オークに育てられた女騎士   作:中島ささかま

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ニシノシタ大陸に攻めてきたギーゴン達の様子を探るため活動していた一団は遠くに大きな煙を発見し、原因を探るために訪れた。


出会い

 プゴルは、かつて村だった場所に足を踏み入れた。彼の所属する部隊が遠くに村の燃える煙を見つけ、プゴルともう一人は様子を見るよう指名されたのだった。

 

 「よう、ここはギーゴンどもの村のようだな。自分たちで火をつけたのか、争った様子がねえ。何かから逃げるのにものを残したくなかったのかねぇ…―ふっ 相変わらず口数がすくないねぇ。よけいにモテねえぞ。」

 

 「お前は口が達者だから、嫁を見つけられたのか?結婚したばかりで招集されてちゃ甲斐がないな。」

 

 「せっかく安全そうな任務にお鉢が回ってきたんだ。さっさと終わらせて予備隊に回りたいだけだ。」

 

 プゴルたちは燃え残った村の家々をしらみつぶしに調べていく。一緒に指名されたミミゲルの言うように何か魔物か野盗などギーゴンの村を襲う理由のあるものから逃げるために火をつけたようで、細々したものは置かれたままであった。その「何か」は村が燃えたことであきらめたのか村には来なかったようで、荒らされてはいなかった。

 村に放たれた火は燃やせるものがなくなり消えたようで、彼らが見た煙は最後の燻りだったようである。

 プゴルたちは、村を一回りすると比較的大きな建物に行きついた。

 

 「ここはギーゴンどもの信じる神の家だな。死人の家も裏にある。」

 

 「中に何かあればもらっていこう国の学者どもが喜ぶ。」

 

 プゴルが先に立ち、中に入ると目に付くものを袋に入れていく。ここは、ギーゴン達が生活するうえで必要なものは少なく、そのかわりにギーゴン達の考えや進行を知る本が多くあるのだ。この神の家はレンガでできており、中のものは燃え残っていた。

 

 

 「――」

 

 

 「ん?何か聞こえなかったか?」

 

 「プゴル…お前、真面目だよ本当。適当でいいんだよ適当で。」

 

 

 「――」

 

 

 「ほら、生き物の声だ。」

 

 「せめて食べられりゃいいが。」

 

 プゴルたちは声のした方へ歩みを進める。すると、ギーゴン達の信じる神の像の足元に籠が置かれていた。

 

 「「赤ん坊か」」

 

 ミミゲルと声が重なり、2人ともなんとなしにはにかむ。籠の中には、泣きつかれて眠っている赤ん坊がいた。プゴルが赤ん坊の入った籠を持ち上げると、ミミゲルが袋を背負いなおしながら神の像に一瞥をくれる。

 

 「しっかしギーゴンどもの神はどうしてこんな趣味が悪いかねぇ」

 

***

 

 「ふーむ。栄養失調になりかけているな。おそらく火がついてから消えるまでの間、何も口にしていない。ギーゴンの赤ん坊が何を食べるのかはわからんが、学術院によると我々とそう変わらないらしいから、パパオ実のしぼり汁でよさそうだ。最悪、法術で何とかなるが…今の我々には任務がある。少し食べさせたら、元の所に置いた方が親が戻るんじゃないか?」

 

 「町の住人が火をつけているのに、籠に入れておくような親だ。俺の配給分を少し減らしてパパオの実をくれ。」

 

 「料理の味付け用にはあるだろうが、そう上手くはいかんだろう自分で探せ。一応、料理班には声をかけておいてやる。」

 

 赤ん坊の入った籠をそっと持ち上げると、隊長に報告していたミミゲルと落ち合う。

 

 「隊長も赤ん坊には責任持てん。お前個人の裁量で何とかしろととさ。お前が死んだら、近くのギーゴン達の集落において行くそうだ。と言ってももう、国に帰るだけだがな。」

 

 「何が起こるかわからん。それこそ襲われる可能性もある。」

 

 プゴルは真面目な顔をしてミミゲルに行ったが、しばしして2人は吹き出した。

 プゴルの住む村ヤマイロまでの道のりも特に何事もなく帰ることができた。いや、何事もなかった訳でもない。ギーゴンの村で拾った赤ん坊に四苦八苦させられていた。腹が減っては亡き、便や尿を出しては泣き、眠ったかと思ったらすぐに起きては泣きしてプゴルを困らせていた。

 プゴルは気ままな一人暮らしを満喫していたため、育児経験もなかった。試行錯誤して赤ん坊に振り回されていたという表現が正しい。腹が減ったのだろうとパパオの実のしぼり汁を飲ませようと顔を濡らして泣かせ、自分の母親がしてくれたように肩に担ごうとして泣かれしていた。部隊に参加しているのはプゴルのような独り者か、ミミゲルのような新婚であり、医術的立場からのアドバイスはあったものの、ギーゴンの赤ん坊に短い旅路中困らされていた。赤ん坊を荷袋の内の一つに包んで背負いミミゲルと連れ立って村の中を歩く。

 

 「あなた!!」

 

 家の戸を開け、女性が走ってきたかと思うと抱き着く。ミミゲルも女性を受け止め、相好を崩していた。声に驚いたのか、背中の赤ん坊が泣きだすとミミゲルの両親も何事かと出てきた。ミミゲルの母親はプゴルの背中にいるギーゴンの赤ん坊を見るとぎょっとした表情をしたものの、泣き顔をみると赤ん坊を取り上げ、胸に抱いて顔を覗き込むと笑顔になり、ハミングを歌いながら尻をやさしくたたいた。しばらくすると赤ん坊も泣き疲れたのか眠ってしまった。

 

 「ビエンが眠った。俺がどうやってもしばらくは泣き続けるのってのに。」

 

 「このギーゴンの子供はビエンっていうのかい?ま、私も伊達にミミゲルのほかに4人も育てちゃいないさ。この子はどうしたんだいプゴル。」

 

 「積もる話もある。新婚さんも放っておけないから家に入らせてください。」

 

 プゴルはミミゲル一家と連れ立ってミミゲル家に入ると椅子に座る。

 ミミゲルの奥さんの入れたミッソを飲みながら魔大陸側に行って見てきたことを話す。

 

 「箝口令と言ってもいつもと同じだ。魔大陸キタニアに忍び込み、ギーゴンやドルンのやつらの様子を探るだけだ。で、モミーナ、さっきの音は何なんだ?」

 

 「大人になると男どもは大きな音が好きになるからね。子供はああいう声であやすんだ。それに、この子が疲れてたからさっと眠ったけど、こりゃギーゴンの子だろ?どうするんだい?」

 

 「ギーゴンには個人的な恩がある。このビエンは捨てられていたところを拾ったんだ。今のところビエンしか言わんが育ててみるさ。」

 

 「言うも何も、まだ首も座ってないよ。喋れるわけないじゃないか。男やもめが子育てねぇ。またうちに来な。」

 

ミミゲルが心配そうな顔をしながらこちらを見ていたが、何も言ってはこなかった。

 

***

 

 ご近所づきあいで助けてもらいながらビエンの子育てに奮闘する日々だった。

ミミゲルが様子を見に来てくれたり、たまにだが奥さんも手伝いに来たりと大変だったが、それなりに楽しい日々を過ごし五年がたった。

 

 「父さん、ビエンと父さんはなんで見た目が違うの?男と女だから?」

 

 「それもあるが、ビエンはギーゴンで父さんはオークだからな。」

 

 「ギーゴンとオーク?ギーゴンとオークじゃ肌の色も違うの?」

 

 「ああ、その通りだよ。」

 

 「ふーん。じゃあ、ミミゲルの家のモジローはオークだけど、お母さんのコウロさんとモミーナさんもそれぞれ違う種族だよね。」

 

 「その通りだよ。モジローの母ちゃんはトカゲ人で、おばあちゃんのモミーナは確か山羊頭人だ。オークに女は生まれないからな。」

 

 「じゃあ、なんで私の家にはお母さんのギーゴンがいないの?」

 

 「お前をギーゴンの村で見つけて拾ったんだ。さあ、おしゃべりはもうおしまい。」

 

 「え~、もっと教えてよぉ。」

 

 駄々をこねる娘を寝かしつけ、寝顔を見ながら思いをはせる。昔、キタニア大陸のそばの荒野を旅していた時にギーゴンの旅人に助けられた時のことを。彼はオークのプゴルも差別せずに親切にしてくれた。

 それからしばらくしてギーゴン達が武器をもってオークの暮らすニシノシタ大陸に攻め入ってきたときには悲しかった。

 ギーゴン達はプゴルの暮らしていた集落を焼き払い、オーク達を殺して回った。ドルン達の姿も何人か見た気がする。『貴様ら豚顔は駆逐されるべきなのだ』という言葉が忘れられなかったが、ギーゴンの男に助けられたこともあり、プゴル個人はギーゴンのことが恨み切れなかった。そんなこともあり、ギーゴンの村でビエンを見つけた時に助けてしまったのだ。

 寝息を立てる娘の顔を改めて見る。ギーゴンにしては珍しく、髪の毛は骨と硫黄の混じった色に見える。これはドルンの特徴だが、耳が丸い。これはドルンでなくギーゴンの特徴だ。

 そこでふと思い出す。荒野で助けてくれた男に「ギーゴンはオークのことが嫌いなのだと思っていた」と伝えたことを。

 

 彼は「ギーゴンつまり人間はオークを嫌うが、私は別だ。荒野で迷っているものは分け隔てなく助ける。私もトカゲ人に助けられたから」と笑って言った。そしてこう続けた。

 

 「人間もオークも大して変わらない。オークは強いが、ギーゴンだって強く賢く生きることができる。そうだろう?」

 

プゴルはその言葉を思い出しながら眠りについた。

 

***

 

 朝起きると、隣にビエンがいた。昨日のことを思い出しながら顔を撫でると、ビエンは目を覚ました。プゴルはビエンを抱きかかえ、洗面台に連れていくと顔を洗い始めた。

 

 「おとうさん、おはよう」

 

 「おはようビエン。お前もいつかはギーゴンの国に行くかもしれん。だが、そのためにはこの大陸で生き延びなければならん。お前も自分の尻ぐらい自分で拭けないとな。」

 

 「うん!」

 

 「よし、いい返事だ。さあ飯を食うぞ。今日も忙しいからな。」

 

 朝ご飯を食べ終えると適当な長さの棒に石をくくりつけ、簡易的な斧を作るとそれをビエンに手渡した。そして自分は棒だけを持つとビエンと向かい合う。

 

 「さあ、ビエン。まずは好きに打ち込んできなさい斧の使い方はわかるな。」

 

 「うん!お父さん、行くよ!」

 

 ビエンが打ち込んできた。まだまだ力任せなところはあるが、それでもしっかり筋は通っている。ここ最近薪を割っている成果が出ているようだ。

 しかし、弊害もあるようで振り下ろすような動きが多い。

 

 「斧は上から下へ叩きつけるように使う以外にも使い方はある。」

 プゴルが手に持つ棒でビエンの持つ斧を巻き込むとそのままはじいてしまう。

 

 「あっ・・・」

 

 あっけにとられた顔でビエンが声をもらす。

 

 「どうだ?これが巻き込みだ。」

 

 「すごいね。どうやってやるの?」

 

 「今みたいに相手の武器を巻き込んだり、あるいは相手を転ばせたりもできる。」

 

 「すごーい。」

 

 「それに、相手の動きをよく見ておかないとできない。

 

 その日は一日巻き込みの練習に費やした。

 

 「さて、今日はここまで。そして、ビエン。斧は何のための道具かわかるか?」

 

 「木を切るため?」

 

 「そう、木を切る道具だ。だが、使い方によっては自分や自分以外を傷つけることができる。特に人と対峙するのは父さんだけだ。」

 

 「どういうこと?」

 

 「もし使い方を間違えれば誰かが傷つくかもしれないということだ。」

 

 「そんなのダメだよ!!」

 

 「ああ、そうだな。だからこそお前には戦い方をしっかりと覚えてほしい。」

 

 「わかった!おとうさん、ありがとう!」

 

 それから、ビエンの修行が始まった。毎日プゴルと打ち込みをし、時には狩りにも出かけた。荒野での生き方も伝えていく。最初に尿から蒸留した水を飲むときの顔は忘れられない。時には隣のモジローと喧嘩して顔中を腫らして帰ってくることさえあった。

 そんな日々が続いたある日、村中をひっくり返すような騒ぎが起こる。おめでただったモミーナの所に子供が生まれたのだが、オークの女の子が生まれたのだった。オークは男しかいない種族である。絶大な戦力で他種族の加勢をすることで信用を得、他種族から女性を向かい入れて子供を産んでもらう。男であればオーク、女であれば女性側の種族が生まれ、出身地に届けられるかオークの村で育てられ誰かと結婚をする。

 

 「お父さん、オークに女の子が生まれるのってそんなに珍しいの?」

 

 「ああ、ありえない。」

 

 「どうしてだろう?」

 

 「わからんが、オークの女は神話に登場する程度だ。これは魔王様に報告せねば」

 

 「まおうさま?」

 

 「まあ、いずれわかる時が来るさ。」

 

 オークの村にはビエン以外に女の子がいなかったのでミミゲルのところに生まれた女の子はユミルと名付けられ大層可愛がられビエンと姉妹のように育てられた。

 




思い付きで書いてみたものをAIノベリストに入れてみたら意外に続きが書けました。
AIノベリストの出してくるものが「絶対に違う」と思うと続きが書けたし、「人間もオークも大して変わらない。オークは強いが、ギーゴンだって強く賢く生きることができる。そうだろう?」
という一文をだしてきたときには全く思いつかない文章だったのでしびれました。
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