カウンターサイド、潰えた火の先   作:黎殲神 祟

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最近はリアルが非常に忙しく中々筆が進みませんが。ゆっくりと筆を進めてますので読んでくれてる方々は気長に待ってて下さい。
それはそうと、つい最近腐敗徽章とミリセントの義手、アレキサンダーの中身組み合わせて水鳥乱舞使うのDPSヤバすぎて気持ち良くなってました。
では、ホンへ


第二話:変わり種達

7:15.AM コフィンカンパニー

艦船コフィン、船内居住区

火の無い灰、作戦待機中

 

不死人は一人、この世界で、自らが何を為すべきなのかを考えていた。

彼は使命を終え、自らの生に幕を下ろした筈であったのだ。だが、今居るこの世界で目覚め、こうして生きている。それは何故なのかと。現状、亡滅の危機に晒されている訳でも無し、ならば、他に何があるのかと。

その様な思考の海を彷徨っていると、艦内アナウンスと呼ばれる音送りに近いが、似て非なる技術によって、音声が響く。

 

───船内カウンター要員及び戦闘員にお知らせします───

 

───間もなくブリーフィンクを開始します───

 

───この放送を聞いたカウンター要員及び戦闘員は、直ちに作戦室へお集まり下さい───

 

───繰り返します……───

 

「何事かあった様だな。行くとしようか」

 

そう言って、魔術師のローブと盗賊の足甲、手甲を身に着けた姿から、“岩の様な”鎧を全身に着込み、作戦室へと向かう。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

「三人共、来ましたね。直ぐに席について下さい」

「承知した」

「はい」

「……」

 

不死人を含め、三人が着席する。それを確認するとカナミは話を始めた。

 

「前回、第3種の浸食体を片付けた件は覚えているでしょう。それに関連して、管理局から新しい依頼が来ています。ご存じの通り、フェンリル小隊の活躍で現実世界に浮上した第3種の浸食体を撃破しましたが、そのエリアは依然としてCSEレベル3を維持しています。管理局ではその地域の座標と繋がるカウンターサイドに、浸食汚染を起こす浸食コアが存在すると推測しています。私達の任務は、浸食汚染浄化のためにカウンターサイドにダイブする。そして、ターゲットの浸食コアを追跡して破壊する事です。」

 

そう言うとカナミは、「それから……」と前置きして、不死人が現状最も不思議に思っていた一人の少女に目を向けた。カナミの目が一瞬其方に向かったからである。

如何やら、その予想は当たっていた様だ。

 

「最近、会社の財政状態が改善したので、円滑な作戦遂行の為に、第二カウンター小隊メンバーを採用しました。シズカさん、自己紹介をどうぞ」

「この度コフィンカンパニーに入社しました。アルト小隊リーダーのシズカです。よろしくお願いします。因みに、フェンリル小隊の事はあちこちから聞きました、個人的にファンです!」

「ハハハ、僕たちのファンですって。照れるな……一体どんな話を聞いたんでしょうかね」

「知るか。絶対碌な噂じゃないぞ……」

 

フェンリル小隊のファンだというアオイに対し、シリュウがわざとらしく照れて見せる。それに対しヒルデがツッコミを入れる。

そんな空気でアルト小隊の所属と思われる数名の少女が自己紹介を始めた。

 

「……俺はシロコだ。紹介出来る事は……特にないが……うーむ……そうだな」

 

何かを言い始める前にシロコと名乗った少女後突き飛ばされ、新たに気の強そうな少女が自己紹介を開始した。

 

「終わったなら、さっさと退きなさいよ。ナマケモノみたいにノロノロして」

「なっ!?」

「私はシャオリンですよろしくお願い……」

 

今度はシャオリンと名乗った少女がシロコに突き飛ばされ、シロコががなり立てる。

不死人は、その様子を仲の良い姉妹の様だと思い、兜の下で微笑む。

 

「割り込んでくるなよ。俺の話、まだ途中だろうが!!ちんちくりんの鰯の癖に、あの世への特急列車にでも乗せてやろうか?」

「うるさいわね。熊みたいな体して、人間に進化してから来な。あと、図体に見合わないその喋り方はなに?もごもご、ぼそぼそ……聞いてる側に迷惑だと思わないわけ?折角私が切り上げてやったのに、お礼の一言も言えないわけ?」

「け……ケンカはダメですよ……」

 

今度は気の弱そうな……と言うより気の弱い少女が二人の仲裁の為に前に出、序でに自己紹介を済ませる。最早3姉妹の姉妹喧嘩の様相である。

 

「あ、わ、わたしはアマナ・コハルといいます……」

「これは見応えありますね。師匠、このポップコーンでも食べながら見物しますか」

「……お前ってこんな時だけ準備良いよな」

「仲の良い姉妹の様だな」

「皆仲良く出来そうね。フェンリルチームと息ピッタリになりそうだわ。アルト小隊はまだ正式なプロライセンスを取得した訳ではありません。ですが、B級以上のカウンターで、アンダーグラウンドでは名の知れたカウンター小隊です。このまま実績さえ積めれば、来年くらいには難なくライセンスを取得するでしょう。将来が楽しみな人材達です」

「ほうほう……」

「……ふむ」

「優秀な様だな」

「……B級だって?じゃあ、私より上じゃん」

「何を独り言を言っているのですか?」

「な、なんでもないよ」

「ところで……プロのライセンスって何?私はそんなもの無くても問題無く活動できてるけど」

「ハハ、ミナさんはフェンリル小隊の見習い隊員として登録されてるんですよ。団体ライセンスが適応されるので、活動しても問題ありません。本来はライセンスが無い場合、担当小隊の監督無しでは正式な活動は出来ません。勿論、そんなの気にしない未認定会社もありますけどね」

「……」

「シリュウ、私の場合はそれは如何なるのだ?カウンターで無ければ傭兵扱いなのは分かるが……」

「あぁ、(しん)さんはカウンターでは無いので、一般戦闘員として来よう登録がされてる筈ですよ。なのでライセンスなどは余り関係は無いです」

「ほぉ、随分と複雑な仕組みなのだな。感謝する」

「薪さん……って……?」

「恐らくは私の名前だろう」

「シリュウ、流石に薪は無いだろう……」

「私は好きに呼んで貰っても構わんのだが、呼び易ければそれで良いでは無いか」

「名前は好きに呼べって言う彼はどなたなんでしょうか?」

 

不死人の呼び方の話を皮切りに、アルト小隊のメンバーが不死人へと顔を向け、フェンリル小隊メンバーやカナミへと問いかける。その問いかけに対し、本人である不死人が対応を開始した。

 

「あぁ、その話ならば本人たる私の方から説明した方が良いだろう。私には名前が無い故、私の通り名、或いは呼び易い名で呼んで貰っているのだ」

「通り名って、なんて名前なんだ?」

「火の無い灰、Ashen One(灰の人)、灰の英雄。等があるが……結局の所分かれば好きな様に呼んで貰って構わんよ」

「分かりました……呼びやすい名前は今度考えておきますね」

「時間は多大にあるのだ。ゆっくり考えると良いだろう」

 

不死人が話し終えた所を区切りと見たカナミが、軽い咳払いと共に、新たに二人の少女の紹介を開始する。

 

「あと、作戦部にも新規メンバーを増員しました。」

「これから作戦部で皆さんのサポート役を務めるレナです。未熟者ですが、よろしくお願い致します」

「……クロエです。運命の導きによって……こちらに参りました。」

「あ……」

「うーん……」

運命の導き等と言う様な輩(占い師や聖職者の類い)に碌な者が居た覚えがないのだが……火と太陽ならまだしも……」

 

周囲の微妙な反応に動じる事無く、クロエは話を続ける

 

「皆さんの人相を見る限り、破壊と破滅、波乱の大凶星が感じられる方が多いですね。普段からやけに厄災が多いと感じる方が居られましたら、後ほど私を訪ねてきて下さい。お支払いはカードでも受け付けており……」

「クロエさん、業務時間中の客引きは控えて欲しいわ」

「……ケチ」

 

クロエの言葉を遮り、カナミが諫めるとクロエは口を尖らせ、不貞腐れた用に様小さく悪態を吐く。

 

「……一体此処の採用基準は如何なってるわけ?」

「全く以て同感だ、世の中に真面な者など居ないことは重々承知している筈ではあるが……」

「アンタが言えた事ではないけどね」

「此又手厳しい事だ」

「兎に角、真面な任務は久々ですね。このチャンスを逃さない為に、皆さん最善を尽くして下さいね」

 

そう言って一度言葉を区切り、再び口を開いた。

 

「残念ですが、私には事務作業が溜まって、作戦現場に同行できそうにありません。その代わり、万が一の場合に備えて、併設の浸食生物研究所のオリヴィエ教授が同行する予定です」

 

随分な大所帯だな……と、不死人は思ったが。不死人の考え自体は彼の居た世界を考えれば真っ当だろう。

彼は基本的に、どれ程危険な場所だろうと一人で挑んできたのだ。抑も三人以上で行動する事自体が初めてであり、彼としては彼としては実際に人数が多いと感じるのも無理も無い事である。

 

「皆さん、はじめまして。こちらは私の弟子で助手をして貰っている、ワタナベ・ユコです」

「はじめ……まして……」

 

オリヴィエ教授から紹介された人物、ワタナベ・ユコは何処かおどおどしく、疲れ切った様子で挨拶をする。最早今にも倒れてしまいそうな様相であり、目元の隈は誰が見ても明らかで、暫く消えるものでは無いと言う事を周囲に確信させる。

 

「……あなた、大丈夫?目の下の隈が顎まで伸びてるよ?」

「あ……それは……」

 

ミナの指摘に、あからさまに口籠もり、隣に居る教授を頻りに見ている。如何やら余り教授には聞かれたくない内容であり、其処からは一種の怯えが見て取れる。

だが、ミナの疑問と視線に対し、観念した様にユコは言葉を詰まらせながらも話し出す。

 

「教授の代わりに……報告書を纏めてるから……今日まで1週間くらい……徹夜してて……」

「助手、今なんて?」

 

オリヴィエ教授が明らかにユコに対し圧力を掛ける様に問いかける。それに対しユコは、やはり怯えた表情を一瞬浮かべた後、急いでその発言を無かった事にした。

それも、先程とは打って変わって大きな声で。

 

「あ!いえ、なんでも無いです、教授!」

 

今の一幕を見て、明らかに助手への扱いが最悪な事を理解した不死人は、小さく溜息を吐いた。

その直後、カナミがブリーフィングの終わりを告げる様に口を開く。

 

「ダイブ作戦中の現場指揮は、責任者のヒルデ小隊長がとる予定です。では、健闘を祈ります」

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

「こちら艦橋。間もなく次元跳躍の為のダイブ・シークエンスを開始する予定です」

「カウンターサイドの目標地点の位相座標を計算中」

「エタニウム活性体を整列。エネルギーチャージ中……」

 

先程のグダついた自己紹介とは打って変わって、レナとクロエが手際良く転移(ダイブ)の準備を進めていた。その姿に不死人は感心し、また、其れ等の設備を興味深そうに眺める。その様子は一件堂々としているもので、とてもお上りさんとは思えない風体である。

 

「臨界量突破!」

「……座標の計算も完了しました」

「エタニウムドライブ起動!カウント始めます。3!」

「私、裏世界初めてなの」

「……私も」

「当然と言えば当然だが、私も初めてだな」

「2!」

「なんか、ワクワクしない?」

「……べつに」

「敵が強ければ高揚はするが、未知に対しての高揚は無いな」

「1!」

「ふふ、じゃあ裏世界で会おうね~アディオス」

「う、うん……」

「良く分からん少女だな……」

「……それ、あんたが言う?」

「はははっ、これは又一本取られたな」

 

不死人とて、隠しているわけでは無い、自身の本懐、本性とも呼ぶべき闘争本能を満たせる状況が無いだけなのだ。だが、何れ来る(きたる)であろうその時まで、彼女達には分からないままで居て貰う他無いだろう。

 

「カウントゼロ!エタニウムドライブ、出力全開!」

 

一瞬空間が揺らぐ様な感覚により平衡感覚を失いかけるが、其処は持ち前の体幹によって持ち堪える。その直後、空間の揺らぎが収まったかと思えば、吹き溜まり(世界の成れの果て)の様な景色が広がっていた。

 

「此処が……裏世界……」

「なんとも……彼の地を思い出すな……」

「入社同期で私の初ダイブも一緒だなんて……やっぱり私達は縁があるね。そう言えば、あなた達もダイブは初めてだとか?」

「まぁ、そうだな」

「そう……だけど……?」

「意外ね……(かい)さんはそうだろうなとは思ってたけど。フェンリル小隊なら、もっと経験があると思ってた」

「……色々と事情があってね」

「まぁ、此処に流れ着いてくるのは皆訳ありだよね。何か、不思議な感じ。裏世界は噂でしか聞いたことが無かったのに……今正にその世界に居るなんて」

「嬉しそうだね……?」

「そりゃ当然よ!私達みたいなアンダーグラウンドの小隊にとって、ダイブ作戦はアイドルのメジャーデビューみたいなものだから!これから精一杯頑張りま~す!みたいな感じ?あなた達は違うの?顔色が冴えないけど。灰さんはヘルメットで分からないけどね」

「なんか、不思議な気分。不愉快な気もするし……以前来たことある様な……」

「私は特に何も思うところは無いな。強いて言うならば、昔見た景色と似ているだけだ」

 

不死人がそう言い、話が切り上げられると同時に、レナが此方に向かってきて話を始めた。雰囲気から察するに作戦についての話なのだろうと当たりを付けた不死人は、静かに聞く姿勢を作り上げ、意識を研ぎ澄ませる。

 

「各小隊にお伝えします。当艦は現在、無事にダイブを完了し、目標地点に到着しました。また、当艦の出現に気付いた浸食体が周辺に集まってきています。各小隊は直ちに出撃、周囲の浸食体を撃破した後、降下地点の安全を確保して下さい」

「承知した」

 

不死人の返答と共にその場には、不死人が巨大な身の丈ほどもある金床の様な大槌を肩に担ぐ重々しい音だけが響き、各自出撃の準備を開始した。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

(ふね)のハッチには、フェンリル小隊とアルト小隊並びに不死人が集い、ハッチが開くのを待っていた。

 

「べつに、今回の敵は小型しか居ないので、薪さんは待ってても良いんですよ?」

「はははっ、冗談を言う、味方は多いに越したことは無いだろう?それに、私も周囲の者が戦っているのを黙って見ていられる程大人しくは無いのでね」

「実際、(はい)の言う通りだな、人数は多いに越した事は無い上に、此奴の戦闘力を加味すれば出撃させない理由は無いだろう。恐らくだが、この場で最も戦闘力が高いのも此奴だしな」

「え?灰さんってそんなに強いんですか?カウンターじゃ無いですよね?この人」

「ハハ、見ていれば分かりますよこの人相当とんでもないですから」

 

そんな無駄話に終わりを告げる様に、ハッチが開き始める。

一番槍は、私が務める事になる。どの道、後から飛び降りたとて装備の重量故に落下速度は最も早く、地上へ到達する頃には皆を追い抜いて居る事だろう。

 

「では、私が貴公等の落下地点を確保してみせよう。なぁに、一撃で終わるさ」

「待て、お前まさか───」

 

ヒルデが何やら叫んだ気もしたが、その言葉が本題を私に告げる事は無く、一番槍として、浸食体の群れに風穴を開けるべく飛び降りた。

本来なら即死するであろう高度から飛び降りた不死人だが、ハッチが開いた辺りから本能が囁いていたのだ、それは、今は亡き奴隷騎士(ゲール)の残したメッセージと全く同じ物であった。

 

───飛び降りろ、死にはしない。───

 

囁く本能に従い飛び降りた不死人は、恐ろしい程の速度で落下し、高高度からミサイルの如き速度で落下し、着地する瞬間、自らの手足とも呼べるレドの大槌を振り下ろし、着弾の衝撃波と共に地面を破砕し、半径15メートル圏内の小型浸食体を一撃で殺し尽くした。

その中で、最も早く死んだのは着地寸前の不死人に踏み潰されて無残にも地面の染みと成り果てたが、そんな事は不死人ですら知る事では無い。(そもそ)も、誰が自らが踏み潰した蟻を認識しようものだろうか。

それから程なくして、フェンリル小隊とアルト小隊が着地した。

 

「ハハハ……僕もまさかとは思いましたが、浸食体の群れのド真ん中に飛び降りるとは思いもしませんでしたよ……」

「……アンタバカじゃないの?」

「落下地点はもう少し考えろ、殺す気か!?」

「ホントに一撃で群れに穴を開けるなんて……」

「……これでカウンターじゃないってホントに言ってるの?」

「こんなバケモノ見た事ねぇよ……」

「クハハハハッ。良いでは無いか、戦場は整った、後は暴れるだけだろう?」

 

そんな不死人の、高らかな笑い声から続く静かな声に、全員が各々の獲物を構え、戦場を見渡す。

 

「アルト小隊は背後の敵を片付けてくれ。フェンリル小隊は正面を叩く、灰は……好きな様に暴れててくれ」

「了解しました」

「承知した」

 

言うが早いか、不死人は指示への返答と共に自身の正面へと突貫し、全力疾走の勢いを殺す事無く大槌を袈裟懸けに地面に叩き付け、攻撃の軌道上に居る浸食体を粉砕し、大槌の着弾による衝撃波でその周囲に居た浸食体を吹き飛ばす。そのまま一回転しながら跳躍し、少し進んだ所に居た浸食体の集団へと再び大槌を振り下ろした。その二撃は、正しく災害と見紛う程の物であり、一撃目、二撃目共にその地面に放射状の罅を生じさせていた。

そして、不死人による破壊の嵐は、戦闘が終わるまで振るわれ続け、結果的に大した消耗も無く、100体近く居た浸食体は、僅か5分程度で殲滅されたのであった。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

最初の戦闘区域付近に存在するする廃墟にて、アルト小隊と現状不死人の属するフェンリル小隊は休憩を取っていた。

不死人は一人、裏世界とは、どの様な世界なのか、その一端を知るべく周囲を見渡す。すると、二人の少女の話し声が聞こえた。この世界について未だ知らない事だらけである不死人は、その会話から何かしらの情報が出るのではないかと思い、聞き耳を立てる。

 

「下積みでいきなりライセンス小隊に配置されたと聞いて、何かあるだろうなとは思ってたけど……あなた、まさか固有武装持ってるの?」

「固有武装?そう、あなたが手に持ってるそれの事よ。カウンター専用の固有武装じゃない?」

「固有武装って……何の事?」

「固有武装を知らないの?」

「……」

 

ミナの持つ武具について話しているらしい。実際、よくある話ではある。己の装備の性質を知らずに振るい続け、終ぞその装備の本来の力を発揮させる事無く生涯を閉じる者は少なくは無い。特に、他者から与えられたものならば尚更なのだ。

会話の様子から察するにミナは後者であり、尚且つ何らかの理由でそれが只、武器であると言う情報しか持っていない或いは与えられていなかったのだろう。

 

「カウンターとは言っても、私達は普段、現代の武器を使ってるでしょ?だけど、稀にカウンター専用に製作された武器が存在するの。古の遺物や昔から引き継がれてきたもの、若しくは国で莫大な費用をかけて製作した特殊装備等。同じ等級のカウンターでもそれを持ってる人は、遥かに強力な力が出せるのよ。羨ましいな……何時になったら、そんなモノ入に出来るんだろう。一体何処で入手したの?」

「……知り合いから……貰ったんだよ」

「本当に?カウンターの固有武装をあげるなんて一体誰なの?」

「……」

「それに、これはどうやら……」

「……?これについて、何か知ってるの?」

「ブラックネットワークって聞いた事あるかな?」

「……深層ウェブにあるって言う、あれのこと?違法カウンターや風変わりな傭兵のコミュニティサイトだと聞いたけど」

「ふふ、そんなに身構えなくても大丈夫私達みたいに正式ライセンスを持たない下位小隊は、管理局からの支援を受けられないのよ。似た者同士で情報を取引したり、中古品を取引する所がそこなの。勿論、色んな人が集まる所だけに……変わった人も居たりするけどね」

「……」

 

アンダーグラウンド、と言う単語とその解説から察するに、不死街の様なものなのだろう。不死は、如何なる時代であっても迫害の対象であったが。世界が末期に近付くにつれて不死が増え、亡者の兆しが見えた者だけを隔離し、国は一切の支援をせずそこで亡者となるのを待つ。そんな中で彼等は自らが生きる手段を求め、各々で情報をやりとりした。最終的には深みの信仰に嵌まり、狂ってしまった様だが。

何はともあれ、彼女のような者達にもそう言った場がある様だ。だが、そう言う場には必ず落とし穴がある。深みの宣教師達の布教活動に嵌まり、狂った不死街の民の様に、そう言った者達の中には必ず犯罪に手を出し、その(かいな)を広げてゆく為に多くの者を騙し、同じ穴へと引き摺り込んで行く。彼女達は、運が良かったのだろう。かなり無茶な事をする場所ではあるが、コフィンカンパニーによって表側へと出る足掛かりを得たのだから。

 

「以前、ブラックネットワークで聞いた事があるの。実際に見るのは初めてだけど、この形なら……多分旧管理局で使われていた武器じゃないかな」

「旧管理局?何それ。管理局は今もあるけど」

 

不死人も又、聞いた事も無い単語に一瞬首を傾げたが、直ぐに納得の行ったように顔を上げた。

不死人の考えはこうである。旧管理局とは現在の管理局の前身組織であり、何かしらの失策により解散、或いは崩壊した組織であるというもの。そして、現管理局はその旧管理局を基盤とし、旧管理局の失策も踏まえて作り出された組織なのであろう。

実際、彼の憶測は的を射たものであり、彼自身が死に覚えの果てにやって来た事と似た様なものであったが故の思い至りなのだ。初見、常連の敵問わずそれは何を要因として死んでしまったのか、それを考え、その失敗の経験から戦い方を導き出す。彼のした事は、旧管理局が崩壊し、現在の管理局があるのと同じ事である。

尤も、不死人が、何故旧管理局が崩壊したのかは、丁度思考が纏まった不死人が聞いた、次の言葉で理解する事となる。

 

「最近は知ってる人が余り居ないけど……今の管理局は、名前が同じだけの只の行政機関なの。本物の管理局というのは……管理失敗が起きる前に存在した秘密組織の様なものなのよね」

「秘密組織?……ある種の陰謀論みたいな?」

「あはは、まあ、その可能性もあるかも知れないけど……実際に旧管理局で作られたと言われる物が、たまに出回ってるのよね。其れ等は総じて現代の技術では再現出来ない様な代物でね。旧管理局が実在したのは事実だと思う」

 

アオイはそうは言うが、不死人の憶測は、アオイとミナの会話から得られた情報で、より核心に近い所迄来ていた。実際は旧管理局とは、表立っては出来ない事柄を行う様な裏側の組織であり、一種の政府の暗部に当たるものである。更に言えば、実質的な政治の権限も旧管理局が持っており、表側の行政機関はその隠れ蓑であったのだろう。だが、何らかの拍子で裏側からの管理に失敗し、旧管理局の崩壊に繋がった。

その一端は恐らく、裏側から世間を管理する事が限界を迎えたからであろう。結局の所、これは不死人の憶測でしか無く、真実が如何であるかなど、当事者達しか知らない事なのだ。

そして不死人は、情報の整理と思索を続けながらも二人の会話に耳を(そばだ)て続けたが、現状、これ以上有用な情報を得る事は無かった。

 

≪≪♢♢♢≫≫

 

「ダイブ降下地点の安全が確認されました。本日の占いによると浸食楔を中心に集まった第2種の浸食体が近辺に潜んでいるとの事です」

 

あれから暫くの時が経過し、艦の降下地点の安全が確保された。最初の投下戦闘からは大した戦闘は行っていない為、あれが最も大きな群れだったのだろう。それ以外はごく小規模であり、私が出る迄も無く戦闘は幕を下ろした。

 

「……本日の占い?それって信用出来るものなの?」

「いや……占いと言うものは総じて信用して良いものでは無いよ……多少信用出来ても精々盗人と鍛冶師くらいなものだろう」

「なにを仰いますやら。私のカード占いは一度も外れたことはありません」

「変なこと言わないでよ、クロエ!失礼しました、皆様。先程の情報は、周辺の浸食波分析により得られた結果です」

「ちっ、邪魔者め……」

「浸食コアを追跡する前に、当艦周辺の浸食体を片付けて下さい」

「第2種か……他に反応は無いのか?」

「ノイズは少しありますが……特に変わった兆候はありません。何か気掛かりな事はありますか?」

「ふむ……」

「……いや、なんでもない」

 

二人はそれ以外、特に大きな反応は無かったが、不死人は一瞬、彼女達の表情の変化を見逃す事は無かった。ほんの一瞬ではあったが、二人共何かに気付いた様な、或いは得心がいったような表情をしたのである。

それは即ち、何かに気付ている、或いは知っていながら、隠す時の反応である。

この反応はをする者に不死人は心当たりがある。幾度となく不死人を騙し、危険地帯へ蹴落とし。そして、最後には無事に先へと送り、協力してくれた人物。通り名を変え、同じ手にて品を変えた男。パッチである。

(あのハゲ)のように人の良さそうな顔こそしていないが、一瞬、彼等は一様にミナとアルト小隊、私を一瞥し、試すような表情をしていた。つまりは、主に戦闘能力が要求される事柄なのだろう。警戒するに越した事は無いが。

だが、不死人は、そこに一抹の期待を抱いていた。二人の反応から察するに、それは、相応の強敵である可能性があるからである。それ故に、不死人は気付いた事に悟られない様にしながら周囲の様子を確認する。

和気藹々とした様子のフェンリル小隊やアルト小隊のメンバー達が視界に入った。

 

「それじゃあ、私達行ってみようか」

「おい、イワシ。予め言っとくが、前回のようには出しゃばらず、狙撃手らしく隅っこで縮こまってろ。俺の背中に銃口向けたりしたらぶっ殺すからな」

「……あんたこそ、私の射線上でうろうろしないでよね、邪魔だから。まあ、イノシシのデブい身体じゃあ、撃ち込まれたところでなにも感じやしないだろうけどね!」

「ハハハ、皆さんやる気が漲ってますねー」

「……さっきのポップコーン。残ってたら欲しいな」

「貴公等も中々に呑気なものだな、寧ろこのくらいが丁度良いのやも知れんがな」

「け……ケンカはダメですよ……わ、私が頑張りますから ……」

 

先程と同様に、シロコとシャオが喧嘩し、コハルが仲裁に入る。その光景はアルト小隊中では最早テンプレートと化している様であった。その様子をフェンリル小隊と不死人が楽し気に見遣り、仲裁にはアオイも加わった。

 

「そうよ、ケンカは良くない。仲良くしよう?」

「喧嘩をするのは結構だが、余り度が過ぎれば、私の大弓から放たれる大矢が、貴公等の足元に突き刺さる事になるぞ?」

「……」

「……」

 

アオイの仲裁と、不死人の冗談めかした脅迫により、シャオとシロコは口を噤む。尤も、二人が口を噤む最も大きな要因は、不死人は冗談めかしてはいたものの、放つ空気が本気でやってくる者のそれであったが故だろう。

事前に彼の破壊的な戦闘を見ていたが為に、それを為す筋力から放たれる大弓という明らかに強力な武器によって齎される一矢が秘める威力を一瞬、想像してしまったが故に、本能的に押し黙ってしまったのだ。

 

「皆静かになってくれて良かった。後灰さん、あんまり物騒な事言って皆を怖がらせちゃダメですよ!」

「……隊長に悪いし、今日の所は大目に見てやるよ」

「はあ?こっちの台詞だね!」

「さあ、そろそろ私達も仕事を始めましょうか」

 

アオイが話を締め括り、一同は歩みを進めた。それにより、試練の火蓋は切って落とされた。

今作戦一番の大物の大まかな正体を知る者は、現状二人しか居らず、又、その様な存在がこの地に潜んでいる事は、ベテラン二人を除けば、現状不死人以外には居ない。

未だ見ぬ、強敵に思いを馳せ、不死人は歩みを進める。戦場を知らぬ同期の少女達と共に。




かなりの難産になりました。リアルも忙しい上に色んなゲームやったりしてるのでそっちでも余り時間が取れず、かなりの牛歩で進んでて結構ヤバいです。ご意見や誤字報告等あったらコメントや誤字報告お願いします。可能な限り対応します。
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