末姫   作:イブリナ

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プロローグ
ただ、主人公がほのぼの過ごしている話です。
短い。
主人公の台詞が平仮名表記だから読みにくいかもしれない。数話はこの状態だから嫌だよ!って方はバックバック!大丈夫だ、地下迷宮のサービスは手厚いぞ。作者はテキトーだけど。

あらすじに微塵もかすってない、そもそもあれをあらすじと呼んでいいのだろうか?

まぁ、細かいことは気にするな


大鬼族の末の姫

「こら、待て末の!」

「あはは!にいさまこっちですよ!」

「お兄様、末の、あまり周りに迷惑をかけてはなりませんよ。」

きゃっきゃっ、と幼子の声が響く。

幼子が兄の稽古用の刀を持って逃げ回る。それを見て呆れたように、笑って咎める真ん中の子。

仲の良い三人兄妹を周囲は微笑ましそうに見守っている。

彼らは大鬼族の里長一家に遅くに生まれた末の姫をたいそう可愛がっていた。生まれ持った魔素は多く、制御しきれていない部分もあるが、将来を期待された幼子であった。少々厳しく鍛えようとする者も居たが、兄や姉の周りにちょろちょろと着いて回る姿はとても可愛らしく、のびのびと育っていた。

しかし、彼女とて里長の子。

次期里長たる兄に着いて行っては剣術や兵法を学び。

次期巫女たる姉に着いて行っては魔法や医術を学び。

里の中でも一番といえる環境の中で、自然とその力を大きくしていった。

今だって同じ年頃の大鬼族では持つことは出来ても、走り回ることなぞ出来ないような大刀を持って兄から逃げ回っているのだ。十分な英才教育といえよう。

「あっ」

「ッ大丈夫か!」

「う、うぅぅ~~。」

「こらこら、擦ってはいけませんよ。」

 

……まぁ、まだ二桁に満たない幼子である。魔族とは寿命の長さは多種多様。大鬼族の寿命は二、三百年。個々によるばらつきが大きい種であるが、二桁に満たない歳などまだ赤子である。

それでも優秀さと子供らしさは両立できるものであろう、たぶん。

 

 

 

今日も今日とて末の姫は里の中を歩き回る。

里、と慣習的に呼んではいるが、ジュラの森でも一大派閥を誇る大鬼族の里は、下手な村よりは大きな集落である。町…とまではいかないため、ほぼ全員が顔見知り状態ではあるが、小さな末の娘にとっては里を一周するだけでも冒険である。

普段は上の二人に着いて廻る彼女だったが、人の上に立つ家柄、空気を読むのは得意だ。着いて行って良い時とダメな時は本能的に分かっている。

兄は里長の元へ、姉は巫女長の元へ。

だから今日はひとりで散歩の時間なのだ。

 

「おや、ひぃ様。今日は1人かい。」

「そうです!きょうは きたのぶらくに いきます。りさーどまとがきてると ききました!」

「おいおい、それは蜥蜴人族(リザードマン)ですぜ!」

「む、り、リザード、マン…ですね!まちがえてません!」

「合ってますよ。こら、あんた言い方ってもんがあるだろう。」

「いって…何するんだこのババア!」

「ひぃ様の前で何て口を利くんだい、このバカ息子!」

「あはは!なかよし、です!」

「お前たちな…ひぃ様、蜥蜴人族たちが帰ってしまうよ。早く行ってきな。」

「はーい!」

 

「ひぃ様や、甘味はいらんか?」

「じいちゃん、それ俺の!」

「そうだったかの?」

「そうだって!里の外に採りに行ったんだぞ!」

「そとに、ですか!」

「あ、ひぃ様…………食べる?」

「たべます!」

「仲良く分けるんじゃぞ」

「いや、元々俺のだから!」

「は は は。」

 

「ん?ひぃさ…コホンッ。

こんな北の端までどうされたのですか、末姫。」

「でざーと、り、りざーと……まんがいる とききました」

「っ~~。」

「バカ、仕事中だぞ。ひぃ様きょとんととしてるじゃねぇか。」

「?」

「か わ い い !」

「はぁ……末姫、蜥蜴人族でしたらここの商家の所ですよ。武具を買いに来たそうですよ。シス湖の物を売りにも来てましたから、良いものが見られるかもしれませんよ。」

「シスこ の!」

「……行ったか?」

「行っ……」

「あっ。」

「「!!」」

「ありがとうございました!」

「「……」」

「やっぱひぃ様可愛いな。」

「なんで仕事中なんだよ…。」

 

たくさんの声をかけられ、寄り道をしつつも目的の商家へとたどり着く。途中で"リザードマン"、と言えなかったことを反省し始めたのか、北区に着いてから周りの者に片っ端から話しかけ、確認していたためとても時間がかかったことを、ここに追記しておく。

商家の外にある走行蜥蜴(ホバーリザード)の引く台車には、沢山の大鬼族製の武具が積まれていた。

この末の姫、兄の影響を受けて大の武器好きである。

一番は刀であるが、台車の中には無いように見える。あれは使い方の勝手が違うため、仕方がないと言えるだろう。

「ふぁ……、親方おせぇ…。」

「おやかたさん、ですか?」

「うぉ!何だこのチビ。…危ねぇぞ。」

台車の中に頭を突っ込んでいる小さな大鬼族の肩を掴み、台車から遠ざける。観察していた武具たちから遠ざけられ、目を丸くした彼女は、声をかけてきた異種族を見て、丸くしていた目を輝かせた。

「で、りざーど、まんです!」

……誰かが言ったデザートみたい、という言葉が悪かった。彼女の中ではデザートマン、それが転じてリザート、リザード、となった。その結果、始めに必ず"デ"が来ることと引き換えに、彼女は正しく"リザードマン"という語を獲得したのである。

そんなことなぞ露知らず、いや知ったところでどうともならないのだが…大きな瞳を輝かせる子供に蜥蜴人族の青年は危ないイタズラへの怒りを忘れて、子供の頭を撫でた。

「これに載ってるのは危ないからな~。触るんじゃねぇぞ。」

「だいじょうぶ、です!」

本当にわかっているのかと少々不安になるが、ここ大鬼族の里は武具が名産品である。子供であろうと扱いには慣れているものだ、と先ほど訪れた鍛冶屋で知った青年は、まぁいいかとため息を吐いた。

「で、親方か?それならこの店の中にいるぜ。オレは荷物番だ。」

「ほえー。」

ひょっこりと暖簾の隙間から中を覗けば、大鬼族の商人と談笑する蜥蜴人族の後ろ姿。

一緒に覗き込んだ青年が彼らを指差す。

「ほら、あれが親方な。よく取引する顔馴染みだからって、ずっと喋ってるんだよ。」

「ふーん。おにいさんは おはなし しないのですか?」

「嫌だよ、親方、俺を出汁にして虐めてきやがる。」

「いじめは ダメですね。」

こそこそと低い位置で話す二人に、向かい側に居た店主は生暖かい視線を向ける。それに気が付いて振り返った親方と呼ばれた男が、青年に対して眦を吊り上げた。

「てめぇ、荷物番はどうしやがった。」

「あっ、やべぇ…。」

「まぁまぁ、いいじゃないか。ここは僕たちの里なんだ。盗人なんてそうそう出ないよ。見習いくん、おいで。

ひぃ様も、ようこそいらっしゃいました。」

「おじゃまします!」

「あ、ありがとうございます…。」

「ん?ひぃ様だぁ?大鬼族の長の末姫のことだったよな。」

「あぁ、そうだよ。我らが末姫様さ。」

「えっ、お前姫さんなの?」

「ととさまは すごいかた ですよ!」

「口の利き方がなっとらん!前世からやり直せ坊主!」

「理不尽!」

 

店の中に悲鳴と笑い声が溢れる。

その日の末の姫は、影で見守っていた世話役が迎えに来るまでシス湖の話に目を輝かせていたのである。

 

 

 

「ねぇさま!」

「ひぃ様でしたか。姫様は作業中ですよ。」

帰還した末の姫はとことこと廊下を走る。あまり音をたてれば怒られてしまうため、小さくとことこ、だ。武術を習っている彼女には、その程度のことは容易い。

本来は音を立てて走った時点で叱られるものであるが、やっぱり本邸の多くの世話役たちは末の姫に甘かった。

本邸の奥、かといって陰湿な空気もなく、むしろ中庭に近いその空間は昼はよく日が入る部屋だ。そこの扉を叩いて、返事も待たずに中に飛び込む。

扉を開けたのは中に居た巫女守。

わざと驚いたように末の姫を迎え入れると、しーっと言うかのように人差し指を口の前に立てた。

「大丈夫です。一段落はつきました。

…本当にお前はタイミング良く来ますね。」

完成した織物を前にゆるりと微笑むのは上の姫。末の姫の姉であり、次期巫女長となる巫女である。

―ちなみに、ここ数十年は"姫"と言えばこの巫女姫のことを指し、多くの者が彼女をそう呼ぶ。そして末の姫が生まれてからもそのイメージは変わらず、"姫"もしくは"巫女姫"というのは上の姫のことであり、"末姫"もしくは"御姫様"("ひぃ様")というのが末の姫のことである―

「えへへ、かんです。」

「お前の直感はいつも当たるので、予知スキルでもあるのかと。」

「この間も他の巫女守の目を盗んでいらっしゃいましたしね。」

「む。けど、むらさきのみこもりは みのがしてくれないです。」

「当たり前です。私は戦士団の出ですから、ひぃ様に騙される訳には参りません。」

「む~~。」

当然だといわんばかりに胸を張る己の巫女守に、大人げないと苦笑する姉が妹を手招くと、きっちりと揃えられた膝にちょこんと腰掛ける。膨らませた頬を突きながら、どうしたのかと問いかければ、すぐに満面の笑みへと変わった。

「きょうは …リザードマン、と おはなしできました。」

「そう、良かった。何のお話をしてきました?」

「えっと、ですね!」

にこにこと話始めた末の姫に二人で相づちをとる。

1人で冒険をした時は必ず報告に来る末の姫は、いつも楽しそうに1日のことを話すのだ。

無知ゆえの発見に、幼子ならではの見方。決して頭の悪くない彼女は、いくつもの驚きを2人にくれる。

この時間は少々融通の利かない父や兄、周りの厳しい母ではなく、柔らかく聞き手になってくれる姉の特権であった。

夕方の巫女姫の護衛が人気な理由の1つとなっているのを末の姫は知らない。

 

「いつかシスこに いってみたいです。」

キラキラと目を輝かせる妹に少しばかり考え込んで姉は応える。

別に初めて蜥蜴人族にあったわけではないが、今まではずっと父の客人として訪れていたのだ。個人的な話など聞いたことは無く、里の外に出たことのない末の姫が心引かれるのは、察するのに余りあった。実は小人族(コボルト)小鬼族(ゴブリン)、人族などなど、どの種族であっても同様であった。

好奇心旺盛。恐れなど知らないとばかりに行動する年頃である。こうやって控えめにねだる方がまだ大人しかった。

「シス湖ですか…蜥蜴人族は紳士的なので問題はありませんが…、もう少し大きくなったら、お父様に相談しましょうか。」

「む。このあいだ にいさまが むずかしいと いっていた ようずつは できました。わたしの かちだそうです。」

「ひぃ様、妖術、です。」

「またあの師は…いえ、それはとても凄いことですが、関係ありません。それにまだその修行は危ないですよ。

遠出も修行も、もう少し大きくなってから、ね?」

この歳で妖術を使えたことを、褒めればいいのか叱ればいいのか。妖術の師と兄は間違いなく褒めた、むしろ教えたであろうことを考えると、ここは叱るべきなのであろうが、もう過ぎたことである。実際に見たわけでもないのに、叱責するのはどうかと頭を悩ませるのが姉の立場だ。

魔族とは強さこそ全て。

戦う手段を新たに手に入れたことは喜ばしいことであり、本来なら叱責するのも可笑しな話なのだ。

危ないから、とは言っても本人が使いこなしている時点で口を噤むしかない。こういうのは1度痛い目を見なくてはどうしようもないのだ。

少々小言を挟む程度にして、話題を変える。心の中では兄と妖術の師に説教することを決めたが、この妹の前で出すことはしない。情緒豊かなこの子は自分のせいかもしれないと不安がるのだ。

話たいことも一通り終わったようだし、外へ行きたい欲が大きくならないようにしなくてはならない。

今日の巫女長の引き継ぎ教育について話せるところだけを選んで話していく。

時おり投げ掛けられる質問にも応えながら、絵も交えて教えていけば、もう前の話など忘れている。

子供などそんなものである。

すくすくと巫女としての知識を溜め込んでいく彼女も、また巫女候補だ。あまりにも活動的なため戦士団の方に行くかもしれないと言われているが、やればできる子、優秀な次期巫女長のお話は、彼女の中にしっかりと刻み込まれていた。

次は自分の番だと言わんばかりに話始めた巫女守と、途中から顔を出した母とお付きも混ざって、賑やかな女子会が繰り広げられていた。

 

通りかかった兄は、きれいに追い返されていたことを伝えておこう。




人物紹介(三人兄妹)

・末の姫、末姫、御姫様、ひぃ様
大鬼族の里長の三人兄妹の次女。
年齢は七歳ぐらい。
家族と里の仲間が大好きな愛され幼鬼。
魔素量が多く、制御しきれていない面があるが、兄姉に似て才能はある。

・若、次期棟梁、次期里長、跡継ぎ様、お兄様(にいさま)
大鬼族の里長の三人兄妹の長男。
年齢は三、四十歳ぐらい?(どっかで追及あったけ?)
家族と里の仲間が大好きな期待の若鬼。
少々直情的な面もあるが、武に長け、長として冷静な判断もできる。

・姫、姫様、巫女、巫女姫、次期巫女長、織姫、(ねえさま)
大鬼族の里長の三人兄妹の長女。
年齢は言及しません。(女性に歳を聞いてはいけません)
家族と里の仲間が大好きな美しき鬼姫。
慈悲深く、いつも控えめに笑っているが、妖術、魔法等に長ける。



おまけ

大鬼族の設定について
寿命・年齢についてを捏造。四百年前にハクロウの祖父がやって来たこと、存命の内に指導を受けたこと、ドワルゴンの王の年齢が 歳、ハクロウの娘が 歳。よってハクロウの年齢は3 と推定する。また、ハクロウは長命であるとの記述から大鬼族全体の寿命を平均として250ほどとし、保有する魔素の違い等、個体差が大きいだろうと仮定し、200~300程度とした。
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