殿下とやまがたラーメン紀行 作:さくらん坊主T
"金た"に着くと、既に行列ができていた。
列が伸びないうちに、そそくさと並ぶ。
県外ナンバーの車が多く停まっていることからも、この店の人気度合いが伺える。
……おや?前に並んでいるウマ娘、どこかで見たような……
「……隊長さん?」
「ッ!?殿下に、トレーナー様!?」
まさかのSP隊長だった。休みを言い渡されたとは聞いてたけど何やってんすか。
「奇遇ですね。こんなところで会うなんて」
「あー、えっと……そうですね……」
歯切れが悪い。まあ、パッと見「休め」と言われたのに出勤してきたようなものだし……そりゃ気まずいか。
「いえ、あの、ここに来たのは本当にたまたまで……」
たまたま通りかかるような立地ではないと思うが……これ以上は思考を放棄した。
きっとそういうこともあるのだろう、うん。
そんなことを考えているうちに、俺たちの順番になった。
「いらっしゃいませ!3名様ですか?こちらへどうぞ」
「あ、はい」
カウンターが6席、小上がり席が3テーブルほど。
入口側のテーブルに通される。
壁に飾られたいくつものサイン色紙がこの店の人気ぶりを物語る。
「ところで隊長さんは金平荘はご存知で?」
「え、ええ。一応。元々旅館をされていた所ですね」
「ここの大将、その金平荘で修行したんだって!」
「そうなんですか!それは味に期待できますね」
ふと、メニューを見る。この店の中華そばも「あっさり」と「こってり」が選べるのか。金平荘の系譜ということがよく分かる。
「トレーナーと隊長はどれにするの?」
「中華そばの『あっさり』かな」
「私もそれを」
「決まりだね。すみませーん……中華そばの『あっさり』3つと、ニグめし1つで」
俺とSP隊長は驚いた目でファインを見る。驚いた理由は別々のようだが。
「更に食うのかファイン……」
「殿下、ニグめしとは……?」
ファイン同様に日本語が達者なSP隊長だが、流石に方言まではカバーしきれていないか。
「えーと……『白めしにチャーシューをのせた名物めし!』だって」
「"肉"の訛った言い方ですね」
「なるほど……"
程なくして、ラーメンとニグめしが運ばれてきた。
「おお~……煮干しの香り」
「いただきます!」
Y字のような、独特な断面の麺(ウイング麺というらしい)を一口すする。
ほんのり苦みのある煮干しで金平荘の面影も出しつつ、鶏の出汁も組み合わせることで金た独自の味が感じられる。
「この……麵のピロピロとした口当たりが癖になるな」
「うんうん!これならいくらでも食べられちゃうかも!」
「不思議な形の麺ですが、スープの甘みとよく絡んで美味しいです。やはりここは良いお店でしたね」
ファインとSP隊長も満足そうだ。
ファインは続けてニグめしを口に運ぶ。
「チャーシューとタレがすごく合ってる……!それだけじゃなくてご飯も美味しい!」
「庄内って米どころだからなぁ」
「つ〇姫でしたら私も聞いたことがありますね」
その後も、他愛のない会話をしながら食事を楽しんだ。
「「「ごちそうさまでした」」」
「さて、ではそろそろ……」
「もう1軒行こう!」
「「はい!?」」
ファインが飲み会帰りのサラリーマンみたいなことを言い出した。
昨日ハシゴしなかったのは何だったんだ。
「……私は大丈夫ですが、トレーナー様は?」
「あ、はい、俺も1杯くらいなら」
SP隊長もウマ娘。この中で最も胃に余裕がないのは俺だろう。こういう気遣いも王族に仕える身たる所以だろうか。
「やった!実はもうどこに行くか決めてるの!」
「ほう、どんな店なんだ?」
「えっとね…………」
まさかのハシゴ宣言。持ってくれよ俺の胃腸!
次回、「次が鶴岡編最後と言ったな?あれは嘘だ」
お楽しみに!!(ごめんなさい)