【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様)   作:とがの丸夫

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久しぶりにシルヴィアとパイモン書いてるので少し迷いながら書いてしまいました……
2章は二人とジョーカーを絡めていきたい所存


白髪な大剣担ぐ美女は、触られたい編6

 目を覚ましたシルヴィアは、笑顔を向けるパイモンと自身が置かれている状況を再度確認する。

 

 清潔感の保たれた部屋とベッド、併せて視界に映ったのは薬品の類が多量に並べられた棚、そしていくつかの器具。およそここが病室のような場所だと再認識する。

 

「パイモン、私ってどれくらい寝てたの」

 

 先ほどと同じように言葉を選ばず問いかける、パイモンは先ほどまでの笑顔から極まりの悪い表情へと歪む。

 

「……1月ぐらい」

「――ッ。そう……長いこと寝ていたのね」

 

 独り言を呟くと、シルヴィアはゆっくりとベッドから出る。

 通常の健常者が一月以上ベッドに寝たきりだった場合、体の筋肉から臓器といった身体機能全般の能力低下が起きる。本来、いきなり起き上がるという動作自体が困難とされる。だが、PE能力者であるシルヴィアは平然とした顔で一月以上ぶりの地面に力強く立った。

 

 立ち上がったシルヴィアは体の部位をそれぞれ稼働させることで、調子を確かめる。

 

「少し鈍ってるかしら」

 

 不満そうに口を開くシルヴィアだが、それでも常人以上の運動が行えるのは大前提であり、普通のヒーローや敵であれば対等以上に戦えてしまうだろう。

 パイモンが少し落ち着いた様子で口を開く。

 

「ま、シルヴィアの暴走を止めたときだって怪我らしい怪我もなかったしね」

「ありがとう」

「おや、もうお目覚めかね?」

 

 二人の会話を第三者の声が止める。

 超えの方向に視線を向けると緑色という珍しい長髪の女性が顔に笑みを張り付け、シルヴィア達を観察するような眼を向けていた。

 

「気分は最悪だけどね。あんな男に負けたなんて……」

「それは仕方ないことだよ、なんたって彼はパトラにも勝った人間だ」

 

 ドクターの言葉にシルヴィア、そしてパイモンも驚く。目の前にいるドクターと呼ばれる敵と並ぶ、裏の世界でアンタッチャブルとされるPE能力者。赤鞭の名前は二人にとっても大きな影響を与えた。

 

 加えて表現するなら、二人にとって赤鞭という存在は羨望の対象でもあった。そんな存在が、泥を投げつけたくなるヒーローに負けたという事実は、二人にとって大きすぎた。

 

「う、うそ……」

 

 シルヴィアが狼狽する。

 

「正確には退けた……だね。なんたって戦闘後に倒れていたのはヒーローの方だったんだから」

「ならっ!」

 

 伝えられた状況に、パイモンが表情を反転させる。しかしドクターはそれに対して首を横に振る。

 

「いや、彼女は負けたと言うだろうね。なんせ狙った獲物に命を救われたようなものだから」

 

 パトラとシルヴィアはその後、ドクターから戦闘の経緯を口頭で伝えられた。

 戦闘が始まり、両者がPE能力を発動させ。その場の流れでシルヴィアを助けた張本人が暴走。しかも暴走しながらも戦闘を続行し、パトラを殺す一歩手前まで追い詰め、最後の一撃を第三者に止められて助かった。

 唯一、ジョーカーが暴走中にPE能力を発動させたという核心に当たる情報のみ伏せて伝えられた情報は、それでも彼女たちに強い印象を持たせる。

 

 敵とヒーローの戦闘における勝利目標は乖離する。通常のヒーローの戦闘における勝利目標は街や住民への被害の防止、敵の制圧。国民からある意味名声に強く左右されるヒーロー。

 逆に国民や周囲からの評価に左右されない敵にとって、勝利条件というのはかなり多様と言える。そして極めた時の回答は至極簡単な表現に落ち着く。

 

 捕まらない。死なない。

 

 戦闘時における優位性が決まっているパトラは、第三者の視点で測れば明らかな勝利と言える。しかし、赤鞭と呼ばれる存在はそれを良しとはしない。ましてや標的に助けられたということは認めたくない現実だった。

 

「そ、そうなんだ。赤鞭がそこまで追いつめられるなんて……というやアイツも暴走したんだね、シルヴィア」

 

 あらましの情報を得たことで、どうにか安どの表情を浮かべるパトラが、同じく暴走を体験したシルヴィアに問いかける。

 

 

「ええ、そうね……」

 

 暴走という常人はあり得ない現象、PE能力者の中でも暴走から生き残った人間は少なく、大抵がその時のことに口を堅くする。それほどまでに衝撃的な体験をしたシルヴィアと、間近で立ち会ったパイモンとでは同じ言葉が持つ可変的な重圧が違った。

 

 必然的にパトラの表情が険しくなる。表情を硬くしたままパトラがドクターに問いかける。

 

「ねえ、その後アイツ……ジョーカーはどうなったの?」

 

 話を進めるため、今まで口にすることがなかったジョーカーの名前をシルヴィアが口にする。心なしか先ほどよりも表情は険しくなる。

 

「そのあと? ああ、特務のお仲間がすぐに駆けつけたよ。確かソニックと呼ばれているヒーローだ、移動系のPE能力を持つ特務の中でもサポートに回ることが多かったはずだ」

「ソニック……あの男だよね」

「私は直接戦ったことなかったけど、パイモンは戦ったのよね」

 

 パイモンが頷く。シルヴィア自身はそのときジョーカーと戦っていたため、ソニックと呼ばれるヒーローと向き合った時間は殆どなかった。だがパイモンと合流したときはそれなりの力を持っていると予測できていた。

 

「彼ねー、名前通りに早かったよ。面倒だったから吹き飛ばしてやったよ」

「彼は特務でのヒーロー歴も長い。長時間の戦闘はおすすめできないね。特に君の場合は」

 

 ドクターの視線がパイモンに向く。言葉の意味を察したパイモンは少し苦い表情を浮かべる。

 

「君の力はピーキーだ。それにPE能力の性質もバレれば簡単に対応できてしまう。だから――」

「分かってる!」

 

 ドクターの言葉を遮るようにしてパイモンが吠える。ジョーカーたちと相対したときとも、シルヴィアと一緒にいるときのような明るさでもない。強く何かを拒絶する意志が、パイモンから発せられていた。

 

「おっと、これは失礼。済まないね、君に対してとやかく言うつもりはない。あくまであの薬の実験台、若しくは赤鞭同様ビジネスパートナーでいたいからね」

「分かってるわよ。確かにあの薬の効果は凄かった。でも、それでもアイツには勝てなかったわ」

 

 シルヴィアは並べられている薬の入った瓶の一つを見る。そこにはジョーカーたちとの戦闘時に服用し、それでも勝てず、懸念されていた副作用すらもいとわずに使用しようとした薬が詰まっている。

 

「今回。暴走の影響もあるけど、君がこれほどまでに長く意識を回復しなかった理由はこいつのせいでもある。今後の経過も含めて暫くは此処にいると良い。そのほうがお互いのためだと私は思うね」

「僕もそれには賛成かな。ドクターのその言葉の裏に何があるかなんてどうでもいいけど、シルヴィアに何かあったときに対応できるのはドクターだけだから」

 

 少し気分を取り戻したパイモンが、それでもまだ戻り切らない声の高さで同意する。シルヴィア達が服用した薬、一種のPE増強薬を作ったのはドクターの元であれば、未だハッキリとしない副作用についても対応ができると判断したからだ。

 シルヴィアも大切な家族にそこまで心配させるわけにもいかず、デメリットらしい事もないためパイモンと同じくドクターの元に暫く身を寄せることに同意する。

 

「今は赤鞭も傷を癒している所だし、私自身あと一月ほどは大人しくしているつもりさ。だから不確定な出来事でもない限り、暫くは安静にしていられると思うよ」

「ありがとう。助かったわ」

「僕からもお礼を言わせて」

 

 確かにドクターの目的はシルヴィア達を気遣ったものではないが、それでも二人にとっては万全の状態でもないシルヴィアと二人でいるよりも、アンタッチャブルに数えられるドクターの元に居られることはメリットしかなかった。

 

 二人の言葉に、ドクターは手を力なく振るう。

 

「あー……よしてくれ、私の目的は依然この薬を万全なものにすること。君たちを気遣っているわけじゃないんだ」

 

 ドクターの言葉に、二人は先ほどまで浮かべる事の無かった笑みを浮かべる。

 

「ええ、それでも……感謝しているの」

「そうだね、ここはあそこに似てるけど。こっちの方が断然居心地良いしねー」

 

 例えPE能力者だとしてもパトラやドクターと違い、名前にも力を持たない二人にとって裏の世界は危険な所に変わりはなかった。

 パイモンとシルヴィアの邪気の感じさせない空気に、ドクターは目を細める。小さく溜息を吐く。

 

「分かったから、それなら早く元気になってくれ。君たちに試してもらいたいモノはまだまだあるんだ」

 

 パイモンがドクターの言葉に懐疑的な視線を向ける。

 

「ええー、それって安全なんだよねえ? やだからね、飲んだら体がブクブクに膨れ上がったりとかしたくないもん!」

「大丈夫よ。私が作るのだから、何だったらお望みの所だけ膨らませたりだってできるのよ?」

 

 ドクターがパイモンとシルヴィアのある部位を見比べるように視線を這わす。その視線にすぐさまシルヴィアは両手で胸を庇う。パイモンは自身の胸に手を当て、となりで庇う仕草をするシルヴィアに視線を向ける。

 

 パイモンから向けられる羨望に近い視線に、シルヴィアが気まずそうに口を開く。

 

「な、なによ……」

「べっつにぃ?」

「あっはっはっは! 君たちはやっぱり仲がいいね」

 

 ドクターが珍しく声を上げて笑う様子に、二人は呆気にとられた。二人にとってドクターという存在は、どれだけプラスに見ても最後には油断できない、隙を見せることが躊躇われるのが最後に残る。

 アルコールと薬品の匂いを漂わせるアンタッチャブルは、そんな二人の様子に再度目を細めると、部屋を出ていこうとする。

 

「ま、先も言った通り、君たちには試してもらいたいものが多いからね。気晴らしに散歩でもしてきたらどうだい? 流石にPE能力者といえども、1月以上寝たきりだと身体能力意外にも不調が起きるからね」

「そうね、リハビリじゃないけど。少しは外に出てみるわ」

「あ、僕もいくー。久しぶりにお買い物しようよー」

「その前に服よね、何時までも患者みたいな服は嫌だわ」

「僕も新しい服欲しい。ねえ、この前みたいにシルヴィアが選んでよ!」

 

 PE能力者と言えど人間、幾ら裏の世界に生きる敵と言えどうら若き乙女。事情を知らなければ若い女性の楽しそうな会話を後に、ドクターは部屋を出ていく。

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