【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様) 作:とがの丸夫
誤字脱字ばかりで申し訳ないです。
全てのご指摘確認させていただきました。
その全てのご指摘の内容を見て、こんなにもあるのか、、、と膝から崩れ落ちてしました。
でも、読者の皆様のおかげで当作品が小説の体裁を保てていると実感しました。
誠にありがとうございます。
気絶していた時に見た夢のおかげか、まるで長い夢から覚めたような開放感が全身を満たしていた。
だが、その開放感に浸ることを許してくれる状況ではないのが現実だった。
「ふふん、ようやくのお目覚めかしら? でもそんな満身創痍な状態で私とやろうと言うのかしら」
「ああ、やる気十分だ。だがさっきまでの俺とは思わないでくれ」
足は未だに震える、全身を満たすのは開放感だがそこからかき分けるようにして倦怠感と鈍痛が湧いてくる。
多分少し前までの俺でも今のようにパトラの前に立っていただろう。
少し違うところがあるとするなら――
「だ、大丈夫なの?」
「はは、護衛対象に心配されるようじゃ俺もまだまだ半人前ってことだな……だけどこっからは安心してくれ、絶対に君を守って見せるから」
「……うん、見てる。だから見せて、ジョーカーのかっこいいところ」
「ああ」
かっこいいと思われるだけでヒーロー。朱美と初めて話した時の彼女の言葉の意味が少しわかった気がする。
決して万全とは言えず、見せる背中はもしかしたら小さくて弱く見えているのかもしれない。
だけどこの場にいる守るべきたった一人の、彼女の言葉が……朱美が後ろに居て俺を見てくれているということだけで。足の震えは止まり、力強く地面に突き立てることができた。
(とは言ったものの、まずは状況の整理からだ)
すぐに自分が気絶した前後の差異を確認する。
朱美には目新しい大きな傷はなく、パトラの周囲には先ほどまで俺を攻撃していたあの黒球がすべて破壊されていた。
そして周囲の地面は人工物も含めて破壊の跡が目立っていたことからも、朱美のPE能力によるものだと判断が付いた。
(まったく、護衛対象に助けられたなんて一生もんの黒歴史だな)
時間を確認するが自分が気絶してから起き上がるまでの時間はそれほど立っておらず、この分ではまだ援軍を期待するのも難しい。
「だが、人質のいない今なら俺一人でも対処可能だ」
「あら、意外と余裕そうじゃない」
俺の言葉にパトラは自身の武器である赤い鞭を構えて戦闘態勢に移る。
しかしその状態のパトラに俺は待ったを掛けた。
「すまない、今からでも降伏してもらうことはできないか?」
「「はあ?」」
俺から発せられた流れを断つ突然の言葉に、パトラだけではなく朱美ですら信じられないといった表情を作る。
「君は言っていた、自分の前には理不尽が現れたと……そして自分の前にはヒーローは現れなかったと」
「そうね、だからなにかしら。今からでも私を助けようとしてるのなんてふざけたことは言わないわよね」
「今からでも君を助けたい。君にこれ以上罪を重ねて欲しくないんだ」
気絶する前のパトラの言葉から、彼女自身が元はただの普通の女の子だったことが想像できた。
つまりパトラが敵になってしまった理由が存在する、それならまだ彼女を助けることができるのかもしれない。
「ふざけないでくれる?」
ビシィッ!
パトラが無造作に振るった赤い鞭が俺の僅か数センチ横の空を切り裂く。
従来、鞭を振るった際の先端の最高速度はマッハを超えるといわれている、ましてやそれをPE能力者が自身のPE能力と併せて使用した場合の威力は、常人であれば一撃たりとも耐えられることはないだろう。
隣で響く乾いた衝撃ではなく、パトラが放つ先ほどまでとは明らかに毛色の雰囲気に、俺は不覚にも動けなかった。
まるで能面のように一切の感情を見せない表情のそれは、なのにも関わらず彼女の中に渦巻く真っ赤な感情を優に伝えていた。
「確かに私の前にヒーローは現れなかった……でもね、ヒーローなんてそもそも要らなかったのよ」
パトラは自身の持つ赤い鞭を眺めながら呟くように話し始める。
「私の両親は絵に描いたようなクズだったわ。両親は酒とギャンブルに溺れていたの、それでもあの時の私はそんな両親が大好きだったわ……」
「――ッ」
背後で息を吞む声が聞こえた。
俺からは窺い知れないがその表情は曇っていたのだろう、パトラが一瞬だけ俺の後ろに向けて少し表情を崩す。
「昔はね、そんな両親じゃなかったのよ? 優しいパパと厳しいママでその時はそれが幸せだなんて気が付かなかったわ」
この話を聞く朱美は今どんな表情をしているのだろうか。
特務の仕事をしていればこの手の話に尽きることはない、なぜならその話の最もな原因がPEによるものだったからだ。
「ある日、パパが勤めていた会社がPE能力者によって周辺もろとも破壊されたの。そこから両親は人が変わってしまった」
俺よりも年上と思えるパトラが子供のころ、つまりPE能力の創成期ともいえる期間は数多くの不和の種を広くばら撒いた。
そしてその種をもっとも深く植え付けられたのは大人もそうだったが、当時何の力を持たない子供たちにとってはそれ以上だったはずだ。
「いつからか家には空になった酒瓶が増えて、足の踏み場が減っていった。美味しかったはずの食べ物の味が分からなくなっていった……でもね? それよりも大好きだった両親に叩かれる方が辛かったの」
「そんなっ……」
崩してはいるが結局のところは虐待だ、その意味を知っている朱美が小さく呟く。
PE能力者となったはず朱美とは全く別の……それこそテレビの向こう側で聞くような話にショックを隠せないようだった。
そんな朱美の呟きが聞こえていないのか、パトラは構わず話を続ける。
「帰ってきた両親に叩かれない日が無くなって暫く経ったとき、パパが嬉しそうに縄跳びをしようって言ってきたの」
自分の子供に虐待を繰り返す親がある日突然改心したなんてことはあり得ない。
それこそ、自分の置かれているどん底ともいえる環境が改善でもされない限り、例え表面上でもマシになるなんてない。
パトラの両親が言った縄跳びというのがどういうものか、朱美も察したように小さく悲鳴を洩らす。
「安物のビニール縄の一方をどこかの柱に括り付けるのよ。そしてもう片方をパパが持って回すの」
当時のことを思い出しているのだろう、パトラは赤い鞭をじっと見つめると続く言葉に間が開いた。
「縄跳びって苦手でなければ最初は簡単に飛べるわよね、最初は楽しく飛んでた……でも少しずつ縄は早くなっていった。疲れて飛べなくなっても縄は回り続けた」
結局パトラが望んだ両親が現れることはなかった。
「パパは笑顔で縄を回し続けたのよ、何度も、何度も。痛くて逃げようとすると大きな声で怒られたわ、正直叩かれたりするよりも痛くて……でもパパはいつもより笑顔だった」
「……いぁ」
想像するに堪えない光景に朱美は小さく声を漏らして耳を塞いでしまう。
痛みとは無縁の平和な世界にいた朱美ですら知っている、学生の時に授業で行う縄跳びで誰もが経験する痛みだ。
子供の力ですらその縄を叩きつければ大の大人でも悶絶するほどの痛みだ。拷問の一つとしてよく用いられるほどに、その残虐性は手軽に実現できる。
「ふと思ったのよ。どうしてこんなに痛いことを笑顔でパパがするのか……きっとすごく楽しいのだとあの時の私は思ったわ。気が付くと私の手にはこの子が居たの」
こちらにはお構いなしにパトラは赤い鞭、ローズウィップを最愛の恋人にでも向けるような視線を送る。
パトラが初めてPE能力に目覚め、人の枠からはじき出されたのはその時だったのだろう。
「パパがあんなにも楽しそうだったのだから、私も一緒に遊びたくなったの。私も笑顔でパパに向けてこの子を振るったわ……何度もね」
当時のパトラが子供だったとはいえ、PE能力―しかも戦闘に特化した能力―であれば大の大人ですら容易に制圧できる。
それほどの生物的な強者が振るったローズウィップの威力に、ただの人間が耐えられるとは到底思えない。
「パパは痛そうに悲鳴を上げたけど、これはきっとそういう遊びなんだと私は思ったの。だから何度も何度も、パパが声を上げなくなるまで叩きつけたのよ……」
「……その遊びは、楽しかったのか?」
パトラは俺の問いに自重するように小さく笑うと首を横に振った。
「分からなかったわ。でもパパが動かなくなったすぐ後にママが帰ってきたのよ、面白さが分からなかったから今度はママと遊んでみたの」
「そんな……」
パトラが初めて殺した相手は実の両親、この時から崩れかけていた彼女の人生は本当の意味で崩れていったのだろう。
もしもそうなる前に、彼女の前に救いの手が指し伸ばされたのなら。彼女に向けられた暴力から守ってくれる存在が居たのなら、きっとそれは彼女にとってのヒーローだったはずだ。
「ふふ、バカよね。楽しいわけがないなんて判り切っていたのに……」
「そ、それなら今からでも……も、戻れるかも……ジョーカーなら、助けてくれるはずよ」
もはや堪えきれなくなった朱美が弱弱しくもハッキリと言葉を発する。
しかしその言葉はパトラにとって最大の禁句だった。
「バカにしないでくれる?」
「――ッ!」
話を始めた時のようにパトラの見せる表情はまるで能面のように無表情になり、表情以上に感情を感じさせない言葉が冷たく放たれる。
無表情からは彼女の様子をそれ以上伺うことが出来ないはずだが、彼女の中で渦巻く確かな怒りが伝わってきた。
「今からでも戻れる? そこのヒーローが助けてくれる?」
パトラは色を感じさせない瞳で朱美を見る。
いや、微かに感じることのできる色があるとするなら……それは呆れ。
「一体誰が、何時、そんな助けを求めたと言った? 誰が弱かった頃の私に戻りたいと言った?」
決して大きくない声が、破壊痕の目立つこの空間に鮮明に響いた。
「子娘風情がモノを言うんじゃないわよ、貴方が言ったその言葉……それは私に対する最大の侮蔑よ」
バシィッ!!
パトラが俺にした時のように無造作にローズウィップを振るう。
決定的に違うのはその攻撃対象が朱美であり、俺の時とは違い確かに彼女を害する意思を感じさせた。
咄嗟にへたり込んでいた朱美を抱きしめるように抱え、ローズウィップの攻撃を背中で受け止める。
「え……じ、ジョーカー?」
しかしPE能力を使用する暇もなく繰り出された攻撃を受け止める術を、満身創痍ともいえる状態の俺は持っていなかった。
だが守ると宣言した、ならば防げなくとも彼女を脅威から少しでも守って見せるのみだ。
黒弾の時のような鈍い痛みではなく、背中を二つに裂くような痛みに眩暈がする。今までに味わった事の無いほどの痛みに視界が白黒してしまう。
「いってぇ……なんだよあれ、めちゃくちゃいてぇじゃねえか……」
「あら、最初に言ったじゃない。この子の攻撃は物凄く痛いのよ」
強烈な痛みに嫌な汗が全身から噴き出る。
決して生身の状態で受けていい攻撃なんてものではない威力に、朱美が無事であったことに安堵する。
退く様子を見せない痛みに耐えながら俺はゆっくりと立ち上がる、そして朱美を背にして再度パトラと対峙する。
「ヒィッ!」
背中を見せたと同時に朱美から小さな悲鳴が聞こえてしまう。
それほどまでにローズウィップの攻撃をまともに受けた俺の背中は、目も当てられない状態なのかもしれない。せめてもの幸いはその傷が俺からは決して見えないことだろう。
(あーこれ絶対後で後悔する奴じゃん)
そんな俺の状態が余程満足いくものだったのだろうか、パトラは先ほどまでの能面ではなく薄ら寒い笑みを浮かべていた。
「どう? たかが一敵の攻撃を受けた気分は」
「最悪の一言に尽きるよ、今まで受けた事の無いほどの痛みだ」
「そうでしょ……なんでか分かるかしら?」
「分からないね、ただただ痛くてそんなの考える余裕がねえよ……」
余裕な笑みを浮かべるパトラとは逆に、俺は黒球による攻撃と先ほどのローズウィップの攻撃で、全身を覆う痛みで逆に意識を失わないでいられる状態だった。
しかし、そんな俺の投げやりな回答にパトラは満足そうに笑みを深める。
「簡単よ、その痛みは私の誇りなの」
朱美がパトラの言葉に疑問を浮かべている様子だったが、俺には分かってしまった。
それほどまでに、ローズウィップによる攻撃は言葉以上にその強さを雄弁に語っていた。
「私が両親を殺して今日この日まで生き延びてきた証なのよ。誰の手も借りず、この力一つだけでこの薄暗い世界を生きてきた」
パトラの言う薄暗い世界、それは世界で一番平和とも言われる日本で、平和な日常を過ごしている人間には想像もつかない世界。
文字通り弱者が強者に媚びへつらい、明確な力関係が存在し、唯の一つとして自分を庇護する存在のいない世界。
奪われるか奪うか、たったそれだけが暗闇の白昼を闊歩する場所。
「貴方のように心を落ち着かせて、小石の転がる音一つに耳を傾けて静かに目を瞑ることさえ許されない。次に踏みしめる場所すら間違えることのできない、地雷原のような世界を貴方は知っているかしら?」
知っているわけがない。
パトラは嘲笑を向けることによって言葉なく語る。
「どうして私に助けが必要なのかしら、ヒーロー程度に助けてもらうなんて一人で立つことすらできない弱者の言葉よ。そんな言葉を私に向けて言わないでくれるかしら、その言葉は私の人生全てを否定する言葉なのよ」
自分たちが救うべき弱者、自分たちが守るべき陽だまりからこれ落ちた哀れな少女の、末路とも言うべき存在であるはずなのに。俺は不覚にも目の前の彼女を見て美しく感じてしまった。
泥の中からでも咲き誇る花のように美しく、嵐の中でその姿を曲げてもなお悠然と立ち続けるヤシの木のように勇ましく、狼のような孤高を体現するのが、暗闇の中でも誇り高く在ろうとするパトラという一人の女性なのだ。
「あの時の私ならともかく、今の私にとってヒーローなんて存在は無価値なのよ」
ああ、まさしくその通り。
目の前の敵はヒーローである俺にそう思わせるほどに、強く在ったのだ。
今日は何度、自身にヒーロー失格の烙印を刻まねばならないのだろう。降伏なんて言葉を向けること自体、彼女への冒涜のそれではないか。
声を荒げることなく、静かにゆっくりと言葉を紡ぐだけで、彼女は自身の存在を目の前にいる俺達に強く叩き付けた。
俺は手首に取り付けられている無線を静かに口を近づける。
「こちらジョーカー、先ほどの増援要請を撤回する。護衛対象は保護した」
『こちらコマンダー、増援要請の撤回に間違いはないか?』
抑揚のない男性の声が再度の確認を求めてくる。
”コマンダー”それは特務が抱える戦術作戦指揮に特化したPE能力を持つヒーロー名だ。
俺の突然の言葉に後ろでは朱美が、そして目の前にいるパトラがそれぞれ驚いた様子を見せる。
だが俺はそんな二人に反応することなく無線に返答する。
「こちらジョーカー、増援申請の撤回に間違いはない。護衛対象付近で敵が暴れているようだ、護衛対象の安全を確保したのち対処に当たる」
『こちらコマンダー、それは容認できない。増援はこのまま送る、付近の敵は増援に任せるんだ。ジョーカーはそのまま護衛対象の安全を確保を最優先に行動しろ。以上』
コマンダーは淡々と告げると通信を終了させる。
「どういうつもりかしら? まさか私に情けを掛けようとなんてしていないわよね」
不満気に眉を顰めたパトラが語気を強める。
「いや、むしろその逆だ。アンタみたいないい女性とのデートを邪魔されたくはなかったんだよ」
「あら、それはなんて熱烈なお誘いかしら」
「はは、今日は夜が長くなりそうだ」
俺の返答に満足したのか、パトラは先ほどまでの笑みを浮かべながらローズウィップを構える。
俺がどうしてあんな事をしたのか、その答えは至極簡単だ。
かつてないほどの敵を目の前に、ヒーローとして勝ちたいとただ思ってしまっただけだ。
「シナリオはこうだ。護衛対象を保護したが、無関係に付近で暴れていた敵と偶発的遭遇戦に突入。護衛を保護しつつ敵の無力化に成功ってな」
「フフ、確かジョーカーだったわね。貴方って強くて勇ましいのに、物語を描くにはすこし頭と想像力が足りないようね?」
「別に間違ってないさ、ヒーローと敵が戦ったら勝つのはヒーロー……当たり前だろ? 敵」
挑発するように笑みを浮かべようとするが、全身を襲う痛みに理想とは掛け離れた歪な笑みを作る。
パトラは俺の言葉を喜々として受け入れる。そして隠していただろう加虐的な笑みを浮かび上がらせる。
「ちょちょ、ちょっとお! わ、私をおいて話を進めないでよ!」
「悪い、だが絶対に朱美は守るから安心してくれ」
「今日はもういいわ、貴方よりも面白そうな殿方と遊べるんだもの」
「……あれ? 私いつの間にか蚊帳の外にされてない?」
堪らず朱美が声を上げるが、俺達はそれを足蹴にする。
不幸中の幸いか、パトラの標的が朱美から俺に移ってくれたことでやりやすくなった。
お互いに構え、一瞬にしてその場の空気が張り詰めていくのが分かる。
朱美はそれに耐えられないのか、荒い呼吸を小さく繰り返すようになった時。
「そういえば、戦う間に一つお願い事していいか?」
「戦う間にお願い事なんて無粋ね……何かしら?」
「俺が敵と戦う理由の一つさ、これを言わないと俺は戦えない」
「……あ! ま、まさか―」
俺が小さく笑ったことで朱美が何かに気が付いたように口を開きかけるが、その時には俺は大声で叫んでいた。
「戦ってるときい! うぉおっぱい揉んでもいいですかあ!」
今できる精一杯の思いの丈をパトラに放った。
「……はぁ?」
最後の主人公の一言は、とがの丸夫も叫んでいます。
skyrimとかfallout4とかのVRあるでしょ?
とがの丸夫はあれがすごく好きです。