ウマ娘ゼロノスダービー   作:クレナイハルハ

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デジタル

 

「ゆっ!猶予!待って欲しい!」

 

一人の青年がトレセン学園の通路を歩いている。だが、青年の胸には先ほどまであったトレーナーである事を示すバッチはない。

 

青年の元へと慌てた様子で走ってきたのはこのトレセン学園の理事長である秋川やよい、そしてその秘書である駿川たづな。

 

「待ってくださいトレーナーさん!貴方は新人なのにチームで沢山のウマ娘を、有マに勝ったウマ娘と育て上げた実績があるのに、何故!」

 

「疑問!何故トレーナーを辞める?!」

 

慌てた様子でそう告げる彼女達は、最初こそ青年がトレーナーを止めると言う言葉に驚きながらも、了承した。

 

問題は、彼女達が青年の事を()()()()()()事だ。

 

新人であるにも関わらずチームを設立し、数々のウマ娘を並行で育成。

 

青年の育てたウマ娘はG1レースを勝利した外に、二人のウマ娘が有マ記念で一位を飾っている。後者に至ってはダート適正かつ、短距離の走りを得意とするウマ娘を、だ。

 

有馬記念は長距離レース、短距離レースが適正距離のウマ娘にとって夢のまた夢、そんな舞台を勝利したのだ。

 

本気でウマ娘の夢を叶える手助けをし、全力でトレーニングを支え、勝たせる事が出来る。

 

そんな理想を体現したかのようなトレーナーが、新人としてこの学園で頑張って来ていた。それを、()()()()()()()()()()()()二人は慌てて青年を追い掛けて来たのだ。

 

「もう、チームのウマ娘も居なくなりましたから」

 

その言葉を聞き、駿川たづなは慌てて持っていた資料を見ると瞳を見開き驚いた様子で何度も資料に目を通すとありえないと言った表情で口を開いた。

 

「た、確かに……何故かは分かりませんが彼のチームに在籍していたウマ娘達は何故か脱退してフリーになっています」

 

「き、驚愕!?何故だ……」

 

驚いた様子で資料を読み、持っていた扇子を取りこぼし理事長は呆然と呟く。

 

資料にあったのは、青年の担当達が次々と脱退していると言う報告。それも、どれも大きなレースや夢を叶え結果を残した後に脱退している様だった。

 

驚く様子を青年は他人事のように笑う。それは、何処か儚げで悲しそうに駿川たづなは感じていた。

 

「それに、やらなきゃいけない事があるんです」

 

そう言って青年は改めてトレーナーを辞めると、そう口にしようとする。

 

「猶予!どうか、どうか一週間ほど待って欲しい!!担当が居ないのなら、トレーナーのいないウマ娘を紹介する!だからッ!!」

 

必死に引き留める理事長に負けたのか、青年は一日だけなら待つといい学園を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、青年は出会った。

 

「えっと、貴方が私のトレーナーさん……になる方ですか?」

 

頭にリボンを身に付けたウマ娘、後に勇者と呼ばれるアグネスデジタルと出会った。

 

彼女と過ごしていくなかで青年は彼女を理解し受け入れていった。ウマ娘オタクであるアグネスデジタルはコミケにも参加しているため、練習やレースの合間にもウマ娘の本を描いている。

 

そんな彼女の創作に、青年は自分の事を文章としてこの世界に残せないか?と考えるようになった。

 

「デジタル、これを読んで貰えないか?試しに書いてみたんだ」

 

その結果、アグネスデジタルに近い形で作り上げたのは一篇の小説。

 

自分の戦いや感じてきた事、様々なウマ娘の育成した記憶を元に書き上げたものだ。

 

トレーナー室へと訪れたデジタルへと小説が印刷された紙を手渡す。

 

「拝見します……」

 

そう言って青年の書き上げた小説を読み上げていくアグネスデジタルは、読み終えると顔を上げた。

 

「ここ、段落抜けてます。それに句読点の脱字、意識的に抜いている部分はあると思いますが多いです。語りと地の文の間は区切るべきかと……あと体言止めが多いですね、“刹那”とか“永遠”が多くて時間感覚が分かりにくいです。全体的に勢い任せに無理して書いた感が否めないですね、もっと語彙力を磨きましょう。それとあくまで一意見ですが主人公が迷うシーンが長すぎるかも、テンポが悪くなる原因になるので早く振り切るべきだと思いますよ。」

 

アグネスデジタルから出たダメ出しに確かに、最初から良い作品になると思って居なかった青年はなるほど、と頷き静かにその作品を直していき、やがてデジタルも認めるほどの作品となった。

 

試しに私の新刊の最後におまけで小説をいれてみますか?と言われ青年は了承した。

 

明日に二人で新刊を売りに行くことになっている青年は楽しみだと帰り道に頬を緩めたが、即座に悲しそうな顔へと表情を変えた。

 

バックルを取り出すと腰にベルトとして腰に巻き付け、カードを取り出すとベルトに装填する。

 

「ごめん、一緒にいく約束……守れない」

 

そう呟き、青年は拳を握りしめ異形が暴れる場所へと駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうにか出来上がった新刊を確認の意味も込めて開く。ペラリ、ペラリとページを捲り内容や絵のミス、ページの印刷ミスを確認する。

 

レースやレースに向けた練習の中でよく描き上げたなと自分自身を褒めたいです。

 

「ふぅ、見たところ大丈夫ですね……あれ?」

 

ふと、自分の描いた枚数より多くのページがあることに気付いた。

 

「間違って印刷ミスを!?……これは」

 

自分の描いたあとがきページを捲ると、数十枚における文章の並んだページになっている。

 

「?小説みたいですけど、私はこんなの書きましたっけ?」

 

小説らしき物のあらすじらしい欄には、ウマ娘のトレーナーとなった主人公が世界の歴史を自分の思うような未来へ改竄しようと現代に現れた怪人から、現在と過去、未来を守るために三女神から怪人と戦うための力を与えられ、怪人と戦っていくと言う物語が記されていた。

 

小説は全部をあわせて3章あった。

 

読んで行くなかで私は、この小説に魅了されていった。

 

個性豊かなヒロインと思われるウマ娘ちゃんや学園の同期のトレーナーと言ったキャラクター、そんなウマ娘ちゃんの為に命をかけて戦う主人公のトレーナーとしての生活とウマ娘ちゃんのレースが描写されていた1章。

 

僅かの違和感が感じられる始まりと、共に始まったウマ娘ちゃん達の大きな夢や目標へのレースの様子が綴られ、最後に見事レースの1着へと輝きハッピーエンドを感じられたラスト、ヒロインウマ娘ちゃんの一言『貴方は誰?』で読者側を呆然とさせた衝撃の2章。

 

そして、最終章にて明かされた主人公のトレーナーが使う力の代償。それは周囲の自分に対する記憶の欠落であり、担当していたウマ娘達が主人公を忘れチームから離れていくと言う悲しみと寂しさを背負いながらも、ウマ娘ちゃん達の未来を守るためひっそりとトレーナーを辞め、誰かに気付かれる事となく戦い続けるという結末。

 

全体的な物語は素晴らしく、主人公の孤独感や喪失感はまるで経験してかたような重みと悲しみが書き記されている。

 

「これは一体誰が!?」

 

一番最後のページにはこの小説と思われるタイトルと、作者の名前があった。

 

そこには『Lost Memories~Episode,ZERO~』春花、という作品名と作者の名前があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってる!?あの小説が更新されてたよ!!」

 

「本当!?直ぐに確認しなきゃ!」

 

近くでウマ娘ちゃん達の喜ぶ声が聞こえて、思わずにやける顔を気にせず私は淡々とパソコンに文章を書き出す。

 

あの日、同士が残してくれた大切な小説と同士の事を思い出した私は、思い出した内容を書き出してネットへと投稿していた。

 

こんな面白いネタは無いですし、何より忘れたくないからこそ文章に起こした。

 

でも、彼の小説は完成しているけど私が書く場合は未完成。だからこそ、私は文章の最初にこう書き足すことで投稿を始めた。

 

『これは、忘れ去られた物語』

 

同士は今も私やウマ娘ちゃんの為に今も戦い続けているのか、現状が分からない。

 

知ることも出来ない。

 

だって私はもう同士のいた世界ではない世界でこうしてアグネスデジタルとして再び生きているから。

 

でも私には同士の教えと、想い出がある。みていて下さいね同士、私はこの世界でも勇者と呼ばれる程の走りを、貴方の教えてくれた走りで勝利を勝ち取って見せます。

 

「あれは、同士?」

 

保健室へと入っていく同士の姿に困惑しつつ保健室へと向かう。わずかに開いていた扉の隙間から中を覗き込と、そこにはベッドに座り、同士を見つめるメジロマックイーンさんの姿があった。

 

不安そうに視線を下に向けるマックイーンさんへと同士は口を開いた。

 

「僕に君を担当させてもらえないかな?」

 

ミ゚ッ゙!?

 

なんで、なんで私じゃないんですか?

 

トレーナーさん

 

 

 

Epiphone:ZERO

アグネスデジタル─消えた人、残された物語─

 






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Re.Memoriarise Ver3.5

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