ダンジョンで雷神に拾われたのは間違いだったのだろうか?   作:やたからす

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第1話

迷宮都市オラリオ

 

世界で唯一、迷宮(ダンジョン)と呼ばれるモンスターが湧き出てくる大穴に、蓋にするように封印されて作られた都市である。

 

神々が下界で暮らす神時代において、恩恵(ファルナ)を得た冒険者たちが夢に野望に希望にと、各々が人生に目標を持ってやって来る。

 

しかし、それも昔の話だ。今から七、八年ほど前、都市最強を誇っていた【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が崩壊したことを契機として暗黒期を迎えた。

 

闇派閥(イヴィルス)が行うテロ紛いな事件の数々。あっという間に都市全体に混沌は広がっていた。

 

これに対抗する為、【ガネーシャ・ファミリア】【アストレア・ファミリア】【ロキ・ファミリア】【フレイヤ・ファミリア】など数多くの正規派閥が立ち上がり、徐々に闇派閥の勢力も削がれていく。

 

平和な時代が訪れるのも時間の問題かも知れない。まぁもっとも、それまで俺が生き残れるかは知らないけど

 

「…っ………ぁ」

 

薄暗い路地裏。俺はそこに倒れ伏していた。理由は身体中にある傷跡が証明してくれている。

この日、空腹に耐えられなかった俺はある冒険者たちの食糧を盗もうとして捕まってしまい、そのまま殴る蹴るの暴行を受けた。こっちはただの子供で、向こうは鍛え上げられた冒険者。一撃一撃が俺にとっては致命傷になり得る。

その結果がこれだ。もう動く事も億劫なくらいだ。

 

「…………くそっ」

 

僅か十年ほどだが、つまらない人生だったと思う。両親の顔を知らない。頼れる人間なんていない。楽しかった記憶など一つもありはしない。

毎日を生き延びる事しか考えられず、死なない為にゴミを漁る日々。

 

けど、これ以上苦しい思いをしなくて済むようになると思えば少しはマシかも知れないな

 

「おやっ?気まぐれに散歩でもしてみればまさかまさか、こんな所で思わぬ拾い物だな」

 

頭上からかけられた声は女性のものだ。動く気力すら残っていない身体に力を入れて目の前の人物を見上げる。

黄金色の髪を他靡かせた女性。その肢体は艶めかしくも力強さを持ち合わせており、その美貌は異性を惹きつける魅力と共に迅雷を思わせる威風を兼ね備えている

 

「お前、名前は?」

 

名前など、尋ねられるのは何年ぶりだったか。もう自分の名前なんて覚えていなかったし、言葉を発するのも難しいくらい衰弱している

 

「無いのか」

 

それを察した訳では無いだろうが、女性は「ふむ」と顎に手を当てて何事かを考えている

 

「決めたぞ。なら、お前の名前は『ソル』だ」

 

 『ソル』……それが俺の名前なのだと認識するのに数秒はかかった。なぜだか分からないし、理解できない。しかし、感じたことの無い感情が湧き上がってくるのを実感する

 

「それでなー、ソルよ。私は自分の【ファミリア】を作ろうと思って下界に降りてきたんだ。どうせなら最強のを、と考えてる」

 

 一人で勝手に話しを進めている。俺のこれは聞く姿勢としては正しくないだろう。なけなしの力を振り絞り膝を突き視線を限界まで上げる。

 

「喜べソル。お前が私の眷属第一号だ」

 

 どういう事だと困惑すべきか、それともふざけるなと切って捨てるべきか、それか言われた通り素直に喜ぶべきなのか。判断に迷う。

 しかし、心を満たすのは間違いようのない『歓喜』だった。

 

「貴女の……名前……は?」

「おっと、そう言えば名乗っていなかったな」

 

 男勝りな口調。しかし異性がいるなら十人が十人、美女と答えるだろう美貌とプロポーションを兼ね備えた女性は胸を張り、尊大な言い放つ

 

「私の名前はトール。世界最強の神だ。なればこそ、私がこの手で最強の【ファミリア】を結成するのも、また運命なんだよ」

 

 この日、血濡れた都市の片隅の、薄暗い路地の裏でひとりの少年・ソルはトールと出会った。

 この出会いこそが、これより先の時代に、雷鳴が如く世界に名を轟かせる事となる【トール・ファミリア】が結成した日となった。

 

 

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