殿下とやまがたラーメン紀行   作:さくらん坊主T

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3番目にしてある種のラスボス・山形市編です。
どうしてもこの時期で書きたかったんじゃ…
トマトチーズラーメンが美味しかったけど時期外れだったので書けず…


山形市編
10杯目 酷暑の街で創作麺をすする(麺屋 〇蔵)


夏合宿真っ最中の8月5日。俺は昨夜、合宿所近くのトレーナー宿舎で寝た。確かに寝たはずだが、目が覚めると()()()()()天井があった。

山形市にある、俺の実家である。

「……なんでここにいるんだ俺は」

夢でも見ているのかと思い、頬をつねる。痛い。

にわかには信じがたいが、いつの間にか帰省していたらしい。

「ファインちゃん、そろそろ朝ごはんだから学を起こしてきてくれない?」

「は~い♪」

下の方から母さんとファインの声が聞こえてきた。いるとは思ったけど、いつの間に打ち解けてるの?

ト、ト、ト……と階段を駆け上がる音が近づいてくる。

「おはようトレーナー!」

「おうおはようファイン……朝飯だろ?すぐ行く」

 

ササっと朝食を食べ終えたあと、すぐにファインから事情を聞き出した。

ヘリで飛んだ、とかいう話が出たあたりからは脳が理解を拒否したのか、よく思い出せない。

まあ、そこを突っ込んでもしょうがないのだろう、と無理やり納得したところで、じいちゃんが口を開く。

「せっかく山形さ来だんだから、何か美味いもん()せらんなねなぁ。何か()だいのとかあっが?」

「じゃあ……オススメのラーメン屋さん、ありますか?」

「そうだなぁ……麺屋 華倉(はなくら)って店はどうだ?鶏中華がうめぇんだぁ」

「へぇ~!ぜひ行ってみたいです!」

こうして、昼になり、母さんを含む3人でやってきたのは、川沿いの道に面した店だった。

ちなみにじいちゃんは他に用事があるとかで不在である。

木の看板に『麺屋 華倉』の文字が書かれている。

ガラリと戸を開けると、食欲を刺激する匂いが鼻腔をくすぐる。

なんとも小洒落ていて清潔感のある内装だ。

通されたテーブル席は、ラーメン屋では珍しく個室のような形になっている。

「やっぱりこの時期だと冷やしラーメンもあるみたいだけど……塩担々麵にしようかしら」

「人気No.1の鶏ごぼうラーメン……!?でもおじい様オススメの鶏中華も気になるし……」

「フフ……悩m「んじゃ、俺が鶏中華にするからシェアするか」」

「本当に!?やった♪」

……母さん?その「かっこつけたかったのに」的な視線は何なんですか?

 

注文して5分も経たないうちに配膳される。

まずは鶏中華。トッピングはのり、かまぼこ、白髪ネギ、メンマと鶏肉とまあオーソドックスだ。

一方、ファインが選んだ鶏ごぼうラーメン(みそ)にはごぼうと鶏肉の他に、水菜や豚ひき肉などが乗っている。見た目にもバランスがよさそうだ。

「それじゃあ、いただきます!」

口をつける前に、お互いのラーメンを少し分ける。……よく考えると母親が見てる前でやるのまあまあ恥ずかしいな?

それはさておき、この鶏ごぼうラーメン……結構ごぼうの出汁がきいている。なかなか独特な味だ。

なるほど、一番人気なのも頷ける。

「こっちの鶏中華、丁度いい感じの甘さだね。すごく美味しい!」

改めて、鶏中華の麺をすする。やや固めの中太麺だ。

絡んでくるスープもファインの言うとおり、鶏中華特有の甘さがあって美味い。これは後引く美味さだ。

具として入っている鶏肉も噛みごたえがある。なかなかに満足感が得られるな。

「こんなにごぼうの味がしっかりするんだね!ツルっとしたちぢれ麺との相性もいいし、私これ好きだなぁ」

「担々麺だから当然といえば当然だけど、しっかり辛いわね……それでいて塩だれとうまく調和してるわ。ああそうそうファインちゃん、そっちの黒酢取ってくれない?」

母さんが指さす先には、小さな壺が3つあった。説明書きにはおろしにんにく、辛子味噌、特製黒酢と書かれている。

「あ、はいどうぞ!」

「ありがと♪うーん……この酸味がまた塩とマッチしてたまらないのよね~」

鶏中華ににんにくを少し入れてみる。

おぉ……パンチが出た。やはりにんにくの威力はすごい。入れすぎには注意だな。

さほど重くないのでスルスルと入ってくる。

続いて、ファインも鶏ごぼうラーメンに辛子味噌を少し。

「わっ……!辛味だけじゃなくて一気に濃厚になった!一気に美味しさが口の中に広がってくる……」

「やっぱ薬味入れると変わるもんだな」

「うん♪それにごぼうと麺の食感のコントラストが際立っていてなんだか不思議な気分……」

「満足してもらえたみたいで何よりだわ」

3人揃って汁まで飲み干してしまった。

 

会計を済ませ、外に出ると日差しが強くなっていた。

「ふぅ~、やっぱ暑いな」

「山形の夏って初めてだけどこんなに暑いんだね~」

「盆地だからねぇ……40℃オーバーしたこともあるくらいよ?」

「ひぇっ!?そ、そうなんですかっ……!?」

母さんが少し考えるような仕草をして、口を開く。

「そうね……ねえファインちゃん、もう1軒行かない?ちょっとした女子会……ってほどじゃないけど」

あまりにもさりげなく外されたよ俺。俺がダメならせめてSP隊長つけてくれないかな……

「お呼びでしょうか」

「どこから現れたんです?あと、心読まれてるんですか俺?」

「あら、護衛の方?せっかくだから3人でどうかしら?」

「え、私……ですか!?」

案の定というか、SP隊長も巻き込んだよ母さん。相手王族(とその関係者)よ?

ファインも若干困惑しちゃってるし。本当に申し訳ない。

 

母さんとファイン、SP隊長が車でさらに山道の方へ向かうなか、俺はじいちゃんと共に軽トラで一足先に帰宅するのであった。




ちなみにアイルランドは真夏でも日中平均20℃以下らしいです。
……殿下、体感的に地獄では?
そんなわけで次回はファイン視点でお送りします。
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