カウンターサイド、潰えた火の先   作:黎殲神 祟

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流石にプロローグの文字数だと秒で読み終わりそうなので本格的に一話上げようと思います、エルデンリングが楽し過ぎてレベリングしながら2周目でDLC待ちしてたり、仕事もあったり色々とゲームやってるので忙しなく余り時間も取れず筆が進みませんが頑張って書いていきますので気長にお待ちください。
では、ホンへ


一話:新たなる戦場と出会い

都市を駆けて暫くした頃、不死人は複数の見た事も無い謎の生物の小さな群れと相対していた。

 

「ふむ……ロードランやロスリック、その何れでも見た事の無い生物だな……ならば、やる事は一つであろう」

 

そう言い、不死人は大槌を両の手に持ち、“岩の様な”重装鎧に包まれた身を撓め、地を砕きながら全速力で未知の生物の許へと突っ込む。

敵は全く未知の生物であり、規格がロードランやロスリックの亡者、デーモン等と同等の戦力を持っているのだとすれば、全力で殴らなければ待っているのは蛸殴りによる死である、それ故に手加減など出来る事では無い。

そうして“レドの大槌”を頭上に振り上げながら群れの真正面で深く踏み込み、明確に人類では有り得ない程の力で振り下ろされた大槌は、五匹程度の小さな群れを押し潰し、地表を砕き、大地を大きく揺らした。

 

「これは……流石にやり過ぎた様だ、だが、敵の戦力は大体把握した、随分と加減をする必要が在る様だ……大力を使っていたら如何なっていた事やら……考えたくも無いな」

 

大力を使用した攻撃によって引き起こされる災害を想像し、頭を振ってその先の光景を打ち消し、再び人気の無くなった都市を突き進む。

そうして、幾多の敵を叩き潰し、幾つの区画を越えただろうか。近くから、剣戟と咆哮、断末魔の声が聞こえる、数は人が数名、先の生物は相当な数が集まっているのだろう。其れだけでも理解には十分であった。其処こそが、この戦場の中心地であると。

ならば、やる事は一つだろう、この地で戦闘が出来る人間、つまりこう言った事情に詳しい者達が居る可能性があるのだ。敵ならば殺してしまえば良い、この戦場なのだ、大体は事故死で済むだろう。今は敵か味方かなどは如何でも良いのだ。情報が無い事には未知の敵や生きた人間達の居り、尚且つ見知らぬ土地での活動は困難を極める。

それ故に、幾らでも対応の効く戦場で他者とコンタクトを取る必要があり、其処に於いて善悪などは何の栓も無き事柄である。

それを理解している不死人の行動は速く、即座に転身し、音の出所へと急行した。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

一方、都内某所戦地、CSEレベル3にて。

既に戦闘開始から10分が経過した頃、

 

「流石に数が多いか、シリュウ!新人は大丈夫か!」

「問題ありませんよ、彼女は大人しくしてくれていますから」

「ならば良い、浸食体の数も増えてきているから気を付けろ」

 

部下であるアキヤマ・シリュウに警戒する様促す、シリュウが頷いた事を確認し、戦闘態勢に入ろうとした途端、反対側の建物の影から、一つの大柄な影が飛び出し、良く響くが静かな声が木霊する。

 

「貴公等、随分と手子摺っている様だな!手を貸そう!ぬぅん!」

 

その人影は、そう言い終わると同時に着地し、身の丈はあろうかという程の巨大な大槌を振り下ろし、多数の浸食体諸共地面を破砕し、土埃を巻き上げる。

 

「何だアレは!?作戦部!アレは他所のカウンターなのか!?」

「シグネチャー無し!恐らくカウンターではありません!」

「なに!?まさかカウンターでも無い人間がCSEレベル3の区域を彷徨いているとでも言うのか!」

「貴公等、先程から何を言っているのだ?私には皆目見当も付かないのだが……」

「当事者は随分と冷静みたいだな……」

「貴公等も聞きたい事はある様だが、其方の幻影を含めた私達に問答の時間は無い様に思えるぞ」

「そうみたいだな、仕方ない……作戦部、この謎の男との共同作戦に切り替える、ある程度は戦える様だからな」

「了解しました、それと、彼については聞きたい事もあるので身柄の確保はしておいて下さい」

「話は纏まった様だな、それでは行くとしよう」

 

そう言って謎の男は鎧と同じく岩の様な大盾を背から左手に持ち、身の丈はあろうかという金床を彷彿とさせる様な大槌を右手一本で持ち、肩に担ぐ。

明らかに人では持つ事も侭ならない様な重量では無いだろうが、男は軽々しくそれを肩に担ぎ、なんでも無いかの様に立っている。一同にはこの男が何者なのかは皆目見当も付かないが、先の一撃を実力は相当であり、歴戦の戦士然とした風格を持ち、協力の意志がある事から先程の疑問を頭の片隅に追いやり、浸食体を見やる。

そんな中、不意に男が口を開いた。

 

「見た所、一番奥の巨大な生物がこれらの親玉であろう。ならばアレを早急に片付けねば敵は増え続け、何れ我々は倒れる事になるだろう」

「ほぉ?其処まで分かるのか、益々聞きたい事が出て来たな」

「私も貴公等には聞きたい事があるのでな、その為にも早急に事を終わらせるぞ」

 

そう言うや否や、有無を言わさず男は浸食体の群れに突貫し。多数の浸食体を吹き飛ばし、叩き潰しながら群れの真ん中を突き進み、瞬きの内に第三種浸食体の許へと辿り着いてしまった。その余りにも常軌を逸した戦い方にヒルデは少しの間呆然としていたものの、直ぐにその意識を切り替え小型の浸食体を処理しながら男に合流すべく行動を開始する。

 

「ハハハ……彼、とんでもないですね。普通あんな滅茶苦茶な戦い方、カウンターでもやりませんよ……」

「あんなことする人ホントにいるんだ……」

 

その無謀とすら言える程の単騎掛けを無傷で成功させてのけた男───不死人は、ロスリックの高壁で戦った、ボルドの体躯の約二倍はあろうかという巨躯の怪物と相対していた。

 

「ボルドの倍程はあるが……貪食ドラゴンやシース、ウォルニール程の巨体では無いか。何方にせよ如何な巨体とて、殺せぬ道理などありはしない。まるで不死身であったシースですら、殺し切れるのだから」

 

そう独り言ち、不死人は第三種浸食体、“ビースト”へと突貫し、振り下ろされた腕をタイミングを合わせたローリングで()()()()()様に回避し、下顎部へ向け“レドの大槌”を勢い良くかち上げ、ビーストの半身を宙に浮かせる。

そして不死人も跳躍し、守る術も無く無防備な頭部へ向けて超重量の大槌を振り下ろし、轟音と共に浸食体の頭部と前腕肩部を粉砕し、鈍く腹に響く様な音と鎖の擦れ合う音と共に着地し、ごく自然な動作で先に戦場に居た戦士達へと向き直ると、先程まで一人で戦っていた少女が、大した傷を負った様子も無く静かに歩み寄って来ていた。

 

「貴公も無事なようだな、傷を負った様子も無いようでなにより」

「お前の方こそ、あれだけの突撃を一人でやって無傷とはな……良くそんな無茶が出来たものだ」

「私とて駆け抜けるのは可能ならばしたくは無いさ、下手を打てば包囲される危険性すらあったのだからな。貴公程の使い手がいなければ先ずやらないだろう」

「お褒めに与り光栄だが、何故私が実力者だなどと思ったんだ?」

「強者の纏う、特有の空気を感じたからだ」

「なる程な」

 

不死人の言葉に、ヒルデは得心がいった様に頷き、同時に、彼の底知れぬ火力に冷や汗を流していた。

其処まで強く無いとは言え、第三種浸食体が相手なのだ、だと言うのにそれを歯牙にも掛けず、たったの二撃の内に沈めてしまった目の前にいるこの男は、カウンターで無ければ一体何なのだろうかと。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

「本日22時30分をもって、要人救出作戦を見事完遂しました。少々のイレギュラーはありましたが、この際それは良しとしましょう。皆さん、お疲れ様でした」

「はぁ……」

「……」

「脱出ルートで遭遇した第三種浸食体も撃破しましたね。おかげ様で、管理局行政室からトロフィーが届きました。こんな火が来るなんて、思いもよりませんでした。ブランク期間が長いのが気掛かりでしたが、実力は衰える事は無かったですね。素晴らしいです、師匠」

 

その言葉に、師匠と呼ばれた少女、ヒルデが待ったを掛けた。彼女は何やら言いたい事が多々あるらしい。

そう思いながら不死人は全てが初見の景色を眺めながら、軽く聞き流していく。

 

「ちょっと待て、その件に関しては其処の男が処理しただろう。何故私が処理した事になっている」

「何故って、彼が快く手柄を譲ってくれたからですが……」

「それはまぁ良い、この男についても聞きたい事は山ほどあるが、もう一つ一番大事な事から聞こう」

「手短にお願いしますね、確認書類が溜まっているので」

 

そう言って、ヒルデが黒く、四角い鉄の塊を指し示す。

 

「一体あれは何だ?」

「あら?説明を聞いていませんか?」

「あの方は、最先端の技術で作られた対人忌避用の半自律遠隔操作マシンノイド・インターフェース……」

「違う!誰がそんな説明を聞きたいって言った!?あれに、私達が命懸けで救出する程の価値があるのか聞いてるんだ!」

 

ヒルデが声を荒げ、身を守る力など微塵も無いであろう上質な布の服に身を包んだ女性に問いを叩き付ける。

すると、帰って来たのは何とも気の抜けた返事であった。

 

「あ、それが気になられたと。珍しいですね」

「気になって当然だ!」

 

ヒルデは相当気になっている様だが、不死人からすれば何が何やら全く分かったものでは無い。不死人が静かに首を傾げ、言葉の意味を咀嚼している間に、ヒルデ達にとっては衝撃の言葉が飛び出した。

 

「本日付であの方が、当社コフィンカンパニーの代表取締役に就任されました、つまり社長です。」

「……」

「……」

 

その言葉には、先程まで騒がしく詰問をしていたヒルデを黙らせるだけの力が在ったらしく、その場が一気に静まりかえった。寧ろ今、この場に居る不死人と発言した当人以外の思考を一瞬だけ止める程度の力はあったのだろう。心なしか、場の空気が凍り付いた様にも感じられる。

 

「……はぁ?」

「うわぁ、それはめでたい!拍手!」

 

その言葉が、凍り付いた空気を砕き、その直後、脳天気な声が場の空気を劇的に変化させた。

その空気にあって尚、場の空気に取り残されてしまった不死人は、一言も話す事は無く、只静かに佇み、静観する事しか出来ないのであった。

 

「お前は黙ってろ、間抜け!」

「新しい社長とはどう言う事だ?社長はお前だろ?」

「私は今日から副社長です。ただ、新任の社長がまだ業務に慣れていないので……当分の間は私が代行する予定です。何か問題がおありで?」

「問題が無い方が可笑しいだろ!何処の馬の骨か分からない一斗缶が急に現れたかと思えば社長だって?何処か可笑しくなってしまったのか?会社が潰れたのか?それで会社を売っ払ったって訳か!?」

 

再びヒルデが声を荒げ、矢継ぎ早に捲し立てる、その剣幕に、さしもの不死人もスリットの刻まれた兜を、ヒルデの方へと向けた。

 

「はい、その通りです」

「はい……?」

 

その問いに対しても返答はあっさりとしていて、ヒルデはまるで意味が分からないとばかりに間の抜けた声を発する。

 

「名実共に、当社の絶対権力者でいらっしゃいます」

「その通りだ、愚かな従業員達よ。この私が当社の絶対権力者であり最高指導者。マシーン甲・ロボ……」

 

最高権力者、と言う言葉に便乗し、漸く鉄の塊が言葉を発する。その言葉は正しく、不死人と当人、副社長と名乗る女性及び先程から脳天気な少年以外の精神を逆撫でする様なものである。実際ヒルデが苛立ちを隠そうともせずに口を開きかけた。

そんな中、不死人は、漸く重い口を開いた。

 

「談笑中の所すまないが……何時まで私は蚊帳の外に居れば良いのだ?未だ貴公等の名すら把握していないのだが」

「これが談笑に見えるのならお前の目は節穴か!?」

「あぁ、そうでしたね、私達からも貴方に聞きたい事は山ほどありますので、この場で先程の話は切り上げて貴方についてのお話でも致しましょうか」

「そうしてくれると有難い」

「先ずは自己紹介からですね、私は当社の副社長を務めるカナミ・キズナです」

「私はフェンリル小隊隊長のヒルデだ」

「ボクは平社員のアキヤマ・シリュウです」

「一応新入社員のヤナギ・ミナ、よろしく」

「貴方の名前も聞いても宜しいですか?」

「その兜も外したら如何だ?戦場なら兎も角、会社等でそのままなのは態度的にも良くは無い」

「名前……か。私には名など無いよ、とうの昔にすり切れて無くなってしまったからな」

 

名を聞かれ、不死人は兜を外しながら静かにそう告げる。

 

「なに……?」

「名前が無いとは……如何言う事なのでしょうか」

「余りみせるべきものでも無いが、私の()を見ればその意味が分かるだろう」

「……っ!?」

 

言われるがままに不死人の瞳を見た一同は、その双眸に宿る日蝕を見てその眼を見開き、言葉を失った。

ほんの少しの沈黙の後、ヒルデとカナミが静かに口を開いた。

 

「そんなものは見た事も無いぞ……なんなんだそれは」

「私もその様なものは見た覚えはありませんね、それと名前を失った事に何か関連性があるのでしょうか」

 

その言葉に、流石の不死人も驚愕を示したが、直ぐに持ち直し、その正体を明かした。

 

「これは、│不死の烙印《ダークリング》と言うもので、人々から不吉の象徴とされてきた代物だ」

「烙印……それは誰かに付けられたものなのか?」

「いいや、違う。これはある日突然、人々の瞳に刻まれたものであり、不死人と人間を明確に隔てる呪いでもある」

「呪い……ですか。その事について詳しくお教え願えないでしょうか」

「良いだろう、私の様な不死人は死亡した際、人間性と引き換えに復活する事が出来る、これが最も重大な問題点となるのだが、その人間性と言うものは人であった頃の記憶と自我だ、皆、これを│喪失《ロスト》と呼んでいる」

「そう言う事か……それで名前が無いんだな」

「だが、呼び名はある」

「呼び名?二つ名のようなものか?」

「似た様なものだ。火の無い灰、そう呼ばれていた」

「火の無い灰……何故、そんな呼ばれ方をしていたんだ?」

「人間性を持ち合わせぬ、燃え尽きた者だからだ」

「燃え尽きた?」

「そうだ、私は一度世界の薪として、己の何もかもを燃やし尽くしたのだ。それ故に私は、最早燃え尽き、余燼も残っていない灰なのだ」

「そうか」

「それ故、好きな様に呼んでくれて構わない」

 

そう言って、不死人は話を締め括った。

 

「して、先程戦った生物はどう言った代物なのだ?化け物共とは数多の戦闘を繰り返してきたが、あんなモノは見た事が無い」

 

常識が違うのだろうとは思ってはいたものの、不死人の質問は、一同の予想を上回るものであった。

 

「なに……!?まさか浸食体を知らんのか?」

「知らん、亡者や神、巨人や神喰い、深淵の魔物ら等は知っているが浸食体などと言う生物は見た事も無ければ聞いた事すら無い」

「気になる単語が幾つか出て来たが、それは置いておくとしてだ……今まで浸食体を見た事も無ければ話に聞いた事も無いとなると……エグザイラーか」

「エグザイラー……?それは如何言う意味だ?」

「異世界からの流れ者だ。良ければお前の世界の事を聞かせてくれないか?戻る糸口が見えるかも知れないぞ?」

「私の世界か?そんなものは最早無いさ」

「なに……?それはまさか、滅んだと言う事か?」

「そう言う事になるな、但し、世界を終わらせたのは私の決断だがな」

「お前が世界を終わらせたって言うのは如何言う事だ?」

 

不死人の言葉に、ヒルデだけでは無くカナミも怪訝な表情を浮かべる。無理も無いだろう、只の一個人の決断が、世界を終わらせたの言うのだから。

 

「貴公等が訝しむのも無理は無い。一個人が世界の生殺与奪を握るなど、普通は有り得ない事なのだからな。私の居た世界の場合は最早そんな普通など通用する状況では無かったのだよ」

 

不死人が言い終えると、先程まで沈黙していたアキヤマ・シリュウが質疑応答に参加して来た。

 

「抑も貴方の居た世界はどんな世界だったんですかね?」

「消えかかった火の様な世界さ。比喩では無く、最早猶予も残ってはいなかった程にな」

「それは、外的な要因からなのか?」

「いや、そんなものでは無いよ、元々は神と人類が招いた必然のようなもの、つまりは内的な要因に依るものだ」

「と言いますと?」

「神と人類が古竜共を打ち倒すために最初の火の薪となっていた王のソウルを抜き出し、長い年月を経て最初の火が消えかかったのが原因だった」

「それと貴方に、何の関係があったのでしょう?」

「私は、火継ぎの使命を二度負い、一度は継いだものの数百年後目覚めた時には私は世界で最後の薪となっていた。それ故に、最早火継ぎの王達を弑し、玉座に薪として焼べ、最後に己を焼べたとてそれは世界の死期を100年200年程度の延命にしかなりはしない。それ故に私は、最初の火を消し、世界を終わらせる決断をしたのだ。新たな世界の誕生という一縷の望みを賭けてな」

「新たな世界の……誕生……?」

 

不死人の話を聞き、余り話す気は無さそうだったミナが、興味を持った様であり、鸚鵡返し気味に聞き返す。

 

「最初の火は燃え尽きたが、今まで火を継いで来た大王グウィンや其の他数多の薪の王達の残り火が、世界に息づいている。それが幸運にも再び燃え上がり、新たなら世界が誕生する事に賭け、私は世界に引導を渡したのだ。次は、あの様な滅び行く世界にならない事を祈って」

「ちょっと待って、つまり、今私達が居るこの世界はアンタが終わりにした世界の上に成り立ってる可能性があるって事?」

「恐らくそう言う事にになるのだろう。もしそうだとするならば私は歴史にすら残ることの無い存在しないはずの過去の遺物と言う事になるな」

「今、その可能性がある存在が私達の目の前に居る事になるのですか……正直、新社長就任処の話では無くなってきますね。まさか貴方が此処までの重要人物だとは思っても見ませんでしたので……」

 

不死人が話した内容は、コフィンカンパニーの面々としては余りにも衝撃的で、新社長に就任したマシーン甲・ロボMk2は完全に蚊帳の外となってしまったが。当のマシーン甲の操縦者は、いち早く事の重大さに気付き、如何にして彼を敵に回さず、寧ろ味方に付けるかに思考が回っていた。それもその筈であり、最終的には世界の生殺与奪を握り、自分達よりも遥かに上位である世界とたったの一人で渡り合ったであろう人物なのだ。彼を敵に回そう等という考え自体が愚かしい話であり、有り得ない選択肢であった。それ故に、場の空気をブチ壊す様にマシーン甲は陽気に彼を一先ず味方として手元に置いておく手を講じた。

 

「ならばアッシュ君!君を当社で採用しようではないか!話を聞いた所この世界に身寄りもないのだろう?ならば我々と共にこの会社を盛り立てていってくれ給え!」

「ほぉ?それは有難い提案だ。雇うと言っても私の様な不死人は食事睡民は不要であり金銭にも一切興味を示さない。この世界ではソウルを通貨として動かせる者は一人も居ないだろう。其処で私からも一つ条件を提示したい」

「何だね?何でも言ってくれ給えよ!私に可能な限り支援をしようじゃないか!」

「衣食住の内、住の保証を貰いたい。勿論、貴公等の所有する施設内での住み込みだろうと構いはしないとも、拠点が無い事には行動は起こせんからな」

「良いだろう!これで君は当社の傭兵という形で正式雇用されるだろう!」

 

その言葉に対し、不死人は一つ必要な儀式(手続き)を思い出し、それの有無を尋ねる。

 

「ところで貴公、従者、或いは信徒としての誓約等は如何するのだ?何かしらの象徴(シンボル)を受け取れば良いのか?それとも、頭を垂れ、祈りを捧げれば良いのか?」

「そんな大層な事は必要ありませんよ。この紙にサインを書いて頂ければ良いのです」

「感謝する、キズナ女史」

 

不死人は雇用契約書とペンを渡され、其処にスラスラと()()()()()で、恐らく自らの名であろう文を綴る。

 

「流石に読めないと如何しようも無いので、表記は私の方で記入致しますが……」

「すまない、私は現状この言語しか知らないものでな。ならば表記上ではAshen One(灰の人)としておいてくれ」

「承りました。これで当社の雇用契約は終了です、ミナさん、唐突ですが同期が出来ましたね」

「よ……よろしく」

「宜しく頼む」

 

行き成り戦場に現れ、任意同行に応じた人物が、目の前で同期になり困惑気味のミナに対し、不死人は至って静かに応じたのであった。

こうして無事(?)新社長と新入社員の顔合わせを終えた。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

それから暫くして、不死人は自らに宛がわれた社内の一室にて、“螺旋の剣”を眺めていた。それは、最初の日の番であり、最後の試練であり、()()()()であった存在である。その中には勿論、太陽の光の王である大王グウィンや其の他王のソウルの持ち主達、火継ぎを為した数多の不死人達が築き上げてきた存在の得物であり、篝火の元となる代物でもある。篝火の根元には常に、灰と化した遺体が燻っていた。

それ故、不死人はとある試みの為にあるもので小さな山を作っていた。それは二度世界を渡り、最早使う事は無いと分かり切っていた“遺灰”である。其れ等で小さな山を作り、“螺旋の剣”を突き刺す。そうすれば、火は小さく猛り、簡易的な篝火となった。

篝火の齎す故郷たる熱を前に、慣れ親しんだように座り込み、静かに今後の展望等についての考えに耽るのであった。

カナミ達は、彼の部屋の前を通った社員から、度々火の弾ける様な音が響くと言った報告を多数受ける事となるのだがそれは又別の話であり、不死人にとっては詮無き事柄である。




一話目を上げるのに随分と日数が掛かってしまいました。最近仕事が忙しく、帰宅してやる事も多々あるので書き上げるスピードはかなり遅くなっていますŵそんな事はさておき、不死人の拠点も決まったり、本格的に戦闘もあったので不死人のステと装備を公開していきたいと思います。

生命力:39(装備含めて44)
集中力:20
持久力40(装備含めて45)
体力:93(装備含めて98)
筋力:99
技量:20
理力:10
信仰:10
運:15
のレベル257、
素性:刺客
主装備:ハベルシリーズ(大盾込み)、レドの大槌、竜狩りの大弓、寵愛の指輪+3、ハベルの指輪+3、太陽の王女の指輪、グンダの鎖
副装備:煙の特大剣、グレソ、竜狩りの大斧
こんな具合です。

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