ダンジョンで雷神に拾われたのは間違いだったのだろうか?   作:やたからす

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第4話

 遠征から期間を果たした二日後。稲妻の宮殿(ビルスキルニル)内に備え付けられた団長室にて【トール・ファミリア】を代表する上級冒険者たちが顔を合わせていた。

 

「やっと全員集まったし、今回の遠征、その総決算といこうか」

 

 話しを切り出したのはソルだ。都市内でも有数のLv.6。【雷皇(バール)】の二つ名を与えられた彼は爛々と輝く獣のような瞳に、稚気を含んだような笑みを浮かべてソファに腰掛ける面々を見渡す。

 今回の遠征は大規模なものではないにしろそこそこ深層まで潜っている。依頼も数件引き受けているし、魔石やドロップアイテムもそれなりの数を入手できていた。

 

「報告ある人は手を挙げて」

「じゃあ、俺らからするぞ」

 

 まず手を上げたのはマルス・サーガだ。褐色の肌と鋭い目つきは人だけでなくモンスターすらも萎縮させる。

 容姿は端麗であるのに、その近寄り難い雰囲気のせいで剣呑さが勝っている。

 ファミリア内で一、二を争う膂力と都市最高峰の破壊力を持つ重戦士。

 そんな彼の二つ名は【破邪の戦槌(デオ・ミョルニル)】。【トール・ファミリア】の副団長を務める彼はソルと並ぶLv.6の第一級冒険者だ。

 

「ネファ、報告しろ」

「最初からボクに振るなら、無駄に手なんて上げないで貰える?」

「うるさい。さっさとしろ」

 

 マルスと共に換金のために都市を回っていた少女がため息をつきながら悪態を吐く。

 彼女の名はネファ・ログルム。羊人(ムートン)の少女でLv.5の上級冒険者。与えられた二つ名は【魔羊(バフォメト)】。この場で一番の新米であるものの、【トール・ファミリア】の幹部として遺憾なく力を発揮している。

 

「まあいいけど。ソル、これが今回の換金額だ」

「ありがとネファ。……けっこう吹っ掛けたな」

「マルスがいれば大抵の人は交渉せずに引き下がるからさ」

 

 まあ確かに、とこの場にいる全員が思う。マルスに一睨みされたら勇猛な冒険者だって悲鳴上げるだろう。

 

「それじゃあ、次は私たちね」

「あれ?私たちは何やってたっけ?」

「挨拶周りだ。カーラは食べ歩きをしてただけだがな」

 

 エイル、カーラ、フロストは世界的にも珍しい鳥人(ガルダ)と呼ばれる種族の三姉妹。

 短い黒髪、大人しく控えめな長女エイラ

 ゆるふわ系の桃色髪、明るく活発な次女カーラ

 垂らされた金髪、真面目で知的な三女フリスト

 三人ともにLv.5の第一級冒険者である彼女らは【フレイヤ・ファミリア】が誇る第一級冒険者【黄金の四騎士(ブリンガル)】の二つ名を持つガリバー兄弟にも負けず劣らずの連携力を誇る。

 その卓越した戦闘技術から、三人姉妹を合わせて【白銀の三天使(ワルキューレ)】と呼ぶ。

 

「懇意にしてるファミリアには挨拶を済ませました」

「屋台や商店のおじさんたちも『おかえり』って言ってくれてたよ」

「大手はまだですが、どうしますか?」

「ウチは他とあんまり仲良くないからねー」

 

 ソルが嘆息する。他、というのは都市が誇る最大派閥【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の二つだ。

 大派閥同士、対立する事はある。事実、過去には抗争まがいの衝突を繰り返したことすらある。

 団員同士の仲は良いとは言い切れないが、険悪ともいかない。しかし、主神同士の相性は最悪だった。

 ロキにしろフレイヤにしろ、何があったのかソルの知る所で無いが、ファミリア結成当初は「その名前を出すんじゃない」とトールに本気で脅された事もあった。

 そう言った事情から、大手派閥よりも中堅どころや零細ファミリアとの仲の方が比較的良好だったりする。

 

「それはいいや。ミュウスの方は?」

 

 ミュウスと呼ばれるのは水色にも見える翡翠色の短髪のエルフ。クールな雰囲気と知的な様相を持ち合わせる彼女は、エルフらしく容姿も整っており、見る者の視線を惹きつける。

 左目を覆う眼帯が痛々しくはあるが、それでも彼女の美貌を損ねるに足るほどのものではなかった。

 彼女もLv.5の第一級冒険者であり、【風妖の宝刀(リアスカナン)】と呼ばれる彼女は剣技と魔法を兼ね備えた魔法剣士だ。

 

「私は依頼物の納品へ向かったのですが……」

 

 言いにくそうにするミュウス。訳を聞くと、「量が足りない」「質が悪い」といちゃもんをつけられたそうだ。

 しかし、言い難そうにしてる理由はそれではなく…

 

「あー、ムカついたから依頼物を叩きつけて報酬以上を搾り取って来たとか?」

「まあ、えっと、そうなりますかね」

 

 冒険者の世界では信用が第一。依頼を出す側も受ける側も、ある程度相手を信頼してるからこそ取り引きをする。

 足元を見た要求や依頼をした場合、互いに信用を失い最悪の場合は顧客を失うどころか他の組織からも白い目で見られる事だってある。

 ミュウスは頭が回る。だからこそ「やり過ぎたかも」と感じてしまい、ファミリアの評価下落に繋がるのではと落ち込んでいる。

 

「うん。まあ、ファミリアにプラスになるならいいや」

 

 ソルは深く考えることをせずに受け流した。そもそも最初に足元を見て報酬額を下げようとしたのは向こうが先。むしろこっちは被害者なのだと考えを改める。

 

「じゃあ最後に………そこで目を逸らした二人組」

「「………」」

 

 さっと目を逸らすのはソファに座らず、扉に近い場所に立つ二人。

 青に近い鈍色の髪、姉気質の性格をした猫人(キャットピープル)の彼女の名前がシャルヴィ・ハルプ。

 その隣にいる燃えるような赤髪を持つ犬人(シアンスロープ)の青年がレスクヴァ・ウォルク。

 彼・彼女もまたソルとマルスに次ぐ実力を持ったLv.6の第一級冒険者。生まれながらにしてその身に宿した神速と剛力。修練の末に鍛え抜かれた絶技。

 純粋にして単純。しかし、それらを兼ね備えるからこそ「最強の戦士」たりうる。

 二人を讃え、神々が与えた二つ名は【雷絶の左輪(ダングリスニル)】と【招雷の右輪(ダングニョスト)】。

 都市でも最高クラスの知名度と実力を持つ二人は、捨てられた子猫、もしくは子犬のようにシュンとなっている。

 よく見ればいつもは自信ありげに立つ獣の耳もペタンと力なく垂れ下がっていた。

 

「いやー、私たちは……ねー?」

「えっ?!お、おう!」

 

 この二人、絶対なんかやらかしたなと全員が察した。

 

 

「怒らないから言ってみな」

「「【ロキ・ファミリア】と喧嘩しました!!」」

 

 

 間髪入れずに二人が白状し、一瞬の静寂が訪れる。

 

 

「「「「はぁー?!?!」」」

 

 続いて大声を上げたのはソル以外の面々。

 

「何やってんだアホども」

「馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、まさかそんなに……」

「どう責任取ります?」

「これってやばいの?」

「相当やばいぞ」

「ふぅ、私のやらかしが帳消しになりました」

 

 全員から浴びせられる罵声に二人はさらに縮こまっていく。ソルとしてもさすがに頭を抱えたい内容だった。

 

「うん、まあ、その、とりあえず理由を聞こうか」

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