【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様) 作:とがの丸夫
「貴方何言ってるの?」
「ジョーカー……」
俺がお願いを口にしたとたん、張り詰めていた空気の線が二人の女性の呆れた様子の言葉によって緩んでしまう。
「俺は本気だ。命を懸けてアンタと戦うんだ……頼む‼」
恥も外聞もない、俺は土下座をしてパトラに頼み込んだ。
「ジョーカー! さっきまでのかっこいい空気が台無しじゃないの!」
「うるさい! 俺は本気でパトラのおっぱいが揉みたいんだ!」
「決め顔で言う内容じゃないよ!」
俺の覚悟を持った言葉に朱美が色々言ってくるが関係ない。俺の欲求は確かに抱えきれないほどの欲求を持っているが、おっぱいに対する気持ちも依然変わりない。
そして目の前に敵として立っているパトラ。
誇りある強者、そしてめちゃくちゃスタイルがいいのだ。
「朱美……確かに君の胸は小さい。パトラと比べれば大人と子供だ、だからといって自分を卑下するものじゃない。君も立派なモノを持っていることを俺は知っている」
「なにいいこと言ったみたいな雰囲気作ってるの! ただのセクハラ発言よ!」
「あっはっはっはっは!」
俺のお願い事のバカさ加減になのか、それとも朱美とのやり取りを見てなのか。
どちらにしてもパトラは大きく笑った。
「ジョーカーそれは女性に対して失礼よ……例え本当の事でも」
「貴方も何言ってるのよ! 結局は胸か!? グラマラスボディなの!?」
「男は何時でもアドベンチャーさ」
「だからうっさいわよ!」
「ふふっ。貴方達って面白いのね」
少し前まであれほどまで殺伐としたやり取りをしていたはずだったのに、そしてこの後すぐ殺し合いをする間柄なのだが、この瞬間だけはその一切が嘘であったような空気が当たりを漂う。
「あー笑ったわ。ジョーカー、それが貴方の命に値するのならいいわよ。でも触る前に貴方の命は無いと思ってね」
しかしパトラのその一言で緩やかな空気が一瞬にして凍り付く。
パトラの顔は加虐的な笑みで埋め尽くされていた。
「ああ、命を掛けるに値することだ。だから俺は本気でアンタの胸を揉みに行く!」
「もう、勝手にすればいいわよ……」
呆れる朱美だが、ありがたいことにその場の空気からすぐに離れていく。
護衛対象である彼女と離れること事態褒められたことではないが、パトラを相手に彼女を近くに置いておくことの方が危険だ。
彼女が離れてくれたおかげで心置きなく戦える。
「ねえ、貴方はPE能力を使わないのかしら?」
互いに構えた状態でパトラが問いかけてくる。
「そうだな、こんな状態だ。戦えても数分……それなら最初から力を使わせてもらうぜ」
「貴方のPE能力ってどんなのかしらね、動きから見ても近距離の肉弾戦に特化したPE能力なのかしら」
パトラの読み通り俺のPE能力は接近戦闘向けだが、俺は特務の部隊長を努める様になってから自身のPE能力をあまり使って来なかった。
「先に言っておくが。絶対に笑うなよ?」
「なにかしら、そんなに面白いものなの?」
パトラが面白そうにそう言ってくるが、実際にこのPE能力を使う身からしたら堪ったものじゃない。
「なあ、アンタは魔法の言葉って知ってるか?」
「さっきから口ばっかりね。もう、魔法の言葉なんてあるわけないじゃない。ヒーロードラマの見過ぎよ」
神経を集中させ、久しぶりに使うPE能力に意識を向ける。
「自分じゃないもう一人の……理想の自分になるための魔法の言葉があるんだ。それを教えてやる」
体内になるPEが急速に膨れ上がる感覚が全身を満たしていくと同時に、空気が確かに重くなっていく。
「んぐ! な、なに!?」
その変化にパトラが気付いたように驚愕の表情を浮かべる。
「敵と戦う前、強い自分になるためにかつて幾千のヒーローがこの言葉を使った。俺の憧れたヒーローもこの言葉をよく使ってたぜ?」
久しぶりに使うPE能力だが、主人以上に俺の体は物覚えがいいらしく。PE能力が発動する直前の状態までをスムーズに実現する。
残るはトリガーを引くだけ。
「言の葉一つ、たったそれだけで人は変われるんだ……『変身』」
言葉と共に、膨れ上がった体内のPEが爆ぜた。
俺を中心として光が放たれ、世界が白く染まる。
パトラの攻撃によってボロボロになっていたスーツが消えていき、放たれた光の一部が全身を覆う。
「な、なにが……起きてるの?」
光の強さにパトラが目を覆うが、光の放出はすぐさま終息していく。
光が消え、夜の世界を照らすモノが該当のみになった場所に佇む俺とパトラの視線が交差する。
「そ、それが貴方のPE能力なの……」
「ああ、これが俺のPE能力。『変身』だ」
身体的見た目の変化はなく、外面で変わったのは俺の見た目だけだ。しかし内包している力は変身する前を遥かの凌駕していた。
パトラが目を見開きながら俺の姿を見て口に手を当てる、好戦的な雰囲気はそこになかった。
「変身……でもあなた、その恰好……」
「だから言っただろう? 絶対に笑うなと」
ボロボロだった戦闘スーツは無くなり、俺の全身を包むのは純白の戦闘服。
余計なモノをそぎ落とし、戦闘のみに特化した戦闘状態。これで俺の戦闘準備が整った。
「……ぷ、ぷふぅ‼ あ、あっはっはっはっは! な、何それぇ。ぜ、全身タイツじゃない! あ、あははは。お、お腹、お腹痛い!」
そう、俺の今の状態は文字通り白一色の全身タイツ。唯一肌の露出している部分といえば首から上のみだった。
俺がPE能力をここしばらく使用してなかったもっともな理由がこれだった。
「だあ! だから笑うなって言ったよなあ!? 俺言ったよね!? 俺だって好きでこんな格好してんじゃねえよ、昔はもっとかっこよかったんだからな!」
「んふ、ちょ、か、かっこよかったって……もしかしてそれの上に肩パットとかじゃないわよね? も、もう笑わせないでくれるかしら。真面目に戦いましょうよ」
未だに笑いを抑えながらもパトラがどうにか話を元の流れに戻そうとする。
俺もずっと笑われている状態はごめんだ。だが戦いが始まればそんなこと言っている余裕もなくなるだろう。
「ああ、やろうぜ」
「……・……ぷっはっはっはっは! だ、だめ! そんな恰好で真面目な表情で言わないでぇ! も、もうやだあ!」
軌道修正失敗だ。
「はぁ、もういいよ。笑え笑え、そしてそのままブタ箱にぶちこ――ぐぁ!」
パトラのあまりの反応に俺は諦めて投げやりにそう言い掛けるが、予備動作なく振るわれたパトラのローズウィップが俺を強襲した。
油断しきっていた俺は防ぐことも出来ず、まともにローズウィップを腹部に食らってしまう。
「あら、もしかしてよーいドンで戦いが始まるとでも思ってたの? お馬鹿ね、ヒーローと敵が同じ空間にいたら既に戦いは始まってるのよ?」
パトラの攻撃を受けた俺はすぐさま距離を離そうと動く。
「本当のお馬鹿ね、この距離は私の射程なのよ?」
しかしパトラはそんな俺の行動を読んでいた様子で、動こうとした俺にローズウィップを容赦なく叩き付ける。
「俺のPE能力は見た目だけじゃねえ!」
見た目は全身白タイツのふざけた格好だが、戦闘に特化した俺のPE能力によって引き上げられた身体能力によって、繰り出されたローズウィップを途中で掴み取る。
掴んだローズウィップを決して離さないよう両手でしっかりと掴み、そのまま全身をしならせながら力任せに振り回す。
「きゃあ!」
当然、ローズウィップの持ち主であるパトラは振り回されるようにして中を舞う。
PE能力者とは言え、空中に投げ出された状態で態勢を整えることは難しく、空中に投げ出された状態のパトラはまともに動けない。
「そんでもってぇ!」
俺は両手で掴んでいるローズウィップを今度は思い切り引っ張る。
空中でろくに動けないパトラは、抵抗らしい事もできず近接で有利な俺の間合いまでいい気に近づく。
パトラに手が届く距離まで近づいたタイミングを見計らい、俺はローズウィップを手放して両手を自由にする。
そのまま勢いよく俺の方に向かってくるパトラを受け止めるようにして、俺は両手を前に突き出す。
ぽにゅん
形のいいパトラの胸が、勢いよく俺の両手とぶつかるが、手に伝わるのは柔い感触のみだった。
「……よし!」
「何がよしよ!」
「ぶべらっち!」
流石凶悪な敵だ。俺の攻撃を受けてもまともにカウンターを繰り出してくるとは。
(それ以上になんていう凶器を隠し持っていたんだ……いや、さらけ出してたわ)
両手に残る柔らかい確かな肉の感触を、俺は頬に残る痛み以上に強く感じた。