殿下とやまがたラーメン紀行   作:さくらん坊主T

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方言・訛りの伝わるラインが難しいです。
今回は南陽のラーメンを語る上で触れておきたかったアレが登場します。


8杯目 街を作る麺をすする (いも〇食堂)

ニンニクのきいたラーメンを食べた後、シャカールの希望でコンビニに立ち寄っていた俺達。

買い物を終えて店を出ると、地元民とおぼしきおっちゃんから声をかけられた。

「急にごめんなぁ。この辺じゃあんま見ない組み合わせなもんでよ。どっから来たのや?」

「東京からです。自分は山形の生まれですが」

「今日は主にコイツ(ファイン)に付き添う形でラーメン巡り……ッス」

「ほぉ~そりゃあ珍しい。市役所に『ラーメン課』ってのがあんのは知ってるが?」

「えっ、そうなんですか!?」

「んだ。ざっくりいうとラーメンで街づくりすっべ(しよう)ー、ってことで始まったプロジェクトなんだけどよ。こいなの(こんなの)出したりしてんだ……いがった(よかった)ら1冊持ってげ」

そう言うと、おっちゃんは「なんようしのラーメンマップ」と書かれた冊子を手渡した。

「いいんですか?頂いても」

かまね(かまわない)、かまね~。こいなのは君らみでなのが持っててこそだべ」

「ありがとうございます!」

「邪魔して悪りがったなぁ。気ぃ付けで行ぐんだぞ~」

手を振りながら去っていくおっちゃんに手を振る。

早速、ラーメンマップを開いてみた。

「マジかよ……せいぜい10店舗くらいかと思ったら紹介されてるだけで36店舗もあるじゃねェか」

「これだけあったら見るだけでもなかなか楽しいよね♪」

などと話しつつ、宿に向かう。着いた時に初めて判ったことだが、この地域でも特に歴史の長い温泉旅館らしい。

このお嬢様はホントにさぁ……

あと、この手の旅館で夕食なしってアリなの?

 

部屋でのんびりとラーメンマップを見る。

温泉街があるからか、意外と夜までやっている店も多い。

「うーん……すごく悩むけど、この"せのお食堂"が美味しそう」

「チャーシュー麺か……悪くねェな」

シャカール的に2食連続でラーメンはロジカルなのかって?多分、半分ヤケになってるだけだと思う。

夕食にするにはまだ少し早いので、ひとっ風呂浴びることにした。

野郎の入浴シーンなんて需要も薄いだろうし、割愛。

 

ローカル番組を見るなどしてダラダラ過ごし、気づけば18時。

「そろそろ行くか」

「うん!楽しみ~」

車を走らせ、せのお食堂へ。

創業から60年経つらしいが、改装したのか内装は新しい印象を受ける。

テーブル席に通され、メニューを見る。

「"ラーメン(中太平打ち麺)"に"支那そば(コシの強い細ちぢれ麺)"……メニューによって麺を使い分けてるんだね」

「そういえばあのマップにもそんなことが書いてたっけな」

「……ちょっと訛りが戻ってンな?」

「うぇ!?マジで?……それはそうと、注文は決まったか?」

「チャーシュー麺にしようかな。シャカールは?」

「……ラーメンで頼むわ」

「了解。んじゃ俺は支那そばにするか。すみませーん」

店員を呼び、それぞれ注文する。

 

「お待ちどうさま」

10分後、頼んでいたものが運ばれてきた。

特に目を引くのはチャーシュー麺。丼からはみ出すほど大きいチャーシューが4枚乗っている。

「おお~……すごいボリューム……」

「この量は流石に計算外だな……ありえねェ」

ファインはすかさずスマホを取り出し、チャーシュー麺をパシャリ。

「ファインって料理の写真とか撮るタイプだったか?」

「うん、結構インパクトあったからウマッターに上げようと思って」

そういうのもあるのか……あるよなぁ。

……っと、伸びる前に食べないと。

まずは支那そば。細麺とはあったが、想像以上に細い。簡単にちぎれてしまいそうなほど細い。

しかし一口すすってみると、なかなかにコシが強い。少し箸で引っ張ったくらいではちぎれない。そして小麦の香りが鼻に抜けてくる。

スープがちぢれ麺に絡んでくる。そんなスープに鶏ガラを使っているのは分かったが……他にも味があるような……何だろう?

一方、ラーメンとチャーシュー麺に使われているのは平打ち麺。

多加水麺だからか、持ち上げるとプルプルとしている。

ファインとシャカールが同時に麺をすする。

「すごいコシ……!もちもちしてて食べ応えがある!」

「しっかりと食べやすい範疇に収まってやがる……流石だな。そしてスープには昆布をきかせてるときた」

「昆布!?ラーメンではあんまり聞かない出汁だね」

「あと……鶏ガラか?旨味が濃いな」

「こっちのチャーシューも生姜がいい感じにきいてて美味しい♪」

「この店、侮れねェな……」

食事を終え、会計を済ませる。

外に出ればすっかり暗くなっていた。

「ふぅ~、ごちそうさまでした!とても満足だよ!」

「それは良かった」

そそくさと宿に戻り、またひとっ風呂。

露天風呂に浸かり、景色をボーっと眺める。

風呂には日頃から入っているが、温泉には久しく行っていない。

それもあってか、日々の疲れが流れるように抜けていく。

「あ~……生き返る~」

「ンな表現どこで覚えたんだよ……」

……なんで男湯まで聞こえてくるの?壁薄すぎない?

 

風呂から上がり、自販機で買ったコーヒー牛乳を飲んでいるとファインとシャカールも出てきた。

「お、上がったのか」

「うん!良いお湯だったよ♪」

「まァ……悪くはなかったな」

「あれ、トレーナー何飲んでるの?」

「コーヒー牛乳だけど……2人も飲むか?それともフルーツ牛乳の方がいいか?」

「じゃあ、フルーツ牛乳にしようかな!」

「オレはコーヒー牛乳で」

3人で並んで腰掛け、瓶に入った牛乳を飲み干す。

部屋に戻ってからも、これ以上ないほどにゆるゆるとした夜を過ごすのだった。




温泉上がりにコーヒー牛乳とか売ってるとつい買っちゃう人は手を挙げてください。
はい。
よろしければ感想・評価もよろしくお願いします。
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