ダンジョンで雷神に拾われたのは間違いだったのだろうか?   作:やたからす

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第14話

 「ここがパーティ会場か……」

 

 トールが見上げるのは【ガネーシャ・ファミリア】の拠点(ホーム)、『アイアム・ガネーシャ』。ガネーシャの姿そのままの建物を見て嫌そうに眉を顰める。

 今夜はガネーシャ主催の『神の宴』に参加するため、わざわざここまでやって来ていた。

 『神の宴』とはその名の通り神のみが参加を許された会合。特に目的などなく、不規則・無原則に開催されてはただ神々が騒いでいるだけの、いわば飲み会だ。

 普段は薄いシャツしか着ないトールも珍しくドレス姿で着飾っている。その姿はいつもの野菜味溢れた女帝の様相がなりをひそめ、さながら傾国の美女と化している。

 最初は普段着で訪れようとしていたトールだったのだが、【トール・ファミリア】所属の女性団員達に「せっかくならオシャレをしましょう!」と強制的に着せられたもので、本人は窮屈だと感じている。

 

「よく集まってくれた皆のもの!俺がガネーシャだ!!」

 

 トールは主催者の挨拶を「うるさいなー」と聞き流しながら用意されている料理を口に運ぶ。

 

「っ!!!中々美味いな」

 

 ビュッフェ形式の料理に舌鼓を打つ。お土産として持ち帰れるよう宴の最後にガネーシャへ交渉(脅迫)しようと心に誓う。

 

「あっ!トールがドレス着てるぞ!」

「スーパーレアいただきましたー!!」

「極東の馬子にも衣装ってやつだな」

 

 周りの男神たちから投げかけられる視線や言葉も気にすることなく料理に舌鼓を打つ。相手をしていたらキリがないと理解しているのだ。

 

「あらぁ、トールじゃない」

 

 トールへと声をかけたのはグラマラスな肢体を魅せつける美女。生産系及び商業系ファミリアを運営する主神デメテルだ。

 

「久しぶりね、元気にしてた?」

「まあまあだな」

 

 トールは戦神として以外に農耕神としての側面も持つ。趣味が農業と言うくらいだから、その点においてデメテルと仲がいいのだ。

 

「おぉ、トールにデメテルじゃないか!」

「あっ?げっ、ディオニュソス……」

「お、おいおい、そこまで嫌がられたら流石の私も傷つくぞ」

 

 流れる金髪に高貴な貴族風の出で立ちをした貴公子の姿をした男神。ディオニュソスの登場にトールは嫌そうな表情を浮かべる。

 

「だって、お前中身と外がぐちゃぐちゃで気持ち悪いんだよ」

「トール、(ヒト)を悪く言ったらダメよ?」

「お、おう……」

 

 デメテルを怒らせると碌な事にならないと知っているトールは、謝罪こそしないが大人しく引き下がる。

 

「でも、本当にガネーシャの宴は豪快よね」

「それは多分、怪物際(モンスターフィリア)が近いからじゃないかな?邪魔しないでくれ、ってね」

 

 『怪物際』は年に一度、ギルド主催・【ガネーシャ・ファミリア】の全面協力によって開催される催し。

 ダンジョンから捕獲してきたモンスターを調教するなんて変わった見せ物まである。

 

「トールは興味あるかい?」

「うーん………あんまし」

「はは、だと思ったよ」

「どういう意味だよ?」

「いやだって、天界にいた頃から戦ばかりだったじゃないか。今は少し丸くなったけどね」

「たしかにね。ファミリアを持ったお陰かしら?トールの眷属(子ども達)、よく噂に聞くわよ」

「ふふん!当たり前だ!。今の眷属(ファミリア)は私の自慢だぞ!」

 

 トールは胸を張り、得意気に語る。二人はそんなトールを微笑ましいものを見るように見つめている。

 

「あら?アレはロキじゃない」

「……………じゃあ私はこれで」

「あっ、トール!」

 

 デメテルの呟きを聞いて、その後ろ姿を捉えたトールは一目散にその場を離れる。

 

「危ない危ない。あんな変神と関わってられるか」

 

 ロキを苦手とするトールは顔を合わせるのも厭ったゆえの行動だ。

 

「トール?トールじゃない」

 

 逃げた先で出会ったのは真っ赤な髪に眼帯を身につけた美女。天界一の鍛治師とも言われるヘファイストス。

 

「おぉ!ヘファイストス!!……と、ヘスティアか?」

 

 ヘファイストスを見て喜色を浮かべ、ヘスティアを見て不思議そうな表情を浮かべる。

 

「そういえば最近降りてきたんだっけか。元気にしてるかチビッ娘?」

「むっ。君も相変わらずだね!あと、ボクをチビッ娘なんて呼ぶなー!」

「ふっ、チビッ娘はチビッ娘だろ」

 

 ギャーギャーと言い合いを始める二人を見てヘファイストスが頭を抱える。

 同郷ではなく関係があったわけでもないが、どちらも単純な性格をしているので互いに好意的に受け取っている。

 

「あらあら、本当に貴女達は仲がいいのね」

「………………さいあくだー」

 

 ヘファイストスの隣から姿を現したのは美の女神フレイヤ。彼女の美貌は美の女神と言うだけあってか、同性異性問わずに視線を惹きつける。

 

「ふふっ、久しぶりねトール」

「お、おう、本当に久し、ぶり……」

 

 視線を彷徨わせ、どうやってこの場から離れようかと思案するトール。対してフレイヤはニコニコと微笑んでいる。

 

「お邪魔だったかしら?」

「そうは思わないけど……私、お前が苦手なんだよ」

「奇遇だねトール。それに関してはボクも同意見だ」

「ヘスティアはともかく、トールは自業自得でしょ?」

「うぐっ……」

 

 過去の黒歴史からの指摘。トールは痛いところをつかれたと黙り込んで顔を背ける。

 

「おーい!ファイたーん!フレイヤー!!と、ドチビー!!」

「…………フレイヤ以上に嫌な奴が来た」

 

 せっかく逃げてきたのに、まさか向こうからやってくるとは思わなかった。

 

「おっ?トールまでおるやんか!」

「帰れ」

「急になんや?!そんなにウチが嫌いか?!」

「心の底から、と頭に付けられるぐらいにはな」

 

 ここまでトールが忌避するのには天界にいた頃、まだロキが彼方此方に戦を持ちかけていた当時の話しが糸を引いている。

 

「昔の話しは忘れて、仲良くしようや。この間も、一緒に遠征行った仲やんか!」

「ちっ、やっぱり潰しておくべきだったか」

 

 ケラケラ笑うロキと舌打ちをして睨みつけるトール。

 

「まあええわ。今日の目的はこっちのドチビやからな」

 

 いつものようにロキがヘスティアを揶揄い、それにヘスティアが言い返し、つかみ合いの乱闘騒ぎ。

 お約束の流れなのでもはや止めることもせず、周りからは賭けをする声も聞こえて来る。

 

「よしっ、そろそろ私は帰るか」

「あら?もう帰るの?」

「いい感じに場が荒れてるからな。逃げるにはうってつけだ」

「本当に相変わらずね」

 

 ヘファイストスに呆れられながらも、トールはこれ以上黒歴史をぶり返されないようにさっさと帰宅しようとする

 

「そうだわトール。今度話しがあるの。少し時間をもらえるかしら?」

 

 そんなトールにフレイヤが声をかける。トールは足を止め、フレイヤに向き直る。

 

「フレイヤが、私に話し?」

「ええ。ほんの些細な事なのだけどね」

「………まぁ、構わないが」

「ありがとう。店は取っておいてあげるわ」

 

 そう言ってフレイヤも会場から去っていく。少しばかり珍しいと思いはするが、トールも同郷のよしみとあって気軽に快諾する。

 しかし、これがオラリオ全体に影響を与える、ちょっとした騒動へと発展してしまうのはほんの少しだけ先の話し。

 

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