ごくありふれた正義の味方   作:taiken

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デバフ使い&弓使いが一緒に居るチームとか敵からしたらクソウザいと思う。
なので強いチームは真っ先に士郎くんを潰すと思います。


ありふれた本編の話 模擬戦のその後

 

 ハイリヒ王国の訓練場。

 連日の訓練で荒れ放題になり、その都度土魔法や錬成によって整地されるここで、士郎は黙々と的を射ていた。

 

(今日は昨日より遠くからでも中る。)

 

 そう確信して、昨日より五歩離れて射る。矢は、寸分違わず的の中心に中り消える。

 

 士郎たちのレベルは、連日の訓練で上昇し身体能力や魔法力も向上している。とはいえ、技能というものはただ力を振り回せば良いというものではない。力の入り過ぎによって狙いがそれることだってある。今士郎がしている訓練は、的に対しての距離と自分自身が込める力の割合を体感的に計算し、普段通りの感覚で的を射るというものだ。向上した身体能力に、己の技量が届いているのかどうか、という己との戦いでもある。

 

 魔力という概念を得たことで、士郎たちの身体能力は確かに向上した。ただその一方で、技術面が強化された身体能力に追いついていない。檜山たちとの模擬戦で士郎が檜山を倒せたのも、檜山の動きが本来のそれより雑になっていたためだ。

 普段の檜山なら、幸利と恵理との間に割り込んで士郎に射させないような位置に立ってから攻撃しただろう。それをしなかったのは、一人で士郎の相手を任せた近藤を気遣ったこともあるだろうが、身体能力の強化で心身が高揚してしまったことも無関係ではない。慣れない力というものは、思考を鈍らせて単純で楽な手段へと至らせる。

 

(……まだまだこんなんじゃ駄目だ。)

 

 士郎は、ここ数日で行われたクラス対抗戦を思い返す。

 

 士郎、幸利、恵理、鈴のパーティは、模擬戦の結果、クラス内で三番手の戦力という位置づけになった。幸利の闇魔術は、人間相手だと現時点では数秒しか効かない。だが、その数秒で生まれた隙を、士郎と恵理というアタッカーは逃がさない。焦って反撃しても、鈴の結界術で体制を立て直されその隙に反撃されるので、クラス内では”厭らしい戦い方をする連中”だと嫌われることにもなってしまった。

 

 だが、上には上がいる。

 

 士郎は結局、光輝たちや永山たちから幸利たちを守ることが出来なかった。それぞれのチームと行った模擬戦では、真っ先に自分が倒されてしまい、後衛系の天職である幸利たちは前衛系の天職持ちに成す術もなく蹂躙された。

 

 光輝たちと戦った時には、遠距離攻撃要因は光輝だけだった。そのため遠距離戦に徹すれば勝てない相手ではないと思っていたが、幸利の闇魔法を香織の補助魔法で打ち消され、恵理の攻撃魔法を、全属性の魔法に適性のある光輝に粉砕されると、士郎一人で龍太郎と雫の相手をすることになってしまった。

 

 雫は異世界に転移したことで、クラスでもトップクラスの敏捷性を得ていた。その速度は檜山どころか光輝すら超えており、矢が中ったと思った瞬間に木刀で切り払われてしまった。結局、追いついた龍太郎と雫に二対一に持ち込まれた。

 

 士郎の近接戦闘能力は、前衛系の天職、それも一つのことを極める寸前にまで打ち込んできた人間に比べて高くはない。龍太郎や雫が相手だと、一対一でも勝率は良くて四割だ。鈴の結界による支援があろうと、二人を相手にして勝てるものではなかった。

 

 また、永山たちのパーティには作戦や立ち回りで大きく差をつけられた。士郎が戦った中では、連携が最も上手いチームだった。

 

 戦闘開始直後に土術師の野村が発動した中級の土属性魔法によって、士郎は初手で仲間と分断された。孤立した士郎に、すかさず付与術士の吉野によって強化された永山が突撃してきた。

 身体能力が強化されていても、永山だけなら凌ぐことは出来る、と思い込んだ。同じく身体能力が強化された檜山を相手に勝ったという過信もあった。

 

 だが、永山との戦闘態勢に入った瞬間に、遠藤の不意打ちを喰らいあっさりと敗北した。遠藤は確かに地味だ。しかし地味なのは自己主張を控えめにしているからであって、その能力の高さは警戒しておくべきだった。

 結局士郎が敗北し、幸利の闇魔術も辻の魔法で回復されると、鈴たちにも成す術もなくそのまま全滅してしまった。前衛のいない後衛、後衛の支援のない前衛もどきなど、一定以上の実力がある人間に連携されると単騎ではどうしようもない、ということだ。

 

 士郎には気配探知と魔力探知の技術もあった。あの状態からでも、不意打ちさえ凌げば三人のうちの誰かに一矢報いることは出来たはずだ。

 魔力探知は普段己の内側にある魔力を己の外側に広げて違和感を察知する技能で、気配探知も周囲の音や嗅覚で些細な違和感を感知するという当たり前の技術だ。それを怠った結果の惨敗だった。

 

 気配探知も魔力探知も、意識して使わなければ意味がない。目の前に永山が居たとか、そもそも分断を警戒して先行せず四人で行動すべきだったとか、悔いの残る戦いだった。

 

(……情けないな、俺。)

 

 雑念と共に放たれた矢は、的からそれて飛んでいく。

 ふう、と士郎はひとつ深呼吸をする。模擬戦を思い返す度に、このままではいけないという思いが強くなる。もっと強くならなければならない。

 

 

 あの敗北は、実戦であれば死んでいた、ということ。

 士郎が一人で戦い、一人で野垂れ死ぬのならそれは自業自得だ。だが。士郎の後ろには守るべき仲間が居た。なのに、何も出来なかった。

 魔物も生き延びるために群れをなして来るだろうし、魔人族は訓練よりさらに狡猾に知恵を絞ってハイリヒ王国に攻め入るだろう。魔物や魔人族の具体的な力量は今は分からないが、少なくとも、メルド団長たちより上だと見て間違いはない。でなければ自分たちが召喚されないからだ。

 

 その時、今のままでは確実に皆が死ぬ。弓の弦を見直し、士郎はさらに熱心に的を射るのだった。

 

 

 

『いいかい士郎。暴力をふるってはいけないよ。』

 そう、切嗣にも教えられた。それは当たり前の道徳で、しかし今は脇に置くべき理屈でもあった。

 

『暴力に頼る人間は、人を傷つけることに躊躇しなくなる。』

 

 皆にそうさせるのが嫌だったから、召喚のときに自分が戦うと言った。

 だが現実は、士郎はそこまで強くはなかった。クラスメイトたちは、士郎が思うよりずっと強い。チームを組み戦いという行為に慣れ始めることで、戦争を嫌悪しつつも徐々にではあるが訓練に前向きになっているのだ。

 

 自分自身の現在の力量に限界があるとき、士郎が取るべき手段はまだある。士郎は一人で戦っているわけではなく、一人で生きていける世界でもないのだ。だが士郎がその手段を取るには、彼自身が己に課している心の枷が問題となっていた。




ありふれ原作のチーム構成を見てると永山パーティも絶対強いと思う。

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