【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様)   作:とがの丸夫

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日間ランキング1位……マジですか……
ちょっと本格的に頑張ろうと思います。

お気に入り登録、高評価、感想、そして無数に広がる誤字脱字のご報告。
誠にありがとうございます。


今回は長めに書きました!


白髪な大剣担ぐ美女は、触られたい編5

 非PE能力者が、ネットの掲示板などでPE能力者に付いて愚痴っているのを、よく見かける。

 内容は多様だが、幾つかにまとめれば。

 

 派手な能力があって羨ましい。

 人生勝ち組。

 不平等。

 

 とかが殆どだ。

 

 だがしかし、PE能力者から言わせれば皆眉を顰める。

 

 

 勘違いされがちだが、PE能力者は能力の発現からすぐに、自身のPE能力を手足のように自由に扱うなんてことは出来ない。

 前に、感情コントロールの訓練の話をしたと思うが、PE機関の訓練生が一番初めに行うのがこれだ。

 

 そう、戦う方法や、能力の訓練などよりも優先して行われるのが、感情コントロールの訓練。

 つまり何よりも感情というのがPE能力者にとって、一番鍛えなければいけない分野になる。

 

 

 PE能力に目覚めた者のうち、何人かが死亡する。

 誰かに殺されるとかではない、発現した自分のPE能力によって自死するのだ。

 

 発現当初のPE能力は、もちろん個人差はあるが。

 稀に暴走列車のごとく、リミッターが外れた状態で発現する人間がいる。

 そして、列車の運転方法を知らないただの人間が、暴走した列車を止めることなんてできないのと同じで。

 大抵の人がそこで最も多く死んでいく。

 

 

 そうなる前に保護するのも、毎年のPE検査を行う理由の一つだったりする。

 

 

 そして、発現した当初のPE能力は総じて扱いづらい。

 PE値が高ければ、能力の強さも上がるが、その分制御も難しくなる。

 

 俺が人一倍感情コントロールの訓練を酸っぱく行っているのも、常人を遥かに超える自分のPE能力に飲まれないようにするためだ。

 感情のコントロールが不安定になった状態で、PE能力を無理やり行使しようとすると、PE能力の暴走が起きる。

 

 

 PE能力の暴走。

 

 シルヴィアのように、常人では到底持ち上げることすら不可能な大剣を、自由に振り回せる程の力を与え。

 車を嘘のように吹き飛ばし。

 建物をスナックのように破壊する力だ。

 

 

 そんな爆弾並みの力が、人の制御を失い暴走する意味が、非PE能力者に理解できるだろうか。

 自分の扱う力が、何時自分もろとも周囲を巻き込んで、無差別に破壊する可能性を秘めていることの意味を。

 

 本当の意味で理解できるだろうか。

 

 

 だからこそ、ヒーローになる人間は、どれだけ強かろうが感情のコントロール1つでふるい落とされる。

 

 

 

 

 俺は改めて、目の前でPE能力の暴走を起こしているシルヴィアを見る。

 PE能力が暴走した時の被害は、その暴走を起こしたPE能力者によってまちまちだが、総じて言えることがある。

 

 

 それは何もしなければ街に看過できない程の被害を及ぼすということだ。

 

 俺はまがりなりにもヒーローだ、街を壊させるなんてことを見過ごすはずがない。

 ……しかし、どう対処すればいいんだろうか。

 

 

 

「よう、俺が散歩行ってる間になにが起きたんだ?」

 

 暴走を起こしているシルヴィアを視界に収めながら、どう対処しようか考えていると。

 パイモンに吹き飛ばされたはずのソニックさんが、横に立って現状についての説明を求めてきた。

 

 

「パイモン、並びにシルヴィアと交戦。一時的にシルヴィアを拘束しましたが、髪に触れた瞬間にPE能力を暴走させました」

「髪一つで暴走とか、全く敵ってのは本当に身勝手で好かねえな」

 

 ため息をつくソニックさん。

 

 

「すみません。PE能力の暴走を止められませんでした」

「お前は悪くねえよ、俺もパイモンに吹き飛ばされちまったしな。ま、反省会はまた後だ、今はこいつをどうにかするぞ」

「はい!」

 

 

 暴走を目の前に、俺とソニックさんは事態を解決するために行動を開始した。

 

 

 

 

「パイモン、お前も手を貸せ。このままだと最悪シルヴィアを処理しないといけない、だがお前が手を貸すならシルヴィアの暴走を止めることができる」

「……ち、仕方ないな。僕もシルヴィアにはまだ死んでほしくないしね」

 

 暴走するシルヴィアを目の前に、呆然としていたパイモンに協力を申し出る。

 一瞬だけ考える仕草を見せるが、すぐにパイモンは協力を受け入れてくれた。

 

「でもいいの? ヒーローが敵を助けようとしたり、ましてや協力を願い出るなんてさ」

「特務は少々特殊でな、俺達が持っている権限は他のヒーローよりも多い。事態の収拾のためなら、それぐらい問題ないんだよ」

 

 

 特務の性質上、現場での裁量が重視される。

 特務が相手をする敵は、一歩間違えば周囲の人間に被害を及ぼす奴もいる。

 拘束なんて甘いことが出来ない敵もいれば、PE能力が日本にとって有力と判断される敵もいる。

 

 要は敵のスカウトも、特務の権限として俺達は持っているのだ。

 

 その延長線上に、一時的な敵との協力も大っぴらには言えないが、認められている。

 

 

 乱雑に言えば、成果を出せば大抵のことが許される。

 

 

「私が今まで会ったどのヒーローよりも、君達はヒーローらしくないね」

「バカな敵に教えてやろう。ヒーローに求められるのは姿勢じゃない、結果だ」

「話は後でもいいだろ。俺達がいまするべきは目の前で馬鹿してる敵を、一刻も早く助けることだ」

 

 俺達がこうして話をしている間にも、シルヴィアの暴走は加速的にその脅威を周囲に振り撒いている。

 荒れ狂うPEの波は無差別に周囲の環境を破壊していく、俺達が今立っている場所も、シルヴィアに近い場所に位置している。

 

 このまま行動を起こさなければ、もはやシルヴィアに近づく事すら難しくなる。

 

 

 そして、それよりも問題なのがシルヴィアの体だ。

 PEの暴走は能力者本人の体の事なんてお構いなしだ、今こうして時間を無為に浪費している間にも、シルヴィアの体は内側から徐々に破壊されている。

 

 早急にどうにかしなければ、シルヴィアは自滅する。

 

 

「ソニックさん、どう対処すれば?」

「PE能力者の暴走を止める方法は、手段を選ばなければ幾つかある。中でも代表的で最後の手段が対象の始末だが、今回はまだその段階じゃなくて助かる」

「じゃあ、シルヴィアは助けられるんだね?」

 

 敵といえど身内に対する情はある。

 特に裏の人間であればこそ、信用できる人間の少なさから、仲間意識を強く持つことで互いの身を守る。

 

 PE能力者の敵が少数での組織を好むのも、こういった理由が大きい。

 

 

 不安そうなパイモンに、ソニックさんは優しい声で『大丈夫だ』と答える。

 

 

「暴走を止めて、なおかつシルヴィア自身も助ける。この面子で出来ることは少ない、一度しか説明しないから聞き逃すな」

 

 ソニックさんの真剣な声に、俺とパイモンは静かに頷き、ソニックさんからの指示に耳を傾けた。

 

 

 ☆

 

 

「覚悟はいいな?」

「勿論です、ソニックさん」

「覚悟なんて、昔から僕はとっくにしてるさ」

「よし! じゃあさっさと行動を開始するぞ!」

「「応!」」

 

 ソニックさんから説明を受けた俺達は、掛け声に反応すると同時に行動を開始する。

 

 

「ごめんねシルヴィア、当たったらちょっと痛いかもしれないけど我慢だよ!!」

 

 最初に動いたのはパイモンだ。

 パイモンは俺に向けてはなったものと同じ、PE能力によるエネルギー弾を、数えるのも面倒になるほどに連射する。

 

 俺に向けたように、単発でない分威力は落ちてしまうが、今回に関してはそれでいい。

 目的はダメージを与えることじゃないからだ。

 

 

「あああああああああ!」

 

 威力はないとはいえ無数に迫ってくる攻撃に、シルヴィアは周囲を破壊していたPE能力の一部を、防御に回す。

 

 

(ソニックさんの言ってた通りか……)

 

 暴走した状態で、コントロールの効いていない破壊するだけのPEが、どうして防御なんて行動に移れるのか。

 それは生き物の防衛本能によるものだ。

 

 暴走し、本人は無意識だったとしても、生物の本能として外部からの攻撃に無意識下でも防衛本能が動く。

 

 シルヴィアの暴走している姿を見て、ソニックさんの言っていた言葉に半信半疑だったが、先のシルヴィアの反応を見て、その言葉が正しかったと胸を撫でおろす。

 

 

 そして幸いにも、威力よりも数を優先させたパイモンの攻撃は、シルヴィアに届くことは無く。

 真正面から打ち消されるか、弾かれて明後日の方向に飛んで行ってしまうかだ。

 

 

「おいパイモン! 真っすぐシルヴィアに向けて攻撃するんだ! 弾かれる数が多いと俺が相殺しきれない!」

「わ、分かってる!」

 

 シルヴィアによって弾かれたパイモンの攻撃を、高速で移動し続けているソニックさんが打ち消す。

 例え威力が低いと言っても、それは俺達基準だ。

 

 だからもしも弾かれたパイモンの攻撃が、間違って周囲の建造物に飛んで行ってしまえば、待ってるのは目を覆いたくなるほどの二次被害だ。

 

 そうさせないため、機動力に長けているソニックさんが絶えず、移動を繰り返して弾かれたエネルギー弾の対処を行う。

 

 

 絶えず行われる執拗な攻撃に、暴走しているシルヴィアの防御反応がどんどん強くなっていく。

 同時に、周囲に渦巻いていたPEの波が少しばかりだが、弱くなるのが見て取れた。

 

 

 不規則に荒れ狂っていた暴走の波に、防御という無意識下の行動により、本来であれば生まれるはずの無かった規則性が出来上がっていく。

 しかし、現れた規則性に指向性はなく、常人が見れば当初と変わらない暴走に見えるだろう。

 

 

 俺の仕事はここからだ。

 荒れ狂う中に微かにできた規則の中から、僅かな隙間を探す。

 

 考える必要はなく、俺の直感が“行け”と指示を出すまでじっとこらえる。

 

 いつの間にか視界は狭くなっていき、景色が色あせていく。

 そうして、目的を果たすために必要な情報のみを残して、それ以外の情報を次々と排除していく。

 

 

「ちょ、ちょっとジョーカー君!? ぼ、僕のPEがもうそろそろ尽きちゃう!」

 

 どれくらい時間が経ったのか分からないほど集中していた俺に、パイモンの声が聞こえたのかは分からない。

 だが、残された時間が少ないことだけはすぐにわかった。

 

 残された時間は、パイモンの力が尽きるという意味でない。

 シルヴィアが暴走に耐えられず、自壊してしまうまでの時間が、もう残されてないということだ。

 

 

「ふっぐぅ……! も、もう……!」

 

 苦しそうな声だけでも、顔の見えないはずのパイモンが、苦悶の表情を浮かべていることが分かるほどになったときだった。

 

 

 “行け”

 PE能力者としての俺がそう言って、自身が待ち望んでいた言葉を告げた。

 

 

 俺が溜めていた力を解き放ち、体を暴走の波の隙間に滑り込ませるようにして、シルヴィアに接近したのと。

 今まで続けていた無理な攻撃に耐えられず、パイモンが膝から崩れ落ちたのは、ほぼ同時だった。

 

 

「ッグ……!!」

 

 それから数秒もしないうちに、シルヴィアからくぐもった声が聞こえ。

 あれほど荒れ狂っていた力の波動が、ピタリと止まる。

 

 俺がシルヴィアの腹部に放った拳を引き抜くと、支えを失ったようにしてシルヴィアの体が崩れ落ちる。

 

 

「髪、勝手に触って悪かったな……」

 

 

 暴走する直前、シルヴィアの叫んでいた言葉を思い出す。

 彼女にとって、自身の雪のように白い髪がどういう意味を持っていたのか分からない。

 

 だが、叫んだときのシルヴィアの表情は、何かに怯えているようにも見えた俺は、意識を失っている状態のシルヴィアに、一方的な謝罪をする。

 

 

 

 

「おっし! よくやったぞジョーカー! 流石期待のエースだ!」

「いえ、ソニックさんがこの作戦を考えてくれなかったら、この結果は生まれませんでしたよ」

 

 神妙な気持ちになりかけていた俺だったが、ソニックさんの声に意識を切り替える。

 さっきまで無規則に弾かれていたパイモンの攻撃を、高速移動と合わせて相殺し続けていたソニックさんが。

 まるで疲れを感じさせない軽さで、俺の近くに来る。

 

 だが戦闘服には細かな傷が目立ち、上手く相殺出来なかった攻撃を、自身の体を使って無理やり受け止めた様子が見て取れた。

 

 

 ソニックさんがあの時、俺とパイモンに説明してくれた作戦は至極簡単なものだった。

 その代わり、実行するには現実的とは言いづらいものだったが。

 

 

 

 ソニックさんが伝えてくれた作戦はこうだ。

 

 最終目標は、メンバーの中で攻撃力に長けている俺が、シルヴィアに接近して暴走している状態の意識を刈り取り、暴走を止めること。

 そこで問題なのが、シルヴィアの暴走によって起こされた、自分を中心とした暴走の波動だ。

 無策に突っ込み、能力によるごり押しは出来ない。

 

 正確にはできるが、それに対抗しようとしたシルヴィアが、自身の体の事を考えずに暴走を加速させてしまう可能性が高かったから、力によるごり押しは断念した。

 

 そこで考えたのが、シルヴィアに隙を無理やり作るというものだった。

 

 

 まず始めに、パイモンが得意とする遠距離攻撃で、威力は度外視の数を中心として、シルヴィアに攻撃を継続的に行わせる。

 そして、説明した通り、暴走状態での防御反応によって、無秩序だった暴走の波に少しの規則性を持たせる。

 

 威力がない分、シルヴィアから見た時の脅威度は低いだろう。

 しかし攻撃は攻撃だ、しかも威力はなくとも無数に放たれる攻撃は、思考力を共わない生物からすれば対処せざるを得ない。

 

 二次被害を避けるため、機動性に優れているソニックさんが全体的なカバーに動く。

 

 

 そうしてようやく生み出された隙を、俺がつかみ取る。

 

 

 

 という、話だけ聞けば至って簡単そうで、実行しようとしたときの難度が滅茶苦茶高い作戦が出来上がった。

 

 

 自分で言うのもあれが、常人では到底不可能だ。

 プロと呼ばれるヒーローや、俺達のような特務といった常人以上の力を持つ人間が、協力して初めて成功する作戦だ。

 

 

「謙遜するんじゃねえよ、最後をきっちり決めたのはジョーカー。お前だ」

「ははは、そう言われると頑張った甲斐がありましたよ。でも、ソニックさんがカバーしてくれたから、俺が集中できたのは紛れもない事実ですよ。ありがとうございます」

「ハハ! そう言ってくれると、俺も先輩の矜持が保てたってもんだよ」

「あと、パイモンも頑張ってくれましたからね……あれ?」

 

 互いの健闘を称え、事態の収拾のため一時的とは言え協力を受け入れてくれたパイモンに、話を振るためパイモンを探すが。

 当の本人の姿はなく、周囲を見回すがパイモンの姿が見えなかった。

 

 

「どういうことだ……」

「お、おい! シルヴィアも居なくなってるぞ、ジョーカー!」

「はあ!?」

 

 姿を消したのはパイモンだけではなかった、そこで倒れているはずのシルヴィアも、パイモン同様に忽然と姿を消していた。

 周囲を見回すがパイモン同様、シルヴィアの姿を見つけることはできなかった。

 

 

「してやられたな……」

「まさか移動系の能力者がいたとは、それに気が緩んでいたとはいえ、俺達に気づかれずに二人を回収するなんて、中々やりますね」

 

 この状況で考えられる最も高い可能性は、パイモン達の仲間が最低でも一人、近くに潜伏していたといことだ。

 瞬間移動や、テレポートといったPE能力も稀ではあるが確認されているし、現状から考えて確度は高いだろう。

 

 

「1度ならず2度も逃がしてしまいました……」

「仕方ねえさ、今回は俺も一緒にいたんだ。特務長に怒られるなら一緒だから、そんな落ち込むんじゃねえよ」

「……ありがとうございます」

 

 消えた敵を追うにも、どこに向かって移動したのかもサッパリ分からない。

 結果、俺は何とも締まりの悪い結果を引っ提げて、自分の巣に戻るのだった。

小説の描写について、今後の方針アンケートになります。

  • 今のままでええんやで
  • もう少し簡単にしてスピード感が欲しい
  • 描写をもっと分かりやすく具体的にして
  • 駄文が多いぞコラ
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