ごくありふれた正義の味方   作:taiken

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ちょっと士郎くんを美化しすぎたので現実入りまーす。


ありふれた失敗の話

 

 六月も終盤となり、そろそろ期末考査も近いという時期になって、光輝たちのクラスで一つの出来事があった。

 

 士郎が学校を休んだのである。

 それも一週間。

 

 何事かと光輝が電話で連絡を取ってみれば、怪我で入院してしまったという。

 

 

 休日に光輝の提案で、いつもの四人は士郎の見舞いに訪れていた。剣道部も空手部も

士郎は個室ではなく、相部屋の窓際に座り、誰かと話をしている。

 

「…本当に衛宮はさぁ。自己管理ってのがなってないよね。大事な大会をすっぽかすなんて。僕がどんな気持ちで大会やってたと思ってるワケ?」

 

「すまん、慎二。その件は俺が悪かった。」

 

 

 話している相手は士郎の旧知なのだろうか。大会というのは、恐らく弓道の大会だろう。

 

「せいぜいそっちの弓道部でイビられてくればいいよ。次の大会で、僕に負けるまではお前を許さないからな。」

 

 言いたい事を言いたいだけ言って、慎二という少年は士郎の席を離れ、病室から出て行こうとする。

 

 その背中に、士郎が声をかけた。

 

「慎二!」

「何だよ?」

「次の大会まで練習をサボるなよ。俺が必ず負かしてやるから。」

 

 それを言われた慎二という少年は、端正な顔に笑みを浮かべる。光輝たちに気付いたようで、軽く会釈をすると満足気に去っていった。

 

「こんにちは衛宮くん。今の人、衛宮くんの知り合い?」

 

「割と偉そうな人だったわね。怪我の具合はどう?」

 

 香織と雫が士郎に声をかける。最近、士郎は二人ともたまに話すようになった。光輝や龍太郎と仲良くなった友人でも、二人とは仲良くなれずいつの間にか去っていくことが多いので、三人の仲が良いのは非常に嬉しかった。

 

「怪我はもう痛みもないぞ。今来てたのは間桐慎二。中学の時からの親友だ。高校は別になっちまったけどな。」

 

 

「落ちたの?」

 割と失礼なボケを言う香織に、光輝がツッコミを入れる。

 

「こら香織、間桐くんに失礼じゃないか。彼だって進路を選ぶ権利はあるだろう?」

 

 光輝がすかさず慎二のフォローをする。士郎の前で親友を貶めるのは流石にまずいだろう。

 

「勉強なんて自分で出来るって言って、近くの高校に言ったよ。あいつ、多分光輝くらい勉強は出来るんじゃないか?」

 

「そうか。今度じっくり話をしてみたいな。勉強法とか教えてもらいたい。」

「携帯のメールアドレスでいいか?」

 

 光輝と士郎がやりとりをするのを眺めつつ、雫は慎二について考えていた。端正な顔立ちと雫と同じくらいの身長、加えて文武両道となかなかにそつがない男だ。

 

(でも、何となく檜山っぽい厭らしさがあったわね。)

 雫は慎二に失礼なことを考える。光輝の能力を持った檜山などただの害悪でしかない。

 

 

「しかし、かなり義理堅い友達を持てたよな。中学時代の友達の見舞いに来るなんて、中々いないぞ。」

 

 龍太郎の言う通り、昔は仲が良くても徐々に疎遠になることは珍しくない。

 進学先が別々でも交流が続くということは、二人の相性もいいのだろう。

 

「言い方は極悪だったけどね。」

 香織がそう言う。

 

「それが慎二の味なんだよ。あいつは、わざとああいう言い方をして自分が悪役になろうとするんだ。」

 

 微笑みながら言う士郎に、光輝もまた微笑むのだった。

 

「なるほど。つまりそれってメンドクサイ人だな。」

 

 恐らく、何かを拗らせたところがあるのだろうな、と光輝は想像した。

 その原因は分からないが。

 

 慎二についての話題が終わり、光輝たちは一週間分の授業の進捗をまとめたノートを士郎に渡した。

 ちなみに全て光輝が書いたものだ。

 

「えっ……いや、流石にそこまでは世話になれん。悪いが返す。」

 

「いいから受け取れ。」

 

「こういう場合、人の好意は素直に受け取っとけ。あと光輝は頑固だから、拒否っても置いてくぞ。」

 

 

 その後も士郎は抵抗したが、数分間の交渉の末に観念した。

「ありがとう、光輝。試験の参考にさせてもらう。」

「すぐに戻って来いよ。皆待ってるからな。」

 

 最後に、龍太郎がひとつ士郎に忠告をした。

 

「今回怪我したの、どうせまた人助けかなんかやって無茶したんだろ。あんまり無茶すんなよ。」

 

 

「いや、それは違うんだ。」

 

「じゃ何で怪我したんだ?」

「自分のためだ。全部、自分の責任でこうなった。」

 言い訳をするのは男らしくなかった。

 

 

「お前なー。……まあ、それはいいけど、弓道部の仲間にはちゃんと謝っとけよ。時間をかけて信頼を取り戻してくのが、誠意ってもんだ。」

 

 それは、実に龍太郎らしい気遣いだった。

 

「そうだな。必ずそうする。ありがとう、龍太郎。」

「じゃあ、また来週だな、士郎。」

「ああ。またな、皆。」

 

 

 

 

 病院を出ていく時に手を振る香織たちに手を振り返しながら、士郎はひとり反省していた。

 

(完全に俺の自業自得だ。)

 

 今回士郎が怪我をしたのは、慈善活動のためではない。

 

 将来進学するための学費を稼ごうと、バイトをしていた時に事故にあったのだ。百パーセント士郎の自業自得なのである。

 

 切嗣は、どうやって稼いだかは教えなかったが士郎に多額の遺産を残した。相続税によって大部分がなくなったが、今でもそれは士郎の支えになっている。

 

 とはいえ、せめて大学進学にかかる費用くらいは自分で稼ぎたいと中学時代から始めたバイトで、今回肩に火傷を負ってしまったのだ。

 

 真剣に弓道に取り組んでいる仲間たちに不誠実だった。許されなくても、謝って償っていくしかないだろう。

 

(……バイトのシフトを、少しだけ減らすか。ネコさんのとこなら、怪我もしない。)

 

 士郎は光輝のノートを見ながら、今後のスケジュールを頭で組み立てるのだった。




Fate原作でもあったこのイベントは慎二くんがかわいそうだった。
この作品の慎二くんはライバルなので退部は勧めません。勝ちたいからね。
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