機動戦士ガンダム 静かの海の守り人   作:ミズナス

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プルス・ガンダム 対 ドライベロス

 プルス・ガンダムを駆る、アラン・ダレン。

 ドライベロスを操る、カミロ・カーダ。

 かつて無二の戦友だった二人はいま、戦場と化した資源衛星B79周辺宙域で、熾烈な戦いを繰り広げていた。

 アランの隣にはもう、マリアやジャンの姿はない。

「その機体、ガンダムとはな! 愚かな連邦の権力と増長の象徴(しょうちょう)! それでオレの前に立つとは、よほど死にたいらしい!」

「違う! この機体は俺に守る力を、戦う理由をくれた機体だ!」

 駆動系の質や姿勢制御プログラムの精密性など、純粋な機体の運動性能だけならば、両者の機体に差はない。

 プルス・ガンダムも、ドライベロスも、モビルスーツとしては限界点といえるほど、人体の動きに近い精密性と俊敏性を兼ね備えていた。

 故に、二機のモビルスーツはその機動力を存分に使い、戦場となっている宙域全体を飛び回りながら、ビーム・サーベルの刃を幾度も交えている。

 だというのに。

 アラン・ダレンは、防戦一方であった。

 細かな背部と脚部スラスターの噴射を挟みながら、カミロは頭頂高22メートル、全備重量68トンのドライベロスを自在に操り、アランに対して苛烈な白兵攻撃を加え続けている。

 アランも同様の操作は行っているが、そのタイミングのシビアさや白兵戦における瞬時の判断能力でカミロに劣っていた。

 経験や機械の性能による優劣ではない。そういった、分かりやすい差で決着がつくレベルをこの二人はとうに超えている。

 戦士としての天性の勘と、一撃一撃を繰り出す際の容赦のなさ。

 戦う人間としての、才能(センス)の違い。

 戦士としてならば、間違いなくカミロはアランよりも格上の存在であった。

「情けないヤツだ、アラン! オールドタイプの戯言に惑わされ、崇高なる戦いから目を背けた哀れな臆病者! せめてオレが始末してやろう!」

 ドライベロスの攻撃が、より一層激しくなった。

 アランのしのぎ切れる限界が近づき始める。

 

 だが。

 

「……そうやって、傲慢に人を見下して、理解したつもりになって。それで結局、何も変わらなかっただろう!」

 アラン・ダレンは、負けられない。

 ドライベロスの振り上げられた一撃を、プルス・ガンダムが下から切り上げるようにして防ぐ。

 そしてビーム・サーベル同士の力場が衝突し、強烈な閃光と反発が起こる一瞬。その瞬間にプルス・ガンダムがドライベロスの腰部アーマーを蹴り、大きく距離をとった。

 そこから、腕部グレネードランチャーを牽制のために放ちつつ、プルス・ガンダムはドライベロスから離れていく。

「白兵では不利だと、ようやく悟ったか、アラン。……しかし!」

 それをみすみす許すカミロとドライベロスではない。

 機体頭部にあるモノアイが動き、自身の下方で離れていくプルス・ガンダムをぎろりと捉える。

 しかしその時点で既に、プルス・ガンダムはクレイ・バズーカを構え、ドライベロスに照準を合わせようとしていた。

 いくらドライベロスの機動力と運動性能が優秀でも、ここから回避運動を行えば少なからず機体の姿勢制御に問題が生じることは確実。

 そして、クレイ・バズーカに装填されているのは、ジム・グランツァも使用していた近接信管弾であり、例え初弾をドライベロスが回避しても、次弾で被弾する可能性は極めて高かった。

 アランの勝利か。

 

「────ファンネル!」

 

 カミロの口から、その言葉が出た直後。

 クレイ・バズーカの砲身を、レーザービームが切断する。

 それを発射したのがドライベロスのファンネルであることをアランが悟るのに、そう時間はかからなかった。

「やはりサイコミュ兵器か!」

 舌打ちするアラン。

 プルス・ガンダムは使い物にならなくなったバズーカを放棄し、機体の背部側面に取り付けられているビーム・マシンガンを装備した。

 

 ファンネルとは、モビルスーツからエネルギー充填を行い、あらゆる距離にいる敵を搭載されているビーム砲で攻撃する兵器である。

 この兵器の最大の特徴は、パイロットの感応波を用いることで、ミノフスキー粒子散布下でも無線で遠隔操作が可能な点だった。

 通常、ミノフスキー粒子の影響下では、通信なども含めた電波全てに障害が生じる。

 そのため、レーダーによる索敵や遠距離通信、無線兵器の操作などは不可能になるのだが、ファンネルを初めとするサイコミュ兵器はパイロットの感応波を用いて操作、照準が行われているので、何ら障害なく、しかも()()()()使用できてしまうのだ。

「どうだ! これこそ、ニュータイプのみが扱える武装だ! 貴様らオールドタイプの稚拙な感覚では、到底真似できまい!」

 ドライベロスを中心として、二つのファンネルがくるくると回りながら、プルス・ガンダムへと照準を合わせる。

 その様は、まるでアランに対してファンネルを見せびらかしているかのようだった。

「ニュータイプの優れた空間把握能力と、事物をより正確に理解する力! この力を持たないオールドタイプには、到底できない芸当だろう!」

 

 カミロの言葉に、アランが反論する。

「そういう使い方だけが、ニュータイプではないだろう! ()()()()()()()()()()()()が、ニュータイプではないはずだ!」

「……なに?」

 アランのその言葉に、回っていたファンネルが動きを止めた。

「力だけがニュータイプの価値だというのなら、そんな価値など俺はいらない! 力ではなく、何かを理解しようとするその心こそ、ニュータイプの本当の価値のはずだ!」

 カミロ・カーダは、歯噛みする。

 そして、眼前で耳障りな戯言を吐くオールドタイプを抹殺すべく、二機のファンネルを飛ばした。

「……貴様が。貴様が、ニュータイプを語るのかぁ!」

 漏斗のような形をした小さい兵器が宇宙空間を縦横無尽に動き回り、ビーム砲を放ってくる。

 アラン・ダレンにとって、これは未知の恐怖であった。

「……来たな!」

 それでも、アランが紙一重のところでファンネルを回避できているのは、彼の乗るプルス・ガンダムもまた、サイコフレームによって感応波を増幅、感知する機体だからだろう。

 ファンネルの送受信するカミロの感応波をサイコフレームによって増幅させ、それを感知することで、攻撃のタイミングや方向を事前に察知する。

 この窮地で、アラン・ダレンは徐々にサイコフレームの使い方を習得していた。

 その事実が気に食わないカミロは、さらに怒りを露わにする。

「賢しらにニュータイプを語った罪……。死で償ってもらうぞ、アラン!」

「やってみろ、カミロ!」

 

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