ダンジョンで雷神に拾われたのは間違いだったのだろうか?   作:やたからす

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第5話

 【トール・ファミリア】はオラリオでも屈指の実力と実績を誇る都市最大派閥の一つだ。

 探索系ファミリアとして活動を続け、最高到達階層は57階層。派閥の等級は『S』。()()もの第一級冒険者を擁し、その数は【ガネーシャ・ファミリア】に次いで都市でも最多数を誇る。

 団員達は全員が神トールによって選び抜かれた、あるいはソル達に崇敬と憧れを抱いて門戸を叩いた者達

 過程に千差万別の理由があり、才能に絶対の差があれども、あらゆる意味での「強さ」をその身に宿した戦士達。

 「自由」と「最強」を掲げる彼等に対して都市の住民達は畏怖と羨望、嫉妬と憧憬を向けてくる。

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 そんなファミリアのホーム内。団長室には重苦しい空気感が漂っていた。理由はシャルヴィとレスクヴァが喧嘩を売ってしまった一件。

 しかも相手は【ロキ・ファミリア】。【フレイヤ・ファミリア】と双璧を成す都市最大派閥だ。

 ことの発端となった二人は部屋の端で正座をしながら反省させられている。

 

「一旦話しを整理しようか」

 

 ソルが二人から聞いた内容をまとめる。

 まず、二人の喧嘩相手になったのは【ロキ・ファミリア】に所属する狼人(ウェアウルフ)の青年。【凶狼(ヴァナルガンド)】の二つ名を与えられた第一級冒険者のベート・ローガを筆頭にした数人だった。

 理由は不安な誤解から生じた口喧嘩。二人は今回消費したアイテム、特に薬品類や武具類を買いに出ていた。

 ぼったくられないようにと気をつけながら値切りを行い店々を周っていた二人は本当に偶然、今回の件に関係するベートとその他数人の【ロキ・ファミリア】の団員達と出会ってしまった。

 最初は互いに我関せずを貫いていたらしいのだが……

 

「まさか、アイテムを買う側(トール・ファミリア)売る側(ロキ・ファミリア)の間で揉めてその場でガチの喧嘩って……」

 

 シャルヴィとレスクヴァが求めたのは薬品系アイテム。それを作成するための素材を採取したのがベートたち。

 運悪く両者がかち合ってしまい、安くしろ高く買い取れと喧嘩になってしまったと。

 そして極め付けは冒険者の(さが)と言うべき肉体言語の解放。二人のLvは6。大してベートのLvは5。他に仲間がいたとしても勝てる見込みは薄かった筈だ。

 結局、スイッチの入ってしまった二人を止められるほどの人物がいるはずもなく、ベートをのしてしまったわけだ。

 そのベートはと言うと、気を失った状態で他の団員たちに連れ帰られたと付け加える。

 

「どうする?」

「向かって来たらやればいいし、来ないならそれでいいんじゃないか?」

 

 ソルとしては、そういった答えを求めていた訳ではないのだがマルスらしい答えだと思う。

 

「良く考えれば、【フレイヤ・ファミリア】じゃなくて良かったとか?」

「【猛者】となんてやり合いたくないですしね」

 

 ミュウスの発言にエイルが同意する。都市で唯一、世界的に見てもたった二人しかいないLv.7の冒険者。オラリオ最強と呼ばれる猪人(ボアズ)の武人を思い浮かべて顔を顰める。

 

「悪く考えれば、【勇者(ブレイバー)】【九魔姫(ナインヘル)】なんてのを敵に回した事だろうね。小人(パルゥム)やエルフが種族単位で敵になる事だって考えられるんだから」

「たしかに、その可能性は大いにあり得る」

 

 二グが考える最悪の可能性にフリストも同意する。エルフの王族である【九魔姫(ナインヘル)】に、小人(パルゥム)の英雄である【勇者(ブレイバー)】。

 この二人を敵に回すとなると、都市中のエルフとパルゥムを敵に回す事と同義になる。

 

「団長ならオッタル倒せる?」

「戦って負けてやる気はないけど………厳しいだろうなー」

「【ロキ・ファミリア】だったら剣姫もいたわね」

「若手最有望とか言われてるんですよね」

「私、一度戦ってみたい!!」

「カーラ一人だと危なかっしくてさせられないよ」

 

 いつの間にか、どうやってこの件を解決するかから、どうやって戦って勝つかに話題が移り変わってしまっていた。

 

「やばい、脱線しすぎた!今話すべきなのは——」

「話しは聞かせてもらったぞ!」

 

 話しの内容を戻そうとした時、ここぞとばかりに扉を開けてトールが入ってきた。またややこしい事になりそうだとソルは頭を抱える。

 

「【ロキ・ファミリア】と揉めたらしいじゃないか、ソル」

「まあ、ファミリアがというよりもそこの二人がね」

 

 指を差された二人が申し訳なさそうに頭を撫でる。

 

「いい機会じゃないか!」

「………はいっ?」

「やっと、やっとだ!やっと陰謀に騒動に殺傷事件にと神界中で揉め事ばかり引き起こしてはやりたい放題しくさってたあの悪辣で最低最悪な女神へ断罪を下せる機会がきた!!」

「ちょっと、トール?」

「何より私の黒歴史を消し去れる……。こんな絶好のチャンスを逃してなるものか!!!」

「えぇー……」

 

 この一連の発言だけでトールがどれだけロキを嫌って、というより苦手としているか分かるというものだ。

 

「さぁ行くぞ!武器をと———」

「あっ、すいません」

 

 トールが鼓舞するよりも先に再び扉が開かれる。入ってきたのは【トール・ファミリア】一の苦労人と言っていいハーフエルフの男性ロゥス。

 

「なんだ!せっかく良いところだったのに」

 

 ぶつくさと文句を言うトールを端にやってソルは先を促す。

 

「すいません。ですが、【ロキ・ファミリア】から【勇者(ブレイバー)たちが来てるので、どうしたらいいのかと……」

「「「「えっ?」」」」

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