ダンジョンで雷神に拾われたのは間違いだったのだろうか?   作:やたからす

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第6話

 話し合いを切り上げて待機して貰っているという応接間に向かう。他の面々には解散と告げたのだが、やはり気になるのか最後まで話しを聞き出そうにしている。

 ので、こういった場で適切な対応が出来るだろうミュウスとエイルに付き人となってもらった。

 残りのメンバーにはトールが乱入しないように足止めを頼んでから団長室を出た。

 

「待たせて悪い」

 

 応接間に置かれているのは長机とそれを挟むソファ。片方には【ロキ・ファミリア】の団長フィン・ディムナが腰掛け、その背後には金髪碧眼の美少女、先程も話題に上がった【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインと【九魔姫】が控えている。

 

「構わないさ。僕らもそれほど待ってはいない」

「そう言って貰えると助かる」

 

 互いにニコリと微笑みながら、ソルもソファに腰掛け、ミュウスとエイルがアイズとリヴェリア同様背後に控える。

 

「それで、今回ここまでやってきた理由は知ってると思うけど」

「いざこざの件だろ?」

 

 というよりも、敵対派閥の拠点(ホーム)へやって来る理由がそれ以外に考えられない。

 

「話しが早くて助かる。僕らも近々遠征を控えているからね。あまりこの問題を長引かせたくないんだ」

 

 早速とばかりに交渉に入る。

 

「今回の一件、話し合いで解決するとして落とし所を用意してみた」

「……やる事なす事早すぎないか?昨日今日の話だろうに」

「それだけ僕らも焦っているって事だよ」

 

 ソルは内心で先手を打たれたと舌打ちをする。どちらに非があるにせよ、こうして落とし所を提案してきたのはフィン。

 それがどんな条件であれ断れば抗争に発展する可能性もある。そうなった場合、提案を断り抗争を誘発したとソルたち【トール・ファミリア】が非難を受ける事となる

 

「まっ、長引かせたくないと思うのはお互い様だよ」

「ありがたい言葉だな」

 

 本音を言えば何も要らないから無条件で手打ちにしたいところだ。しかし、今回に限って言えば目撃者がいる。

 都市最大派閥のメンツがある双方としても「仕方ありませんでした」と引き下がる訳にはいかない。

 

「さっきも言ったが、僕らは近々深層域へと遠征を行う。そのために資金が少々足りていなくてね」

「………賠償金として寄越せ、と?」

 

 ソルの声音が一段低くなる。金で解決できるならそれでもいい。だが、こちらを格下と見て要求をするのならば強硬策も辞さない覚悟はある。

 ソルから漏れ出す殺気。それに反応してアイズが剣に手をかけ、それを見たミュウスとエイルも警戒を強める。

 

「早まらないでくれソル。何も一方的に搾取しようなんて厚かましい事は、我々も考えていない」

 

 リヴェリアがフィンの言葉を補足する。詳しく聞くと、フィンの言う提案とは【ロキ・ファミリア】が遠征で持ち帰った成果の一部を譲渡する。

 その代価として賠償金という名目のもと【トール・ファミリア】が資金を提供するというものだ。

 

「どうかな?探索系ファミリアとして、深層域の素材や情報は値千金にはなる。僕らとしても資金繰りができるし、落とし所としてはベストだと思っているのだけど」

「………」

 

 確かにソル達からしても悪い話では無い。何が起こるか分からないのが迷宮(ダンジョン)、その深層となると異常事態(イレギュラー)は常に起こるものと考えなければならない。

 命を懸けるのはもちろんのこと、潜るまでの計画段階でかなりの時間と労力を必要とする。

 「賠償金を支払った」という事実は【トール・ファミリア】として、【ロキ・ファミリア】に負けを認めたようなものになる。が、それに目を瞑っても大きなリターンは期待できる。

 

「だったら、こっちとしても二つほど追加で提案したい」

「………それはなんだい?」

「まず一つ目、貰う報酬は成果の三割。加えてウチから数人、遠征に同行させたい」

「………」

 

 今度はフィンが押し黙った。【トール・ファミリア】は百人近い構成員を抱えている。

 将来の幹部候補に名前が上がる数人にはこうした外部派閥との共同作業も経験を積ませる意味で同行させるべきとソルは考えている。

 そして前者は後から報酬を下げさせないための、ある意味脅しと牽制だ。

 

「……後者については了承しよう。けど、成果の三割というのはぼったくりも良いところじゃないか?一割だ」

 

 遠征にかかる労力と費用はばかにならない。ここで全体の三割も持っていかれたら、遠征の成果次第では【ロキ・ファミリア】として大赤字となってしまう。

 

「こっちは少なくない額を払う上にメンツまで賭けてる。素材・情報含めても破格だろ?三割」

「メンツについては申し訳なく思うが、それに関しては互いに了承し合った故の結論だ。一割」

 

 両者引くつもりはなく、舌戦を繰り広げる。

 

「………二割だ」

「二割と五分」

「………いいだろう。その条件を飲もう」

 

 折れたのはフィンの方だった。【トール・ファミリア】は賠償金という名目で遠征への資金提供、【ロキ・ファミリア】は成果物の一部譲渡と数人の同行許可。

 こうして、ほんの少しの遺恨を残しながらもオラリオでも指折りの規模を誇る両派閥の抗争は回避された。

 

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