殿下とやまがたラーメン紀行 作:さくらん坊主T
朝6:50、ホテルの一室。俺が起きた時には既にファインは寝間着から着替えていた。
昨日本間に教えてもらった"ラーメン千璃"が楽しみで仕方なかったのだろうか。遠足前日の小学生か?
「あ、おはようトレーナー!」
「おう…おはよう」
「それじゃ早速朝ラーメン、食べに行こ♪」
「あ、ちょ、待て待て待てファイン!色々準備が終わってない!」
「貴様~~この私を待たせると申すのか~?」
慌てて着替えなど最低限の準備をしてから車を走らせること約10分、ラーメン千璃に到着した。
中には夜勤明けとおぼしき客も何人かいた。
海老の香りが微かに漂ってくる。
定番であるらしい「千璃ラーメン」を注文しようとしたが、ここでファインが待ったをかける。
「待ってトレーナー!この濃厚海老ラーメンってメニューもここのオススメみたい!」
また朝から"濃厚"とは……ファインも若いな。
「よし分かった、そのメニュー頼んでみよう」
流石に腹具合に自信がなかった俺は予定通り千璃ラーメンを頼んだが。
数分後、俺の目の前に置かれたのは一見したところ普通の醤油ラーメンだ。
他の店では意外と見なかったナルトも入っている。
本間は「さっぱりしている」とは言っていたものの、朝からラーメンともなると少し油とかが気になるものだが…
ずずっ。
熱っ…!
これは想像以上にさっぱりしているな。庄内ラーメンによくある魚介出汁のスープもそうだが、チャーシューも厚さといい丁度いい。
もちもちの中太麺との相性も素晴らしい。
一方、ファインの海老ラーメンはというと……まず海老の香りがすごい。
見ると、むき海老と桜海老が散らしてある。なかなかに豪華だ。
そして肝心の味は……
「海老の出汁がすごくきいてるんだけど、ガツンって感じでもなくて丁度いい……濃厚なスープが中細麵によく絡んで美味しい!」
麵の太さも変えているのか。なんとも行き届いている。
どうやら気に入ったようだ。
そして朝食後、俺達は店を出てホテルに戻る。
荷物をまとめていると、ファインがふと口を開く。
「そういえばトレーナー、本間先生って高校の同級生なんだよね?」
「そうだな」
「高校生の頃のトレーナーってどんな学生だったの?」
「それ俺本人に聞くか?……とは言っても別に普通だよ普通」
「えーっ、なんか気になるよ。聞かせて聞かせて♪」
「そうは言ってもなぁ……本当に大したことないぞ?俺と本間と、あと何人かで時々飯食ったり遊んだりしたぐらいで。それこそ、ファインとシャカールみたいな感じに」
「ふぅん……他にも友達がいたんだ?その人たちって今はどうしてるの?」
「そりゃいるよ……全員山形に残ったな。地域はバラバラだけど。東京に出たのは俺だけ」
「へぇ~……」
「地元愛の強い奴ばかりでさ。面白いもんだ」
いずれは俺も戻るつもりだが……まだ先の話だろうし、ファインには言わないでおこう。
うっかり「実家に帰る」などと言って担当に襲われた先輩トレーナーの話を聞いたこともあるし、用心用心。
…………時計を見ると9:35を指していた。少し悠長にしすぎたか。
慌てて片付けを終えて、チェックアウト。
昼に行く店はもう決まっている。"
昨日行った金平荘で店主は修行を積んだらしく、今や修行先に負けず劣らずの人気店だとか。
そうとなれば期待せずにはいられない。
勝手にハードルを上げつつも、街中を抜けて"金た"に向かって車を走らせるのであった。
次の次くらいで鶴岡編最後です。
1パートにつき1、2市町村ぐらいのペースでいく予定です。