【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様)   作:とがの丸夫

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どうも、とがの丸夫です。
久しぶりの投稿になります!
(失踪はしませんぞ!)


合法ロリはバカにされたくない7

 いつか見たような暗い空間。

 どうしてこの空間のことを自分は忘れていたのだろうか、周りを見渡すと暗い空間なはずの場所に、瓦礫の山と二人の人影が見える。

 

 一月前も同じような光景を見た。

 片方は数年前の自分、ヒーローに なるためのカリキュラムを受けて間もない自分。

 体に多少の汚れや損傷はあれど、本人いたって健常。

 

 逆に、もう一方は真逆の状態だった。

 大柄な体はボロボロで、荒い呼吸がその人物が辛うじて生きていることを主張している。

 

 満身創痍ということば当てはまる男は、荒い呼吸の中でも嫌味な笑みを浮かべる。

 

「お前の両親を殺したのは俺だ。楽しかったぜ」

 

 男の言葉に、頭が沸騰する。

 どうして人を殺してそんな顔が出来る、詫び入れない、罪悪感を感じないんだ。

 

「罪悪感? んなもんあるわけねえよ、だってよぉ、楽しいもんに罪悪感なんて感じるわけねえだろう?」

 

 ……ああ、こいつは人間じゃない。

 分かってたじゃないか、敵なんて不燃ゴミ以上の無価値な害悪だ。こうして、人を殺したことに愉悦を感じるクズじゃないか。

 俺はこんなクズをただ殺したくて、ヒーローになった。殺した奴が夢にまで出てくるなんて、虫唾が走る。

 

 やめだ、こんな夢さっさと終わらせよう。

 そうすれば糞みたいな夢なんて見なくて済むのだから。

 

 いつの間にか握られていた果物ナイフを握る手に力を籠める。

 人間一人殺すのに大それたものはいらない、PE能力も兵器も高等な技術もいらない。ただのナイフで十分だ。

 

 

 鉄を切れなくても皮ぐらい切れる。骨を断つことはできずとも肉くらいは裂ける。

 1度でだめなら何度でも突き刺せばいい。

 

 こんなこと、子供でも容易だ。

 

 

 ゆっくりと歩みを進める、さほど離れていない距離だ。十数歩でこの手が奴に届くだろう。

 

 

「いい面構えになったじゃねえか、お前もこっち側だ。ようこそ人間の屑の世界へ」

「黙れ、俺はヒーローだ。そしてお前は敵だ」

 

 目の前の男が何かを言っているが関係ない、奴は敵だ。そして俺はヒーローだ。

 

 

「ハハッ! お前はヒーローなんかじゃねえよ、ただの人殺しの糞野郎だ。自分の行動に責任もとれねえ、自分の欲望の制御も、なんだったらその欲望すらまがいモノだ」

「……何が言いたいんだ」

 

 耳を傾けてはいけない、奴と会話する価値なんてないのだから。

 

 

「俺はお前だ。未来のお前だ」

 

 そう口走る男の顔が、瞬きすると文字通り俺と同じ顔になる。

 その顔は到底ヒーローとは似ても似つかない、俺という人間を知らない奴が見れば敵に見えるほどの凶悪な表情を浮かべている。

 

「やめろ、そんなのが俺なわけがないだろう」

「なら見てみろよ、ほれ」

 

 俺の顔をした男が、俺の声で答える。

 ナイフ同様、いつの間にか現れた姿鏡が俺の全身を移す。

 

 

 見てはいけない

 

 

 直感で俺は顔を背けるが、背けた先にも鏡があり、そこには目の前の男同様凶悪な表情を浮かべ、片手にナイフを持つ敵の姿があった。

 

 

「あ、ああ!?」

「ハハッ! どうだ、立派な敵が見えるじゃねえか」

 

 狼狽する俺に向かって、音がさらに口を開く。

 これ以上奴の言葉を聞いてはいけない、だが、一度体内に含んだ毒が抜けないように、奴の言葉が脳内に直接流れてくる。

 

 

「教えてやるよ、俺を殺したお前の本当の欲望をな!」

「やめ、ろ……やめろ。やめろ、やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!」

「なんだ、やっぱりお前もわかってんじゃねえか! ガキのようにわめくんじゃねえよお!」

 

 幾ら声を張り上げても、奴の声が掻き消えることはなかった。それでも必死に声を荒げた。

 

「お前の欲望はなぁ、”能力を使って遊びたい”だけなんだよ、漫画のような世界で、漫画のような力で。物語の主人公みてえに暴れたいだけなんだよ!」

「違う!」

「違わねえよ、お前が敵と戦うとき能力を使わないのはそういうことだろ? 全力で戦っちゃあ楽しめねえもんなあ?」

「違うって言ってるだろ!? 俺の欲望は”ただみんなを助けたい”だけなんだよ!」

 

 奴の言葉を否定するように、俺は無我夢中で叫び返していた。

 

「あれ? 敵の女の人にえっちなことをしたいのが欲望じゃないの?」

 

 後ろからそんな声が聞こえてくる。

 目の前の男の顔はいつの間にか俺ではなく、あの大男の顔に戻っていた。その表情に凶悪さはなく、優し気な笑みを浮かべている。

 

 声の聞こえてきた方向を振り返る。

 そこにはこの夢で最初に大男と向き合っていた、小さな俺がいた。

 

「や、また会ったね。元気してた?」

「まぁ、ぼちぼちだな」

 

 あっけらかんとした声でそう聞いてくる俺に、俺は語彙力の一つもない、なんとも無難な返しをしてしまう。

 小さな俺はそれのどこに喜んだのか、笑みを深める。

 

 

「ねぇ、君の欲望って何かな?」

「はぁ? さっき大声で言ってただろ、俺の欲望は敵の女の子に……」

 

 なんてことはない質問に、俺は素直に答えようとして口が止まる。どうして止まってしまったのか、分からなかった。ただ、何かが違う気がした。

 俺はさっきも同じことを言っていたのだろうか。少し前の自分の言葉が思い出せない。

 小さな俺は、また笑みを深める。

 

「どうして、欲望が1つだけだと思ってるの?」

「……どう、してだ?」

 

 考えたこともなかった。

 PE能力者は自分の能力に関係する欲望が強くなる、だがそれで強くなる欲望が限定される説明にはならない。

 

 俺の反応に満足したのか、小さな俺は一つ頷く。

 

 

「人間の煩悩は108もある、さらにその一つ一つを細かく見れば無限の数になる。人間は欲深いよね……もう一度聞くね、君の欲望はなにかな?」

「……それは」

 

 ヒントを出されたとしても、俺は答えることが出来なかった。

 

「仕方がないなー、じゃあ最後のヒントだよ?」

 

 まるで出来の悪い生徒に向けるような反応をされてる。見た目の年齢で考えれば俺の方が年上なはずなのに、どうやら小さいころの俺は生意気だったようだ。

 俺だけかもしれないが、こんな反応をされ続ければ大の大人でも扱いづらいだろう。

 

 

「今の君の欲望はさっき聞いた。じゃあ、今の欲望に気が付く前の君は、どんな欲望……何をしたかったのかな?」

 

 ああ、そうか。

 バラバラに固まっていたピースが解れていき、今度はしっかりとした形を形成していくように、自分の思考がクリアになっていく。

 

 やりたいことなんていっぱいあったじゃないか。

 父さんのような立派な大人になりたい、強くなりたい、カッコよくなりたい、かわいい子と仲良くなりたい、空を飛びたい、有名になりたい、あれもこれもやりたいこと、したいことなんていっぱいあったじゃないか。

 

 どれも欲望だ。

 

 

 忘れていた。

 俺は抱え込めないほどの欲望を持っていたじゃないか、俺の能力はまさしくその欲望を叶えるものだったじゃないか。

 

 

 ありすぎて大雑把に決めたじゃないか。

 

「そうだね、決めたよね……この日も」

 

 

 小さな俺が振り返ると、さっきまで醜悪な笑みを浮かべていた大男と小さな俺が向かい合っていた。

 大男は先ほどまでの醜悪な笑みがなく、泣きそうな顔をしていた。

 

「すまねえ、すまねえ……」

 

 小さな声で謝り続ける男に、小さな俺は困ったような表情を浮かべたが、直後に何かをひらめいたように笑みを零す。

 

 

「決めた! 僕はヒーローになる! 強くてかっこよくてモテモテで超有名で、君みたいな敵も全部助けるような。ヒーローになる!」

 

 男は小さい俺の馬鹿みたいな宣言に表情を固めてしまう。

 思い出した俺だって、何言ってるんだって思ってしまうほどだ。

 

 だが、あの時の俺はそれが一番だと思った。

 

 救いようのない敵が存在することも、前世の経験から知っている。

 でも、なりたくないのに敵になってしまった人もいることを、この時知ったんだ。だから俺はそんな人もまとめて助けられる人になりたいと思った。

 重力以上に体を縛り付けていた鎖が砕け散ったように、体も心も軽くなった俺の体は浮遊し始める。

 

「そうだったな、思い出した。こんな大事なことなんで忘れたんだか……俺って馬鹿だよな」

「まぁ、忘れてたのは君のせいじゃないけどね?」

「……それって……どういう」

「ごめん時間みたい、今の君はやることがあるんでしょ?」

 

 

 小さい俺の言葉にハッとする。

 そうだ、ここに来る前の俺は赤鞭にボコられたんだった。朱美を人質に取られ、あの黒球を何発も食らって。

 

 ここにいる時間はない、早く目を覚まして朱美を助けないと……でも。

 

 

「だめだ、俺はヒーローじゃない」

「どうして?」

「俺は最低な人間だからだ。PE能力の欲望だから、ヒーローだから、相手が敵だから、糞みたいな言い訳を並べて悪いことをしてきた。俺はヒーローなんかじゃない、ただの黒野郎だ」

「それならちゃんと謝ればいいんだよ」

「謝ったって仕方がないだろ、たとえ許してもらえたとしても、この欲望はもともと俺の中にあったものなんだろ?」

「そうだね、原因はあれど。他人から与えられたモノが欲望になるわけがない、君の中にはその欲望がもともとあっただけだからね」

 

 小さい俺の言葉でいくつかのことが判明する。

 1つ、この欲望はもともと俺が持っていたもの。

 2つ、この欲望を上長させた原因がいる、それも人為的に。

 3つ、この欲望は消えることはない。

 

 2つ目については後でいい。だが、3つ目が問題だ。

 ヒーローを続けるにしてもやめるにしても、この欲望が消えることがないということ。そして、発散されない欲望は暴走を引き起こす。

 つまり、目の前にいる大男と同じ道を辿るということだ。

 

 

「俺は、俺の欲望は、生きていちゃいけない」

「そんなことないよ」

「……え?」

 

 目の前に広がる暗闇のように、絶望しかない未来を見て絶望した俺に、小さい俺は平然とそれを否定する。

 あまりの返答に俺は間抜けな顔をしていたとわかるほどに、意味を持たない言葉が漏れていた。

 

 

「生きちゃいけない人間なんていないんだ。なんてことは言わないさ、でも……自分を生かすのは自分だけなんだから」

「何を言ってるんだ……」

「ふふ、僕は簡単に思いついたよ。犯罪者にならないで、他人に迷惑を掛けないで、ヒーローとしてみんなを助ける方法」

 

 小さい俺の言葉に耳を傾ける。

 まるで長く探していたモノが、ふとした瞬間に見つかった時のような一瞬の間。

 

「――すればいいんだよ」

 

 小さい俺の放った言葉は、至極当然で、当たり前の方法だった。

 

「もう、これ以上時間を無駄にしちゃいけないよ。ほら、君を待ってる人がいるんだから」

 

 俺の疑問を一切受けないという様子で、小さい俺は目の前から消えてしまう。

 

 

 

 色々気になることが増えてしまったが、今の俺にはするべきことがある。

 

 唐突に浮遊し始めた体を動かして、俺は出口を探した。

 どこに向かったらいいのかも分からず、ただ手と足をがむしゃらに動かした。

 

「……カー! ……ジョーカー!」

 

 そんな俺を導くように、俺を呼ぶ声が聞こえた。

 声の聞こえた方向に向かって必死に体を動かしていく、進んでいるのか分からなくても、ただ前に進もうとした。

 

 

 ☆

 

 

 ゆっくりと意識が覚醒する。

 

 覚醒するとともに、全身を襲う鈍痛に声を挙げそうになったが、それよりも早く自身の手に伝わる感触に意識が集中する。

 確かめるようにゆっくりと手を動かすと、小さいながらも動かした手に併せて形を変えるそれは、久方ぶりの至福だった。

 

「……おぉ、小さいが故の柔らかさ。知らなかったぜ」

 

 感服したように声を出し、小ぶりなそれの持ち主を見る。

 

 そこには揉まれていることに頬を赤らめながらも、喜びの表情を浮かべる朱美の姿があった

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