「ねえ、クラゲさん」
「サンタクロースって、ほんとうにいるの?」
何か前もこんなことあったな、とにじりよる双子から視線を浮かせる。その後ろで困ったように眉間をかいているのは、おそらくふたりのサンタ役を担うクズの保護者。
双子が呪いの吹きだまりのような村から救出されて初めてのクリスマス。きっとサンタなんて存在とほとんど縁がなかっただろうふたりが喜んでくれるようにと、夏油が後輩たちとともに頭を悩ませていたのは知っている。プレゼントの選定はすでに済んでいるはずだが、まさかサンタの存在を疑われているとは。
まあいきなりそんな都合のいい存在教えられても信じられないよな、と真剣な表情の双子に目線を戻す。さて、どうしたもんか。
「……先に聞くけど、ふたりの言ってる『サンタ』ってどういうやつ?」
とりあえず俺は、真面目に質問をされているなら嘘を言うつもりはない。夢を夢として大事にするかどうかは本人が決めることだ。
俺の問いかけに、ふたりはお互いの目を見合わせる。
「えっと、くりすますいぶの夜におうちにきて……」
「わたしたちにプレゼントをくれる赤と白のおじいさん!」
いや、赤と白のおじいさんて。だいぶゆるゆるの認識だが、まあそこはいい。フィンランドのサンタクロース村にいるぞなんて答えじゃ納得しないことはよくわかった。つまり双子が尋ねているのはクリスマスイブの夜に自分たちの枕元に置きに来る不審者の正体だ。
じわじわと双子の背後に立つクズからの圧力が強まっている。余計なことを言うなって、俺も別にサンタの正体がブラックサンタも真っ青のクズ野郎だなんてつまらないことを言うつもりはなかった。
そんな、ただ答えを教えるだなんて面白くない。どんな疑問であれ、その答えは自分の手で掴み取るべきだ。
「
口角が上がる。ぱあっと双子の瞳が輝く。ひくりとクズの頬がひきつる。愉快。
「十二月二十四日、お前たちがベッドに入って起きるまでの間に『サンタ』は現れる。いつどこに来るのかわかっているなら、……わかるな?」
うん、と同時に大きく頷いた幼い好奇心。まったく、良い資質をもっている。
「つかまえる!」
「そのつらおがむ!」
「な、菜々子、その言葉遣いは、」
「よし、作戦会議だ。夏油、お前は教室行けよ。遅刻すんぞ」
クラゲさん、とわずかな焦りを含んだ声を軽く無視して笑顔を向ける。今度こそしっかりと夏油の顔がひきつった。この上なく愉快。
「さあ、どうしてやろうな?」
たまにはこういう頭の使い方も悪くはない。愉快な娯楽をもちこんでくれた双子の頭に、ぽすりと掌をのせた。
*
「ところで硝子は何歳までサンタ信じてた?」
「んー、結構最近」
「……嘘だろ?」
「『サンタを信じてる限りプレゼントは来るぞ』という兄貴の教え」
「そういうところだよ、この兄妹」
サンタ捕獲は失敗しましたが、双子は幼くして結界術の基礎を覚えたそうです。なので夏油さんは海月に文句を言えませんでしたとさ。めでたしめでたし。