ウマ娘ゼロノスダービー   作:クレナイハルハ

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タイシン

 

夜、同室のウマ娘。スーパークリークが眠った後、窓から空を見上げれば沢山の星々が光り輝いていた。あの日の事を思い出し、アタシはふと窓から空を見上げる。

 

 

『いいの、チームのメンバーを置いてきて』

 

確か、あの日もこんな感じで綺麗に星が見えたっけ?

 

『たまには、こうして二人だけで星を見に来るのも良いんじゃない?』

 

そう言って微笑むアイツは、アタシと一緒にキャンプ場へと行き静かに夜空に浮かぶ星を見ていた。パッと見は優男、ウマ娘に対してはいつも真剣。ウマ娘ごとに、話し方や接し方を変えていて、アタシと一緒にいるときは、静かでただ隣にいる事が多い。

 

アイツみたいに暑苦しくないから、チームに所属して良かったと思っていた。

 

あの日までは───。

 

『ごめん、ミーティング中だけど用事思い出した。』

 

そう言ってアイツが部屋を出ていった次の日。

 

私は突如としてアイツの事を忘れていた。

 

姿も、声も、顔も、全部。

 

今までトレーナーと共にレースを走って勝っていたことが一人で出来たことになっていた。

 

全部、全部自分()()でやりとげたってアタシは笑っていた。アイツらを驚かせた、バカにしていた奴らを黙らせられた。全部、()()()と。

 

なんで……なんでアタシはッ!

 

思わずギリッと音がなる程に口では歯をくいしばり、拳を握りしめる。思い出したこの()()は、私にとって絶望と悔しさ、悲しさ、そして自身へと浮かび上がる怒りを与えた。

 

更にアタシを驚かせたのはそれより遥か昔の記憶だった。

 

あれはアタシがまだ8歳ぐらいの時だ、当時の私は周りからのイジメに耐えきれなくて、苦しくて放課後に河川敷に座り込んで泣いていた。

 

他のウマ娘より身長が小さいゆえに、発生した影口と言う名のイジメ、言葉の刃は私の心をズタズタに切り裂いていく。

 

『君、大丈夫?』

 

そんな時だった、アタシに声を掛けてくる人がいた、アタシはそいつを無視してそのまま俯く。すると隣に誰かが座った音がして、少しだけ顔を上げる。

 

その人はスーツ姿で、胸にはトレーナーバッチを付けた優しそうな顔をした男の人だった。

 

『トレー、ナー?』

 

『ッ!?君は………』

 

その人は驚いたのか、瞳を見開きすぐに元の目に戻ると私にハンカチを差し出した。

 

『えっと、涙をこれで拭いたほうがいい』

 

差し出されたハンカチに、思わず受け取ってしまいそのまま頬を伝う涙を拭う。

 

『あのさ、僕で良ければ何か話してみない?』

 

『………』

 

『一人で溜め込むよりは、少しは楽になるよ』

 

そう言うその人に私は思わず話した。身長が小さいゆえに影口を叩かれた。“アイツは走れない”、“走っても勝てない”そう言われ続けて、いつも悔しくて、アタシだって勝てるんだって証明したくて、でも勝てなくて。

 

そう言うと、その人は少し悩んだように唸ると軈て立ち上がってアタシへと微笑みながら口を開いた。

 

『実はね、僕は未来から来た君のトレーナーなんだ。ナリタタイシン』

 

その言葉に私は嘘だ、とは言えなかった。

普通に考えるならば励ますための嘘だとわかる言葉、でもその言葉に続いて出てきたアタシの名前に、驚きを隠せなかった。

 

学校の名札等は持ち歩いていないし、口にもしてない。

 

でも、この人は私の事を知っていた。

 

『大丈夫、君は誰よりも早く走れる!それこそG1レースにだって出られるし勝てるんだ!』

 

誇らしそうに、嬉しそうに。

 

『ボクは君を肯定する、君は強い!』

 

そう話すトレーナーは優しい笑みを浮かべていた。

 

嬉しかった、自分を応援してくれる人がいたと言う事が、未来のアタシがG1を走るほどのウマ娘に成長できていると言う言葉が、何より嬉しかった。

 

その次の瞬間トレーナーが吹き飛ばされた。

 

「え?」

 

あまりにも突然の出来事にそんな言葉が漏れた。たった今、目の前に現れたのは異形の姿の化け物。そいつは、ゆっくりと私や河川敷の近くにいた人達を眺める。化け物が現れると同時に、私の近くにいた沢山のウマ娘や人間達は悲鳴を上げて遠くへと逃げ出していく。

 

でも、私には何も出来なかった。

 

逃げられなかった、足が恐怖で震えて、動けなかった。

 

でも化け物はその口らしき物から牙を見せながら笑い此方へとゆっくりと歩み寄ってくる。

 

恐怖の感情が体を支配して、動くことができない。でも次の瞬間に緑色の鎧を纏った人らしき何かが怪物にドロップキックし、私から遠くへと吹き飛ばした。

 

その人は、立ち上がると即座にベルトの両側面についた何かを組み合わせると、おもちゃの剣?らしきものを作った。

 

それで戦えるのか?そう思った次の瞬間に緑色の鎧を纏った人らし何かはその剣を横凪に振るうと、剣の刃が大きく伸び、大剣のような形状へと変化した。

 

「え!?」

 

「逃げろ!タイシン!!」

 

不思議で、あり得ない光景の連続に思わず思考が停止してしまう。緑色の鎧を纏った人らしい何かから聞こえたアタシの未来のトレーナーと名乗った男の声。怪物へと剣を構え向かってく緑色の鎧を纏った人を見てから、アタシは慌ててその場所から逃げだした。

 

それは本当に昔にアタシの身に起こった不思議な出来事。

 

でも、今思い出せばあのトレーナーは記憶が消える直前に会っていたアイツだった。チームでのミーティング中に何処か慌てて教室を出ていった。あの化け物と戦っていたのも、恐らくアイツなんだろう。

 

そういえば、アイツはチームの部屋を出る瞬間に悲しそうな顔をしていた。もしかしたら、アタシがなんでアイツとの記憶を忘れていたのか知っているんじゃないのか?

 

そんな事を考えながら、欠伸をして部屋に戻る。

 

そういえば、アイツがアタシをスカウトしてたのってこの年だったっけ?

 

もし、アイツと……またトレーナーとして出会えたなら今度こそアタシは、アイツと一緒にレースに出る。そして勝って、今度こそアタシはアタシのトレーナーと共に戦って勝ったんだと、アイツらに伝えたい。

 

……なんか、らしくないこと考えたかな。

 

そう思いながら片手で頭をかきながらベッドに入る。

 

アタシやチームのウマ娘に対して真摯に付き合うし、気を使って静かでいてくれる本当に頼りになるアタシのトレーナー。

 

もし、また会えたなら今度は絶対に一緒にいる。ずっと、一生。

 

そして次の日、学園への通路を自転車で走るアイツが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を見た学園に在籍中のウマ娘達の少数が()()()はじめた。

 

 

 






気が向いたらまた書きます

ご愛読ありがとうございました。
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Re.Memoriarise

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