ウマ娘ゼロノスダービー   作:クレナイハルハ

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タンホイザ

 

公園の原っぱにてピクニックシートを広げ、座る3人の人影は楽しそうに重箱に入った料理を堪能していた。

 

「有馬記念、本当におめでとう」

 

「わぁ、お店で人気なおかずがいっぱい!ありがとうお父さん!」

 

1人のウマ娘はそれを心から幸せそうに笑いながら食べる、そしてそんな彼女を見て優しく笑う父親と母親の姿。

 

「貴方はいつも大事な時に体調を崩したりして、心配だったんだけど、有馬記念はしっかり1着で勝ったのを見ててね。本当にお母さん達は嬉しくて、思わず泣いちゃった」

 

思い出に浸りながらそう呟くお母さんは目尻に溜まった涙を拭う。

 

「チームのみんな、そしてお父さん達が応援してくれたおかげだよ」

 

そう言いながら重箱の中に並ぶ沢山の美味しそうな料理へと手を伸ばす。

 

「そうだ、今日は大事な人を連れてくるって言ってたがその人はどうした?」

 

本当に、私は学園でこのチームに入って学んでトレーナーさんの元で走れたから……あれ?

 

「そういえば、こんどトレーナーさんの所に挨拶に行こうと思ってるんだがタンホイザ。予定の会う日はあるか?」

 

────箸が止まった。

 

あれ、確かに私のチームの応援のお陰で勝てた。でも、これからも私を助けてくれると、支えてくれると伝えてくれた人は、私のチームのトレーナーさんって……誰だっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────⏰──────────

 

 

 

 

 

前は忘れてしまいました。でも、()は覚えています。この思い出を思い出してから、私はずっとトレーナーさんを待っています。だって、あの時あの人は約束してくれたから。

 

これからも私を支えてくれると、助けてくれると。

 

幼い頃の、学校でのレースを走っていたときに思い出して、私は泣きました。

 

突然の事でお父さんやお母さんはそんな私に戸惑い、心配してくれました。でも、まるで夢のような私の話を信じてくれたお父さんとお母さんは、私をトレセン学園へと送り出してくれた。

 

また、トレーナーさんと頑張って有馬記念を勝つのが今の私の目標です。

 

『新人なのに担当を持つ、かぁ………』

 

ふと、聞き覚えのある声が聞こえ廊下を歩き聞こえてきた方へと向かうとそこには、あのひとがいた。

 

首から下げた懐中時計が特徴的なスーツを着た、私のトレーナーさん。

 

『頑張らないとな、明日の選抜レース。ほかのトレーナーに負けないでウマ娘を勧誘しないと』

 

最初の目標が決まった瞬間だった、見ていて下さいトレーナーさん。

 

明日の選抜レース、トレーナーさんに教えて貰った事を頑張って実践して1位になって見せます。だから、だからまた……私と三年間を一緒に頑張りましょうね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜花ユウトside

 

 

選抜レース当日、僕はスーツを着て身嗜みをしっかりと整えてからレース場へと来ていた。

 

「あ!先輩から貰った注目のウマ娘のメモは確かポケットに……」

 

そう呟きながらポケットに手を入れると、メモ帳とメモ帳に差したボールペンを取り出すと、ポケットに入っていた何かがカタリと落ちたような音がして、足元を見る。

 

「あ……」

 

そこにあったのは、いつの間にかスーツのポケットに入っていた黒と緑の配色のカード。カードを拾い上げ、軽く眺める。

 

「そういえば、ポケットの中に入れたままだったっけ?」

 

取り敢えずポケットの中にしまってメモ帳を開く、そこにはウマ娘の名前とどのレースに出場しているのかと言う名簿が書かれており、先輩の注目と言っていたウマ娘の名前には赤い丸で囲っている。

 

「えっとナリタタイシンにマチカネタンホイザ、アドマイヤベガにマヤノトップガン……マンハッタンカフェが注目と」

 

あ、そう言えば先輩から聞いて名前を書いただけだから顔や容姿がわからない。これは放送を注意して聞かないと……。

 

「──頑張らないと」

 

そんな呟きが聞こえ、僕の隣を1人の芦毛のウマ娘が通りすぎて行く。来ているゼッケンの番号は1、縁起の良い番号だ。そんな事を思いながら彼女の後ろ姿を見る。

 

「…………」

 

何故だろうか、少し胸騒ぎというか、いやな予感というか……変な感じがする。あの子、大丈夫なのかな?彼女の歩く後ろ姿はどこか苦しそうに見えた。

 

そろそろ始まる、そう思いながらレース場全体を見回せる場所に向かいゲーとへと入っていくウマ娘達を眺める。見れば、先程の芦毛のウマ娘がいた。

 

「数多くの優秀なウマ娘を輩出してきた()()()()の秘蔵っ子か……」

 

メジロ家、その単語で思い出すのは1つしかない。優秀なウマ娘を輩出してきた名門の1つ。

 

じゃあ、あの芦毛の子はメジロだったのか。

 

「メジロマックイーン、入学前から素晴らしいステイヤーらしいし、今回も活躍するんだろうなぁ。」

 

周りからは彼女に期待する声が聞こえる、まさかそんなに凄いウマ娘だなんて思わなかったな。でも、やっぱり何処か変だな。

 

そう思いながら始まった選抜レース、僕の予感は当たった。メジロマックイーンは後方に着いたままだ。必死に走っているのが見えるが、一番前を走るアイネスフウジンに追い付けそうにない。結果アイネスフウジンが1着で、メジロマックイーンは7着であった。

 

おかしい、体調でも悪かったのだろうか?本来ならもっと早く走れる様に思える。

 

「思ったより延びなかったか……」

 

「あの一位の子良い、スカウトして来よう!」

 

周りのトレーナー達はアイネスフウジンばかりに目が行っている。見ればメジロマックイーンは悔しそうに、そして悲しそうに俯いていた。

 

その後も、選抜レースは続いた。

 

やはりか先輩の言っていたウマ娘達は全員見事に1着をとっていた。何故かみんなが沢山のトレーナーからのスカウトを断りながら、周囲をキョロキョロと()()()()()で見回していたのが気になった。

 

休憩時間となり、僕は喉が乾いたので一度、近くの自動販売機があった場所へと向かう。午後もウマ娘の選抜レースが続くが、正直メジロマックイーンって子の事が心配だ。

 

そう思いながら一番好きな微糖の缶コーヒーを購入しガコンと言う音と共に落ちてきた缶コーヒーを取り出す。

 

「よう、桜花トレーナー」

 

聞き覚えのある声に振り向くと、癖毛を後ろで一つ結びに束ねており、左側頭部を刈り上げた特徴的な髪型の男性。一度トレーナーの講習会でお世話になった沖野さんが軽く手を上げていた。

 

「沖野さん、お久しぶりです。」

 

「おう、久しぶり。ちゃんとトレーナーになれたようで何よりだ」

 

そう言いながら自販機でミルクティーの缶を購入する沖野さん。相変わらず甘いものが好きなようだな。

 

「そう言えば選抜レース、ちゃんと見に行ったよな?」

 

「まぁ、はい。流石に見に行かないのはトレーナーとしてヤバイですよ」

 

「まぁ、確かにな。ところで、スカウトしたいウマ娘はいたか?」

 

一瞬、俯く芦毛のウマ娘の姿が脳裏を過った。

 

「スカウトしたいって訳じゃ無いんですけど、心配な子がいて……」

 

その後も缶飲料を飲みながら少し雑談をした。沖野さんの担当しているチームスピカのゴールドシップと言うウマ娘がとにかくヤバイ奴だとか、そんな話を聞いていると突然として現れた芦毛のウマ娘が沖野さんを麻袋に被せて、そのまま担いで走っていった。

 

思わずポカンと口を開けて見ていた僕は取り敢えず缶コーヒーの最後の一口を飲んで午後の選抜レースを見に行った。

 

「明日にでも、メジロマックイーンの所に会いに行ってみようかな。」

 

 

 

 






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Re.Memoriarise

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