【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様)   作:とがの丸夫

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評価1の数が、、、きついっすねぇ……


後ろの正面、だあれ? 3

 

「”ヒーロー”と、そう呼ぶんだ」

 

 どうして特務長である彼女が、自分たちの存在自体をある種否定するような言葉を発するのか。

 俺には理解できなかった。ただ、彼女の中のヒーロー像というのは、漫画やアニメで出てくるような希望のような存在じゃないのかもしれない。

 

 

「だから君が敵に何をしようが、周りの群衆がそれを周知しない限り、君はヒーローであり、私の大切な部下なのさ」

「……ありがとうございます」

 

 そうか、この人はそれを伝えたかったのか。

 PE能力者の欲求や欲望は最悪、対象者の精神すら覆い、塗りつぶしてしまうと言われている。

 

 もしも俺がそうなったとしても、彼女は俺を見捨てることは無い。

 暗にそう伝えてくれているのだ。

 

 視界と頭の中を覆っていた靄のようなものが晴れていく。

 両親が死んで初めて、俺を認めてくれる人が現れたように感じた。

 

 

「色々聞いて悪かったね、最近の君は調子が悪そうだったから。ついお節介を焼いてしまったよ」

「いえ、ありがとうございます。おかげで心が軽くなりました」

「お節介ついでにもう一つ教えておこう。さっきの話、ヒーローを作るのは誰かという話だ」

「それはさっき聞きましたよ? その人を見る人によって、ヒーローが作られるって」

 

 さっきの話を思い返す。

 別に話の内容は決して聞き心地の言いモノではなかったし、大半の人が眉をひそめて反発するような話だ。

 でも、この人は敢えて俺にその話をしてくれたんだ、そう思うだけで、この人がどうして化け物に見えていたのかが不思議なほどだ。

 

 結局俺も他の人と変わらないということなかもしれない。

 自分が勝てない圧倒的な存在感に、嫉妬し、妬み、そして憧れていたからこそ、存在しない虚像を作り出していたんだ。

 

 そうして、自分の中に無理やり理屈を作り出して、自分という矮小な存在を守ろうとしていたのすぎなかった。

 

 

「そう、私はさっきそういった。だが一つだけ言っていないものがある、それはヒーローを一番最初に作る存在だ」

「一番最初に作る存在、ですか?」

「別に難しくない、心の底で誰だって、自分を物語の主人公だと思っているものだ。つまり、ヒーローの創り手であり、最初のファンは自分自身という事さ」

 

 そうだ、その通りだ。

 

 誰だって自分を他の人とは違う、特別な存在だと思っている。

 だからこそ、他人と比較し、他者を自分の基準で評価する。

 

 別に悪いことじゃない、そうやって周りと自分を比較し続けることで、自分という存在を確たるものにするのが人間だ。

 そして、ヒーローを一番最初にヒーローと思うのは、何時だって自分だろう。

 

 俺だって、俺がヒーローにならないといけないと思って、ここまでやってきたんじゃないか……どうして今までそれを忘れていたんだろう。

 忘れていた理由なんてどうでもいいか、それよりも思い出せたことが重要だ。

 

 

「さて、こんな面倒な話は続けてても暗くなるだけだ、今日の所は君も休んだ方がいいね」

「そう、ですかね。個人的にはもう少しこの状態が望ましいんですけど」

「なんだい、こんな幼児体型もいけるのかい? ま、膝枕ぐらいなら何時でもしてあげるさ、君は大事なヒーローだからね」

 

 別にこうしていたい理由はPEによる欲求じゃない、ただ。

 俺を肯定してくれる、この人の近くに居たいと思っただけだ。膝枕なんてしなくても、この人と一緒の時間を過ごすだけで、心が落ち着くだけだ。

 

 

「そうですね、これ以上してもらうのも気が引けますから。今日はもう休ませてもらおうと思います」

 

 俺はそう言って立ち上がり、部屋を後にしようとするが、扉を開けたタイミングで特務長から待ったの声が掛けられる。

 

 

「あ、そうそう。何度も申し訳ないんだけど、最後に一つだけ質問だ。君にとって”敵”とはなんだい?」

「危険を振り撒く危険分子、見つけ次第排除するべき害虫です」

 

 奴等はただの敵だ、それ以外でもそれ以上でもない。

 暗にそう答えて俺は部屋を今度こそ後にした。

 

 

 

 

 ☆

 

 side;ミスタ―ハンマー

 

 ホワイトジョーカーが退出した特務長室で、俺の目の前では、特務長が周囲の人間には見せる事の出来ないほどの、邪悪な笑みを浮かべている。

 

 

「あれでよかったんですか?」

「もちろんさ、ジョーカー君には自分の力で成長してもらう必要がある。私が手取り足取りして作った存在なんて、要らないからね」

 

 そう言って笑みを強める特務長に、俺は自然と眉を顰めてしまう。

 ジョーカーも災難なことだ、こんな化け物に目を付けられてしまうなんて。

 

 

「それにしても、あんなにも誰よりもヒーローだった彼が、あそこまで精神を侵されるなんて思わなかったよ。少しやり過ぎちゃったかな?」

 

 知らない人間がこのセリフを聞いたところで、何を言っているのか理解できないだろうが、その全容を知ってしまっている俺には、吐き気が込み上げるほどの畜生の所業にしか見えない。

 

 しかし、それを知っているのも特務長本人を除けば俺だけだ。そして、俺はこのことを誰かに言うなんてこともできない。

 全ては彼、哀れにも化け物の標的にされてしまったホワイトジョーカーが、事態を収束させる以外に、解決の道はない。

 

 

「聞いたかい? 敵を”見つけ次第排除するべき害虫”なんて言ったんだよ!? あの彼が!」

 

 興奮が抑えきれないのか、興奮気味にノートPCを操作すると、すぐに一つの映像が映し出される。

 そこに映っているのは、先ほど部屋を出ていった青年。ホワイトジョーカーだった。

 

 だが、映像に映っている彼の表情は、さっきまでの本人とは違い、歪むこともなく、その瞳には眩いほどの光が見て取れた。

 

 

『じゃあ、特務に所属して1日目の君に聞いておこう。君にとって敵とはなんだい?』

 

 先ほど特務長がした質問が、その映像の中でも行われている。

 答えるのは勿論ジョーカー、それも1年前。彼が特務に配属された初日に取られたものだ。

 

 

 映像の中でのジョーカーは、その質問に眉を顰め。悲しそうな表情でも口を開いた。

 

 

『敵……ですか、僕は彼らのことを危険な存在だとは見れないです。PEの欲求や欲望が、彼らの意思とは関係なく蝕んだせいなんです』

『ほう、それはどうしてそう思うんだい?』

 

 分かっているだろうに、映像の中の特務長はとぼけたように返して、ジョーカーに続きを話させる。

 

 

『僕が初めて人を殺したときです。僕の両親を殺した敵は、泣いていました。彼の欲望は純粋な破壊衝動、自分でも押さえられない衝動が、毎日襲ってきて、時たま自分じゃない自分が現れて、暴れだすんだと。彼は言っていました』

『おっと、君のご両親の話なんて……辛いことを聞いてしまったね』

『いいんです、もう終わったことですから」

 

 特務長のそれっぽい謝罪を、素直に受け取ったジョーカーは話を続ける。

 

 

『済まない、ごめん。あんな事するつもりじゃなかった。まるで言い訳でした、文字にすればただあの場を乗り切ろうとしていたと思えます……でも、あの時の彼の目は本当のことを語っていました』

『その敵は、本当に後悔していたと? 殺しなんてしたくなかったって?』

『はい、僕も最初は信じられなかったです。でも、あの時の彼の目をみて本当だと分かったんです。でも、僕はその時感情に溺れてしまい、彼の気持ちを理解できていても、体が止まらなかったんです』

 

 映像の中のジョーカーは自身の両手を見つめる。

 過去の話をした時から、彼の手は震えっぱなしだった。

 

 相当辛い思いをして、この話をしているのが映像からも伝わってくる。

 

 

『そして、僕が彼を殺す瞬間。彼は笑ったんです、”ありがとう”、”これでもう他の人を傷つけないですむ”って、そう……言って。死ぬ瞬間、僕の頭に手を乗せてきました』

 

 敵とヒーローが相対すれば、会話なんてする余裕もなく、互いの機を狙っての読み合いが行われる。

 だから、敵がどうしてこんなことをしたのかなんて会話も、することがない。ましてや、敵の言い訳にも近い懺悔を聞くなんて場面は、皆無と言っていい。

 

 だが、その時のジョーカーは初めてあった敵から、敵の本心を聞いてしまったのだ。

 それはヒーローにとっての劇薬、過去に敵に感化されたヒーローが敵に落ち、若しくは戦闘中の一瞬の思考を鈍らせ、死んでしまうことが、年に1回か2回ほどあると聞く。

 

 

『それは……災難。いや、大きな出来事だったね』

『はい、僕はそれから訓練に全てを費やしてきました。一人でも多く、彼のような敵を助けるために。能力を、力を伸ばしてきました』

『そうか、君は強いんだね。改めて聞こうじゃないか、君にとって”敵”とはなんだい?』

 

 再度、明確な形で質問が投げられる。

 ジョーカーは、1度目の時のような悲しそうな表情ではなく、覚悟を決めた”ヒーロー”の顔をして、ハッキリとした言葉で答えた。

 

 

『国民同様、救い、”守るべき人間”です。少なくとも、PEによって意志を捻じ曲げられた人を、僕は見捨てたくないです』

 

 さっきのジョーカーとはまるで真逆の回答を、1年前の本人が答える。

 同じ人物なのに、その言葉から受ける印象はまるで別人だった。

 

 

「はあああ! もう、さいっこうだよ!」

 

 映像のせいか、はたまた先ほどのジョーカーの様子からか、特務長は高揚を抑えるそぶりも見せず、その場でくるくると回りだす始末。

 

 回ることを止めると、今度は自分の体を抱きしめるようにして、悶え始める。

 

 

「ああ、早く。早くここまで来てくれ、ジョーカー。ここに来て、私を、僕を。”殺してくれ”」

 

 何時からいるのか、確認できない超常の存在。

 ジョンドゥの欲望、それは”自身の死”。

 それも、”最高のヒーロー、自分にとって最大最高、最愛のヒーローによる死”が、化け物の最も強い欲望。

 

 彼は選ばれてしまった、そんな化け物を打ち滅ぼすための救世主。

 ヒーローに。

 

 過去の記憶をバレないように、少しずつ、細部を改変させられ。

 自分の欲望を、下劣で下品な物だと思い込まされ。

 本来の欲望だった、彼だけが持ちえた”■■■■■”でさえ、今では忘れてしまっているだろう。

 

 

「でも、良かったんですか? 彼、あのままだと使い物に――ッ!?」

 

 やり過ぎではないか、遠回しだが言葉にしするが、全身を襲う死の錯覚に最後まで言い切ることは出来なかった。

 首に死神の鎌が当てられている幻覚まで見える。

 

 

「僕のヒーローを、バカにしないでくれるかな。ミスターハンマー」

「も、もうしわ、け! な、ない。です!」

 

 動かない体を無理やり動かして、口だけで必死に謝罪する。

 すると体を襲っていた死の感覚が消え。体が自由になり、慌てて酸素を取り入れる。

 

 下手人である特務長は、先ほどまで浮かべていた笑みを消し、能面のような無の表情でこちらを見ていた。

 

(化け物め!)

 

 俺にできるのは、せいぜい頭の中で勝てない逆立ちをするだけだ。

 

 しかし、瞬きをする間に、化け物の表情はまた不気味なほどに口角をつり上げ、頬を赤く染めていた。

 

 

「はぁ、早く来てくれないと。僕、我慢できないよぉ……僕の、僕だけのヒーロー。早く僕を、終わらせておくれ?」

 

 体をしならせ、抑えきれない欲情を全身に滾らせ、化け物はまるで恋人を待つかのように、情けない声を上げる。

 

 

 記憶を改ざんしたのも、欲望を変質させたのも、今この瞬間、彼を追い詰めているのも目の前の化け物というのが、真実。

 それによって、確かにヒーローだった一人の青年は、思考を捻じ曲げられてもなお、微かに残る心によって、心は壊れる寸前までズタズタに自らしてしまう。

 

 

 

 ”自分の考えるヒーロー像が、自分の想定した状況で、自分の望む言葉と力で、自分が楽しめる結末を用意する人間”

 

 

 助けを求める化け物が、今か今かとヒーローを待ち続けていた。

 

 

「よし、彼もいい具合に成長してるから、本来の自分という存在を再認識させて、もう一回絶望を与えよう。そうすればまた、彼は僕の理想のヒーローに近づいていく……」

 

(済まないジョーカー、君には辛い未来だが。君一つの体で、この化け物を大人しくさせることができるなら、俺は悪魔に魂だって売るつもりだ)

 

 ただ……願わくば、彼の未来に少しでも明るい光が差し込むことを、切に願う。




というわけで、ようやく出せました!
主人公の自分を常に擁護する感じや、無理やりで整合性のない思考。
その他もろもろの原因がここで説明で来たかなと思います!


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