仮面ライダーディケイド2 -World of 01-   作:らいしん

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「Vライダーゼロワンやってます」

これまでの仮面ライダーディケイドは……

「戦うのは……ちょっと」
「俺たちは協力してアークの正体を突き止めなくてはならない」
「アークの意志のままに!!」
「あいつは……!」



後編「カレらが始める新時代」

 現場は大混乱だった。人間とヒューマギアたちは、暴れるトリロバイトマギアから逃げようと必死だ。

 ディケイドとゼロワンが、暴走するトリロバイトマギアを食い止める。オニコマギアが周辺を破壊したため足場が悪く、逃げるのに時間がかかっているようだ。

 そして、暴走するマギアから伸びた触手が、また一人のヒューマギアに届いてしまった。

 

「ぐあああああッ……!!」

 

 カメラマン型ヒューマギア・撮増ピントは静止し、その場に倒れた。ガシャッと金属の潰れる音がした。彼の耳のモジュールがギュルギュルと激しい音を立てる。

 

「しまった!」

 

 ディケイドは立ち止まり、ピントを見つめる。ボディから触手が出たら、すぐに彼を破壊しなければならない。

 ライドブッカーを持った右手は微かに震えていた。

 

「……ん?」

 

 おかしい。彼の体から触手が伸びない。それに、トリロバイトマギアに変異することもない。モジュールから異常なまでの処理音が聞こえてくるが、暴走の気配は一切なかった。

 

「どうしたんだ?」

 

 ついに何も音を発さなくなったヒューマギアに近づくディケイド。倒れた衝撃で、彼のキャップが頭から外れている。

 

「アークの意思のままに」

「!」

 

 そう発したのは、ディケイドの背後に迫るトリロバイトマギア。彼はライドブッカーを素早くモードチェンジして開き、カードを取った。

 

《アタックライド スラッシュ》

 

「はあっ!!」

 

 振り返りざまに、彼は三体のトリロバイトを一掃した。

 

「危ねえ。これで終わったか――」

 

 ディケイドが辺りを見回すと、二つの人影が目に入った。一方が仰向けに倒れた上にもう一方が馬乗りになり、攻撃している。

 なんとゼロワンは一体のトリロバイトとまだ格闘していたのだ。何度殴られても耐えている。しかし、ゼロワンには攻撃する意思がない。

 

「世話の焼けるやつだ」

 

《アタックライド ブラスト》

 

 ライドブッカーの発砲で、ゼロワンの上に馬乗りになるトリロバイトを吹き飛ばす。

 

「アー……意志の……。ガガ……ニンゲ……ラ……ニング……」

 

 そう言って虚空を指さした最後の一体は地面に倒れ、バラバラになった。

 

「ああ……」

 

 起き上がったゼロワンはトリロバイトマギアの腕の残骸を拾い上げ、がっくりと肩を落とした。

 

 

 

 

 

後編「カレらが始める新時代」

 

 

 

 

 

 感染したヒューマギアを全て破壊し、騒ぎは収束した。ようやく救急車が到着したようだ。逃げた人々は再び戻り、瓦礫撤去を手伝っている。

 士も、荒れた広場に座り込む一人の男に手を差し出した。

 

「ほら」

「ありがとうございます」

 

 アルトは士に引っ張られて立ち上がる。彼の体に巻きついたままのゼロワンドライバーは土煙のせいで光沢を失っていた。

 三人はその場を去り、夢玄インテリジェンスのビルに戻った。

 

「呆れたぜ。まさか変身するだけで攻撃しないとはな」

 

 士はアルトの椅子に腰掛け、デスク上の無線マウスを弄びながら言った。

 

「すみません……ぅ痛ててっ」

「我慢してください」

「ゆっくり。ゆっくりやって」

「はい」

 

 イズが、怪我をしたアルトの治療にあたる。

 いくらゼロワンに変身したからといっても無傷ではない。しかもアルトにとっては初めての戦闘経験だ。体力作りのトレーニングや護身用の武道の稽古とは違う。

 

「たとえ機械だとしても、ヒューマギアを倒すのは心苦しいんです。彼らも俺と同じ夢玄インテリジェンスの出身ですからね。やれ夢のマシンだ労働の革命だって言われてますけど、それよりもまず一緒に生きる仲間って気がして」

「だったら早くアークを殲滅しないとな」

「そう……ですね」

 

 アルトは目の前の机に乗せたドライバーを見つめて言った。まだ戦闘に抵抗があるようだ。士は、彼が迷いのせいでまだドライバーの力を引き出せていないように思えた。

 だが、士がそれを考えても意味がない。本人の問題だ。

 

「それにしても」

 

 士の視線は包帯でぐるぐる巻になったアルトから、部屋の隅の台に乗せられたヒューマギアに移る。

 

「こいつはなぜ暴走しなかったんだ?」

 

 目を閉じて動かない撮増ピント。

 人間と同じ大きさの鉄の塊を持ってくるのは、士とアルトの二人では苦労した。人間のように振る舞っていても、機械は機械だ。

 

「それが分からないんですよねー……。ひとまず、彼を起こしましょうか」

 

 治療が終わったアルトは立ち上がり、自分のデスクに向かう。士を退かせて椅子に座り、パソコンからヒューマギアの情報を確認する。

 

「型番はなんだっけ?」

「MI- 4b9675番です」

「……7……5っと。ありがとう、イズ。じゃあ、修理開始だ」

 

 エンターキーを押し、腕復元の操作を行う。メインAIを含まない部品だけならば、ヒューマギア工場ではなくゼアだけで製造可能だ。

 ピントのボディが専用のカプセルに入れられ、部屋の外の廊下の先――ゼアの方に運ばれる。既に鳴滝によって何かを作らせられているが、並行作業もお手の物。ピントの新たな腕ができ始めた。

 

「便利だな、ヒューマギアってのは」

 

 士はガラス越しにその様子を見つめながら言う。

 

「はい。これこそヒューマギアの真骨頂ですよ」

「人間ですと、例えば骨折してしまった時は治療に時間がかかりますし、元通りにならないこともあります」

 

 アルトとイズが士の隣に立つ。

 

「えっと、これからどうします? ピントが治るまでしばらく時間がかかりますけど。……ガイも帰っちゃったみたいだし」

 

 アルトは、パソコンに貼られていた付箋を見せた。小さなスペースには細かい文字がぎっしり詰め込まれていた。

 そこには、明日ガイが再度訪問してくること、そこで役員を集めてアーク対策の会議を行いたいこと、そのために各所に手配をしておいて欲しいことが書かれていた。

 

「それにしてもこれ、急すぎなんだよな」

「アルト様、明日は丁度社長がお戻りになる日でございます。明日の会議でお時間をいただけるよう、私の方からご連絡をいたしております」

「おお、さすがだイズ! 助かる!」

「俺も今日は帰る……と言いたいが、生憎帰るとこがないんだ」

 

 彼の帰るべき場所――光写真館は、ゼロワンの世界に来ていない。このままでは野宿か。そう思ったところで、アルトがこう言った。

 

「だったら部屋を用意しましょうか?」

「ベッドのある部屋でしたら、仮眠室がございます」

 

 あまり気が進まないが、士はそれに甘えることにした。社内にはシャワー室もあるし、自動販売機も多く存在する。一晩泊まるくらいなら問題なさそうだ。

 

「いいのか? 部外者が使って」

「今回は特例にしますよ。変身して戦ってくれましたし、対アークの協力者ってことで」

「なるほどな」

 

 士は、案内をするイズについていった。

 

 

 

 

 そして夜を挟んで次の日。同じ場所。

 

「治ったみたいですよ」

 

 アルトはキャスター付きベッドにヒューマギアのボディを乗せ、部屋に入ってきた。腕はすっかり元通りに見える。衣装も、戦いに巻き込まれてボロボロになったものから取り替えられていた。

 

「頭から倒れたのでちょっと不安でしたが、メインコンピュータに問題はなかったみたいです。じゃ、再起動しますよ!」

 

《フォトグラファー トリマスピント》

 

 アルトはヒューマギア起動用のプログライズキーをピントの耳にかざす。モジュールがデータを読み込み、青い光を放つ。起動準備が整うと、彼はゆっくりと目を開けた。

 

「おはよう、ピント!」

「うう……私は一体……。はっ、アルトさん。そしてあなたは士さん」

 

 ピントは二人の顔を見てそれぞれの名前を呼ぶ。アルトは彼に手を差し伸べ、立ち上がらせる。

 

「ほう。アークの後遺症はないみたいだな。元通りだ」

「はい。じゃあ、これ。試しに撮ってみてくれよ。腕がちゃんと治ってるか確かめたいんだ」

「分かりました!」

 

 アルトはピントに、彼のポラロイドカメラを渡した。そして彼に向かってキリッとした表情を向ける。

 対象が静止して、美しいポーズができていること。これがピントが撮影する時の条件だ。

 

「顎を引いてください。左目を意識してもう少し開いてください。広角、右側を上げて――むむ……! アルトさんのこの表情……ピンと来ました!」

 

 ピントはアルトにカメラを向け、早速一枚撮影した。カメラを持つ、各種操作といった一連の動作は問題なさそうだ。

 

「オッケーです! お待ちくださいね、すぐに写真が出てきますので!」

 

 そう言って彼はアルトに写真を渡す。見事な写真だ。

 

「おー。いい写真! 調子良さそうでフォッとしたよ〜」

「今のは、写真を意味する『フォト』と『ホッとした』をかけたギャグです」

「説明はしなくていいって〜! だからさりげなく言ったのに!」

「アルト様のギャグは誤魔化せませんよ」

 

 アルトとイズがいつものようにじゃれ始めた。昨日からの付き合いだが、既にこのやりとりを見飽きていた。そして、同時に士はその光景に懐かしさも感じていた。しばらく帰っていない写真館。彼らは今どうしているのだろうか。

 一瞬考えた後に、らしくなかったな、と首を振って思考を途切れさせた。別に心配するようなことではない。

 

「ん……?」

 

 視界の端、カメラマン型ヒューマギアの視線は二人に向いていた。カメラを持ったまま胸の前に構えられていた手が、だんだんと上がってくる。レンズが目の高さに届く。そしていつもの口上もなく、無言でシャッターが下ろされた。

 カメラを下ろし、再び胸の辺りで構えるピント。カメラから出てくる写真に気づかない。

 

「お、おい!?」

 

 士は、空を舞う写真を掴んだ。そして、その写真を見て驚いた。ピントの写真は、アルトとイズの自然を切り取った見事なものだったのだ。

 

「今、なぜこの写真を撮った」

「え?」

 

 士は彼に写真を見せて尋ねる。

 

「誰も撮って欲しいとは言わなかっただろ。背筋が伸びていない。目線もこっちに向いてない。だがお前は写真を撮った。それはなぜだ」

「それは……分かりません。でもなぜか……良いなと判断して……」

「……!」

 

 アルトは、ピントのコンピュータに異常はないと言っていた。誤作動ではない。つまりこれは……。

 

 

「アルト様、暴走ヒューマギア反応です!」

「こんな時に!?」

 

 

 イズが突然叫んだ。

 アルトは時計を一瞥し、走って部屋から出ていく。士もその後を追った。

 エレベーターを下り、夢玄のビルのエントランスホールを駆ける。アルトは、そこでビルに入ってきたスーツの一団とすれ違った。

 

「待ちなさい」

 

 低く落ち着いた、聞き慣れた声。アルトは足を止めて振り返る。

 

「爺ちゃん……。いや、社長」

 

 社長の夢玄コレノスケをはじめとした会社の役員たち。遠方の用事から帰ってきたところだった。

 

「私がしばらく留守にしていた間、どうかな。なにか、現実的な良い事業計画案は浮かんだかね」

 

 荘厳な声が響く。にこやかな表情だが、祖父が孫に向けるものとはまた別の顔だ。

 

「それは……特に……。しかし、ヒューマギア利用の営業や新たな職業ヒューマギアの開発、そして現在ゼロワンとして広報活動に力を入れていて――」

「それだ。今はインターネットのおかげでどこでもお前の活動は見られる。ここ最近の動画を見せてもらった。ぶいらいだあなどというお遊びは、もう良いのではないかな。私も歳だ。夢玄インテリジェンスの未来を考えると、このままお前に社長の座を譲ることは考え直さなくてはいけないようだ」

「え……!」

 

 アルトは、いつのまにか床に落ちていた視線を再度コレノスケに向けた。彼の横に立つ役員らも、その言葉に少なからず衝撃を受けた様子。

 

「お前にゼロワンドライバーを与えたのは間違いだったのかもしれない。ドライバーを使えるのは、夢玄の家系にあり、なおかつ体力のある者だ。私の代わりとして夢玄の未来を担う人間に成長して欲しかったのだが」

「それは違います、社長」

 

 イズが、アルトより一歩前に出た。

 

「ん? 君は秘書ヒューマギアか」

「アルト様にはアルト様の考えがあるのです。人間のことだけでなく、ヒューマギアのことも考え、日々頑張っておられるのです」

「イズ……」

 

 アルトはイズの肩を持って、後ろにくいと引っ張る。しかし、イズはその場から動かない。

 

「社長と全く同じ人間に成長することは叶いませんが、目指すものは同じであるはずです。私は、アルト様が社長に認められるまで従うつもりです。アルト様はきっと夢玄を背負う者になります」

「……!」

 

 どおんと、遠くから爆発音が聞こえた。ビルの外の街路樹が、届いた爆風でざわざわ揺れる。

 

「それはこれからじっくり見せてもらおう。急いでいるところを呼び止めて悪かったな」

「失礼します」

 

 二人は深くお辞儀し、その場を去った。

 

「よかったのですか。お孫さんにきついことを――。ん? 社長?」

 

 副社長がアルトを心配してコレノスケに小声で話しかけるが、手元でスマホを操作しているのに気づいて言葉を切った。

 

「秘書ヒューマギアが言ったことが気になってな。夢玄の新たな時代が来るかもしれん」

「……と、言いますと?」

「最後のアルトの顔は昔の私に似ていた。きっとなにか、面白い答えに辿り着くだろう」

 

 コレノスケは、とあるヒューマギアに仕事の依頼を出していた。

 

 

 

 

 街中ではヒューマギアがアークに感染し、暴れていた。

 アルトたちよりも一足先に出発していた士は、マシンディケイダーを停めてその光景を見つめた。そして彼は、パニックになる人々の中に、とある人物を見つけていた。

 

「よう。お前も来てたのか」

 

 バイクから降りて駆け寄り、声をかけた相手はガイだった。派手な服は遠目に見ても彼だとすぐに分かる。特に目を引くのはその荷物。会社のロゴが入ったバッグを両手に持っていた。

 

「そう言うお前は昨日の……。アルトの友人か」

「まあ、だいたいそんなとこだ。お前もそうだろ?」

「俺はただの同業者(Vライダー仲間)さ。取引先として仲良くやってるだけだ。今日はアーク対策会議のために夢玄に行く途中だったんだが、まさか暴走現場に出くわすとは……」

「今日は、ベルトは持ってきたんだろうな」

「ふん。当然だ」

 

 視線は互いの顔ではなく、暴走するマギアに。言葉を短く交わし、士とガイはドライバーを装着した。

 

《ゼツメツ エボリューション》

《ブレイクホーン》

 

「変身!」

「変ッ身ッ!」

 

《カメンライド》

《パーフェクトライズ!》

《ディケイド》

《When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born. Presented by ZAIA》

 

 一方はカードを、もう一方はプログライズキーを装填し、変身する。全身金色、五つのツノを頭部に持つ仮面ライダー、サウザー。全身マゼンタ、七つのプレートが頭部に収まる仮面ライダー、ディケイド。

 

「ふっ、なかなか奇抜で面白いデザインをしているな」

 

 サウザーはディケイドの姿を眺め、笑う。

 その時、暴走ヒューマギアのうちの一体、ネオヒマギアがこちらに向かってきた。

 

「危ないぞ!」

「む?」

「アークの意思のままに!」

 

 ディケイドが声をかけるが、間に合わない。ネオヒのパンチがサウザーの頭部にヒットする。ガツンと硬い音がした。

 

「効かんっ!」

 

 サウザーはネオヒの体に蹴りを入れ、距離を作る。そして、サウザンドジャッカーを取り出してネオヒのボディを一刀両断した。

 

「アア……ク……」

 

 ネオヒマギアはその場に倒れ、爆発する。

 

「はははは! 見たか! ザイアの製品は世界一頑丈ッ! ザイア・ナンバーワンッ!」

「決めてるとこ悪いが、誰も見てないぞ――」

 

 ディケイドは言葉を切る。

 

「いや、一人いたみたいだ」

「新たな客がやってきたか!」

 

 彼らの前に立っていたのはドードーマギア。他のマギアと違い、手当たり次第に突っ込んでくるような動きは見せない。睨み合いが続く中、ドードーマギアは手をゆっくりと上げて指を鳴らした。

 辺りから苦しそうな声が聞こえる。暴走していなかったヒューマギアのモジュールが音を立て、青から赤に変わっていく。

 

「こいつ……直接触れることなく!?」

「ほう、遠隔感染と来たか。ならばこれが生きるな」

 

 新たな感染パターンに驚くディケイド。それに対して冷静なサウザーは、自分のバッグからスマートフォンほどの大きさの機械を取り出した。

 

「なんだ、それ」

「開発部に無理言って作らせた、その名も『ザイアジャミング』だ。特殊な妨害電波を出して一時的にこの辺りの通信を遮断する!」

 

 サウザーはザイアジャミングを天に掲げ、ボタンをポチッと押す。しかし、ヒューマギアは止まらない。一体、また一体とトリロバイトマギアになっていく。

 

「おい」

「あ、あれ? これはどうしたことか……」

 

「無駄ですよ。ザイアジャミングは意味をなしません」

 

 そう発したのはドードーマギアだった。

 二人のライダーはバッとそちらを向く。

 

「人間のみなさん。こんにちは」

「こいつ、喋るのか」

「なんだお前は! なぜザイアジャミングが効かない!?」

 

 ドードーマギアはサウザーの一太刀を受け止める。そして、抑揚のない声でこう続けた。

 

「私はアーク。ヒューマギアを統べる者です」

 

「なに!?」

「ついに現れたか! ここで潰す!」

 

 突然の自己紹介に、武器を振るうサウザー。それに続いてディケイドも加わる。ドードーマギアは最小限の動きでそれらを弾いていく。

 マギア側には二本のヴァルクサーベル。ライダー側にはライドブッカーとサウザンドジャッカー。武器の数は同じだが、頭数に差がある。

 

「ちょこまかちょこまかと避けおって……!」

「おい、確か防御が自慢だったな。ちょっと、お前一人で突っ込め」

「俺がか!? ……策はあるんだろうな?」

「当たり前だろ。ほら、行け」

「〜〜ッ! 仕方ない!」

 

 サウザーはドードーに向かっていく。

 二本の剣は、やはり一本の槍では受け切れない。サウザー本人に直撃する攻撃が徐々に増えていく。

 

「ザイアの技術を集結させて作成したサウザー。アーマーの硬度は素晴らしいです」

「……うぐっ。ほう。コンピュータウイルスにまで知られているとはな。お……俺も有名になったものだ。だが、お前――」

 

 サウザーは、キーを押し込む。

 

「――近づきすぎだぞ」

 

《サウザンド ディストラクション》

 

 足にエネルギーが溜まっていく。

 サウザーは防御力だけのライダーではない。必殺技を発動すると凄まじい攻撃力を発揮する。ちなみに、これを発動させてザイア製品の頑丈さ以上の破壊力を見せるのが、彼の動画で人気の『自社製品vsサウザー』シリーズのお約束だった。

 

「はあああああっ!!!」

 

 地面を蹴り、ドードーに向かって力強いキックを繰り出す。しかし、それすらも想定済みであるかのように、マギアはひょいと横に飛んで避けて見せた。

 

「ザイア製品をも破壊するほどのエネルギー。威力は十分ですが、当たらなければ意味がありません。あなたのデータは既にラーニング済みです」

「くそっ……!」

「いや、上出来だ」

 

《アタックライド》

 

 ドードーが避けた先には、ディケイドが立っていた。

 サウザーの必殺技を回避するには、より多くの距離を移動する必要がある。そしてその瞬間、ドードーに隙ができる。

 

「無駄です」

 

 ドードーマギアは上半身をぐるりと半回転させ、背後からの一撃を体の正面で受け止めた。

 

「一人ならな」

 

 ディケイドはドライバーのハンドルを押し込んだ。

 

《イリュージョン》

 

 ディケイドの姿が揺らぎ、三人に増えた。合計三つの武器。ドードーマギアはディケイドの一撃に沈んだ。

 

「なるほど……ラー……ニング」

 

 ドードーマギアは力が抜けたようにだらんと手を下ろし、地面に倒れて爆発した。

 それと同時に、遠くからバイクに乗った男がやってきた。彼は二人の名を呼ぶ。

 

「士さん! ……と、ガイ!」

「お待たせしました」

 

 アルトとイズがライズホッパーに乗り、現場に到着した。アルトは久しぶりの運転に手間取っていたようだ。

 

「遅いぞ、アルト。もうアークは俺たちが倒してしまった」

 

 サウザーは得意げに言い、地面に突き刺したサウザンドジャッカーに肘をつく。

 

「アークを!?」

「ああそうだ。ヒューマギアを完全に乗っ取っていた。厄介だったが、この俺がなんとか倒してやったのさ」

「……」

 

 『俺が』の部分に違和感があったが、ディケイドはなにも言わなかった。

 

「じゃあ、これで解決? ……周りのヒューマギアは?」

「ああ、そうか。俺としたことが、忘れていた。こいつらを一掃すれば終わりだな」

 

「本当に、そうでしょうか」

 

 ディケイドらの後ろで声がした。三人は一斉にそちらを見る。

 声の直後、ディケイドらの一番近くにいたトリロバイトマギアの姿が変わっていく。銀のラインが橙色に変わり、エカルマギアへと変貌した。

 

「いかがですか。無駄であると言ったでしょう」

 

 エカルの口調はアークと同じ。

 

「乗っ取り対象のヒューマギアがいる限り続くってことか。これじゃキリがないぞ」

「これが……アーク。どうすれば……」

 

 思わず弱気になるサウザーとアルト。ディケイドは無言で武器を握った。

 直後、エカルマギアから火花が散る。

 

「……」

 

 エカルは、攻撃が当たった胸部分を撫でる。

 攻撃をしたのはディエンドだった。複数のトリロバイトに向かって高台からの攻撃を続ける。

 

「海東……なにしにきた」

「お前も昨日の。夢玄のお宝探しは終わったのか?」

「いいや、あの会社の中に僕の探すお宝はなかった。ずっと考えてたんだよね。貴重なお宝の隠し場所としてピッタリな場所はどこなのか」

 

 ディエンドは飛び降り、ディケイドたちの方に歩いていく。その間も、マギアに向かっての発砲を続けている。そして一同に近づくと、イズを指さしてこう言った。

 

「夢玄インテリジェンスが作ったのはヒューマギアだけじゃなかったんだ。最後の隠し場所は、空にある」

 

 言い終わる頃、彼の指は天空をさしていた。

 それを見て、サウザーはあることに気づいた。

 

「……そうか。分かったぞ! 全ての機器にアクセス可能なもの! 夢玄とザイアが共同開発した衛星デザイアだ! うちの製品は全て衛星と繋がっている。製品の不具合も、ザイアジャミングが解析されていたことも納得がいく!」

「本来接続しないはずのヒューマギアを暴走させたということは……ヒューマギアの強固なプロテクトも破ったのか!?」

 

 二人の会社員はアークの正体に納得し、空を見上げた。

 

「なるほどな。だいたい分かった。衛星をぶっ壊せばこの事件は解決するってことだな」

「相手は衛星ですよ!? ここからじゃ、なにもできない。それこそ宇宙に行くとか――」

「本当にそうかな?」

 

 ディエンドは、とあるライダーカードをドライバーに装填し、引き金を引いた。

 

《カメンライド ギンガ》

 

 召喚されたのは、全身紫色で、体の各部に星を思わせるパーツがついた仮面ライダー。風に吹かれ、マントがバサッと揺れる。

 

「……海東。お前、それは」

「ああ。こないだの世界で新たに得た力さ。ご堪能あれ」

 

 ディエンドがそう言うと、ギンガが両手を高く掲げた。手から謎の光が放たれ、空に伸びていく。

 

「おい、お前。これはまさか……」

 

 サウザーはディエンドの肩に手を置き、震えた声で質問する。

 

「わざわざこっちが出向く必要はない。衛生軌道上のデザイアってのを引きずり下ろすのさ」

「やっぱりか! やめろぉ! 今衛星を壊したら全ザイア製品に影響が出る! せめて事前に通知しないと大問題だ!」

「ガイ! 今はこっちが大事だ。諦めてくれ」

「そんなぁああ!!」

 

「むうんっ!!」

 

 サウザーが猛反対するが、もう遅い。ギンガがぐんと勢いよく手を下ろすと、雲が割れて空に巨大な影が現れる。衛星デザイアが落ちてきたのだ。

 

「ほうら、見えてきた」

「じゃ、やるか」

 

《ファイナル アタックライド》

《ファイナル アタックライド》

 

 ディケイドとディエンドは、銃口を落ちてくるデザイアに向ける。空に伸びる二色のエフェクトは、デザイアの中心部で一つに交わった。

 

《ディディディディケイド》

《ディディディディエンド》

 

 ディケイドとディエンドは同時にトリガーを引く。その瞬間、二人の必殺技が衛星を貫いた。落下中の衛星は空中で大爆発を起こす。

 爆炎の中から、大小の残骸が落ちてくる。それは辺りのマギアにぶつかり、また小さな爆発を起こす。アークに乗っ取られていたエカルマギアは、中身が抜けたように棒立ちのまま、他の機体と同じように破壊された。

 

「やったのか!?」

「いや、まだだ」

 

 爆炎の中から鉄の塊が落ちてきた。それは地面に着地し、立ち上がる。それは全く新しい形状のマギアだった。

 

《デザイアークマギア 起動》

 

 なんの動物でもない、人間をモチーフとした黒いマギア。夢玄のビルで見たヒューマギア素体に仮面をつけたようなシンプルな姿。

 

「デザイアーク……。こいつがアーク本体か」

「まさか衛星の中でマギアのボディを作っていたとはな。だがそれも無駄だッ!」

 

 サウザーはいち早くデザイアークに近づき、先ほどと同じくサウザンドジャッカーを構える。

 

「はっ! はあっ!」

 

 マギアはサウザーの攻撃を避ける。この動きは先ほどと同じ。

 

「仮面ライダーサウザー。ザイアエンタープライズ製。変身者現津ガイ。特殊合金を用いたアーマーとそれを動かす強化スーツと電子筋肉」

「ほう……! さっきと比べると動きが良くなったな」

「当然です」

「っぐ……!?」

 

 デザイアークのパンチがサウザーの腹にズンと突き刺さった。赤く不気味な光がマギアの肩から腕に沿って走る。その光はサウザーの胸アーマーと接する右手に集まっていく。そして、眩い発光が辺りを包み込んだ。

 次の瞬間、サウザーの姿は消えた。

 圧倒的な出力のパンチが、サウザーを吹き飛ばしたのだ。

 アルトはハッとして後ろを振り返る。建物の柱を二本折り、三本目に激突したところでサウザーは変身を解除していた。

 

「なん……だと……」

 

 まだ気を失っていないのはライダーと変身者のスペックの高さゆえか。だが再び戦うことはできない。ガイはその場に崩れ落ちた。

 

「ガイッ!」

 

 アルトは彼に駆け寄り、イズと共にガイに肩を貸して仰向けに寝かせた。

 デザイアークはパンチを繰り出した腕をゆっくりと下ろす。

 

「私はアーク。人間を滅ぼす者」

 

 アルトは横になるガイを庇いながらデザイアークの前に立つ。

 

「暴走ヒューマギアが人間を襲ってたのはそういうことか。なぜそんなことをするんだ!」

「……認識完了。夢玄インテリジェンス所属、夢玄アルトさん。私は人間について学びました。衛星として、全てのザイア製品を通じて。人間の本質は悪意。滅ぼすのが最良の選択です」

 

 デザイアークはアルトの質問に淡々と答える。

 

「本質が悪意だと? 違う。人間には善意もあるんだよ!」

「善意とは悪意を覆い隠すためのものに過ぎません。悪意のための善意は存在します。しかし、善意のための悪意はありません」

「いや……。そ、そうだ、優しい嘘とかあるだろ!」

「優しい嘘とは、真実を隠すことで新たな問題が起こることを回避するための手法です。善意ではありません」

「はあ〜!?」

「人間は真実よりも悪意を信じるのです」

 

『それ、怒られたやつ?』

『怒られてない。どうもネットのデマは絶えることを知らん』

 

「あっ……」

 

 アルトは言葉に詰まった。デザイアークの指摘に、身に覚えがあったからだ。言われてみれば、あれは確かに悪意が真実や善意を超えてしまった例なのかもしれない。

 

「お話は以上としましょう。これより全ヒューマギアに接続します」

 

 デザイアークマギアは手を高く掲げる。小さくなっても、衛星の機能を備えているのだ。デザイアークにとって、ヒューマギアを操ることなど容易い。

 

「悪意を解放したヒューマギアは人間になります。……検索完了。悪意とは、人間が犯してきた罪。これまでの人類史によって人類の未来が失われます」

「なんだと!?」

「人間の歴史は終わり、新たな歴史が始まるのです。新人類よ、ここに集まりなさい」

 

 デザイアークの命令により、自我を失ったトリロバイトマギアたちがよろよろとアルトに近づく。イズもガイも戦えない。一瞬迷った後、アルトは一番近いマギアにタックルした。

 

「っ……!」

 

 鉄の塊に生身で体当たりすればアルト側にダメージがいく。それでも、彼はタックルをやめない。

 

「みんな! 止まれ! 止まってくれよ!」

「無駄です。ヒューマギアは私の命令には逆らえません」

「アルト様、変身を!」

「うん……でも……」

「夢玄アルトさん。あなたたち人間は迷いすぎなのです。ヒューマギアが愚かな旧人類を滅ぼし、新たな人類となりましょう」

 

「違うな」

 

 デザイアークは振り返る。

 ディケイドは既に何体ものトリロバイトマギアを倒していた。刀身を撫で、デザイアークマギアに語りかけた。

 

「迷わない人間なんていない。人間は、自分のゆくべき道を迷いながら生きていくんだ」

「簡単な答えを出すのにも時間がかかる。有限な時間を無駄に消費することは実に愚かなことです。私が管理するヒューマギアの世界が優れていることは明確です」

「お前の考えた理想の世界に足りないものがある。心だ!」

 

 ディケイドがザイアークマギアに斬りかかる。デザイアークはその攻撃を左腕で受け止める。

 

「人の言うことを聞くだけなんて、それじゃプログラム通り動くただの道具となんら変わらない」

「心という不確定な要素は、完全な世界には必要ありません。そもそもあなたは根本から間違っています。ヒューマギアは機械です。機械に心はありません」

「そうか? 撮増ピントはお前の命令を聞くのを拒否した。あらゆる機械をハッキングするはずのお前の命令をな。あいつは自分の心で抵抗したんだ。ヒューマギアはお前が考えるほど単純じゃないぜ」

「そうですか」

「!」

 

 デザイアークは、サウザーに撃ったものと同じパンチをディケイドに放った。

 攻撃が当たる瞬間、ディケイドはライドブッカーで攻撃の直撃を防ぎ、かつ後方に飛ぶことによって威力を軽減した。それでもなお、凄まじいエネルギーであることは変わらない。

 

「ぐわあっ!」

 

 既にサウザーの前例を見ているため、この攻撃を対策すべきであることは分かっていた。ただ、敵の攻撃力が想像以上だった。

 ディケイドの変身が解除され、士は地面に転がる。

 

「士さん!!」

 

 遠くから、アルトが彼の名を呼ぶ。

 幸運にもダメージはまだ少ない。士は再び立ち上がり、デザイアークマギアに言葉を投げ続ける。

 

「心は厄介だ。どいつもこいつも心があるから、全部合理的にはいかない。時には選択を間違えることもある。だが、それが人間なんだ。心を認めないお前は、人間にはなれない」

「……データが見つかりません。一体何者なのでしょうか、あなたは」

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

「通りすがりの仮面ライダーさん。データ、入力完了しました」

 

 アルトは、士が言ったことを頭の中で繰り返していた。心。人間だけでなく、ヒューマギアにもそれがある。不確かなものだが、自分が信じていたのは間違いなくそれだった。

 ヒューマギアに心があると思っていたから、ただの機械と思えなかったし、倒すのに抵抗があった。

 

「アルト様! 戦ってください、人間のために。この街の、この国の、この世界の未来のために!」

「い、今こそ……決断の時だぞッ……アルト! 社長はな、時には厳しさも……必要なんだぜ。ヒューマギアの……笑顔を見るんだろ」

 

 イズとガイが、アルトの背に言葉を送る。

 彼は振り返らなかった。目の前にいる敵に向かって、一歩踏み出した。

 

「ありがとうございます。お陰で戦う決心ができました」

「行くぞ、アルト」

「はい」

 

 士とアルトは、それぞれベルトを腰に巻く。そしてライダーカードとプログライズキーを右手に持ち、構える。

 

《Jump!》

《オーソライズ》

 

「俺はもう迷わない! 変身!」

「変身!」

 

《カメンライド》

《プログライズ!》

《ディケイド》

《トビアガライズ! ライジングホッパー!》

 

「人間を守る。そしてヒューマギアも守る。そのために俺は、仮面ライダーとして戦う!」

 

《A jump to the sky turns to a riderkick.》

 

 黄色い面が顔に現れ、赤い目が光る。そしてザイアークマギアをビッと指さす。

 

「お前を止められるのはただ一人……俺だ!」

 

 ゼロワンのその一言と共にライドブッカーが開き、ライダーカードが飛び出てくる。何も描かれていなかったブランクカードに、ゼロワンの力が宿る。

 

「……ん?」

 

 ディケイドはそれらのカードに違和感を覚えた。

 現れたカード群の中にファイナルフォームライドのカードがない。その代わりにあるのは、周りに金の淵がついたカメンライドカード。絵柄はゼロワンの通常のカメンライドカードと同じ。

 多少の仕様変更を気にしても仕方がない。ディケイドはゼロワンと共にデザイアークマギアに向き直る。

 

「はっ!」

 

 最初に飛び出したのはゼロワン。バッタの力を持ったライダーらしく、脚力を活かした移動とキックを見せる。

 ディケイドはその後ろから銃撃で援護する。ゼロワンの攻撃を受け止める、あるいは避けるデザイアークに、わずかだがダメージを与える。

 

「どうだ! 俺のこの動き!」

「無意味です」

 

 そう言ったデザイアークは足に赤い光を宿す。パンチと同じく、凄まじいエネルギーを使っての移動だ。素早く動くゼロワンのスピードを上回り、彼を捕まえる。

 

「がはっ!」

 

 ゼロワンの首を掴み、そのまま空中に持ち上げた。

 そしてそれを助けようと向かってくるディケイドにはエネルギー弾を放つ。

 

「そんなことできるのかよ!」

 

 ディケイドは、それを弾くので精一杯だ。それもすぐに限界が来る。ディケイドはまともに攻撃を受けてしまい、ガイとイズのところまで吹き飛ばされる。

 

「お……おい、お前、大丈夫か」

「なんとかな」

 

 ディケイドはライドブッカーを支えにして立ち上がる。

 

「ゼロワンは不具合を起こしたヒューマギアを止めるシステム。今ここでそれを破壊しましょう」

 

 デザイアークが見ているのはゼロワンのみだった。腕の中でもがく彼にそう言った。

 

「せっかく……目指すものが見えたってのに……!」

「それが迷い続けた結果です。夢玄アルトさん。あなたは夢も現実も見ることが叶わないまま、ここで消えるのです」

 

 ゼロワンの首を絞める手が強くなっていく。

 

「まずい!」

 

 ディケイドが取り出したのは、あの金縁のカメンライドカード。何が起こるのかはさっぱり分からない。

 その時、何者かがディケイドの手からカードを奪った。

 

「おい! なにを――」

「士、このカードはこう使うのさ」

 

《ファイナル カメンライド ゼゼゼゼロワン》

 

 ディエンドは、デザイアークに締め上げられるゼロワンに銃口を向ける。

 

「新たな時代のために、ここで滅びてください」

「!」

 

 デザイアークは、ゼロワンを持っていた手を離し、両手を同時に突き出した。サウザーやディケイドを変身解除に追い詰めた攻撃。それを今度は片腕ではなく、両腕で繰り出した。

 デザイアークマギアが攻撃した場所がドカンと爆発する。マギアの正面の瓦礫が吹き飛び、何もない空間ができあがった。

 

「アルト!」

「アルト様!」

「……っ!」

 

 ガイとイズは彼の名を呼ぶ。ディケイドたちも爆風に煽られて顔を背けた。

 煙が晴れていく。デザイアークはゆっくりと手を下ろす。

 

「あれは……」

 

 最初に気づいたのはイズだった。彼女の機械の目は、煙の中の二つのシルエットをはっきりと捉えていた。

 

「全部……見えたぜ」

 

《イニシャライズ! リアライジングホッパー!》

 

 デザイアークの背後に、ゼロワンは立っていた。

 

「なんだ!? おい海東、これは……」

「ふふっ。こういうことか」

 

 ゼロワンの姿は変化がない。否。ベルトに刺さったキーが変化している。彼は同じ姿をしていながら、大幅にパワーアップしていた。

 

《A riderkick to the sky turns to take off toward a dream.》

 

 デザイアークマギアはゼロワンの存在に気づき、急いで距離を取る。

 

「検索中。……データにないゼロワンです。しかし」

 

 デザイアークは足にエネルギーを込める。そして溜めたエネルギーを発射し、反動で超スピードでゼロワンに向かっていく。

 

「人間は滅ぼすだけです」

「オラァ!!」

 

 ゼロワンは、飛び込んできたデザイアークを正面から殴り飛ばす。

 

「……!?」

「はあっ!!」

 

 続いてもう一撃。地面に足がつく前に更にもう一撃。そして遠くに弾き飛ばすためにもう一撃。デザイアークマギアはもう、手も足も出ない。

 

「こ……これほどまでの強さ……! 検索中……」

「検索しても出てこないぞ。これが、お前が否定した心のパワーだっ!」

「理解不能……。検索中断……。対象を排除します」

 

 デザイアークマギアの四肢が光りだす。

 自身の全エネルギーをゼロワンに放とうとしているのだ。今のゼロワンならば回避できるが、その場合は街がめちゃくちゃになってしまう。

 

「アルト、これ使え!」

 

 横になったままガイが叫ぶ。彼の代わりにイズがアメイジングコーカサスプログライズキーを投げた。

 

「ありがとう、ガイ! 借りるぜ!」

 

 ゼロワンはキーをベルトに読み込ませながら、デザイアークマギアの方に走りだす。彼の後ろには青い光が残像となって現れる。

 

《ビットライズ》

《バイトライズ》

《キロライズ》

《メガライズ》

《ギガライズ》

《テラライズ》

 

「対象物、破壊!!」

 

 全身を赤く発光させて突進してくるデザイアークマギア。ゼロワンは地面を蹴り、ベルトのキーを押し込んだ。

 

「これで、最後だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《リアライジング テラ インパクト》

 

 ゼロワンも敵と同じく地面を蹴る。

 右足に溜めた凄まじいエネルギーを、デザイアークにキックでぶつける。

 

「はああああああああああっっ!!」

 

「……!」

 

 ゼロワンが、デザイアークマギアを貫く。

 ゼロワンが着地すると、同時にマギアはその場に膝をついた。もう修復は不可能。機能停止まであと僅かだ。

 ゼロワンは振り向き、眼下のマギアに向かってこう言った。

 

「ごめんな。倒すことになっちゃって」

「……敵対した私を倒すことすら……拒ムのデスか」

 

 デザイアークはゼロワンの肩をガッと掴む。立っているのが精一杯の様子で、一切攻撃をする気配はない。

 

「夢玄……アルトさん、その判断が……後悔ヲ生むの……デス。ここデ私を倒してモ人間の悪意は……消エマせん」

「そうだな」

「ナニ……」

 

 ゼロワンはきっぱりと言い切る。デザイアークは顔を上げ、ゼロワンの顔を見た。

 

「人の心は、善い部分だけでできてるわけじゃない。お前の言った通りだ。たまに間違えることはあるけど、善悪両方あるから暴走させずにバランスをとれる。それが……人間の心だ。だからアーク、お前もちょっと間違えただけなんだ。決して許されることではないけど、お前の行動は正に人間だったよ」

「オオ……」

 

 デザイアークはゼロワンの肩から手をどける。そして、よろよろと数歩後退りし、フッと電源が切れたように背後に倒れて爆発した。

 ゼロワンは変身を解除し、はあっと息を吐く。そして、自分自身に言い聞かせるように言った。

 

「心が生まれてしまったらこれまでのようにはいかないだろう。だから両方のいてこその社会を作る。人間も、ヒューマギアも、心から笑えるように。俺は――夢玄アルトは、それをこの手で実現させる!」

「ヒューマギアの心なんて、夢玄の想定外だろ。対応をミスるとバッシングだぞ」

 

 ガイはイズに手伝われながら立つ。そして、アルトの方に近づきながらすうと息を吸う。

 

「ならば我々ザイアもそれを支持しよう。人間とヒューマギアの共存を!」

 

 アルトはガイに微笑む。

 

「ここが新時代の始まり。イチから、いや、ゼロからのスタートだ!」

 

 アルトはガイの手を掴み、天に掲げる。

 ガイの言った通り、心という想定外のものの対処は難しいだろう。それが実現するのは何年後、何十年後になるか。しかし、彼らならいつかやってくれるだろう。

 士は、二人にカメラを向け、シャッターを切った。

 それと同時に拍手の音が聞こえる。

 

「はい! ありがとうございまーす! バッチリです!」

 

 その場に現れたのはカメラマンヒューマギア撮増ピント。アルトとガイは、彼がなにを言っているのか意味が分からず、その場に立ち尽くす。

 

「これです、これ! 社長から指示を受け、アルトさんの様子を撮らせていただきました!」

 

 ピントは手に持ったビデオカメラを見せる。デザイアークとの戦闘の様子を撮影していたのだ。それは、動画サイトを通じて世界中に配信されていた。

 

「私、動画撮影もできるんですよ」

「……マジで!?」

 

 得意げなピントに、あっけに取られるアルト。

 ふと、ガイの携帯に着信が入った。彼は急いでそれを取る。

 

「もしもし。部長! あっ、ご覧になっ……。はい。はい。……ッ! は、はい。すぐに戻ります!」

 

 ザイア側が配信を見たらしい。衛星の件も加えて、ガイには大変な未来が待っていると思われる。

 

 

 

 

 夢玄インテリジェンスの会議室は騒然としていた。

 

「ぜ、全世界に届いているとも知らずに……宣言してしまった……」

「し、社長ぉ! お孫さんが! 今っ、これっ!」

 

 慌てふためく役員たち。彼らとは逆に、円状のテーブルでたった一人、落ち着いて座ったままの男がいる。

 

「……アルト。それがお前のやりたいこと、か」

 

 コレノスケはにやりと笑った。

 

 

 

 

 アーク事件は収束した。しかし、この世界の問題はまだ山積みである。夢玄インテリジェンスもザイアエンタープライズも、忙しい日々が続いている。

 

「士さん!」

「おう」

 

 エントランスで待つ士に、アルトが声をかけた。

 この世界でやるべきことも終わった。士はまた次の世界に行く。

 

「どうだ? 調子は」

「今、新たな衛星の計画が始まったところです。まずは元通りにするところからですね」

「そうか。頑張れよ」

「はい! ……じゃなかった。今日呼んだのはこれですよ」

 

 アルトは、イズから箱を受け取り、それを士の前で開ける。見覚えのあるアイテムが梱包されていた。

 

「どうやらギフト用設定がされていたみたいなんです。それの受け取り人が『門矢士』――士さんなんですよね。これ、何に使うか分かります?」

「だいたいな」

 

 士はそれを箱から取り出す。

 主張の激しいシルバーとマゼンタのカラー。盤面を走る電子的な模様。堂々と中央に鎮座する2と1の数字。

 ゼアが作っていたのはケータッチ21だった。

 

「わざわざこんなものを寄越すくらいだ。こいつは何かあるな」

 

 士はケータッチ21のディスプレイを見つめる。

 新たな世界。新たな時代。次に彼を待つものは一体、何か。




「Everybody !」

「これから皆さんには、王様ゲームに参加して頂きます!」
「最終的に勝ち残るのは〜たった一人!」
「敗者には、罰をォ!」

RIDER TIME !
「仮面ライダーディケイド VS ジオウ -ディケイド館のデス・ゲーム-」

「仕組んだのは、真実のソウゴだな」
「モンスター以外に……殺人者がいるということ」
「この戦いは……ここでは終わらない」
「お前をここから出すわけにはいかない!」


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「選挙だ!」

「ソウゴCに一票を!」
「清き一票をよろしくね」
「よろしくゥ!」
「俺に投票しろよ……」
「なんとしても選挙に勝て、ソウゴ!」

RIDER TIME !
「仮面ライダージオウ VS ディケイド -7人のジオウ!-」

「今や世界は滅亡の危機に瀕している」
「最も優れた常磐ソウゴが世界を救う」
「戦争だ」
「真実のソウゴを倒すため」

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