ダンジョンで雷神に拾われたのは間違いだったのだろうか?   作:やたからす

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第15話

「なぁ、ソル」

「なんだよマルス」

 

 憂鬱だと言うように声を出すマルスと退屈そうに答えるソル。

 

「……なんで俺たちはこんな朝から、暗殺者みたいにコソコソしてなきゃいけないんだ?」

 

 今の二人は、大通りから少しばかり離れた閑散としたカフェ店、その正面に待機している。

 

「仕方ないだろ。トールが急に、『フレイヤと会う』なんて言い出したんだから」

 

 何人かの客に紛れて店の中にいるのは、都市最大派閥の主神、トールとフレイヤの二人。

 ソルとマルスは隠れながらトールの護衛をしていると言うわけだ。普通ならこのような事をする必要も無いのだが……

 

「団長、やっぱり【フレイヤ・ファミリア】も来てますね」

 

 ソルの背後へと現れたミュウスが報告をする。

 

「だと思った……で、誰が来てんの?」

「幹部全員です」

「ヤバ過ぎるな……」

 

 【フレイヤ・ファミリア】の幹部陣となればオラリオでも最強クラスの戦士達だ。

 だがそれはソル達にしても同じこと。【トール・ファミリア】の第一級冒険者達もそこかしこに身を潜めながら相手を牽制している。

 

「俺らも全員呼んどいて良かった」

「ダンテはいないがな」

「アイツは都市外にいるから呼べないだろ」

 

 この場にいないもう一人の団員を思い浮かべながら苦笑を浮かべる。

 

 

———

 

 

「ちっ、ウザってぇな」

 

 屋根上から店を見下ろすのは【女神の戦車《ヴァナ・フレイヤ】アレン・フローメル。

 が、今は目の前の人物を睨みながら忌々しそうに舌打ちをする。

 

「そう思うんだったら今すぐ帰れば?飼い猫くん」

 

 【雷絶の左輪(ダングリスニル)】シャルヴィ・ハルプ。彼女はアレンのすぐ横に陣取り、銀槍を構えながら殺気を放っている。

 

「その減らず口、二度と開けないようにしてやろうか?」

「へぇ……できると思ってるんだ?」

 

 同じ猫人(キャットピープル)、同じ速度に特化した槍使い。しかしながら相性は最悪。視線が交錯し火花が散り、今すぐに戦闘が始まってもおかしくない緊張感が漂っていた。

 

 

———

 

 

 ソル達の反対側、店の裏手で待機するのは【黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】ヘグニ・ラグナールと【招雷の右輪(ダングニョスト)】レスクヴァ・ウォルク。

 

「ククッ……今宵は世界の転換期、その前夜なり」

「気色悪い事言ってんなボケ。あと分かる言葉で話せ」

 

 ヘグニの言葉が理解できずにイライラするレスクヴァだが、他と比べるならば最も平和的な組み合わせであったかもしれなかった。

 

 

———

 

 

「それで、私は貴女方ですか……」

「喋らないで貰えますかキザエルフ」

 

 店の西側では【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】ヘディン・セルランドと【白銀の三天使(ワルキューレ)】エイル、カーラ、フリストの三人が睨み合っている。

 

「ちょいちょいエイル。あんま煽んないで。ね?」

「カーラはもう少し落ち着きなさい」

「本当に姦しい姉妹ですね。もう少し淑女としての礼節を弁えては?」

「「「はっ?」」」

 

 アレンとシャルヴィほどでないにしろ、こちらも今すぐにでも戦端が開かれるのではと思うほど苛烈な様相を呈していた。

 

 

———

 

「今夜は羊肉だな」

「角は杯にしてやろう」

「毛皮は毛布だな」

「羊肉って美味いのかな」

「……ウザいな。呪い殺してあげようか?」

 

 同じ四つの声がこだまし、額に青筋を立てたネファが鉈のような双剣を構える。

 

「やめなさいネファ」

「今度はエルフか」

「命知らずが」

「器用貧乏な残念エルフ」

経験値(エクセリア)ウハウハだな」

「………やっぱり殺しましょうか」

 

 【黄金の四騎士(ブリンガル)】ガリバー兄弟と【魔羊(バフォメット)】ネファ。そこにソルへの報告を終えて戻ってきた【風妖の宝刀(リアスカナン)】ミュウスが加わり、場の収拾がつかなくなっていく。

 

———

 

 

「みんな、早まったりしないよな」

「さぁな。期待するだけ無駄だと思うぞ」

「だよなー……まぁ、俺らは俺らの仕事をするか」

 

 そして場所は戻り、店の正面。この場に集った強者達。その中でも一際強く異彩を放つ者たちが、静かに戦意をたぎらせていた。

 オラリオのみならず世界へと雷名を轟かせる最凶の冒険者【雷皇】ソル。

 迷宮都市『最硬』と名高いハーフドワーフ、【破邪の戦槌(デオ・ミョルニル)】マルス・サーガ。

 そんな二人に対してたった一人で構えるのは猪人(ボアズ)の武人。迷宮都市の頂点たる【猛者】オッタル。

 

「いい目だ。否が応にも心が高鳴る」

「うわっ、出たよ。意味不明な上から目線」

「いつまで見下してるつもりだ、クソ猪。その自慢の身体粉々にしてやろうか」

 

 戦斧を担いだマルスが鋭い目つきで睨みつけるが、オッタルは意に介さない。

 

「せっかくの機会だが、主の許可がない以上は剣を抜くわけにいかん」

「そんなやる気満々なのによく言う」

 

 口ではそう言うが、オッタルの肉体からはこれでもかと闘気が溢れている。

 店内で行われている主神同士の話し合い、その如何によってはすぐさま抗争へと発展するのは想像に難くなかった。

 

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