おりじ☆すとらいくっ!〜私、絶対天敵になります〜   作:あっき54868

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オリジス・ブーティー

 ナギを乗せたままでいいのか、とは思ったけど……時間もないうえ、これから戦場になるんだ。

 

 ここのが安全だと、そう自分に言い聞かせて機体を動かしていく。

 向かう先は体育倉庫。ついさっき、梓から入ってきていた。

 

『グラウンドの方向から出て! プレゼントがあるからにゃあ!!』

 

 という、メッセージのためだ。

 操縦桿を握り、まるで手足の延長のように淀みなく。私は灰塵級の鉄脚を動かしていく。

 

「よく、動かせるね……2回目でしょ?」

「思考操縦システムが主だからね」

 

 現在、背中から伸びたインプラント式ケーブルが操縦席の背もたれに接続されている。

 

 これを介してコントロールされている部分が大半なので、操縦桿とペダルはほぼ補助に過ぎない。

 

 ほんっと、こういう形式でラッキーだったよ……知識があっても、フルマニュアルなら動かせそうにないし。

 

『どうだにゃあ!! 見て!!』

 

 物思いに耽っていたら、梓の大声が私を現実へと引き戻す。

 頭部カメラアイを向けると、そこにあったのは……。

 

「ノクターンの、腕? それと……尻尾?」

『莉瑠が寝てる間に改造しといた。尻尾は手持ちの銃にしといたよ。近くに廃工場あって助かったにゃあ』

 

 見れば、あちこちに工具が散らばっている。突貫工事で、そこまでしてくれた事は感謝しかない。

 

『腕は飛ばせるから、いよいよってタイミングでぜひ使ってみて』

 

 新規武装(ロケットパンチ)を右腕に接続、量子格納。続けて、尻尾銃を携える。

 もう片腕で梓を拾い上げ、そのままコクピットへ案内していった。

 

「……ナギはIS、出さないの?」

「ダメージレベルBだし、まだ使えない」

 

 コクピットハッチを閉じる前に確認がてら訊いてみたが――正直、何が何やらだった。

 

 あくまで持っている知識は絶対天敵のものだけで、私は相変わらずISに関してはそこいらの小学生レベルの知識しかないのだ。

 

「あー、分かりやすく言うと修理中」

「なるほど、理解したわ」

 

 梓が補足説明をしてようやく理解できたけど……こいつ、今私をアホだと思ったな? 

 

 この戦いが終わったら覚えてろよ? 実際アホだけど。

 

 それにしても、ナギの機体は使えないのか……。

 

 あくまで緊急避難の手段の有無を確認しただけだったけど、これは。

 

「……負けられないね」

「何当たり前のこと……」

「負けてたまるかっ!」

 

 頭に疑問符を浮かべる梓をそっちのけにして、操縦桿の上部にあった赤色のトリガーを押した直後。

 

 左掌のビームバルカンと右手に装備したノクターンの尻尾銃が火を噴き、脚を止めて撃っていた雑魚共を次々と撃破。

 

 火球が輝き、夜闇を照らしていく。

 

「何匹束になっても……!」

 

 絶対天敵人間となった、今なら分かる。

 下級機種ごとき、今の私からしたら害虫だと。

 

「うぉりゃあああっ!」

「ちょっと莉瑠、無駄弾多くない!?」

「もっと良く照準を……!」

 

 二人が何かを口にしているのは分かったが、今は戦闘の真っ最中。

 

 正直、構う余裕はない。

 

「どうだっ! 私だってやれば……!」

 

 やたらとすばしっこい蜂型だけは当てるのに苦戦したけど、たった今倒したので全部。

 これで、雑魚は全滅させた。

 

 ライフゲージを見てみたら、まだ8割ちかくもある。

 

「これなら――!」

 

 多少余裕をもって、この後の敵とも……と、そこまで考えた。

 

 その直後だった。

 

 ズガン、という木を薙ぎ倒す音とともに、背後の山から一体の巨大メカが現れたのは。

 

「……っ!」

「大丈夫」

 

 まだ1日経ってないし、トラウマになってるんだろう。

 巨体を見て怯えるナギを片手で抱き寄せながら、私は目の前の敵へと意地と怒りを含めた視線。

 

 それを、目の前の敵――絶対天敵ノクターン級へと向けていく。

 

「来たね、ソシャゲのボスみたいに」

 

 現れたそいつは、等級こそ昼間のと同じではある。

 

 だけど……あのタイプは。

 

「突撃前衛型、おまけに完品と来てる……厄介だにゃあ」

 

 梓の言葉の通り、巨大な槍で武装したアイツは近接戦を主眼として開発された機体だ。オールレンジ型の私ので、態々相手の距離で挑んでやる義理もない。

 

 だから、ここは――!

 

「飛ぶ! どこかに掴まってて、しっかり!」

「え、ちょっと何!? うわっ!?」

 

 ウィング展開、フォトン推進システムを駆動。空から飛び道具でっ!!

 

「アイツも撃つ!」

「だろうねっ!」

 

 もちろん、相手も嬲られっぱなしの子供じゃないのだから。それは当たり前の事だ。

 

 得物のランスの先端は砲口となっていて、破壊の光線がしきりに放たれている。

 

「だけどっ!」

 

 飛び道具はこっちが、手数も威力も上なんだ!

 そう続け様に、心の中で絶叫しながらスイッチを押した――けど。

 

 虚しく、カチカチッという音が鳴るだけで……。

 

「……どしたの、莉瑠?」

「た、弾が……もう」

 

 トリガーを引いても何も起こらない様は、さながら玩具の銃で……。

 

 一気に血の気が引くのが、自分でもわかるほどだった。

 

「配分ミスとはなぁっ!」

「近接、するならさらに上!」

 

 叫びながら突撃してくる敵。

 その声に重ねてきた梓からの指摘の通り、翼を広げて。すぐさま天高く舞い上がっていった。

 

 近接戦は特化型の向こうのが上だが、飛行能力は持たない。スラスターの推力で無理やり滑空しているだけだ。

 

 空戦は私が、近接は向こうで……空ならトントン。

 

 だったら!

 

「引き摺り下ろす!」

「地に足なんてッ!」

 

 つけてたまるかっ!

 

 そう思いながら、素早くネイルクローで貫手を放つ。

 

「甘……なんとっ!?」

「片腕、貰うっ!」

 

 右を狙ったが、素早く腰部のジョイントを捻られたため、命中したのは反対側。

 しかも対価と言わんばかりに、こっちは片翼をもがれてしまう。

 

 推進システムの釣り合いが取れなくなり、機体が墜落していくこっちと。滑空に限界も来ていた向こう。

 

 両者とも、戦いの舞台を地上へと移していく。

 

「着陸体勢! なら早で!!」

「分かってる!」

 

 梓の言葉に短く叫び返しながら。生き残った推進力、その全てを距離を取るのに回していく。

 

 落下しながら、遮蔽物の多い場所を探してみたが……あぁもう、見つからない!?

 

「あそこ!」

「ありがとっ、ナギ!」

 

 ナギの指さした場所は西南西にある村の残骸で、多少背の高い建物がある。

 とはいえ屈めばなんとか、という高さなんだけれど……ないよりはマシだ、と着地した。

 

 その直後だった。

 

「無傷で奪還は無理だったか……しかしこれで勝ったも同然よ」

 

 こちらに槍の切っ先を向け、開口部からレーザーを放った敵が口にした言葉。

 

()()()

 

 その中に含まれていた二文字に、私の意識は釘付けになってしまった。

 

 じゃあこの機体、元は奴らの……!?

 

「――る、莉瑠!」

「どうしたの!?」

 

 急に梓の声が聞こえてきたかと思うと、やけに深刻そうな顔でこちらに叫んでいるのが見えた。

 

「どうした、じゃにゃい!」

「どうすんの、ここから!?」

 

 ナギも後を追うような形で、問うてきたけれど……確かに二人の言う通りだ。

 それに、ここで負ければ真相も何もあったもんじゃない。

 

 だけど飛び道具もなし、片腕はお釈迦。回復まで逃げ回るなんてムリだ。

 

「だったら……」

 

 チラリ、と武装が表示されたコンソールへと視線を移してから。

 

「……こうにゃったら、ぶっつけ本番」

「最後に残った武器は……」

「あの、巨大な腕」

 

 梓、ナギ、私が同時に口を開く。

 三者三葉言葉は違えど、指示しているものは同じ。

 

「あれなら、確かに一撃でいける……」

 

 それに、ノクターンの腕部装甲はそれなりに硬く、槍で突き刺す事が出来る程ノロマじゃあないし。

 撃ち落される心配もほぼしなくて大丈夫だ、近づくよりは安全だろう。

 

 だけど、敵の妨害と回避を掻い潜って当てなきゃだが……できるか、私に?

 

「いや、やるしかないっ!」

 

 頬を叩き喝を入れ、照準ウィンドウを展開。

 遮蔽物とモニター越しに敵とにらめっこ。これを外したら、いよいよ特攻しかない。

 

 でも、そんな破れかぶれにふたりを巻き込むわけにはいかないけど……この状態で下ろせるわけもない。

 

 そういう意味でも、やっぱり外す事なんて絶対に避けなきゃいけない。

 

「少し近づいてから……いや、もうそれを選べるほどのライフは……いや、でも……」

 

 他人の命を預かっているから、どうしたって。

 柄にもなく頭を使ってしまって、ギリギリと痛み始めた時。

 

「……莉瑠」

「何!? 今私は人生最大レベルの――」

 

 大事な想い人の言葉にさえ荒げる程、余裕がなくて。

 賭けを、と言う言葉を続けようとした時。

 

 操縦桿を握る手の上にナギの手が重なる。

 

「私、実銃授業で撃ったことあるから」

「……そっか」

「これでも結構成績、良いんだからね?」

 

 気の利いた返しをしたかったけど、何も思いつかなかったし、そんな時間もなくて。

 

 それに、ここから先は集中したかったから、黙ってモニタに映る照準装置とにらめっこしていた。

 

「こっち、こう……ほら、もっと右」

 

 ナギの手が私の手越しに、操縦桿を動かしていく。

 

絶対天敵(あいて)のサイズを考慮に入れてない、もちっと右かにゃ」

 梓も手伝ってくれている、これは絶対に負けられない……外せない!

 

 今はやるべき事、ただひとつに集中する。

 

 それだけだッ!

 

「莉瑠っ!」

「今だぁっ!」

「う、お、りゃあああああああっ!」

 

 照準サイトが赤く染まり、瞬間、ふたりの声がして。

 度胸を上乗せして大地を蹴飛ばし、残る推進力。その全てを使って距離を縮めていく。

 

「んなっ、ノクターンの……!?」

 

 突撃しての鉄拳発射は、意図せずブラフと化す効果を生んだようで。

 

 拳は、避けもしなかった近接型ノクターン級の胴体に深々とヒット。

 遠目でも分かる程、その形状をひしゃげさせていった。

 

「……っはぁ、勝った……」

 

 息も絶え絶え。

 放心状態の身体を包み込んだのは、暖かな感触で……それが、私を現実へと引き戻していった。

 

「やったね!! やるじゃん、莉瑠!」

「な、ななななななナギ!? 何抱きついて……」

 

 顔に血が上っていく感覚と、まだすこし浮ついている感覚。

 

 そして緊張と興奮の中、なんとか口を開き、言葉を紡ぎ出したんだけども……。

 

「えー、良いじゃん減るもんじゃ……」

「減ってるんです!」

 

 私の理性とかが!

 

 だなんて、流石にこの状態じゃ――ううん、アホ莉瑠でも言えるわけがないっていうか。

 

 ああでも嬉しくってたまんないなぁ……というか!!

 

「あー、あー。お二人さん?」

「あーもうっ!? って、どうしたの、梓」

「乳繰り合うのも結構ですけどにゃあ」

「ち、乳繰り!?」

 

 さらに顔が真っ赤になったような、そんな感覚がする中。

 

 梓が指し示したのは機体側面のレーダー表記で、そこにあったのは……。

 

「これって……軍のIS操縦者輸送ヘリ?」

 

 ナギの指摘に間違いはない。

 表示されていたのはジガバチ一七式。軍で広く使われる打鉄用キャリアだ。

 

 その型番も形状も、飛行速度まで私の頭の中にはインストールされているのだから――でもさぁ!

 

「流石にもう一戦は無理ぃ!」

 

 しかも、相手はISでしょ!? 

 確かに対IS戦闘術もラーニング済みだけどさ、実際戦う気には今はなれないし!?

 

「だね、逃げよ逃げよ!」

「あ、ちょっと待った」

 

 機体を量子格納すべく収納コマンドを入力しようとした途端、梓が手を前へと出して制止してくる。

 

「何!? こんなデカブツで逃げたら目立――」

「アイツの武器はとってこう、あとパイロットの捕獲」

 

 言われてみて、気づく。

 

 この機体、どうやら未完成状態だったみたいで。本来の得物もないから武器、足りてなかったし!

 それに情報、もっと足りてないし!!

 

「だね!」

「ナイスアイデア!」

 

 遠く聞こえるヘリの音をBGMにしながら。

 私たちは残骸漁りに精を出すべく、撃破したばかりの敵機に近づくのだった。

 

「ほら莉瑠、そこのシールドも取ってこうよ!!」

 

 ぐい、と体を乗り出しながら指示してくるナギ。

 やっぱり体が当たってしまっていて、それでつい。

 

「……ほんと、距離近いよね」

 

 なんて、呟いてしまった。

 

「なんか言った?」

「なーんでもなーい!」

 

 下手なごまかしをしながら、私はまた残骸あさりへと精を出していった。

 

 大事な人の温もりを、鉄の揺り籠の中で感じながら……。

 

 

 

 

「はぁーっ! つっかれたー!」

 

 海浜公園のベンチの上、私たちは並んで朝食を食べていた。

 必死で逃げてたから一睡もできてないのに、どういうわけか全く眠くない……まぁ、いいことかもしれないけどさ。

 

 それにしても……。

 

「私、物凄い運気消費しまくってる気がする……」

 

 まるでロボアニメの主人公のようにメカを手に入れて、偶然適合しちゃって、テロリスト相手に大立ち回りを演じるなんてモロそれじゃあないか。ロボアニメ好き垂涎ってヤツだろう。

 

 お台場のガンダム像の前あたりで自慢してやろうか? ラッキーガールだぜって。

 

「でもなぁ……」

 

 パンを齧りながら。

 

 しかし、どうせならもう一回分くらい運を消費してでも、と思っちゃいつつ。

 私は男に尋問した時のことを思い出す。

 

「はぁぁ……あんな中身のない言葉じゃなぁ……なんだよ上官は知ってるって」

 

 そら、上官は知ってるだろうよ! しかも本拠地もはぐらかされたし!

 

「なんだよ深淵の底って!?」

 

 どこだよ、お前らの本拠地はアトランティスなのか!?

 

 あぁもう、武器は得られたけれど情報はなーんにもだよッ!!

 

「くそあほ!」

「にゃはは、アホ莉瑠にアホ呼ばわりされてる!」

「まだ怒りが納まらないんだ……」

「あそこまでしたのににゃあ」

 

 イライラしながらパンを齧り、お茶で流し込む。

 

 尋問の後、適当な道に捨てて来てやった時のことを思い出しながら。

 

『俺はテロリストで情報なんも持ってないアホ野郎です。警察署までタクシーよろしく!!』

 

 と、わざわざ英語で書いてやったり……確か。うろ覚えだけど。

 

 ナギに教わりながら書いたから英語に関しては間違ってはいないはず……多分。

 

 今頃、誰かが連れてったらいいんだけども――。

 

「まぁ、あいつの話はこれくらいにしてさ」

 

 なんて私の思考を打ち切ったのは、ニヤニヤした顔でナギの言葉だった。

 

「莉瑠さあ、言うことあるよね私に?」

「うえぇっ!?」

 

 な、何なんだいきなり!? まさかLOVEな感情がバレた?

 

 いや、あれは隠しきれているから違うだろうけれど……。

 

「こ・く・れ♪」

 

 ひたすら壊れたレコードのように耳元で囁く猫娘は無視して考えたけど、思いつくのなんて。

 

「あ、えっと……さっき、コンビニでおごってくれてありがとう?」

「違う!」

「英語教えてくれてせんきゅー?」

「もちょっと前!」

 

 これより前となると、残骸拾った時?

 

 いや、あの時は大してイベントもなかったし……。

 

 もしかして戦、闘、中……あああああっ!

 

「気づいた?」

 

 ニヨニヨするナギから、真っ赤になった顔をそらしながら。

 

 超絶テンパった顔をどうしようかと、グルグル回る頭で何とかしようとするけど……ダメだ、無理だよ!

 

 だってあれ、共同作業じゃん、あれ!?

 いやなんか冷静に考えると恥ずかしいなぁっ!?

 

 そりゃお礼は言いたいよ? 

 

 でも、なんだ……こう、なんか別のこと考えて沈着冷静な八坂莉瑠になってからやりたいわけで。

 

「もうちょっと待って……十数秒でいいから」

 

 考えろ、なんとかしてでも考えろ別の事! 急速クールダウンのためにさ!!

 

 あの時……あの時……。

 

 そういやナギが撃ったことあるとかなんとかで……あぁっ!

 

「え、えっと……」

「うん?」

「な、ナギ……銃刀法違反では?」

「おばかっ!」

「まじでアホだにゃあ」

 

 すぱこーん、という音と呆れた声と。

 

 梓のスマホが鳴ったのは、同時だった……。

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