【Web版】敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について(なお、転生後の世界は若干シリアスな模様) 作:とがの丸夫
シルヴィアとパイモンを取り逃がした俺とソニックさんは、自分たちの所属する特務機関の、本部に帰還した。
そして、休憩をする暇もなく任務の結果を報告するために、本部のとある一室の前に立っていた。
「はぁ、毎回この部屋に入るときは緊張するよ。俺」
「そうなんですか? でもソニックさん特務長と普通に話してません?」
俺達の目の前にある両開きの扉の先は、特務機関の実質的なトップである。特務長がいる部屋だ。
扉を開ける前から感じる異様なプレッシャーは、この部屋にいる特務長という上司に、今回の任務の結果を報告することに起因するものではない。
PE能力者の中でも、猛者ばかりが集う特務機関。
良くも悪くも、PE能力に秀でている者達は皆アクが強い。
そんな個性の集団を指揮する人間が、普通の非PE能力者なわけがなく。俺達が今感じているプレッシャーは、錯覚でも気のせいでもない。
この中にいる特務長が発するPEによるものだ。
俺は自分のことを圧倒的な強者と断言できる、それだけの力と実績を俺は持っているからだ。
だが、そんな俺でもこの人には勝てないだろうと、どこか理解させられてしまうのだ。
自分の命を掛け、あらゆる手段をもってしてなお、“足りない”と感じてしまう。
それが俺達特務に所属するヒーローのトップを務める、特務長という人間だ。
隣にいるソニックさんは、そんな特務長が苦手なようで、顔には皺を寄せてこれ見よがしに溜息をついている。
「普通なんてもんじゃねえよ、毎回辟易してるんだよ。つうか俺よりもお前の方が特務長と上手くやれているだろ?」
「別にそんなことないですよ、俺だって毎回緊張しているんですから。報告は先輩であるソニックさんにお願いしますよ」
別に特務長が嫌いでも、苦手というわけでもない。
ただあの人から感じ取れる力に、体がすくんでしまうだけだ。
しかし、そんな俺の発言が気に入らなかったのか、ソニックさんは俺を睨む。
「ジョーカーよ、お前がここに来てから1年と少しが経ったな」
「そうですね」
「そして名ばかりとは言え、部隊を率いる人間でもある。つまり、俺と同格というわけだ」
「はぁ、まあ役職的には一緒ですけど……」
この人は突然何を言っているのだろうか。
自分たちが今いる場所は、機嫌を損ねたら何をさせられるか分からないような、要注意人物の巣の目の前だぞ。
今話している内容だって、聞かれていると思ったほうがいい。
だからこそ、俺はここでの発言に気を付けているのだが、今のソニックさんを見ていると、ついぽろっと言ってしまいそうで怖いぞ。
「先輩後輩の関係は大事だ、だがな? 俺達は特務のヒーローだ、下される任務の難度、そして重要度は他の連中には任せられないものが多い」
「はい、一つ失敗すれば。それこそ数千、下手をすれば万単位の民間人に被害が出てしまう任務もありました」
そんな任務、実際に経験した数は1つか2つくらいだった気がする。
まあ、それだけ大きな危険を伴う場合。特務のヒーローは勿論、特務以外のヒーローや自衛隊などとの協力体制で取り組む。
「そんな時だ、お前は自分の判断で任務を遂行しなければならない。一番重要なタイミングで、一番重要な選択を迫られるのは、部隊長である俺達だ」
「……はい」
「そんな人間が、自分より長く務めてただけの同格相手に、さん付けしてるんじゃねえ……それじゃあ、お前に部下ができた時に示しが付かねえ」
「いや、でも人としての礼儀が……」
「これはお前だけじゃなく、部下のためでもあるんだ」
ソニックさんの言葉に、常識的な思考で俺は返そうとするが。
そうするよりも早く、ソニックさんは言葉を続ける。
「部下はな、いつも上を見てるもんだ。この人に付いて行って大丈夫か。この人は自分を扱うに足る人間なのかってな」
「……あ」
「ッフ、わかったか? 礼儀正しいのは重要だ、だがそれ以上に。上に立つ人間にはそれに伴う“姿勢”ってのが必要なんだよ」
ソニックさんの言葉に、俺は驚きながらも納得してしまった。
目の前の先輩も、そして特務長や他の部隊長は皆。いつも堂々としており、頼れる人と思えるような人ばかりだ。
特務長室の前で、うなだれていたソニックさんでさえ。作戦時や訓練、そういった時のこの人の頼もしさは、今日だって目の当たりにしたばかりだ。
部隊長に求められるのは、強さは当然として、そういった人間としての器も見られると言うこと。
要は舐められないということだ。
「だから俺のことをソニックさんなんて呼ぶんじゃねえ、“ソニック”って呼べ。あと敬語も要らねえ、俺達は対等な関係だからな」
「はい! あ、わ、わかった……ソニック」
「おう、改めてよろしくな。ジョーカー」
俺の言葉に満足したのか、ソニックさんはいつもの気前のいい笑顔を見せてくれる。
「良し、じゃあジョーカー。お前が更に部隊長として成長するために、まずは特務長に正々堂々、胸を張って任務の報告をするんだ!」
「はい!」
ソニックさん……いや、ソニックはいい人だ。
こうして、先輩として足りていない俺に色々と教えてくれ。さらに成長する機会をくれたのだ。
先輩の、目標とするべき存在の言葉を胸に、俺は特務長室の扉を開けて、成長するための一歩を踏み出した。
☆
扉を開けて、中に入る。
扉越しでも感じ取れていた重いPEを、一歩前に出るたび強く感じる。
だが、ここで縮こまっていては、後ろで見守っている仲間に示しが付かない。
俺は大きく足を前に出し、地面を強く掴むようにして確かに前に出た。
「待っていたぞ」
特務長室に入った俺達に、声を掛けてきたのは、平均身長より少し高い背を持っている俺よりも、頭一つ分背の高いスキンヘッドの大男だった。
名前は“ミスターハンマー”。
特務の例にもれず、俺達は彼の本名を知らない。
名前と見た目から分かる通り、彼の戦闘スタイルは己の体だけを使った、超肉弾戦闘になり。ソニックさんとはまるで逆タイプの超能力者になる。
PE能力は勿論、身体強化。
だが、能力者としての彼は兵器に例えられるほどだ。
絡め手を得意とするPE能力を持つ敵なんかは、彼にとって恰好の獲物だ。
それほどまでに、シンプルな力というのは、それ故に強大になる。
そんな大男が、その見た目から想像できる低音ボイスで、素材は分からないが、高価なものだと一目で分かるテーブルと椅子がある場所に手で誘導する。
高価なテーブルと、それに見合う椅子へと誘導された俺達は、特にこれといった反応を見せることなく、黙って座る。
特務長室に入ったときは、毎回ここに座らされる事もあり、1年と少しの俺でさえ慣れてしまっている恒例の流れだ。
俺達が座ったことを確認すると、ミスターハンマーが……めんどいからこれからはハンマーと呼ぶ。
ハンマーがテーブルの上に、これまた高そうな木製の容器を4つ並べて、その全てに茶を入れていく。
……大体の人は既に察しているかもしれないが、目の前にいるハンマーは俺達が会うことを目的とした相手ではない。
俺達と同じ、特務に所属するヒーローだ。階級で言えば俺達より下になる。
では、なぜそんな彼がここにいるのかというと、それは今彼が目の前で入れているお茶に関係する。
ある日特務長が、ハンマーの入れたお茶を飲んだ。飲んだ茶の美味しさに胸を打たれた特務長による、鶴の一声によって。
彼は全てを破壊し、シンプルな力で敵を叩き潰す破壊者から。
こうして茶と、特務長当てに送られる資料の精査といった、秘書のような繊細な職に転職したのだった。
実際、彼の入れるお茶はどうしてか美味い。
「特務長、お茶を入れました」
「分かった」
茶を入れ終わったハンマーが、この特務長室の中で唯一、木ではない何かの皮を使った椅子が動き、一人の人物が姿を見せる。
「よく来た、待っていたぞ」
子供のような、まるで鈴の音のような声が、部屋に響く。
この重苦しい空気が充満する特務長室において、高く跳ねるような声色は、異質だった。
姿を見せた人物。
身長はかなり低い、まさしく子供と表現できるほどの背格好をしている。
長い金髪はサイドツインテールにしても、腰まで流れるように垂れている。
見た目も身長同様、幼い顔をしており、ツインテールと合わせて違和感のない顔立ちをしている。
特務長のみが着用を許される上着を羽織り、短いスカートからは健康的な太ももが露になっている。
言葉を尽くすのは止めよう。
俺達の目の前に現れたのは、見た目だけで言えば小さな女の子だった。
本来であれば、そんな場違いな人物に何かしらの声が上がるのだが、この場においてはそれがまかり通っている。
なぜなら。
「お~やっぱりハンマーのお茶はいつ飲んでも美味しいね」
「ありがとうございます、今日は初めての茶葉を使用してみました。“特務長”」
ハンマーのその巨漢な見た目からは想像できない綺麗な言葉遣いに、満足そうな笑みを浮かべている金髪ツインテールの少女こそが、
俺達が所属する国家PE機関特殊作戦工作公務課、通称“特務機関”のトップにして、アクの強い特務ヒーローたちを力で押さえつけることのできる唯一の人物。
特務機関最高責任者、特選任務長。名前はジョンドゥ。
今の俺がどう足掻いても勝てないと思ってしまう唯一のPE能力者、化け物だ。
やっと主人公が所属する組織の名称が出ました……(投稿日に考えました)
国家PE機関特殊作戦工作公務課
特務機関最高責任者、特選任務長
自分で書いていて思いましたが、これ覚えられないです。
しっかりメモして忘れないようにしないと。。。
頂いたご感想で気になったものがあったので早速アンケート!! 読者の皆様から見て、主人公はどう見えますか?
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まだ分からない