殿下とやまがたラーメン紀行 作:さくらん坊主T
そういうことで初投稿です。
1杯目 海沿いの(元)旅館で麺をすする (〇平荘)
俺の名前は
中央のトレセン学園でトレーナーをしている、ただのおのぼりさんだ。
畏れ多くもファインモーションの担当となってからそれなりに時が経ったある日のこと。
ファインが思い出したように口を開いた。
「そういえば、トレーナーって山形県の出身なんだよね?」
「そうだけど?」
「この前小耳に挟んだんだけど、山形の人ってすごくラーメン食べるらしいじゃない?」
「ソウダネ」
消費量が日本一ということは上京する前からちょくちょく聞いていた。
ファインが次に何を言うかは何となく察したので少し棒読みで相槌を打つ。
「せっかくだから私に山形の美味しいラーメンを教えてよ!」
ほら来た。予想通り過ぎて笑うしかないわこれ。
「いや、まぁいいけどさ……。俺もそこまで詳しいわけじゃないぞ?」
「それでいいの!どうせならトレーナーのオススメが食べたいから」
「……え、食べに行くの?新幹線で3時間以上かかるぞ?」
「もちろん!」
なんとも眩しい笑顔である。
ここで断れば「貴様~。」なので、答えは1択である。
「……分かった。じゃあ次の休みな」
「やったー!!」
こうして俺は、半ば強制的に帰省することになったのであった。
「……トレーナーのご実家に挨拶に行く理由ができた」
「!?」
ちょっと部屋の湿度が上がったのは気のせいだろう、うん。
そんなこんなで、俺とファインは新幹線で山形に向かう。
ファインはヘリコプターで直接乗り付けようかと言ったが、それは全力で止めた。
市長や県知事とか出てきたらどうするんだ。
え、護衛?ファインにそれとなく聞いたら「なんとか説き伏せた」らしい。噓でしょ。
「それで、どこのお店に行くの?」
「"
「ふむふむ……」
「まあ、山形のラーメン屋だとそこが定番中の定番かな?」
「ラーメン王国が楽しみ♪」
そんな話をしながら3時間ほど揺られ、駅からレンタカーでさらに1時間強。
「「金平荘、着いたー!!」」
「それにしても、随分と大きい店だね?」
「ここ、元々旅館だったからな。数年前からラーメン一本にしたみたいだが」
人気店というだけあって、他にも多くの客がいる。そこまで並ばずに済んだのは幸運だ。
が、空気を読んでくれているのか単に気づかれていないだけなのか、ファインモーションがいる、などと騒ぎ立てる者はいない。
少なくとも、今はありがたい。そう待たないうちに席に通される。
ファインには、畳敷きの広い部屋が新鮮に感じられるようだ。この様式も元・旅館ならではだろう。
「むむむ……」
この店のラーメンは「あっさり」か「こってり」が選べる。
今までファインが行ったことのある店にはないシステムだったのか、メニューと睨めっこをしている。
結局…
「中華そばの『あっさり』と『こってり』を1つずつ」
両方頼んでシェアすることにした。
魚介の香りがほのかに漂ってくる。
程なくして運ばれてきたのは、昔懐かしという感じの醤油味の中華そば。
ちなみに俺の方に「こってり」、ファインの方に「あっさり」がある。
以前テレビで見た情報だと、毎年スープの味をわずかに変えているそうだが、はてさて?
「「おおっ!」」
俺はさほど舌が肥えているわけでもないので以前との違いは分からない。
だが、あっさりといえど決して薄味ということでもなく、飽きの来ない味わいだ。
対してファインが飲んだ「こってり」は油が多めに入っている。
「美味しいっ!『こってり』といってもしつこさがない…油がまた絶妙だね」
「ああ、確かに美味いな。『あっさり』の方はどうだ?」
「……おぉ~!これも美味しいよ!学園近くの店にはない味…私はこっちの方が好きかも」
「そうか」
どうやらファインは「あっさり」派らしい。
細いちぢれ麵がスープによく絡む。
「トレーナーのオススメのおかげだよ。ありがとう」
「どういたしまして」
その後もラーメンを食べながら談笑していると、隣の席に座っていた2人組の会話が聞こえてきた。
「……水族館がクラゲ推しってのは知ってたけどまさかクラゲ料理もあるとはなー」
「クラゲアイスならまだしも、
その瞬間、ファインの目が光る。嘘でしょ……
「……聞こえたのか?」
「うん」
「……食べたいのか?」
「うん!」
あぁ、やっぱり!いくらなんでもラーメンに見境なさすぎませんか殿下?
でも、まあ水族館か……数々のクラゲ達は彼女の目にどう映るだろうか?
うん、知ってたけどどローカル!!
まったりお付き合いください。