ウマガール・ドント・エバー・ストップ   作:愛田誠

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202×年、水沢2R 三歳C2六組

たまたま買ったら、たまたま気づくことも多いので
いろんなレースを見ますけど
土日以外もお馬さん言い始めたら結構キてる気がしますね(他人事)

重賞勝利ウマ娘どころか中央ですらなくなりましたが
こんな感じで書いていきたいです


何処からも道先は一つに繋がる

 レースの思い出を語るとき。

 

 私はいつも自分ではなくて、違う子の話をしている。

 

 

――アスクビクターモア、呼吸を保った余裕の走りで先頭に立ちます! 横にはアサヒ! この2人、どちらもまったく譲らない!。

 

 バ群が3コーナーに差し掛かった頃には、私のレースはすでに終わっていた。

 スピードもスタミナも足りず好位から徐々に後退を始め、直線に向くときにはすでに先頭から10バ身以上も離されてしまう。

 

――いいや、もう1人! ものすごいスピードで上がって来たウマ娘がいるぞ!

 

 あのとき、私の横を駆け抜けて行った子の背中。

 今、思い出しても胸が熱くなる。

 

 

――外からジオグリフ! ジオグリフが抜けました! 1バ身! 2バ身! 突き放して、ゴールイン! メイクデビュー東京! 勝ったのはジオグリフ! デビュー戦を見事に勝利で飾りました!

 

 彼女はその後、皐月賞を制して世代でもっとも速いウマ娘となる。

 そんな子と一緒にデビュー戦を走れたことを、私はひそかに自慢にしていた。

 

 ただそれだけの、そういう空気みたいなもので、それで構わなかった。

 

 

 

 ウマ娘は年間7000人以上が今日もどこかで走るために生まれている。

 しかし勝ち抜けられる子は上澄みの、ほんの数%でしかない。私と同じデビュー戦を競った子たちも幾人かはGⅠやGⅡを勝ったり好走して特別な子になったが、とはいえ大多数の子に待っているのは栄光ではなく、やがてトレセン学園を去らなければならない運命である。

 そして私も特別の側には含まれなかった平凡な未勝利ウマ娘だった。10人中の9着という惨敗から5ヶ月ものトレーニング期間を経て挑んだ2戦目でも、やはり勝つことはできなかった。

 そのときに出会った子も、私は今でもずっと覚えている。

 彼女もけしてジオグリフちゃんたちみたいな特別な子ではなかった。

 

 第一印象はとても綺麗な子だと思った。

 これからレースが始まるのに、今度こそ負けられないのに。

 それなのに私は、風に揺れる鮮やかな栗色の髪から目が離せないでいた。

 

「Hola , mucho gusto」

「うえええ! ヘ、ヘロー!」

「嘘、冗談。こんにちは」

「え? あっ! えへへ、ど、どうも……」

「貴方、海が好きなの?」

「うぇっ? い、や、どう、なのかな? 別に嫌いじゃないけど……」

「貴方の名前ってフランスの港町でしょ?」

「あ、うん! ママとおじいちゃんがね、フランスにちょっと縁があるというか」

「ふーん。あっ、それとさ、聞きたいんだけど」

「えっ? な、なんですか?」

「私のことずっと見てたの、なんで?」

「う? ……うええ! いや、べ別にとと特に深い意味はっ!」

「ははっ、ジョークだって。お互い、がんばろ」

「うう……は、はいぃ……」

 

 レースに勝利したのは彼女だった。私は今回も、掲示板に名を載せることすらできなかった。それでも後ろから数えた方が早かった前走の着順と比べれば、前でレースを終えられたことに満足していた。だって、これが私の実力なのだ。がんばったところで突然クラシックレースに出場できるわけじゃない。今はまだ、重賞戦線なんて遠い場所にあって影すら見えない。けれど半年近くの努力全部が無駄にならずに済んだのは、素直に嬉しかった。この調子で努力を重ねれば、いつか晴れ舞台に立てる日も来るだろうと希望すら感じた。

 

 その瞬間が訪れるまでは。

 限界を越えてレース後に寝転んでいる私をよそに、彼女はスタンドの観衆に手を振って応えている。ようやく上体を起こせた私と目が合うと、彼女はこちらへと近づいて来た。

 

「立派じゃん、14番人気で7着。いい脚だったよ」

「……あ、ありがとう」

 

 彼女は肩で息をしつつも足取りは軽く、まだ余力が残されているのは見て取れる。恥も外聞もなく地面にへばり付く私と違って髪を整える余裕もある。額に貼り付いた栗毛は汗に濡れても色褪せずに、さらに輝きを増していた。

 

「そういえば名乗ってなかったね。私、トーセンエルドラド。貴方のこと、なんて呼べばいいかな?」

「え、えと、シュブール……シュブールって、みんなから」

「よろしく、シュブール。またどこかで、一緒に走ろ」

 

 私は即答できなかった。

 言葉に詰まり戸惑う私に優しく微笑みながら彼女はターフを後にする。

 初めて悔しいと感じた。

 自分があまりにも惨めに思えた。デビュー戦でぼろ負けしたときだって、前評判からして相手はすでにGⅠ級のウマ娘だったのだし、そんな感情が強く湧きはしなかった。

 

 またどこかで。

 

 彼女は簡単にそう言ったが。

 トーセンエルドラドは1勝クラスウマ娘となったのだ。私とはもう違うステージへ進んだ。競争条件クラスが違えば同じレースを走れない。今のままでは間違いなく顔を合わせる機会はない。

 美しく眩しいものが手をすり抜けていく。私は敗北の、真の意味を知った。

 見とれている場合じゃなかったんだ。

 自分の非力さと無知ぶりに、私は座り込んだまま立ち上がることも泣き止むこともしばらくできなかった。

 

 それからの私はダートから芝に戻り、距離延長をし、また距離を縮めてダートへ。

 自分の将来という切実な問題を突き付けられ他人に構う余裕もなかったし、実際にあれからエルドラドちゃんとは会っていない。人づてに彼女が春先に転校したと聞いたのは、私が中央で最後のレースに挑む前で、季節はすでに初夏に移り変わっていた。その話題も少し驚いたくらいがせいぜいで、相変わらず他人に関心を払っている場合ではなかった。

 ニュースで梅雨入りが取り上げられている。夏至が近づくにつれて日の出も早まり、日照時間が延びた分だけ調整も入念に行える。今度こそ勝ちたい。勝ってみたい。

 ずっと、ずっと走って諦めずに先頭を追い続けて、それでも。

 前を進む誰かの背中を追い越せる日はとうとう訪れず、ついにひとつの勝利も掴めないまま、わずか1年持たずに私はトレセン学園を辞めることになった。

 

 最後の登校日、グラウンドを通り過ぎると私以外の大勢の子たちが普段通りターフを走っている。正門をくぐれば、もう学園には戻れない。でも私がいなくなっても、トレセンから何かが欠けるわけじゃない。

 

 だから私は空気として、もう普通の人間として市井に生きるつもりでいた。レースとは無縁のバ生を過ごそうと、そう考えていた。

 

 だからトレーナーさんから岩手への移籍を持ちかけられたのは予想外だし、私が推薦された理由なんか想像すらつかなかった。

 

 

 

「ヘイ、ブラー! ようこそ水沢へ!」

「えへへ、ど、どうも……」

 

 陽気な声が盛大なハグで私を迎える。

 彼女の名前はプチョヘンザ。彼女も実はメイクデビューで、ジオグリフちゃんや私と同じレースを走った子である。

 伝説の新バ戦。そう呼ばれるものがいくつかある。後のGⅠウマ娘が走ったデビュー戦には、同じく後に大成する子が走っていたケースが少なくない。ジオグリフちゃんとアスクビクターモアちゃんはずっとクラシックを競ってたし、また地方に移籍して活躍するケースもありプチョもその1人だった。あのときの新バ戦では彼女は全力で逃げて最下位となったが、私たちより一足先に地方に移籍してからは8戦中7戦を入線しての3勝という、数値にすれば3着内率8割越えのエリートと呼ぶ他ない成績で期待の新星へと成長していた。

 

「だからビビっと来たってわけ! だって新バ戦、私よりスーパー速かったっしょ?」

「いやいや、私たち9着と10着ですよね!?」

「いいんだって! 誘うならシュブちん以外マジありえんのよ!」

「えへへ、そ、そうかな?」

 

 二度と履かないはずだったダートシューズも紐を結べば、おしゃれしたくて買ったコンバースよりも脚に合って軽く感じる。地方だから楽とかいう意味ではないけれど、新環境での練習は楽しかった。練習を楽しむなんて、デビュー戦を終えてからは考えもしなかった。

 やはり心のどこかには学生生活を続けたい気持ちがあったのだろう。競技生活とは続けることに意義がある。がんばれば道は開ける。いつか勝とうね。それが私たちの口癖になっていた。そんな明るく楽しい毎日を送る中、ついに私の地方デビュー戦が組まれる。

 

「中央からの転入組って、めっちゃ期待されっかんね。負けらんないよ~?」

「えぇ……驚かさないでよ」

「ははっ、嘘だって。シュブちんなら勝てるって!」

「うぅ……だといいけど……」

 

 正直、勝てるかどうかなんてわからなかった。だって私は、今まで1回も勝っていないのだから。それでも走るからにはがんばりたい。私の再デビュー、勝てればいいな。勝てたらきっと嬉しいだろうなとか、そんなことばかりを考えていた。

 そんなデビュー戦を間近に控えたある日、いつも大きな声のプチョがいつもの倍くらい大騒ぎをしながら私の寮室に飛び込んできた。

 

「シュブちんシュブちん! ヤバいってマジ!」

「うぇっ? な、何が?」

「いいから早く来て来て! ハリアップ! カモン!」

 

 遠慮なしに手を引っ張られて連れて来られたレクリエーションルームには幾人か先客がいた。みんな言葉少なに固唾を飲んで備え付けのモニターに見入っている。画面には見慣れないゲートの風景が映し出されており、枠入り前のウマ娘たちが砂地を周回していた。どの子もみな真剣な表情で、頬や脚を叩き気合いを入れる光景が映し出されて、気圧されるほどの緊張感が画面越しでも伝わってくる。

 

「……えっと、これは?」

「わかんない? 東京ダービーだよ!」

「あっ、そっか。そういえば」

 

 東京ダービー。大井競馬場にて行われる年齢制限重賞。府中で開催される日本ダービーと同じく出場機会は一生に一度、選りすぐりのウマ娘たちによって争われる。

 

「す、すごいね、みんな強そう」

「超ドープでガチホット。そりゃそうだね、ダービーと名の付くレースはみんな一生にワンタイムだかんね」

「ふーん、私には縁のない世界だなぁ……」

「そうかな? 私は行くよ」

「えっ?」

「私はね、いつか南関東で走りたいのよ」

 

 プチョは強く、そして静かに呟いた。顔付きも瞳の色も決意に満ちた輝きを放っている。

 浦和や船橋そして川崎、それからジャパンダートダービーや地方唯一の国際GⅠ東京大賞典が行われるNAUの聖地、大井。

 地方の強豪がひしめき合う決戦地へ畏敬と畏怖を込め、人は四場を南関東と呼ぶ。

 たしかに彼女の成績からすればいずれはもっと、もっと大きな舞台を駆ける機会が巡ってくるだろう。隣の盛岡ではJBCクラシックがあるが、それに比べると水沢は強者が集うには少し狭い気がする。

 

「そしていつかはさ、なりたいわけよ。岩手からまた中央に殴り込んで……」

 

 彼女自身はそれ以上を話さなかったが、プチョの夢なら知っていた。

 東北から中央へ。史上ただ1人、地方から中央を制したウマ娘。

 それに続く者。

 一時期は中央を走っていた私たちだからこそURAの層の厚みを痛感している。だからこそリベンジにはやり甲斐があると、それが彼女の抱くビックドリームなのは知っていた。地方の再デビュー戦ですら勝てるかどうかの自信も持てない、つくづく私には場違いな世界の話だけれど。

 だから私はいつまでも、ただの傍観者として大井の様子を眺めていた。

 いよいよ、枠入りが始まった。アナウンサーが各ウマ娘の名前を紹介している。

 

 そのとき、自分じゃないみたいな大声が出た。

 何が起きたのかわからない。わからないけれど無縁なはずの世界に共通点を見出した私はとっさに駆け出して、いつの間にか他の子を押しのけてモニターの最前列にいた。

 

「うわっ」

「ちょっと! 押さないでよ!」

「なにすんだよ! 新入り!」

「ちょ、ちょっとシュブちん!」

 

 プチョは慌てて私の肩を掴む。けれど私はその場を動きたくない。動くわけにはいかなかった。

 

 モニターの向こうで栗毛が揺れていた。

 美しく長い髪がナイター照明を浴びて、鈍い煌めきを放っている。

 

 あの子だ、間違いない。

 

 そこにいたのはトーセンエルドラドだった。

 

「な! なんで!」

「いいからチルれ! ごめんなさい、新人ちゃんにはよく言って聞かせますんで!」

 

 無理矢理前列から引き剥がされて、再び後方へと連れ戻される。

 

「ま、待って! だって! エルドラドちゃんが出て!」

「いや、わっかんないけど、そりゃ出るから! トライアルで1着だったんだし!」

「えっ! うそ!」

「いいから落ち着きなって、知り合い? なんなら彼女、このレース4番人気だし」

 

 知らないうちに知らない世界で、私の知っている子が世代の頂点を賭けた戦いに挑む。頭の処理能力が全然追い着かなくて混乱せずにはいられなかった。そんな混沌に拍車をかけるように、目の前のレースでもファンファーレをやり直す事件が発生する。

 

「あー……1番の子、貧血かな? こりゃスタート遅れちゃうね」

 

 あとは全バ揃えばスタートが切られるという直前になって、ゲート内で誰かが倒れて出走除外となるらしい。発バ機からウマ娘たちがぞろぞろと外に出て行き、枠入りは再び奇数番からのやり直しがされている。

 

「アクシデントでみんな、コンセ切らさなきゃいいけど」

 

 今は他の子の心配はいい。私はもう15番の栗毛以外、眼中になかった。指が潰れて細くなるくらい両手を組んでモニターに向かって祈った。

 

「あっちゃ……ジーザス……」

 

 飛び出した直後の直線で彼女は、みるまにバ群後方に埋もれていく。追い込み策とか小難しいことではなく、スタートに失敗したのだと私でもわかった。

 

 

 

 

 

「ねぇ、プチョ」

「ん? なによ、マイファム」

 

 モニターの電源はとっくに消された無人の広間に私とプチョだけが取り残されている。それでも私は、その場から一歩も動けずにいた。

 

「次のレース、私の再デビュー戦……私、勝てるかな?」

「そりゃ、もちろん」

「お願い、正直に答えて」

「……みんな勝ちたいって思ってる。だからみんな練習するし、作戦だって練る。でもレースになれば、どうなるかなんて誰もわかんない。そん中で勝ち上がるのは、中央だろうが地方だろうが難しいよ、ほんとは」

「そう、だよね……」

「だからさ、勝つって考えることだね。負けるなんて想像もしない。勝ちたいって願いでも祈りでもなくて、勝つって考え続けられるやつが、勝つんだと思うよ。いや、はは……私も都落ちした身だし知らんけどさ」

 

 そうだ。

 

「うん、私、プチョの言う通りだと思う」

「そ? いやぁ、いいこと言うね私!」

「決めた。私、勝つよ。勝ちたいんじゃない、次のレースで絶対に勝つの」

「そっか」

 

 プチョは私の頭を優しくぽんぽんと叩いて、もう寝ようと言った。ようやく私も動く気になった。

 

 

 

 

 

『第2競争、ニューフェイス戦スタートしました。7番のメイショウミザオが出て行きました。続いて3番、アグリシュブール』

 

 私の再デビュー戦。臨んでみれば特に感慨もない。

 勝つ。

 今日のレースは絶対に勝つ。

 

『向こう正面、3コーナー手前。前2人が後続との差を広げています。7番メイショウミザオが内、外に3番アグリシュブール。残り400の標識を通過して、後ろとは8バ身から7バ身の差!』

 

 お互いハナを譲らないまま、4コーナーを過ぎてしまった。オーバーペースなのは明らかだ。それでも私は負けるわけにいかない。絶対に勝つんだ。

 

 あの頃の私は、なにも答えてあげられなかった。

 でも、今は違うよ。

 もう貴方は、覚えていないかもしれないけど。

 私は忘れなかった。

 

「うおおおおお!」

 

『残り200でアグリシュブールに先頭変わったか。だが外からエスカペード、2番エスカペードがいい脚で伸びてくる!』

 

 エルドラドちゃん。

 いつか一緒に走ろうって言ってくれたよね。

 

 貴方が大井にいるのなら。

 

「私も絶対っ! そこに行くからっ!」

 

『前2人! 並んだ! エスカペード! エスカペード! だか内、アグリシュブール! アグリシュブール! クビ差をしのいでアグリシュブール! 1着でゴールイン!』

 

 

 

「……っはぁ! はぁ! ぐぅ……はぁはぁ……」

 苦しい。

 信じられないくらい苦しい。ある程度体ができれば中山2000mでも四つん這いから動けなくなったりはしなかった。

 それなのに苦しくて喋れない。上体どころか頭すら上げられない。

 それでも私には確信があった。

 

「シュブちーん! やったじゃん! ザッツ、オーサム! ガチで!」

「……あ、りがと……やった……」

「これでわかったっしょ、勝利への一番冴えたやり方」

「……うん」

「先頭を譲らなければ勝つ! 逃げしか勝たん!」

「……それはちょっと、違うと思うけど……」

 

 逃げが得意のプチョには言っても笑われるだろうから黙っていよう。

 

 勝利を確信した瞬間、今まで見たことのない景色が広がった。

 初めてだったんだ。

 直線を向いて、ゴール板が見えたとき。

 

 誰も前を走っていなかったのは。

 

 勝つってことは、目の前から誰もいなくなるんだ。

 当たり前かもしれないけど、過去の自分は、それすらも知らなかった。

 

 今さら過去には戻れない。

 あのとき、貴方が手にした1勝。

 ようやく私も手に入れたけれど、だからって追い着けたわけじゃない。

 エルドラドちゃん。

 貴方はずっと前を走っていたんだね。

 

 

 夏至を過ぎて日は短くなる。けれど季節はもっと暑い夏が来る。

 大井にも帝王賞が来る。

 今の私は、その場所に立ってはいないけれど。

 

 私の名は、アグリシュブール。

 お母さんの名前はトゥルヴァーユ。フランス語で発見って意味。

 

 ようやく私も、やることを見つけた。

 これは夢じゃない。願いでも望みでもない。

 大井じゃなくてもいい。

 なんなら先駆者みたいにフェブラリーステークスだっていい。

 

 誰かの背中を追うんじゃない。

 絶対に、世界を私の方に振り向かせてやるんだから。

 

 呼吸も整い、ようやく脚の痙攣も治まった。

 立て、思い出を踏み越えて。

 

 私の一歩は、ここから始まるのだ。

 

 

 

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