殿下とやまがたラーメン紀行 作:さくらん坊主T
前回の予告通り、今回はファイン視点です。
トレーナーのお母様の急な提案で、麺屋 華倉からさらに山奥の方へ向かうことになった私たち。
「……あ、見えてきた。ほら、あれあれ」
お母様がそう言うと、右手に「峠のもち屋」と書かれた看板と木造の建物が見えた。
が、その奥に立つ看板に力強く書かれた「
お餅とラーメン!?これは食べてみないと!
そう期待に胸を膨らませながら、店の中に入る。先ほどまでの暑さが嘘のように、涼しい風が吹いていた。
「いらっしゃ~い」
気さくな感じの挨拶が聞こえた。
畳敷きの小上がり席に、一枚板のテーブルとレトロな雰囲気が漂っている。日本に来て1年ちょっとの私が言うのもなんだか変な感じもするけど。
窓際のあちこちに飾られている、可愛らしい小物も癒される。こういう雰囲気、好きだなぁ……
「2人とも、何にするか決まったかしら?」
「
「私はこの……ずんだ餅、というものを。確か、枝豆のペーストでしたね」
「なんとなくだけど、ファインちゃんならそれを選ぶと思ったわ……それと隊長さん、よくご存知で。私は納豆餅にするわ」
正直なところ、納豆餅というのも気になった。納豆も餅も日本では珍しくないけど、その組み合わせは聞いたことがなかったから。
それでもラーメンの魅力には勝てなかったんだけどね。
注文を終え、少し雑談に興じる。
「それで2人とも……単刀直入に聞くけど、うちのバカ息子が迷惑かけたりしてない?」
「とんでもないです!トレーナーにはとてもよくしてもらってますよ?ね、隊長」
「ええ。恐らくですが、ご子息のおかげで今の殿下がある、といっても過言ではないかと」
「まあまあ、学にも本当にいい巡り合わせがあったものね」
お義母様はどこか嬉しそうな表情をしていた。
しばらくして、注文していた品が届いた。
まずは一番気になっていた力ラーメンに目を向ける。
「昔ながらの」と表現されそうな、少し透き通った醬油スープの中に餅が3個沈んでいる。
それにしても、この餅の1つ1つが意外と大きい。ちょっと欲張りすぎたかな……
とはいえ、看板に掲げているだけあって美味しい。ちぢれ麺だから、少し胡椒のきいた、コク深いスープもよく絡んでくる。
次に、餅に箸をつけると、これが本当によく伸びる。この店の主力ということがよく分かる。
食べきれるか少し不安だったけど、あっさりと完食してしまった。こういうところで、ウマ娘に生まれてよかったとつくづく思う。
「うん……このちょっとした甘みがあってこその納豆餅よね。ネギでちょうどバランスが取れてるわ」
「枝豆、というと日本でのお酒のつまみ、という印象があったのですが、こうしてデザートにもなるのですね。奥が深いです」
餅=お正月のイメージが強かったけど、意外とそうでもないんだね。
3人とも食べ終わるあたりで、「かき氷も食べない?」と、お義母様が切り出した。
すごく美味しそうに写った写真を見て、私と隊長はすぐに賛同する。
隊長がいちごミルク、私とお義母様はミックスベリーミルクを頼んだ。
そんなに時間もかからずに届いた。
これも思った以上に大きい。そしてブルーベリーやいちごがたっぷり乗っている。
まず一掬い、口に運ぶ。氷はきめ細かく、ザクザクしすぎない、滑らかな口当たりだ。
それ以上に、味が濃い。ベリーのさっぱりとした酸味と練乳の甘さがうまく混ざりあって、サクサクと食べられる。
甘すぎないシロップも中まで染み込んでいて、最後まで美味しくいただいた。
今度はトレーナーも一緒に来よう。きっと喜んでくれるはず!
満足したところで帰ってくる。
「ただいま~」
将棋を指していたらしいトレーナーとおじい様が顔を上げる。
「おうおかえり。今日の夜はちょいと早めに食うべ。なんたって今日はアレの初日だからな。……これはどうだ?」パチン
「"アレ"?」
「……あぁそうか、花笠だったか。……伊達にトレーニングでやってないっての」パチン
トレーナーが思い出したように言った。お祭りってことは分かるけど……どんなお祭りなんだろう?
「あいや……こりゃあ参った。強ぐなったん
……将棋はトレーナーがいつの間にか勝ったみたい、というのは別のお話。
夕方が楽しみ♪
ここのかき氷はかき氷らしからぬ濃厚な甘さがあるので個人的オススメの1品だったり。
次回、この時期に山形市編をやりたかった一番の理由である店が登場します。
「ヤッショ、マカショ」お楽しみに!