桜花ユウトside
朝、窓から眩しい太陽の光が差し込んでくる。
僕の1日の始まりは起きてからブレンドコーヒーを作って飲む事だ。
外国から取り寄せた数あるコーヒー豆の中から今日の気分で選び、手動のコーヒーミルを回してコーヒー豆を挽き、適した温かさのお湯を使いコーヒーをドリップする。
「うん、いい匂いだ」
カップを口許に運び良い匂いが風で運ばれてくるので、早速カップを傾けて一口飲む。
「美味しい、今日も頑張れそうだな」
コーヒーを一度テーブルに起き、朝食のトーストを用意して一緒に食べながらリモコンでテレビを付ける。
『本日は三冠を期待されているあのウマ娘、シンボリルドルフさんの特集です!まず、去年のホープフルの映像からどうぞ!』
シンボリルドルフ、確かトレセンの生徒会長だったっけ?凄いなぁ、彼女をここまで育てるなんてきっと凄く実力のあるトレーナーなんだろうなぁ。
トーストを齧りながら、テレビに移った映像を眺める。画面端にはこの後、本人へのインタビューが放送されると書いてある。
シンボリルドルフ、凄いウマ娘だ。レースも生徒会も、こうしてテレビのインタビューもこなす事の出来るウマ娘。
何故だろう、テレビを見ていると何故か心配になる。彼女は休めているのだろうか?現状を纏めると学生なのだから学業は勿論の事、レースや練習をこなし、テレビに出演し、更には生徒会の仕事もしている。
本当に休めているのだろうか?映像で見た限りだと隈があるようには見えなかったし、体調も悪い訳でも無さそうなんだけど、何故か自分の勘が、彼女は疲れているのだと告げている。
もし学園で会うことがあったら、さりげなく聞いてみようかな?
そう思いながらトーストを食べきり、カップに残ったコーヒーを飲み干す。
「ふぅ、ごちそうさま。さて、いくか」
架けておいたスーツに着替えて荷物を持って家を出て、鍵を閉めてから庭に停めている自転車を押して通路に出る。そして自転車に乗り、今日もトレセン学園へと向かう。それにしてもメジロマックイーンが他のトレーナーにスカウトされてないと良いんだけど……。
自転車を漕ぎ、暫くすると学園の門が見えた。近くにあるトレーナー寮やウマ娘の寮から、沢山のウマ娘が歩いて学園へと向かっている。学園の入り口ではたづなさんがウマ娘やトレーナーに挨拶をしているのが見えた。ある程度近付いたら自転車から降りて、自転車を押して門へと歩く。
「おはようございます、たづなさん」
「おはようございます、桜花トレーナーさん」
笑顔で挨拶をすると、たづなさんも笑顔で挨拶を返してきた。やっぱり挨拶が大事って本当だね、本の通りだ。
気持ちの良い挨拶が出来て少し気分が上がりつつも、自転車を押して学園内に入る。自転車で学園に通うトレーナーは珍しいのか、若干視線を感じる。
やっぱりトレーナーってトレーナー寮に入る人が多いのかな?でも折角両親が残してくれた家なんだし、使わない訳にはいかないから通うことを選んだけど……。
「あの、桜花トレーナー……さん」
呼ばれた方へと振り替えると、そこには綺麗な腰まで伸びた黒髪に長い前髪の不思議な雰囲気を纏ったウマ娘が立っていた。
「えっと、なんで僕の名前……」
「その……新しくいらっしゃるトレーナーの名簿に乗っていたので、話してみ──」
次の瞬間、パァン!と言う音と共に頬に鋭い痛みを感じた。
「痛ッ、え?何!?」
恐らく頬を打たれたのだろう、だけど誰に?さっきまで話していた彼女は手を上にあげるような動作はしてなかったし、それ程近くに外の人はいないはず……。
「大丈夫ですか!?ごめんなさい、私の
「お友達………うぅ、ヒリヒリする。腫れてる?痕とかついてない?」
「はい………付いてます。ここにきれいな手形が」
そういって僕の左頬を指差す彼女に驚きながらウマホをカメラモードにして確認すると、確かに綺麗な手形がついていた。
「これ、冷やせば消えるかな……」
いい朝だったんだけどな。
そんな事を思いながら近くの水道へ向かい濡らしたハンカチで頬を冷やしつつ近くのベンチに座る。
「いつつ……なんか冷やす所まで付き合ってもらってごめんね?」
「いえ、元はと言えば私のせいみたいなものですから」
隣に座る黒髪のウマ娘は申し訳なさそうにそう返事を返してきた。
「そんな事はないと思うけど……」
学校のホームルームやトレーナーの朝の集会にまではまだまだ時間に余裕がある、それまでには消えてたら良いんだけど。
「あの、桜花トレーナーはもう担当を?」
「アハハ、まだなんだ……」
一応、この後メジロマックイーンさんの所にスカウト行こうと思ってるけど……それを口に出したらなんか失礼な気がするし、黙っておこう。それに、まだ担当できるか分からないし……。
「自己紹介が遅れました、私はマンハッタンカフェといいます」
「えっと、新人トレーナーの桜花ユウトです。よろしくお願いします」
「クス……私は
「あ、あれ?」
クスクスと笑うマンハッタンカフェさんに首をかしげる。
「取り敢えず、そろそろ校舎に行った方がいいんじゃない?」
「それじゃあ、また…」
そういって歩き去っていくマンハッタンカフェさんに手を振り立ち上がる。
だいぶ痛みも引いたし大丈夫だろう、問題は頬を打たれた時の音が思ったより大きかったので、近くにいたウマ娘やトレーナーに変な誤解をされてないと良いんだけど。
「しゃッ、頑張るしかないか!」
そう思いながら駐輪場へと自転車を押して向かうのだった。
マンハッタンカフェside
『へぇ、君もコーヒー好きなの?』
それが、貴方と……ユウトとの初めて交わした会話でした。
コーヒー好き同士で話が会ったのもあり、私は貴方の担当ウマ娘になった。練習の後、あなたが淹れてくれるコーヒーが楽しみで、いつも頑張ってトレーニングしていました。
貴方の淹れてくれるコーヒーは、私が普段淹れるインスタントコーヒーより何故か美味しくて、レースのトレーニングと平行してコーヒーの入れ方も学ぶようになりました。
教えて貰ったことはノートにメモするように成りました。
『あれ、そのノートは?』
『トレーナーさんから教わったコーヒーの淹れ方をメモしてるノートです。折角教わるんですから、忘れないように』
『そっか。偉いなぁカフェは。そうだなぁ、コーヒーを勉強したカフェのノートだから
『何ですか、それ?』
『ノートの名前だよ!折角タイトルを描くところがあるんだし、なんか書かないともったいないと思って!』
『何ですかそれ、クスクス──』
その後もCafe Noteのページは増えていった。コーヒー豆の選び方や挽きかた、ドリップに適したお湯の温度やオススメのブレンド。私の好みの入れ方やトレーナーの好きなコーヒーの淹れ方を全て教えて貰いました。
コーヒーの淹れ方を教えて貰いながらもレースを走り三年間を過ごしたある日、私にとって最悪の日が訪れた。
『あっ』
私はコーヒーを作るのに熱中し、作業するなか机からCafe Noteが押し出され地面へと落ちていく事に気付かなかった。
──パサリ──
落とした
ページを捲っていくと、私好みのコーヒーのレシピの他にも何故かタキオンさん用の甘いコーヒーの淹れ方や理事長代理の樫本さん、ハッピーミークのトレーナーさん好みのレシピが並び最後のページを開くと、そこには
何故かこのページだけ、沢山の事が事がメモされていてる。それにしてもこのユウトトレーナーって──。
『だれ?』
──────────⏰──────────
それにしても、何故お友達はユウトトレーナーにあんな事を?そう思いながら淹れたコーヒーを口に含む。
“勝手に忘れたアイツが悪い”?いや、そんな事は───。
「えぇ、またコーヒーかいカフェ。カフェはコーヒーが好きだねぇ」
ふと、肩に何かが乗った感覚がして横目で見ればアグネスタキオンさんが私の肩に顎を乗せていた。
実験が一段落したのか、それとも失敗したのか実験器具が止まっているように見える。
「はい、好きですよ。
そういって用意してしまったもう一杯のコーヒーの入ったマグカップをタキオンさんへと向ける。
「遠慮しておくよ、私はコーヒーより紅茶派だからねぇ」
そういって手を振りながらタキオンさんは実験器具の元へと戻っていく。
余ってしまったもう一杯のコーヒーはどうしましょう?
そう思ったとき、今朝一方的だが再開したあの人の顔が脳に浮かび上がる。
「届けましょうか。フフ、久しぶりに飲んで貰えますね」
今の私は、貴方より美味しいコーヒー淹れる事が出来ますか?
ご愛読ありがとうございます
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