【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様)   作:とがの丸夫

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合法ロリはバカにされたくない5

 目の前に現れた彼女にとっての初めての敵。

 パトラと名乗った敵は、何かしらのPE能力か分からないが浮遊する拳大の黒い弾を数個浮かべており、彼女が一歩前に動けばそれと合わせて球体も移動している。

 

「ん? これが気になるの? これは最近私たちの界隈で有名になって来ている、とある武器商人が売っている武器なの。話ではそいつもPE能力者で、その能力を使って作られたんだとか噂されてるわ」

「ご丁寧に誰も聞いてないことを答えてくれてありがとう。それで、私になにか用なの?」

 

 敵の様子から、自分に対して危害を加える目的じゃないと考えた朱美は、相手からの情報を引き出すため会話を促す。

 この時、ジョーカーから渡されたストラップがあればと考えたが、彼女自身が部屋に置いてきてしまっている。

 

 ドゴオン!!

 

 だが、パトラは質問には応えず、代わりに浮遊していた球体の一つが突如壁に突撃し、硬いコンクリートでできているはずの壁をたやすく破壊してみせる。

 

 

「すごいでしょ? さっきの噂だけど、普通の人間と今の科学力じゃこれは作れない。つまりPE能力者が作ったってこと、貴方って電子系のPE能力者なんでしょ? なら、これと同じ……いえ、これ以上の武器が作れる。貴方にはそれを作ってほしいの」

「いやよ、なんで貴方達のためにそんなことしなくちゃいけないの。私、お尋ね者にはなりたくないんだけど」

 

 動揺を見せないよう震えそうになる声を無理やり抑えつける。

 パトラの口振りからも、朱美のことを敵は何かしらの手段をもって手にしていることが分かる。彼女のPE能力が電子系だということも、一部の人間にしか知られていないはずだった。

 

 それを目の前の今日初めましての敵が、したり顔で語れるほどには、彼女の情報はあずかり知らぬところで独り歩きしていた。

 

 

「別に、貴方の意志は関係ないの。勘のよさそうなあの坊やも居ない今、是が非でも来てもらうわ」

 

 ドゴオン!

 

 彼女の意志で動かしているであろう球体が、今度は1回目とは対面に位置する壁を破壊する。

 

 

「逃げてもいいのよ、でも。その分痛い目にあってもらうけど」

 

 話は終わりだと言わんばかりに、パトラが周囲の球体を動かしながら近づいてくる。

 PE能力者としても、能力の性質からしても、朱美にはパトラに対抗する手段が思いつかなかった。

 

 こんなことならと、何度目かになる思考を巡らせ、この場をどうにか抜け出せないと考えるが、状況が悪すぎた。

 

 

「この状況、貴方がどうこうするなんて考えるだけ無駄、さ……こっちに来なさい」

 

 そう言ったパトラは、既に朱美へと手が届く所まで近づいてきていた。

 ゆっくりと伸ばされる手に、朱美は目を強く瞑ることしかできなかった。

 

 せっかく新しい友達が出来て、楽しいことが待っていると思っていたのに。

 

(結局、私の人生って一度も上手くいった試しがないのよね)

 

 

「シャーッ!!」

「きゃあ!」

 

 朱美に伸ばされた手を、横から飛び出したみーちゃんが噛みつくことで止める。

 突然噛まれ、強烈な痛みに襲われたパトラは叫び声を上げ。ほのぼのとした親友の普段見ない勇敢な姿に、朱美は呆気にとられた。

 

 

「ち、血が出ちゃってるじゃないの! 何してくれるのよ!」

 

 だが、所詮は猫の噛みつき。

 痛みを感じ、出血もしているが、その結果は少しの時間と激高する敵という、とても好機とは言えないものになった。

 

 ドゴオン!

 

 怒りの表情を浮かべたパトラから射出された球体が、朱美を助けたみーちゃんに真っすぐに直進。

 壁を破壊した時同様、今度は床をえぐり取るようにしてみーちゃんを巻き込みながら砂塵を散らす。

 

 

「みーちゃん!」

 

 慌てて朱美が破壊された場所に向かうと、そこには傷を負った状態のみーちゃんの姿があった。

 コンクリートを破壊する球体だったが、幸いにもみーちゃんには直撃することは無かったが、それでも怪我を負ってしまったみーちゃんはすぐには動ける様子はなく。

 

 攻撃のショックで意識も失っていた。

 

 

「ち、煙で見えないわ」

 

 パトラと朱美を遮るようにして這い上がっている砂塵によって、視界が切れたことを悟った朱美は、勝手知ったるこの場所から砂塵の中を駆け抜けるようにして、どうにかビルから脱出した。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

 それから数分、朱美は後ろで聞こえてくる破壊音が近くなってくることに怯えながら、必死に足を動かし続けていた。

 

 未だパトラの姿は見えないが、それでも聞こえてくる破壊音は確実に朱美との距離を縮めてきていた。

 

 

(す、姿が見えないのに、どうして私の位置が分かるの……まるで私の位置が分かっているみたいじゃない)

 

 入り組んだ道を選び、どうにか逃げ続けていた朱美だったが、普段運動を一切しないインドアな彼女は、突如足がもつれて転んでしまう。

 

 

「きゃあ!」

 

 どうにか倒れる瞬間、腕に抱えているみーちゃんを庇うようにして倒れたが、その代わり一切の受け身を取ることができなかった朱美の腕からは、それまでに付いた擦り傷よりも酷い傷が見て取れた。

 

 しかし、朱美は笑う足をどうにか動かし、腕に感じるジクジクとした痛みに耐えながらも立ち上がると、また走り始める。

 

 

 足はとうに限界を迎えていた。

 もはや歩くだけでもふらついてしまう体では、これ以上の逃走は困難。

 

 とうとう壁に寄りかかるようにして、朱美は足を止めてしまった。

 

 

「あらあら、もう鬼ごっこはお終いかしら?」

 

 朱美が動きを止めてすぐに、彼女が逃げてきた方向からパトラの声が響いてくる。

 

 全身に纏ったマントは最初に会った時とは変わらず、もはや全身で息をしている状態の朱美に対して、パトラの呼吸は一切乱れていなかった。

 

 

「ふふ、あーんなに入り組んだ道を通ったのに残念だったわね。私が使う玩具がこれ(球体)だけじゃないの、貴方には発信機が付いてるの」

 

 パトラはそう言いながら携帯を取り出し、とある映像が映っている画面を見せる。

 そこには見知った地形が表示されており、その画面の中では赤い点が、今自分のいるであろう場所で点滅していた。

 

 

「は、発信機……」

「そう、だから貴方が必死に逃げ回ってるのがこれで全部見れてたの。アハハハハ! 貴方の死に物狂いの逃走劇は見てて楽しかったわ!」

「そ、それは。はあ、はあ。ど、どうも」

 

 一切回復する様子を見せない自分の体を恨めしく思いながらも、大きく呼吸をしてどうにか体力を少しでも取り戻そうとする朱美は、このまま少しでも時間を稼ごうと、思考を回転させる。

 

 

「どこから、私の情報を、手に入れたの」

「かーんたんよ、貴方のことを私達に高く売る人間が、そっちにいるだけのこと。小遣い稼ぎのネタに貴方はされたのよ」

 

(まあ、大体そんなところだろうって察しはついてたわよ)

 

 自分のPE能力を知っている人間なんて、数えられる程度の数だ。

 そして、敵にこの情報を売れる人間ともなれば、普通の人じゃまずできない。必然的に、お高い椅子にふんぞり返っているくそ野郎だろう。

 

 

「私、PE能力に目覚めたばかりなの。だから貴方が期待するようなモノは無理よ、作らないんじゃない。作れないの」

「ふふ、貴方は本当にPE能力者のこと分かってないのね。私たちは理屈じゃないの、未だに国ですら解明できていない未知の力なんだから。目覚めてから短い貴方でも、自分でも知らないことが分かったり、出来たりって経験なかった?」

「――ッ」

 

 思い出すのはまさしく今日、こんな事態を招くことができてしまった一番の要素、初めて見るセンサーのシステムを書き換えたことだった。

 

 朱美の様子から察したパトラは、笑みを強める。

 

 

「そう! 貴方が今想像したこと、つまり貴方は出来ないと思い込んでいるだけ」

「だ、だからって。私は犯罪者になるわけじゃない。なりたくもないわ!――きゃあ!」

 

 叫ぶように否定した朱美だったが、その言葉を口にした瞬間、パトラの顔に張り付いていた笑みが消え、周囲を浮遊していた球体が彼女を襲った。

 

 驚き、悲鳴を上げてしまったが、球体は直撃することは無く。彼女の足元を深くえぐり取るのみだった。

 

 

「次は当てるわよ。別に、貴方は腕と頭が問題なく動けば問題ないの。だから足とか要らない場所とか、間違えて当てちゃうかもしれないわね」

「クッ!」

「ま、これ以上時間を使って、面倒なヒーローが来ても嫌だし……一緒に来てもらうわよ」

「んぐう!?」

 

 そう言い、朱美には認識できない速さで後ろに移動したパトラに、朱美は拘束されてしまう。

 拘束から逃れようと、暴れるが、直接的な力を持たない彼女のPE能力と、未だ使用されている形跡はないが、あの移動速度から見てもかなりの使い手であるパトラでは、決定的な力の差が存在していた。

 

 そして、口を塞がれた朱美は声を上げることもできず、無意味に暴れるしかできなかった。

 

 

「煩いわよ、もうすこし静かにしてくれ、る!」

「ぐっ!!」

 

 しかし、暴れられることを鬱陶しく思ったパトラが、朱美の腹部に拳を叩き込むことで暴れることすら許されなくなってしまう。

 

 

「さっき言ったわよね、貴方に求めているのはその頭と腕だけなの。これ以上痛い思いをしたくなかったら……分かるわね?」

「……」

 

 初めて味わう暴力に、朱美は生物的な恐怖に包まれてしまい、ただ恐怖に体を震わせるのみだった。

 その様子に気をよくしたのか、パトラは先ほどまでの笑みをまた浮かべる。

 

 

「私、物わかりのいい子って好きなの。大丈夫、窮屈な思いはさせないわ。むしろ貴方は金の生る木なんだから、宝石のように大切に扱われるわよ?」

 

 

 一方的に話を進めたパトラは、もはや朱美の反応など気にする様子すら見せず、移動を開始しようとする。

 

 

「よう、その子を離してくれねえか? 女」

「レディに対する口の利き方に気を付けなさい、それじゃあモテないわよ?」

 

 パトラの踏み出した足に、2歩目はなく。

 後ろから掛けられた声に、パトラはゆっくりと振り返る。

 

 

 必然的に、パトラに拘束されていた朱美にも、声の主の姿が見える。

 その声はこの数日間毎日聞いていたもので、自身を拘束する初めての敵同様、彼女にとって初めてのヒーローだと、すぐにわかった。

 

 しかし、振り返った先に立っていたのは、彼の顔ではなく。

 フルフェイスを被った、全身真っ白のヒーローだった。

 

 

「悪いな、ヒーローってのは遅れてくるらしい」

 

 初めて見るはずの白い姿だったが、聞きなれてしまった声と口調、そして本人には言えないが、一緒にいると安心できるその姿は、まさしく彼女にとって初めてのヒーローだった。

 

 

 




予告したシリアス解放回が、近い……
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