事件が起こった現場を確認するため、エアコンの効いた車内から出るとムワッとした熱気が体を包み込んだ。
いくら心構えをしていたからといって暑さはやわらがない。
「あ〜あっつい」
私って基本インドア派なんだよね。
暑い日と寒い日と雨の日と雪の日と風の強い日は外に出たくない。
日傘くらい持って来ればよかった。
「早く確認して車に戻ろ」
「じゃないと、干からびそう」
「ならすぐに済ませよう」
そういって早足で駐車場の端に向かっていくラヴちゃんの後を追った。
背が高いからストライドも広くて追いつくのが大変だ。
そういうところだぞ。わかってんのかな?
辿り着いたのは駐車場の端にある自動販売機側、資料にあった通りここが被害者の死んでいた場所だろう。
「ここで被害者が亡くなった」
「おそらく休憩のためによったんだろう」
それはわかるよ。
自動販売機のところに来る理由なんて休憩しかないよ。
「それで?最初に事件が起こったのが二ヶ月前でしょ」
「その後二人殺されて、警察が殺されたのが一週間前だっけ」
「そうだ。だが二人はこの自動販売機側で殺されて、七人は駐車場から離れた場所で殺されていた」
「現場の状況から、バイクから逃げようとして背後から轢き殺されたんだろう」
「この駐車場、そして自動販売機が事件の中心になっているのはほぼ確実だ」
「一度バイクが出てくると轢き殺すまで執拗に追ってくるってわけね」
どこを確認しても至って普通の駐車場に自動販売機だ。
特に変わったところはなさそう。
「ただ無差別に襲うということはなさそうだ」
「遺体の搬送や現場検証の際にバイクに襲われたという記録はない」
「ならここで何か特別なことをするとバイクが召喚されるのかな?」
「その可能性は高いな」
ここでできることと言えば、それこそ飲み物の購入くらいだろう。
でも買うと死ぬかもしれないなら慎重にしないといけない。
いっそ自動販売機を撤去したらもう事件も起こらないんじゃないかな。
「というわけで自動販売機を撤去してこの事件は終了にしよっか」
「それで終わる保証もないだろ。これ以上被害者を出さないためにも、事件が起こる元凶をできる限り正確に把握する必要がある」
「で、どうやって正確に把握すると?」
「こうすればいい」と言いながらラヴちゃんが財布を取り出し自動販売機に近づいていく。
咄嗟に腕を掴んでそれ以上近づくのを止めた。
「いや危険だって話今してたよね!?」
「だからそれを私たちで確かめる」
この子何言ってんの?
「春夏秋冬の話した通り、ここで飲み物を購入するとバイクが出現する可能性がある。だがそれも今のところ推測でしかない。直接誰かが確認するしかないんだ」
「それが分かってから原因を撤去なり破壊なりすればいい」
馬鹿の作戦!
「いやもうちょっとスマートな方法で解決できないわけ?」
その作戦私まで危険だし。
「今までどうやって捜査してたのよ」
「同じだ。まずは事件の渦中に入る」
……そうかそういえばそうだった。
こいつらほぼ不死身みたいな奴らだった。
時間停止にダメージ無効(仮)だからね。
何が起こるかわからない現場に単身で突っ込むなんて無茶苦茶なことしても生きて情報持って帰れるのか。
でも今回私も一緒ってことを理解してないのかな?
「あのさぁ、確かに私は容姿端麗・頭脳明晰・運動神経抜群の三拍子揃ったパーフェクトな人間だけどさ」
「あんたらと違って普通に死んじゃうんだって」
「ならどうする」
どうしよっか。
でも自動販売機を使用するのは最終手段にしておきたい。
早く帰りたいのはそうだけど、リスクの高い方法は極力取りたくない。
だって痛いのも苦しいのも危険なのも嫌だから。
他に何かわかることはないかな。
「被害者の共通点はここにいたってことだけ?」
「ああ、調べられる限りそれ以外のこれといった共通点はない。性別も年齢も交友関係も」
少し考えて見たけど何もわからない。
バイクと自動販売機の関係も不明だし、そもそもなんで二ヶ月前に事件が起こったのかも不明。
自動販売機はそれ以前からあったし利用もされていたはずだ。
轢き殺す理由もわからないし頭おかしくなりそう。
「大丈夫なら、始めよう」
結局いい案が思いつかないのでラヴちゃんが自動販売機で飲み物を購入するのを止められなかった。
一応何かあった時に逃げられるようにその場で足のストレッチをしておく。
バイク相手に逃げ切れるかは不明だけど能力をフル活用すればどうにかなるかもしれない。
ストレッチをしていると水を二つ購入したラヴちゃんが近づいてくる。
一つを私に渡してきたので受け取っておく。
「今のところは何も起こらないな」
「まぁ、被害者が一応逃げられるなら買った直後ってわけじゃないかもね」
会話しながらペットボトルを見るけど特に変わったところはなさそうだ。
ただ暑いとはいえ、そこで買った飲み物に口つけたくはならない。
そこで数分待っていると快晴だった空に突如として雲がかかり始めた。
そして突風が吹いたかと思うと、次の瞬間には五メートルほど先にバイクが現れた。
「出てきたぞ春夏秋冬」
「あれは……人間か?」
違う。あれは人間じゃない。
バイクにおかしなところはないけど上にいるのは異常だ。
姿は間違いなく人間なのに空気に触れているように感触が薄い。
つまり
「ゴーストライダーってところかな」