆発を回避して、左手のみでガトリングを保持し、右手でビームサーベルを構えた。

 対するプルス・ディアスも、ビームサーベルを脇に構えて突撃する。両者の間合い、いよいよ五十メートル。

 

 接近戦。

 

 かと思いきや、ザク・トーテンコップの腰部側面に装備されている三連ミサイルポッドから、小型ミサイルが三発同時に発射された。

 目を見開くアラン。

 そのままでは、ミサイルのうち一発がコクピットに命中する。

 アランの感じる時間の流れが、停止寸前にまで遅くなった。

「まだ……、死ねない!」

 アランはぐっと操縦桿を倒し、プルス・ディアスの機体を横に向け、紙一重でミサイルを回避する。

 モビルスーツは人間の身体の延長ではない。

 したがって僅かに動く、何か小さいものを持つ、急に方向を変えるなどの、人間が己の身体で当然のようにやっている動作をモビルスーツで行うのは至難の業である。

 しかし、アランはいまそれをやってのけた。

 まるで武闘家が相手の拳をいなすような精密極まりない動きを、モビルスーツで行ったのである。

 流石のダグランもこれには驚き、追撃の一手を打つタイミングを逸してしまう。

「あの機体……! 腰部アーマーとガトリング以外も()()()()()()()。並みの機体じゃない」

「並みのパイロットじゃないな……、かなりできる。()()()()()()と同等か、あるいは操縦技術なら上を行くかもしれんなぁ」

 アラン・ダレンの、プルス・ディアス。

 サルバ・ダグランの、ザク・トーテンコップ。

 互いに互いを正面に捉えた。

 今度こそ、正真正銘の接近戦の間合い。

 モビルスーツの真価が発揮される間合いである。

 

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