【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様)   作:とがの丸夫

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時間が空いてしまいました。
1章のプロローグよりも、2章のプロローグって滅茶苦茶難しいですね。

Songs of Syxにはまって、人口1万人達成してニヤついていたわけじゃないです。はい。

出来れば投稿ペースを上げていきたい。。。


2章:プロローグ

 模様も何もないただの白い天上、壁も白いがそこには幾つもの数式やホワイトボードが並べられていたため、景色としては殺風景ながらも個性は感じられる。

 

「ねえ、貴方はどうしてここに来たの?」

 

 黒い髪の少女が話しかけてくる。

 

「■■と■■が私を■■■■■だって言ってた」

 

 自分で答えているはずなのに、何故か所々が虫食いのようにノイズが混じる。

 黒髪の少女は小さく頷くと笑顔を浮かべる。無邪気と言えるほどに、そこには自分が嫌いなアレの匂いは感じなかった。部屋同様、穢れの無い綺麗なモノだった。

 

「じゃあ私と遊ぼうよ」

「いいよ、でも私他の人と遊んだことない」

「えー、なんでー?」

 

 黒髪の少女が驚いた顔を見せる。自分の言葉に何か驚くことがあったのだろうか。

 

「私の髪って珍しいんだって」

「んーっと、白色だから?」

「そう、■■と■■は褒めてくれるの。だけど皆がこの白い髪を■■■だって言うの、■■だって」

 

 黒髪の少女は自分の白くて長い髪を凝視する。今まで向けられてきた視線とは違う、皆とも、両親ともその視線は違うものだった。好奇心、初めて自分の髪に向けられた視線だった。

 

「あんまり見ないで」

 

 堪らず言ってしまう。

 

「えー貴方の髪って凄く綺麗だよ?」

「綺麗……■■と■■もいつも言ってくれるよ」

 

 黒髪の少女の言葉、 言ってくれる人は少なくても、聞きなれた表現の一つだった。だが、他と同じだと言われてしまった黒髪の少女は頬を膨らませる。

 

「えー! えっとね、ちょっとまって!」

 

 黒髪の少女は頭を抱えてしまう。何かを必死に考えているようだった。

 

「そ、そう! 魅力的!!」

「あんまり言われたことないけど、でも■■がたまに言ってくれるよ」

「ええ!? じ、じゃあね……ええっとね……」

 

 黒髪の少女はまた頭を抱える、きっと新しい表現を必死に考えているのだろう。

 頭を抱えた黒髪の少女はふと自分の短く黒い髪を見る。そして何かに気が付いたように顔を上げる。

 

「私の髪は黒くて短い。それで、貴方の髪は白くて長い……だから……ええっと」

「だから、なに?」

 

 何かに気が付いたというのは錯覚だったみたいだ。黒髪の少女は何かを思いついたようで、ただ事実を述べただけだった。

 聞き返すように尋ねる。黒髪の少女は今度は頭を抱えたりしなかったが、今度は何か言いづらそうに視線を彷徨わせる。

 

「私、生れた時から此処にいるの」

「そうなんだ」

「だから■■と■■も知らないの。私に■■がいるのかも分からないの」

 

 少し気落ちしたように語る黒髪の少女の言葉に、少なからず驚いてしまう。黒髪の少女は普段から楽しそうに、ここに来る大人の人達と楽しそうに話したり、同じようにここにいる同年代と思える子たちといつも遊んでいた。

 

 無口で無表情な自分とは正反対と言える。

 

「だから、私にも■■が欲しいなって。どこかの誰かじゃなくて」

「もしかして私に?」

「うん、ダメ……かな」

 

 黒髪の少女の言わんとすることを察してしまう。数少ない特技だ。

 

「私たち今日が初めて話したよね」

「そうだね」

「私以外のみんなといつも楽しそうだよ?」

「うん、でも皆と貴方は違うの」

「何が?」

「何かが」

 

 全く要領を得ない、子供ながらに達観した思考を持っていると自覚する自分でも、彼女が何を言いたいのかが分からなかった。仲良く遊んだことも、話したことも、名前も知らない。そんな自分を何故なんだろう。ただ疑問だけが浮かんでくる。

 

 だが、目の前の少女は自慢げに話す。

 

「私、こう、ビビッ! ってきたときはね、それに従うって決めてるの!」

 

 つまり何となく。何かに理由を求める自分とは違う、説明のできない理由を目の前の少女は信じ切っていた。いつもなら目の前の少女のような相手をしたとき、自分はどう対応するだろう。不審に思うだろうか、呆れるだろうか、何も感じないのだろうか。

 

 多分何も感じないが正解。

 

「だから、私は黒くて短いままにするから。貴方はその白くて長い髪を大切して!」

 

 何がだからなのだろう、前後の話と何ら関連を持たない話に、思わず首を傾げてしまう。

 

「これはね、私たちだけの約束」

 

 何とも勝手で、一方的な約束をぶつけられたものだ。

 だけど、目の前の少女と話していると不思議と心が暖かくなる。ロウソクの火に手を近づけた時のような、頼りなくとも感じる暖かさのようだ。

 

 多分、自分は笑顔を浮かべていたのだろう。黒髪の少女が自分の顔を見てより一層笑う。

 

 次の瞬間。

 

「ああ、これは夢か。懐かしいなぁ」

 

 これが夢であると確信した。

 見慣れた部屋、見慣れた少女、そして忘れる事の無い彼女との約束。

 

 この時以上に大切な記憶は無いと断言できるほどに、唐突で、突拍子もないやり取り。だけどこれが自分の人生を大きく動かしたのだと、今なら思える。小さな少女との出会いが無ければ、地獄に叩き付けられた自分は生きる目的を無くして、暗い世界をただ彷徨っていただろう。

 

「この夢を見るってことは……」

 

 普段見ない夢を見た。そこに気が付いたと同時に意識が遠くなる。

 

 景色だけが自分を置いて離れていく様子は流石夢といったところだろうか。遠くなっていく景色の中で、黒髪の少女がこちらに手を振っていた。

 

「もう、見せてくれなくても……忘れないわよ」

 

 目の前に何が見えているのか。それすら認識できなくなり、気が付くと視界は暗闇を捉えていた。

 ゆっくりと目を開ける。

 

「えへへ、おはよ」

 

 短く切られた黒い髪の少女の笑顔が視界を占領している。

 自分と殆ど変わらない年齢なはずなのに、目の前の少女は少し成長したとはいえ平均的に見ればかなり小さい方だろう。時間が経っても目の前の少女が浮かべる笑顔に穢れも汚れもないそれに、自然と頬が緩む。

 

「おはよ。私どれくらい寝てたの?」

 

 長い時間寝ていたような気がする。視線を動かすと腕には医療器具が取りつけられており、辺りを見回すと夢の時の部屋ほどではないが、白を基調とした部屋にいることが分かった。

 

 目の前の黒髪の少女に問いかけながら、最後に覚えている記憶を探す。確か自分はあの変なヒーローと戦っていた。口調は粗暴で、相対したときの印象は他の連中と変わらないゴミのような男だ。

 

 マスクをしていたから顔は分からなかったが、マスクの下も印象通りなら見たくもない。

 そんなヒーローを名乗るチンピラは、しかし自分よりも確実に強かったのは確かだった。悔しいが、事実から目を反らしても仕方がない。

 

 勝てないからと、薬を更に飲もうとして。あのヒーローに止められて。それで……

 

「まさかシルヴィアが髪を触られただけで暴走するとは思わなかったよ!!」

 

 黒髪の少女、パイモンが引き継ぐように話す。

 

 そうだ、あの時暴走してしまった。髪をあんな人間に触られたからだ。他人からすれば少し不快と思える程度でも、私にとってはこれ以上の無い侮辱だった。

 

「だって、貴方との約束だから」

 

 この髪だけが、私と彼女のたった一つの約束なのだから。大切なたった一人の家族との約束は、命と同じ重さを持っているのだから。

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