ここ最近、部屋の外に出ることが増えた。
いや、ある程度は自分のせいというか、自ら外に出る口実を増やしてしまっていることは自覚している。自分にもメリットがあることを理解してのことなので、それは別にいい。別にいいのだが。
こうして会いたくもない人に呼び出されるのは、やはり気が滅入る。
「どうぞ、こちらでお待ちくださいませ」
訪れる時間を非常識な深夜に指定したのは、せめてもの反抗だった。といっても、どうせ毎日遅くまで飲んだくれているような爺には関係のない話だったろうけれど。
京都の本家ほどではないにしろ、歴史と伝統をこれでもかと詰め込んだような日本家屋。張り巡らされた結界の気配や、焚きしめられたお香の香りがとにかくうるさい。住人にとっては快適なのかも知れないが、俺にとっては非常に落ち着かない場所だった。
今は敵意こそないものの、
ふと、風の流れが変わったのを肌で感じる。足音こそないが、そのひとが動くだけでこの屋敷は鳴動するように気配が揺れた。
このひとには、それだけの存在感があった。
「待たせたな、家入」
「……お久しぶりです、直毘人さん」
御三家のひとつ、禪院家を統べるそのひと。
禪院直毘人は、いつも通り瓢箪を片手に、楽にして構わんと軽く笑った。
「相変わらず不健康そうな顔をしているな」
「貴方の肝臓よりは元気だと思いますよ」
「言いよるわ。お前も呑むか? いい酒だぞ」
「ご要望ならご相伴には預かりますが、とりあえず用件を先にしていただけませんか。アンタ酔ったら真面目に話す気なくなるだろ」
というか絡み酒が過ぎるこのひととは正直あんまり酒を飲みたくない。俺のそんな気持ちが顔に出ていたのか、直毘人さんはいかにも愉快そうに喉の奥を揺らす。
持っていた瓢箪を軽く呷り、縁側を顎で指した。仕方なしに立ち上がり、庭を向いて座り込んだ直毘人さんに倣う。まだ春には早いこの季節、外にいるのは肌寒かったが、堪えきれないほどではない。
「何、そうたいしたことを話すつもりはない。東京に出向いたついでに顔を見ておこうと思っただけだ」
「ならもう用件は済みましたね。帰っていいですか?」
わりと期待を込めてそう言ってみると、軽く笑い飛ばされたし許可は出なかった。別に冗談を言っているつもりはないし、心底帰りたいと思っているのだが、それを理解してくれるほどこの爺は甘くない。
正直、今このタイミングで呼び出される理由がわからないだけに、この状況は気味が悪かった。
「このところ、高専で教師のまねごとをしているそうだな」
前言撤回、呼び出される理由がわかった。
小さくため息をついて、言う。
「別に、五条悟がいるからってわけじゃありません。なりゆきです」
「ほう? 五条から援助を受けたと聞いたが」
「確かに情報提供はしてもらいましたがね、深い理由はないですよ。見りゃわかんでしょあのガキ、家のために何かしようとかそういう発想はまるでない。自分にとって価値のないものだから別に見せてやっても構わない、それだけです」
アンタとアイツは違います、と言い切る。禪院家と五条家が犬猿の仲なのは周知の事実だが、このひとも個人的に五条家が好きではないらしい。
直毘人さんと縁ができてしまったのは、本当にただの偶然だった。京都での任務だの何だの、回避しきれなかったごたごたの中で、迂闊にも俺は手の内を少々晒してしまった。それがどうも、このひとのお気に召したらしい。
もともと禪院は、有力な術式をもつ術師を積極的に家に取り込むことで発展してきた家系だ。禪院家に非ずんば呪術師に非ずとか言っているが、有力な術師は全て禪院にしてしまえ、の方が正しい気がする。
このひとは、物好きにも俺に目を付けた。そして言った。禪院に来るのなら、全面的に禪院家の庇護を与える、と。
「しかし周囲はそうは見ん。あの五条悟と普通に会話をしているというだけで、お前が五条に取り込まれたと考える」
「周囲が何を考えようと知ったことではないです。俺は俺の研究に協力してくれる術師を邪険にする理由はないし、提供してもらったデータはありがたく活用するだけ」
「お前が婿養子に入るなら、禪院家がもつ記録の全てを好きにさせてやるが?」
「禪院家の記録は確かに魅力的ですが、禪院に取り込まれるつもりはありません」
「頑固者め」
「アンタが言いますか」
このひとはどうやら、俺の術式を禪院の血統に取り込みたいらしい。大した術式ではないと思いますけど、と何度言ってもこのひとは愉快そうに笑うばかりで退く様子を見せない。
このひとの前で俺の奥の手を晒してしまったことは、本当に失敗だった。
「お前の研究への全面協力、お前と妹の庇護、ほかもろもろの便宜も図ってやるとまで言ってやっているのに、まだ折れんとはな。頑固者でなく贅沢者か?」
「何を餌にしても返事は変わりませんよ。再三言いますけど俺基本的に禪院嫌いですから」
「少しは当主に気を遣わんか」
「身内のクズっぷりを改めるどころか面白がってるくせに何言ってんだ」
禪院家に非ずんば呪術師に非ず、呪術師に非ずんば人に非ず。いったいいつの時代の話だよと鼻で笑ってしまいそうな言葉が今も罷り通っているのだから、禪院の家風が知れようというものだ。
ひとの価値を呪力だの術式だのではかるのは脳が化石になっている術師全体の傾向だが、禪院は特にひどい。じゃあ術師なら普通に扱ってくれるのかといえばそうでもなく、相伝の術式がなきゃクズ扱い、弱ければクズ扱い、おまけに女性蔑視の気も多大にある。呪術全盛の時代から外界との交流絶って引きこもりでもしてたのかと言いたくなるような有様だ。
一応、直毘人さんはまだ話がわかるひとだとは思っている。クズだしゲスだが会話は成り立つし、交渉もできる。だが、そんなひとは禪院のなかでもごく一握りだ。いつだったか硝子を母胎扱いしたドクズももれなく禪院だったりするので、俺の中で禪院になるという選択肢はマイクロメートル単位でも存在しない。
「一億歩譲って、確かにアンタが健在のうちはいいかもしれません。が、アンタが死んだあとの跡継がアンタと同じ考えとは限らないでしょう。というか有力な跡継候補にろくなのいねーだろうが、知ってんだぞこっちは」
「何だ、バレとったか。まあ待て、少し前に良さそうなのを見つけたところでな」
「良さそうなの?」
「まだわからん。が、血筋はいいし何かしらは持っているらしい。育てれば見込みはあるかもしれん」
そりゃまた可哀想に、と言ってやればまた直毘人さんは笑った。
口ぶりからして、禪院の外で生まれた子なのだろう。それをわざわざ地獄にご招待して育てられるとは、気の毒と言うほかない。そしてこんな環境で育てられば、まともな人間性を手に入れろという方が無理だ。
顔も名前も知らない子の将来をほのかに憂いつつ、ぼんやりと目の前の暗闇を見る。
「とにかく、俺は禪院にならないし、五条に取り込まれたつもりもない。俺は俺として利用できるものはする、それだけです。他に何かありますか」
「ふむ。一応聞くが、お前の妹が五条悟と何かあって縁故とか……」
「斬り殺すぞクソジジイ」
つい反射的に言い返すと、直毘人さんは思わずといった様子で噴き出した。
吐きたくなる思いを堪えながら、俺は真剣に言い直す。
「いや、これは妹離れがどうとかそういう問題じゃねーんですよ。五条ですよ、あの五条。あれが義理とはいえ親類になるとか死んでも嫌でしょーが。俺は妹が選んだやつなら誰だろうがケチをつけるつもりはありませんが、五条だけは無理です。あ、いや待てよ、夏油も嫌だな」
「まあそれは俺も同感だが、あの強さと面の皮の出来映えは他に類を見んぞ? ころっといくやつも多かろうに」
「他がどんだけ良かろうが、あのクソな人間性を無視するほどうちの妹は馬鹿じゃないんで」
というかそうであってくれ頼む硝子。
妹が誰と付き合おうが結婚しようが、むしろしなかったとしても、口を挟むつもりは一切ない。一切ないけど、相手が五条や夏油だった場合だけは例外にさせてほしい。いや絶対にないと信じているけれど、ひとの心、しかも色恋沙汰なんてさすがに俺も計算しきれない。
その可能性だけは絶対潰す……と小声で頭を抱えると、まあそれならいい、と直毘人さんはにやりと笑った。
「本当に五条に取り込まれてはおらんようだな」
「ねーって言ってんでしょ」
「そうかそうか、なら話は終わりだ。まあ酒でも飲んでいけ、家入」
そう言って差し出される瓢箪。ふわりと漂う香りは上等のものだ。よくもまあ、いい酒をこんな飲み方するもんだといつものことながら少々呆れる。
ちなみに俺は滅多に酒を飲まないが、だからといって飲めないことは決してない。うちの家系はそもそも遺伝的にアルコール分解酵素が多いのだが、なかでも俺は群を抜いているらしい。
たっぷりと酒の入った瓢箪をちゃぷりと揺らす。
「飲んだら帰ります」
そう言って、返事も聞かずに口を付ける。
嗚呼、確かにいい酒だ。芳醇な香りが柔らかく鼻を抜け、舌触りも滑らか。するすると水のように喉を通り抜けていくが、しっかりとした米の味も感じられる。相応のアルコール度数であることは察したが、この程度で怯む俺ではない。
大きな瓢箪を逆さにして、最後の一滴まで喉に流し込む。
「……はい、ごちそうさまでした。確かにいい酒ですね」
「顔色ひとつ変わらんか。酒豪も相変わらずだな、つまらん」
「俺を潰したいなら酒の量もアルコール度数も足りませんよ」
「そうか、次はもっと強い酒を用意してやろう」
次とかいりません、と言ってはみるがどうせ無駄なのもわかっていた。しかし、酒の相手が欲しいなら適当に身内からでも見繕えばいいものを。まあこんな絡み酒のおっさんと誰も酒なんか飲みたくはねえわな、と思いながらその辺に瓢箪を置いて、ゆっくりと立ち上がる。
意識ははっきりしているし、足も問題ない。一応自分が酔っていないことを確認してから、改めて直毘人さんに目をやった。
「じゃ、俺はこれで」
「ああ、気が変わったらいつでも連絡を寄越せよ、家入。いい女を紹介してやる」
「少しは懲りろよアンタ。言っておきますけど俺、見下されることに慣れきった従順なだけの女性は好みじゃないんで」
「ほう?」
じゃあどんな女が好みだ、と聞き返されて、いつぞや俺に同じ質問をしてきたひとの姿がふと脳裏に浮かんだ。
長い金髪、自信満々の笑みに、規格外の呪力。そういや定期報告までもう少しだからそろそろレポートをまとめ始めないと、とそんなことを思う。もう少し、もう少し検証が進めば、研究は次の段階にいく。想定よりも研究の進みは数段早く、おそらくあのひととの契約が果たされる日も近い。
どうすれば、呪霊のいない世界を作れるのか。その「正解」は、結局のところやってみないとわからない。だが、現時点で「いちばんその可能性が高い」手段なら。
それがどんなものであれ、嘘偽りなく伝えること。それがあのひととの間に交わされた「縛り」だった。
ふう、とひとつ息を吐く。そうですね、と考えるふりをして、九十九さんに言ったのと同じ答えを返す。
「俺に興味をもたない横顔美人ですかね」
だから、研究に関わること以外で俺を煩わせるな。
そんな気持ちをこめて、ただ言い捨てた。
***
「さすがに言っていいことと悪いことがあるって思わねーの?」
「だよな。これは俺がまじで悪かったわ、ごめん」
だからメスを医療行為以外に使おうとするのやめろと両手をあげて首を振る兄貴。
どうやら真剣に悪いとは思っているらしい。チッと舌打ちをひとつして、先ほどまで実習で使っていたメスをしまった。そして片手を出すと、そこに詫びだと言わんばかりに煙草の箱が乗せられる。ひと箱で足りると思ってんのか、と無言で見返せば、珍しくちゃんともうひと箱が追加された。よほど反省したようだ。
わあ珍しい光景、今は静かにしていなさい、と背後から感心したような声とそれを窘めるような声が聞こえた。
「で、何でそんなくだらねー発想になったわけ?」
「いや、俺も考えもしてなかったんだけど。ひとに言われて初めてその可能性を認識した」
「誰だよそれ」
「お前の知らないひと」
いつもの通りに差し入れに来てやったというのにこのクソ兄貴、私の顔を見るなり真剣に心配そうな顔で「まさかとは思うけど五条や夏油が俺の義弟になったりしないよな……?」と世迷い言を抜かしたのだ。
兄貴にその辺りについて口を出されるだけでもううぜーのに、まさか出た名前があのふたりとか。つい反射的にメスを握ってしまったが、私は絶対に悪くない。
良かった良かったと真顔で繰り返す兄貴に、ため息しか出てこなかった。
「俺はお前のそういうところに口出す気は全くないけど、万が一にもあのふたりだったら真面目に嫌だなと思って」
「兄貴が夜蛾とデキるくらい有り得ねーけど?」
「可能性皆無だって言いたいのはわかるけど、もうちょっといい例えなかったか?」
でも見る目のある妹で嬉しい、と珍しくも素直な兄貴。どこまで嫌だったんだとは思うが、そりゃ嫌だよなと私も思う。私に姉や妹がいても絶対同じ反応をした自信がある。
いったいどこで誰に吹き込まれたのか、さらに尋ねようとしたところで背後で後輩が笑った。
「あはは、クラゲさんもそういうの気にするんですね!」
「別に相手があのふたりじゃなかったら気にしねーよ。灰原くん、君の妹さんが五条を連れてくるところ想像してみな」
「……。……五条さんは!! 五条さんだけは!!」
「そういうこった。別に甲斐性とか外見とかその他もろもろどうでもいいから、最低限の人間性はもちあわせててほしい」
「義理の弟への要求が最低ラインすぎませんか?」
「その最低ラインすら満たしてないのが君らの先輩だよ」
「……確かに。世知辛いですね」
ボロクソ言うじゃん、と思いながら完全に同意だったので何も言わなかった。どちらかというとその「最低限の人間性」だけを持ち合わせていないのがあのクズどもだ。特級クズ二匹が同期とか私まじでついてねーな、と思いながら苺大福に齧りつく。
兄貴の好物を聞きかじったらしい後輩たちが、どこかで買い込んできたらしい。あえて少し酸味のある苺を採用しているというその苺大福は、甘すぎなくて美味しい。
「……つーか、私のことより先に自分のことを考えれば?」
「俺? 普通にいらねー。つか邪魔」
「言い方最低じゃんウケる」
「この状態で誰かと付き合おうって方が最低だろ。まあそもそも相手いねーけど」
クラゲさんちゃんとしたらモテそうなのに、と悪気なく灰原が言いきる前に、ずびしと七海が灰原の脇腹に手刀を入れた。ぐふ、と変な声をあげて灰原はうずくまる。
いやちゃんとしてねーのは事実なんだから別にいいのに。兄貴も特に気にせず、今の結構いい音したな、と感心したように言った。
ううう、と言いながら灰原は言い訳をするように声を絞り出した。
「だ、だってクラゲさん、顔綺麗なのに隈あるから……!」
「それについては私も思います。睡眠時間はきちんととるべきですよ」
「もっと言ったれお前ら~」
「硝子まで乗るな。最低限は寝てんだよ、これでも」
前より寝てるくらいだし、と言い訳じみたことを宣う兄貴に、灰原と七海から飛ばされるブーイング。
聞こえねー、とか言いながら目の下にいつまでも隈を飼っているクズは、もそもそと苺大福に齧りつく。美味い、と味わっている様子の兄貴に、後輩たちはちょっと嬉しそうに口を閉じる。いやそんなんで絆されるなっつの。
やれやれ、と思いながら、ふと私も少し前に似たような話をしたことを思い出して言ってみた。
「相手いないって、たとえば歌姫センパイは?」
「それお前の願望じゃねーの」
「そうだけど?」
「開きなおんな。庵ならもっと誰かいいやつさがせ、……探せるだろ、きっと」
「おいコラ何で今言いよどんだ?」
庵の名誉のために聞くな、と目をそらした兄貴、いったい何があった。付き合いがそこそこあればいろいろあんだよ、と死んだ目をしているが、さすがに後輩たちの前でそれ以上聞くのは躊躇われる。今度隙を見て探りを入れてみよう。
ちぇーと口を尖らせても、兄貴は素知らぬ顔をしている。
「でも兄貴だって歌姫センパイ嫌いじゃねーだろ」
「そりゃ術師には珍しいくらい真面目でまともなやつだからな。それなりにしごいたのに食らいついてくる程度には根性もある。嫌う要素がない」
「めちゃくちゃ褒めてるじゃないですか」
「いい後輩だとは思ってるよ。そんだけ」
話は終わりと言わんばかりに、兄貴はモニターに向き直る。
苺大福を食べた手を綺麗に拭いて、またキーボードを泳ぎ始めた。最近のキー音は軽快ながらも、たまに立ち止まることがある。手を止めた兄貴はじっと数式を見て、時に自分の頭で少し演算して、また少し苦悩するように数列の海を泳ぐ。
研究がひとつの山を越えようとしているのは、察していた。
「……兄貴~」
「なんだよ」
それでも、ちゃんといつも通り返事はしてくれる。どれだけ研究に夢中になろうと、この部屋に誰かがいるときは必ず、その耳だけはこちらに傾けてくれていた。研究を第一にしているように見えて、実はやっぱりそうでもない。
たまに、兄貴の優先順位がよくわからなくなる。
「万が一私にそういう相手ができたら、反対はしないわけ?」
「五条と夏油以外ならな」
「ふーん。結婚式とかやったら泣いてくれる?」
「何でだよ。泣かねーわ」
「えっクラゲさんが泣くところ見たいです!」
「家入さん、是非式には呼んでください」
「いーけどご祝儀ははずめよ」
泣くのは親父くらいだろと嫌そうな顔をした兄貴だが、多分私に見えないところで義弟に「泣かせたら殺す」くらいの脅しはかけるだろうと正直思っている。その程度には、この不器用な兄貴に大事にされている自覚があった。
今のところ恋愛の類いに大した興味はなかったが、兄貴のそういう場面が見られる可能性があるなら、ちょっとは面白いかもしれない。
にこにこといつもの笑顔を浮かべた灰原は、楽しそうに口を開いた。
「クラゲさんも式を挙げるときは是非呼んでくださいね! 僕ら余興やりますよ!」
「相手も予定もねーけど、余興って何やってくれんの?」
「うーん、じゃあ漫才とか! 僕と七海でコンビ組んで、あ、きっと五条さんと夏油さんもやってくれますよ!」
「何だよそれやっば、滑り倒すところ映像撮って後世に残したい」
「兄貴、さっさと式挙げる相手探してきて。今すぐ」
私を巻き込むな、と小さく零された嘆きは兄妹揃って聞こえなかったふりをした。コンビ名考えなきゃね、と笑顔で言い切った灰原のメンタルの強さは、もしかしたら褒め称えられるべきなのかもしれない。
***
海月の揺蕩う、数の海。そこから弾き出される答えは希望か、それとも。