【東方】幻の蛇を追って蛇が幻想入り【鉄歯車】小説版   作:John.Doe

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第一話 SNAKE IS LOST

 1964年。アメリカ、CIAのFOX部隊に所属するジョン――――愛称ジャック――――が、部屋で葉巻を吹かしていた。顎や口周りに生えた髭と、右目に着けた眼帯が特徴的な彼は、この至福の一時を楽しんでいた。紫煙を燻らせる彼の部屋に、ノックの音が聞こえる。入る様に促した彼が、この至福の一時を中断させた相手を確認すると、再び葉巻を口にした。

「ジャック。よく聞いてくれ」

「なんだ、少佐……ここしばらく見なかったが、どうかしたのか」

 入ってきたのは少佐と呼ばれた50過ぎの男。左目のあたりの傷と白髪が印象的な彼は、仲間内からはゼロ少佐と呼ばれる、ジャックの友人であり上司だ。

「ジャック。あまり蒸し返したくないが……ソ連でのこと、覚えているな」

「……スネークイーター……?」

 そうだ、と肯定してゼロは続ける。

「君はソ連に潜入、一度は失敗したものの、再度潜入したスネークイーター作戦で多少の犠牲や誤差はあったが見事に作戦を遂行。君は望んではいないかもしれないが、BIG BOSSの称号を手にした……」

「……それで。よもや、雑談に来た訳でもないんだろう」

 動揺を押し殺し、先を促した。スネークイーター作戦。ジャックがネイキッド・スネークのコードネームを用いてソ連、ツェリノヤルスクへ潜入。一週間前に行われたバーチャスミッションでアメリカを「裏切り」亡命したザ・ボス。ツェリノヤルスクで起きた核爆発……核弾頭砲撃が「亡命した売国奴、ザ・ボスが撃ちこんだ」とし、アメリカの身の潔白を証明するための作戦。具体的には、ニコライ・ステパノヴィッチ・ソコロフの救出、奪還。新型核搭載戦車、シャゴホッドの破壊。GRU大佐、エウゲニー・ボリソヴィッチ・ヴォルギンの抹殺。そして、ジャックの師であり、アメリカを裏切り亡命したザ・ボスの抹殺……ジャックは見事に本作戦を達成し、大統領からTHE BOSSをこえる者としてBIG BOSSの称号を授与された。

 しかし。ジャックは作戦中サポートをしていたEVAからザ・ボスの意思と真実を聞き、またどうであれ自身の師であり親であったザ・ボスを自身の手で殺したことで、素直に喜ぶことは出来なかった。意を決したスネークは、ゼロを始めFOXの主要メンバーにザ・ボスの意思を告げた。ゆえに今のFOXは、自身らのみだとしても、ザ・ボスの意思を継ごうという意思を共有していた。

「その通り。君に一つ……そうだな、頼みごとをしたいんだ」

「頼みごと……? 任務じゃあないのか?」

「いいや、これはCIAもFOXも関係ない……私個人からの「頼みごと」だ」

「それで……? 俺にわざわざソ連くんだりまで行かせて何をお使いさせるつもりだ?」

 わざわざスネークイーター作戦のことを引っ張り出してきたのだ。ソ連に行かされることは想像に難くない。

「うむ、察しがいいな。君にはもう一度、ソ連に潜入、あるものを捕獲(キャプチャー)してきてもらいたい」

「スナッチ・ミッションか?」

「いいや……対象は人間ではない」

「ではいったい何を?」

「覚えているか、ジャック。君のグラーニニ・ゴルキー南部での行動を――――」

 

 

 

 1964年、8月。スネークイーター作戦に当たっていたスネークことジャックは、グラーニンに会った後、ソコロフが連れていかれたというグロズニィグラードへと行くべく進行していた途中、グラーニニ・ゴルキー南部において衝突したコブラ部隊の一人、ザ・フィアーをなんとか退けたところであった。激しい戦闘と、いつからか食料が尽きていたことで、腹を空かしていた彼は、動植物も多いここで、一旦腹ごしらえをしようと考える。

(昨日の夜仕掛けたネズミ捕りに、何かかかっていればいいんだが……)

 ちょっとした高台に設置されたネズミ取りを覗きこんだスネーク。すると……見た事の無い「何か」がかかっていた。細長くなく、寸胴であるところを除けば、頭の形や模様などは蛇のそれを思わせる。

(……これは、蛇……なのか? パラメディックにでも聞いてみるか……?)

 右肩に装着した無線機に手を伸ばし、軍医であり食料などの情報を記した資料を持つパラメディックの周波数に合わせる。すると、開口一番、やかましい声が聞こえてきた。

『スネーク! ツチノコを捕まえたのね!』

『なんだって!?』

『ホントか、スネーク!?』

「ああ…………」

 パラメディックの声に反応したゼロとシギントが会話に加わる。そのあまりにも高いテンションに、あきれ半分驚き半分でスネークは返す。

『よくやった! さすがはザ・ボスの弟子だ!』

『ああ。君を送りこんだ甲斐があったというものだ!!』

 念のため言っておくと、ジャックはボスの弟子であることに変わりないが、どう考えてもボスの弟子だから捕まえられた訳ではないし、ツチノコを捕まえる為にソ連に来たということでもないのだが……ちなみにこの二人、CIA非公式クラブ「UMA探究倶楽部」のメンバーであり、シギントが副会長、ゼロが会長を務めていたりする。

『さっさと任務を終わらせてそいつを連れて帰ってきてくれ。絶対食べたりするんじゃないぞ。いいな!』

「…………(変人ばっかりだ)」

 実を言うとスネークも第三者から見れば大分変人ではあるのだが、敢えてそこに触れないでおこう。

 

 

 

 

 ジャックは回想を終え、一つの結論を導き出した。あまりにもバカバカしいが。

「あの蛇を食べたことか」

「そうだ! 全く、あれほど食べてはいかんと言ったのに君という奴は……」

 憤慨気味に言うゼロに、ジャックは負けじと憤慨気味に言い返す。

「しかたないだろう! 食糧もなくなって、腹が減っていたんだ!」

 スネークイーター作戦は、ジャックが単身ツェリノヤルスクへと潜入するミッションであり、公式の支援は殆どあてにできなかった。ゆえに、戦士と工作員の役割だけではなく、全ての役割を一人でこなさなければならなかった。無論、食糧の調達も。サバイバルを行いながら任務をこなさなければならなかったのだ。

「確かに、君の言うことももっともかもしれん。君の空腹が過ぎれば、どちらにせよツチノコは持ち帰れなかったかもしれない。それに、確かオセロットにバックパックを捨てられたとも言っていた。だが――――食べてしまったからには責任をとらねばならない。大人とはそういうものだろう? スネーク」

「…………まさか…………」

「そう。君に頼むことは一つ。もう一度ソ連、ツェリノヤルスクへ潜入。どこでもいい、ツチノコをキャプチャーしてくるんだ。いいな!」

 そのあまりにも馬鹿馬鹿しい頼みごとに、ジャックは盛大なため息をついた。

 

 

 

 

 

 1964年、ソ連上空三万フィート。

『降下一分前。間もなく日の出です』

 ハッチ内にアナウンスが聞こえる。再びコンバットタロンに乗り込んだジャック達FOX部隊だが、一体ゼロはどうやってコンバットタロンを拝借したのか誰も知る者はいなかった。というより、自分とゼロ、そしてシギント以外はどうしてこの作戦に参加しているのかと考える者が多数だった。実際は、大半がゼロに半ば強制的に参加させられているのだが。パラメディックを除いて。

『ジャック、今回もFOXメンバーがサポートする。心置きなく飛んでくれ』

『すべて正常。オールグリーン!』

 ハッチ内のランプがオレンジからグリーンに切り替わる。

 

 ハッチが開き、スタンドアップの指示からしばらく。オペレーターのカウントダウンが始まった。

『5,4,3,2,1――――』

『鳥になってこい! 幸運を祈る!』

 ジャックは鋼の床を蹴り、再びソ連の空へ飛んだ――――

 

 

 

 降下中、ジャックはゼロに無線を入れていた。

「ところで少佐。一つ聞いておきたいんだが」

『どうした、ジャック』

「なぜHALO降下なんだ? まさか――――」

『言っただろう? 潜入と。許可など無論とってはいない』

「冷戦下の状況を無視するのか?」

『ツチノコをとらせてくださいなど、敵国に頼めるようなことか?』

「……そうだな、誰もそんな馬鹿げたことを本気に――――」

 とりはしない、と続けようとしたのを、ゼロが被せる。

『ソ連のUMA研究者達が君がツチノコを捕まえたことがあると知ったらどうする!? 君の入国など簡単に断られ、山狩りをしてでも彼らはツチノコを探しだそうとするだろう!!』

 あまりにもあんまりな理由に、スネークはこの頼みごとを聞いてからもっとも大きなため息をついた。ああ、こんな頼みごと聞くんじゃなかった――――そう後悔しても、時は既に遅すぎた。

 

 

 

 森に突入したジャック。減速してもなおそれなりの速度を保ってはいる為、体に当たる木々が痛い。途中、バックパックを引っかけてしまい、またか! と思ったスネークだが、それでもまた取りに行けばいい――――そう考えて降下を完了するべく、パラシュートを体から離す。が――――

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 ジャックの四肢は地面を掴むことなく、そのまま体が崖の向こうへと放り出された。

『スネーク!!』

 ゼロが叫ぶ。スネークが落ちた後を、ふわりふわりとパラシュートが追っていった。なんとも、滑稽な光景である。

 

 

 

 

 

「…………ッ! ここは……?」

 目を覚ましたジャック。

(俺はツェリノヤルスクで崖から落ちた……はずだ。なのになぜ動ける!? 無傷でいる!?)

 ツェリノヤルスクの崖は、とてもじゃないが人が落ちて助かるような崖ではない。そう考えると、動けるどころか傷一つ負っていないことを疑問に思うのは当然のことであった。しかし、今はとりあえずそんなことの理由を考えるより先に考える事がある。バックパックが無い今、持っているものを確認する。

(EZ GUNにフォーティーファイブ、それとパトリオットも無事だな。ナイフも2本ちゃんとある。それにこれは……スニーキングスーツか。腕でも引っかかったか?)

 ボスから受け継いだものの一つであるパトリオットが無事であることに一安心する。本当は墓場に置いてくるべきかとも思ったのだが、手放すな、とボスが言った為に、絶えず携帯しようと思ったのだ。新たなパトリオットの相棒となれるかは疑問であるが。

(無線機も無事のようだな――――――ッ!)

「しまった! カ、カロリーメイトが……! 楽しみだったんだが……新しいメープル味とやら……クソッ!」

 スネークイーター作戦時に支給されたカロリーメイトはチョコレート味だが、これがなかなかにウマかった。それゆえに、食いしん坊でもあるジャックは、今回新しく支給されたメープル味のそれを、バックパックと一緒に紛失したことにかなりのショックをうけたらしい。

 とにかく、気を持ち直してジャックは無線機に手を伸ばす。少佐達に連絡を取れればいいのだが……一つ、気になることがあったため、不安であった。無線機のコール音が鳴り響く。

『大丈夫か、ジャック!?』

「少佐? よかった、無線はつながるな」

『一体どうした?』

「崖から落ちた。目測を誤ったらしい」

『そうか。けがは?』

「何故かしていない。どこかの木にでも引っかかったのかもしれん」

『そうか。それならよかった。崖の上には戻れそうか?』

「いや、それが……」

 スネークが少し言葉に詰まる。それもそのはず――――

「その崖が見当たらない」

『何だって?』

「崖がないんだ。まるで、そう、どこか別の土地に来たような。それともう一つ」

『何だ?』

「辺りの環境も違うようだ。ソ連とは植物が全く違う。少なくともあの近辺にこんな木は無い」

 そう、気になったこととは、辺りに生えている木々が、ソ連で見たものと異なるということだ。

『ふむ……(パラメディック)』

 無線機から聞こえるのは、こちらに話しかけているものではない。マイクがたまたま拾っている位のものだ。

『(はい?)』

『(ジャックが植生がソ連と違うと言っているんだ。相談に乗ってやってくれ)』

『(わかりました)ジャック?』

 パラメディックの声がはっきりと聞こえる。ジャックの会話が再開した。

「パラメディックか?」

『そうよ。それで、どんな特徴か、分かる?』

 何が、というのが植物のものだとすぐに悟ったジャックは、改めて辺りを見渡す。

「そうだな……いくつかのものの葉の形が特徴的だ。カエデなどもあるようだな。だが、見た事もないようなのが一つある」

 どんな? とパラメディックが聞き返すと、ジャックはその見た事のない葉の落ち葉を手に取り、話し始める。

「葉が扇形で、上の方に切れ目があるようだな。それと、筋がその扇に沿うように入っている」

 その特徴にピンと来るものがあったのか、パラメディックが僅かな思案のあと、ある一つの予想を出した。

『それはもしかしてイチョウのものかしら……筋はきっと葉脈ね』

 聞いたことのない植物の名を聞き返した。

『中国が原産の落葉樹よ。中国や日本で多く生息しているわ。もしかしたら、将来は移植されて世界中にある……なんてことになるかもね』

「どうしてそうなるんだ?」

『イチョウはかなり特別なのよ。現存する唯一のイチョウ科の植物で、広葉樹にも針葉樹にも分類が出来ない、特別な木なの。まだまだわからないことが多い木で、解明には時間がかかるらしいわ。そうそう、種子植物のイチョウだけど、精子があることが日本人によって発見されているわ』

「精子、ね。羨ましい話だ」

 ジャックが少し寂しそうに言う。ビキニ環礁での実験で被曝を経験した彼は、生殖機能に支障が出ているのだ。行為に及ぶことは可能だが、精子を正常に作る事ができず、子を成す事は出来ない。それが彼の心に刺さったのだろう。

『あなたの境遇ではそう思ってもおかしくはないわね……じゃあ、あなた好みの話題にでも行きましょうか?』

「なんだ、実でも食えるのか?」

 ジャック好みの話題というと、ズバリ「味」である。食べられるかどうかよりも、味を重視する彼にはもってこいの話題だ。パラメディックの思惑通り、彼のテンションが上がる。

『そうよ。ちょっとクセがあるみたいだけど、日本なんかではかなり料理に使われるらしいわ。今はちょっと時期じゃないけど、時期になったら取り寄せてみたら? ただ、実の発するカルボン酸類のにおいがすこしキツいから、少し覚悟がいるかもね。食べるときは殻を割って中の仁を食べるらしいわ。火を通すと綺麗な緑色になるって話よ。どこかの蛇とは大違いね』

「蛇……ああ、ミドリニシ――――」

 言いかけたジャックの言葉を遮るように、パラメディックが喋り出す。軽くトラウマらしい。

『ところで! そのイチョウの実なんだけどあまり食べると中毒になると言われているから、取り寄せても食べ過ぎないようにね。逆に、喘息なんかに効果があるって話も聞いたことがあるわ』

「そうか。ところで、そのイチョウの実の時期とはいつなんだ?」

『11月ごろだそうよ。一度私も食べてみたいわね。ただ、ちょっと奇妙ね』

 うんちくをこれでもかと語ったパラメディックだが、奇妙な点に気付いたらしい。どうしてかとジャックが聞く。さっきも言ったけど、と前置きをして、パラメディックが説明を始める。

『イチョウはアジアのごく一部、中国や日本に生息しているの。ねえ、数はどれくらいある?』

「そうだな……辺りを見渡せば、空と地面をh見ない限りは360度どこでも一本は見えるな」

『……本格的に生息しているみたいね。それじゃあまるで、中国か日本にでもとんだみたいね』

 そんなバカな、と笑い交じりに言うジャック。それもそのはずだ。

「中国にしても日本にしても、パラシュート降下にミスして自由落下したんだぞ、とても届くような距離じゃ……」

『でも、崖は見えないのよね?』

 ズバリというのを突かれ、ジャックは黙ってしまった。

『うーん、そうなるとそうなるとその二国の可能性が否定できないわ。ツェリノヤルスクほどの崖なら、多少離れていてもすぐにわかるもの』

「……とにかく行動を起こしてみよう。何かわかるかもしれん。少佐、構わないな?」

『ああ』

 今ここで果報を寝て待っても、恐らくは何も起こらない。ジャックは腰を上げる提案を出した。

『だが気をつけろよ。それと……万が一のことを考えて、今回も本名は伏せたほうがいいな』

「そうだな。またネイキッド・スネークを使うか?」

『それで問題ないだろう。では、以後スネークと呼ぶ。他の者も、スネークイーター作戦と同じコードネームで呼び合うこととしよう』

「ああ。それではこれより……帰還を目指して行動を開始する」

 そう言うとジャック――――もとい、スネークは歩き出した。

 

 

 しばらく歩いても変化の見受けられない状態が続き、いかな訓練を重ねたスネークとはいえ、距離感をつかみにくくなっていた。

(何マイル歩いたか……それなりに歩いているんだが……まだ何も――――ん?)

 とある変化を見受けたスネーク。森の中に浮かぶ真っ赤な門――――鳥居だが、スネークが知る由は無い――――を見つけた彼は、他に何もない為、とにかくそこへ行ってみることにする。

 近付いて鳥居をくぐったスネークが見たのは、巨大な建築物だった。少なくともスネークの住むアメリカには無い形状で、見た事のないものだった。

(まいったな……無人か?)

 辺りを見回しても誰もいない。中にはいるのだろうか。だがいきなり中に踏み込む程スネークも不用心かつ無礼者でもない。少佐達なら誰かこの建築物を知らないかと、無線機に手を伸ばす。

「少佐?」

『どうした、スネーク』

「見慣れない建物があるんだが、少佐は知らないか?」

『一体どんな?』

「そうだな……かなりでかい。基本的に木造で、屋根は見た事のないものを使っているな。魚の鱗のように、何かを並べているようだ。それと、正面らしきところには木の大きな箱があるな。何かを入れられるようだ」

『あら、それ神社じゃないかしら?』

 ニッポン大好きパラメディックが首を突っ込む。スネークが聞き返すと、パラメディックは説明を始める。

『ええ。ニッポンの伝統的な建物よ。神様を祀る為のお屋敷で、屋根は恐らく瓦っていうものね。木の箱はお賽銭箱じゃないかしら。上に鈴がない?』

「ああ、このでかい金色のか」

『それとお賽銭箱を使って、神様にお祈りするのよ。せっかくだしやってみたら?』

「どうすればいいんだ?」

『えっと……確かお賽銭箱にお金を入れて、その鈴を鳴らすのよ』

「お金? いったいいくら入れればいいんだ?」

『お気持ち次第、ってところね。所謂チップみたいなものよ。ただ、ニッポンではよく「ご縁があるように」って5円玉を入れるようね』

「なら5¢でいいか。あまりアメリカの金は持ってきていないが……今回は擬装用のものを持っていてよかった」

 早速その5¢を賽銭箱に入れる。

「あら? お客さんかしら?」

 その音を聞きつけたのか、中から誰かの声が聞こえた。扉が開いて、中からその誰かが顔を出す。

「珍しいわね、参拝客なんて。お賽銭まで入れる人は特に」

 どこか機嫌の良さそうなその誰かは、紅白の装束を身に纏った、露出した脇と頭の大きなリボンの特徴的な少女だった。ここ、博麗神社の主、博麗 霊夢である。お互い、これが大きな事件に巻き込まれているがゆえのことなどとは思わないのであった――――

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