ダンジョンで雷神に拾われたのは間違いだったのだろうか?   作:やたからす

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第10話

 都市南東部。貧民層が数多く暮らすこの場所は度重なる区画整理によって形成された広域住宅街。

 複雑奇怪に入り組んだこの場所はダイダロス通りと言われている。その地下水路でシャルヴィとレスクヴァ、その後ろに続く数人の【トール・ファミリア】の団員達は目を疑う。

 

「なぁ……」

「なによ?」

「これ、なんだと思う?」

「私が知るわけないでしょ」

「だよな」

 

 レスクヴァが尋ね、シャルヴィが苛立たしそうに首を横に振る。

 

「トールとソルは?」

「さっきルビンとカークスを向かわせました」

「けっこう時間が経つし、そろそろ来る頃だと思いますよ……あっ、ほら!」

 

 噂をすればなんとやら。地下水路の出口方面から足音が聞こえてくる。現れたはトールとソル。そして二人を呼びに来たルビン。

 加えて水路入り口で合流したエイル・カーラ・フロストと偶然に三人を見つけて声をかけた団員のカークス。

 最初にこの場所を見つけたシャルヴィとレスクヴァ、後ろに控える四人の団員を合わせて、この場には全員で十三人が揃った。

 

「急に呼び出されたと思ったらこんな地下とはな……それで、どうしたお前ら?」

 

 ソルが呼び出した訳を尋ねる。レスクヴァたちは無言で背後に視線を送り、それを追って他の全員もようやくそれに気付いた。

 暗闇でよく見えてはいなかったが、そこにそれは合った。

 

「えっ?」

「な、なにこれ?!」

「訳がわからない…」

「おいおい……」

「ほぅー、こりゃまた面白そうな物を見つけたじゃないか」

 

 三姉妹が三者三様に驚愕し、ソルが顔を顰め、トールは愉快そうに口角を吊り上げる。

 目の前に立ち塞がるのは禍々しい雰囲気を持つ重厚な扉。おおよそ、このような地下にあるのは不自然な程に作り込まれている。

 

「シャルヴィ、どうしてこれを見つけた?」

 

 ソルは現状把握をするためにこれを発見したであろうシャルヴィに尋ねかける。

 

「ダイダロス通り近くを歩いていたら、ローブ姿の怪しいやつらを見つけたのよ。それで、出来心でそいつらを追ってみたら……」

「地下に潜ってこんな扉まで行き着いたってわけだ」

 

 シャルヴィの説明をレスクヴァが補完する。さすがに自分達だけで判断できないと、近くを通りかかった他団員——ルビン達を捕まえてソル達を探してもらっていたと語る。

 

「なるほど………トール、どう見るべきだと思う?」

「ただの遺産、なんて甘い考え方はできないよな」

「どう見ても人工物な上に、手を加えられた形跡もあります」

 

 門に手を触れて確認していたエイルが考察を語る。

 

「さて、これをどうするか」

「門を壊してみます?」

「何があるか分からないのに下手なことできないでしょ」

「中から出てくるのは邪竜か悪鬼か……」

「そんな物騒な」

 

 どよどよと全員でこの門について話し合う。

 

———ギィィィィ

 

 

「「「「「?!?!」」」」」

 

 重々しい音が地下水路に反響しながら、門が開いた。が、そこは都市上位派閥の団員達。咄嗟に全員が武器を構え、臨戦態勢をとる。

 

「誰も、いない?」

「………いや」

 

 開いた門の先には暗闇の通路が続いているのみ。人影は見当たらない。しかし、ソルたち第一級の冒険者達は暗闇の奥にかすかに動く気配を察知していた。

 

「シャルヴィ!」

「はいはい!!!」

 

 予備動作はなし。コンマ数秒さえも必要とせずに最高速度へと到達したシャルヴィが門の先へと駆け出す。

 

「ぎゃっ!?」

 

 暗闇の道の奥から悲鳴がこだまする。

 

「捕まえたわよ」

 

 まるでコマ落としのように、シャルヴィは次の瞬間に元いた場所へと戻ってきていた。その両腕にはローブを纏い、顔を隠したいかにも怪しげな風貌の者たちが拘束されている。

 

「あっ、コイツらだ。俺らが見たやつ」

 

 どうやら扉を開けた人物達と、レスクヴァ達が尾行した人物が同じ服装をしていたようだ。

 

「ソル、コイツらどうするのよ?」

「見た目からしてまともな奴じゃないですし、ギルドに任せますか?」

 

 二人を拘束した状態でシャルヴィが尋ね、エイルがもっともらしい提案をする。

 

「あれ?これなんだろ?」

「?!そ、それに触れるな!!か、返せっ!!!」

 

 カーラが男たちの持ち物を漁っていると、『D』の文字が刻まれたなんらかのアイテムが出てきた。

 それを手に取った瞬間、男たちは取り乱し、拘束から逃れようともがき始める。

 

「こらっ!暴れるな!!」

「ぐふっ!?」

 

 それをシャルヴィが許すはずがなく、地面に押さえつけて大人しくさせる。

 

「カーラ、それ見せて」

「はいはーい!」

 

 カーラから渡されたアイテムをソルはじっくりと観察する。円形のそれには赤い眼のような宝石が埋め込まれている。

 今のところ、このアイテムの正体も使い道も思いつかないが、念のためにとそれを懐に仕舞い込む。

 それを見た男たちは「あぁ……」と絶望したように声を漏らした。

 

「………あ?ソル、なんか来るぞ」

 

 レスクヴァの耳がピクピクと動く。それに呼応するように、門の奥からモンスターの群れが現れる。

 

「こんな所にモンスターでんのかよ!?」

「てか、なにあのモンスター?」

「新種、でしょうか?」

 

 団員達が慌てながらも武器を構える。極彩色の身体に、まるで植物のような見た目。

 ダンジョン内でも見たことがない類いのモンスターに困惑を浮かべる。

 

「レスクヴァ、頼めるか?」

 

 数の差を考えても全員で対処するのが最適であるように思える。が、ソルはこれをレスクヴァ一人に任せることに決めた」

 

「余裕に決まってんだろうが」

「よし。シャルヴィはそいつらを連れて地上へ出ろ。ルビン、カークス達もそれに続け」

「「「はい!!」」」

「トールもな」

「ちぇっ、分かってるよ」

 

 不貞腐れたトールを引き連れてシャルヴィ達は地上へと引き返す。

 

「エイル、カーラ、フロストも追撃に警戒しつつ離脱。敵がいたなら戦闘を許可する」

「了解です」

「はーい」

「分かりました」

 

 ソルの指示に従い、三人は先行するシャルヴィ達の背中を守るようにして後退していく。

 

「さて、レスクヴァ。相手の正体は不明、モンスターの強さも甘く見積もってLv.3はあるだろうが、関係ない。蹴散らせ」

「分かってるじゃないか、ソル!!」

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