俺「以外」の全員が「2周目」は流石に鬼畜仕様過ぎる。   作:夢泉

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7話 迷い人の答え

 

 互いの命を賭けて、真剣勝負の殺し合い。

 どれだけ綺麗事を並べようと、「決闘」なんて形にしようとも。結局は殺し合いであり、殺人行為。命を殺める行為だ。

 

「フィデルニクスの使命って同族を守る事なんだよな」

「えぇ」

 

 当然、それは許されざる事である。

 故に。止めるべきは明白で。

 なのに。

 

「決闘で死んだら果たせなくないか?」

「それは問題ありません。イラソルという優秀な部下が居まして。今も彼女に任せて来ています。「世界の敵」である「魔王」をエルフが討伐した……その実績があれば、人間側とも強い繋がりを構築してくれる。そのように確信しております故」

 

 何を言っても、一切の動揺を見せない碧眼。

 それを、俺は不思議と抵抗感なく、受け入れることが出来た。

 仮面おじさん筆頭に、オカシイ価値観の奴に毒され過ぎてしまったのか。それとも、俺自身が、殺しという手段に忌避感を覚えないイカレタ人間性なのか。

 

「……そうか。アンタは死に場所を探しているのか」

「……そうかもしれませんね。貴方との邂逅以来、ずっと考え続けてきました。そして、先程のグエラエの折、貴方との会話を経て答えを見出したのです」

 

 彼は。

 「前回」にて、忠義を捧げた「魔王」に裏切られ。

 「今回」にて、全く異なる道を進む「俺」と出会い。

 その明晰な頭脳と冷静な思考で悩み続け、迷い続けて。

 1つの答えに辿り着いた。

 辿り着いてしまった。

 

「「前回」などという曖昧模糊としたモノが本当に存在していたかは分かりません。それでも――」

 

 彼は、そこで一度言葉を区切る。そして、昔日の日々に想いを馳せるように目を閉じて。

 碧眼に充足感。言の葉に万感の感情を込めて。

 彼の答えを紡いだ。

 

「――私は、仰ぐべき主君を得て、忠義に生きた。その記憶が確かにあるのです。たとえ結末が望んだものでは無かったとしても、それが私の一生でした」

 

 畢竟。

 彼の中で、彼の「一生」は既に終わってしまったのだ。

 俺ではない「俺」。「魔王エイジ・ククローク」と駆け抜けた日々で、彼は満足を得てしまった。

 

「最後に1つ聞いても良いか」

「どうぞ」

「魔王と同一人物である俺を仲間として認識し、力を貸す。その道は存在しないか?」

「無理ですね。……「魔王」を超える。それは、貴方自身が言った言葉でしょう。ならば、貴方は「我が主」の敵です」

 

 これが、彼の答え。

 「使命」と「忠義」。その道中にて散々に迷った男は、最後に「忠義」を取った。

 「魔王エイジ・ククローク」を唯一の主と定め、冥府への道を追うと決めた。

 彼は、「魔王」以外を主と仰ぐことは無く。

 俺は、「魔王」とは別の道を往くと決めた。

 故に。その道が交差する事は決して無い。

 

「……そういう事なら分かった。クリス、立会人を任せても良いか」

「はい。必ずや、妾が全てを見届けます。……フィデルニクス。かつて同じ四天王として肩を並べた妾から一言だけ。その忠義、天晴であると」

「感謝致します、エイジ君、クリスティアーネ」

 

 距離を開けて、武器を構える。

 フィデルニクスは魔術にて風の剣を。

 俺は、師匠より譲り受けた双剣を。

 一通りの作法を済ませれば。

 最後に一言。己が信念を決闘に捧げる。

 

「俺はエイジ・ククローク。全ての魔王を超える者だ」

「私はフィデルニクス。魔王様への忠義に生き、忠義の道にて死にましょう」

 

 ――瞬間。

 剣を振るおうとした腕も、一歩を踏み出そうとした足も。

 どちらもピクリと動くことも無かった。

 

「……は?」

 

 鮮血が噴き出す。

 凄まじい激痛であるはずなのに、驚愕の感情が大きく勝った。

 何故ならば。俺の視界に映っているのは。

 俺とフィデルニクスの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そんな意味不明な光景だったのだから。

 

 

◆◆◆

 

 

「そろそろ始まるかねェ、地獄の時間がさァ」

 

 少し離れた場所で、蒼い肌の女が呟く。

 

「一人の女の嫉妬が行き着いた果て。デカ過ぎる感情の価値は破格ってわけだなァ」

 

 彼女は、呑気に料理なんて作りながら。

 壊れたような笑い声をあげて、言った。

 

「ケケケ。どうするよォ、後輩。精々足掻いて、オレを楽しませてくれやァ」

 

 






【後書き】

某SNSを徘徊していて、この小説が鬼畜仕様過ぎて、胃がキリキリしてキツイと言う感想を見た。
そうだろうな、と思った。

最終的に愉悦部の人しか見てくれなくなる気がしている今日この頃。
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