艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~   作:ゆ~

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艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~ 第十話

 ロ級「…!」

 

 こちらの動きに察知したロ級が砲撃を開始する。

幾多の砲撃が海面に着弾し、多くの水しぶきが上がる。

その中から低姿勢で水面を走り抜ける雷と時雨。

 

 右肩の砲台を構え、敵に狙いをつける雷。

 

 雷「そんな攻撃当たらないわよっ!」

 

 砲撃。

一直線にロ級型に直撃し、転覆させた。

それを雷は横をすり抜け、あとから走ってきた時雨が追撃をかける。

 

 時雨「確実に行くよ!」

 

 転覆したロ級にもう一つ砲撃をかけ、撃沈させる。

更に後方からも、吹雪と陽炎のコンビが進撃する。

 

 吹雪「陽炎ちゃん、フォローお願い!」

 

 陽炎「オッケェ、陽炎型駆逐艦と吹雪型駆逐艦の力、存分に見せてやろうじゃない!」

 

 陽炎が後方から砲撃を開始、イ級型の群れの中心を狙う。

イ級型の群れは、砲撃を避けるため四方に散開。

吹雪は左に逃げたイ級型に狙いをつけ、魚雷を発射し、撃沈。

陽炎は吹雪の背中を守るように後方に付き、牽制射撃を続けた。

 

 やや遅れ気味で、白露と望月が突入する。

 

 白露「むむぅ…一番乗りは乗り遅れたけど、

    やることはしっかりやるよぉーっ!

    いっくぞぉ、モッチー!!」

 

 望月「うぁー、何だこいつ…

    テンション高いわー、マジうぜー」

 

 やる気満々の白露に対し、望月は面倒くさそうな表情をするが、

息の合った連携で敵を撃破していく。

 

 

 鎮守府作戦司令室では、勇が時雨を通して状況を把握していた。

じっと通信機を睨み続ける勇。

鳳翔はそんな勇の机にそっと緑茶を置く。

一礼をしてお茶を受け取る…が、摩耶にすっと奪われる。

「何すんの」という憎らしい顔で摩耶を見上げる勇。

 

 摩耶「提督、お前少し肩の力抜け。」

 

 摩耶はそう言うとお茶を口に入れた。

後ろから日向にアイアンクローをされ、摩耶は10cm程浮き上がる。

 

 日向「何をしてるんだお前」

 

 摩耶「あだだだだだ!!

    いや、あたしはこいつがクソみてーに

    力入ってるからリラックスさせようと…」

 

 そのまま摩耶は日向に部屋の外へと連れていかれた。

鳳翔は「あらあら」と柔らかく笑い、替えのお茶を淹れてきた。

勇はお茶を一飲みした後、那智に振り向く。

 

 勇「…戦闘が始まったので、那智さん。

   二人に出撃するよう伝えてください」

 

 那智「承知した」

 

 那智は頷くと、部屋から出て行った。

再び勇は通信機に目を戻す。

 

 

 戦闘が始まって約20分が経過した。

敵の戦力の大半を削ったが、吹雪たちも無傷という訳にはいかなかった。

右肩を砲撃が掠め、出血している個所を抑える。

 

 時雨「…っ、少し、やられたみたいだ」

 

 時雨は周囲を見る。

ほとんどの少女が小破しており、服が破れ肌が露出する者、

砲台を損傷した者が怯まず戦闘を継続していた。

 

 状況はこちらが優勢であり、勝利まで目前だった。

時雨は手拭いを右肩に巻き、再び進撃しようとする。

しかし、時雨は敵側の海域の遠方から何かが接近しているのを確認する。

 

 時雨「…何だ…あんな深海凄艦、見たことない…

    …人…!?」

 

 そう、全身黒い艤装に水着、目は妖しく緑色に光る人の形をした深海凄艦が

急速接近していた。

 

 陽炎「ふぅ、ふぅ…こ、ここに来てボス登場…?!」

 

 白露「んもぉー!もうすぐで帰れると思ったのにー!」

 

 陽炎と白露は肩で息をしていたが、態勢を持ちなおし接近する深海凄艦の迎撃に向かう。

 

 陽炎「もらったわっ!」

 

 陽炎の12.7cm連装砲が火を噴き、深海凄艦の腹部に直撃する。

が、わずかに爆炎が上がっただけで、深海凄艦のスピードが下がることはなかった。

 

 陽炎・白露「えっ!!?」

 

 深海凄艦が二人に接近し、右腕の艤装で薙ぎ払う。

陽炎と白露は簡単に吹っ飛ばされ、海面に叩きつけられてしまう。

 

 吹雪「陽炎ちゃん!白露ちゃんっ!」

 

 吹雪が吹き飛ばされた二人の救助に向かう。

入れ替わりで雷が深海凄艦に接近、砲撃を行う。

砲撃が当たるが、先ほどと一緒で効果はなく深海凄艦は怯まない。

 

 雷「な、何なのよこいつの装甲…

   軽巡…いえ、それ以上だわ!」

 

 12.7cm連装砲では抜けないと悟り、魚雷を発射しようとする雷。

だが、先ほどの長期戦で撃ち尽くしており、発射管が反応しない。

雷は時雨や望月の艤装を見るが、彼女たちも撃ち尽くしてしまっていた。

 

 時雨「…ここまでだね。

    みんな、撤退を…」

 

 これ以上の作戦継続は危険と判断し、撤退の指示を出そうとする時雨。

だが、わずか残りのイ級、ロ級が退路を防ぐように進行してきた。

 

 望月「うあぁー、マジめんどくせぇー!」

 

 手当たり次第に砲撃し、退路を作ろうとする望月。

 

 時雨「!

    駄目だよ、望月!弾薬はある程度残して…」

 

 その時だった。

敵が退路を防いでいる、鎮守府海域の砲より砲撃の音が鳴った。

12.7cm連装砲の音である。

イ級型、ロ級型は対応できず、後方からの砲撃により爆散、撃沈する。

 

 人型の深海凄艦はそちらに視線を移す。

時雨たちも状況がよく分からず、疲労している体を起こす。

 

 鎮守府海域より、霞と深雪が急接近していたのだった。

その考えもしなかった援軍に、時雨たちは驚く。

 

 霞「行くわよ、深雪。

   ついてらっしゃい」

 

 深雪「おう!行くぜっ霞!

    深雪様にまっかせろい!」

 

 その表情に迷いはなく。

 その感情に怨恨はなく。

 昨日部屋から出て行った二人は、肩を並べて進軍する。

 

 吹雪「二人とも…もしかして、提督が…?」

 

 陽炎と白露の応急措置をする吹雪。

ゆっくりと陽炎が目を覚まし、吹雪を見る。

 

 吹雪「陽炎ちゃん!大丈夫?!」

 

 陽炎「…吹雪…

    頭がまだガンガンする、状況は…?」

 

 吹雪「霞と深雪が、支援に来てくれたよ!

    ほら、あれ…!」

 

 吹雪の指の指す方に、顔を上げる陽炎。

二人は高スピードで人型の深海凄艦の周りを旋回し、攻撃を避けていた。

フッと軽く笑い、目を閉じる陽炎。

 

 陽炎「…何だ、いいコンビネーションじゃない…あの二人」

 

 霞と深雪が連続で人型の深海凄艦に砲撃する。

先ほどの雷や陽炎たちの攻撃も重なって、人型の深海凄艦はダメージが蓄積されていた。

バランスを崩し、片膝をつく。

 

 霞はその隙を見逃さない。

 

 霞「沈みなさいっ!」

 

 霞の61cm三連装魚雷が発射。

バランスを崩した人型の深海凄艦は避けられるはずもなく、直撃。

直撃後、静かに海に沈んでいった…

 

 時雨は周囲を見渡す。

辺りは心地よい波音が聞こえるのみで、敵影も見られない。

 

 …彩花艦隊は勝利したのだ。

歓喜の声が上がる中、霞に近付く深雪。

 

 深雪「…やるじゃねぇか、霞。」

 

 霞「…」

 

 吹雪「ま、この深雪さまほどじゃねーけどなっ!」

 

 霞「ぬかしなさい」

 

 そう言って二人は肩を組んで笑いあっていた…

 

 時雨は腰につけていた通信機を持ち上げる。

 

 時雨「…司令官、こちら時雨。

    南西諸島沖に敵影確認できず。

    被害、中小あるも撃沈なし。

    これより彩花艦隊、帰投する。」

 

 報告を聞いた勇は今までの厳格な表情は消え、「はぁ~~~」と

深いため息一つ零しながら机に突っ伏した。

 

 鳳翔「お疲れ様です、勇提督」

 

 飲み切った湯のみを下げ、新しいお茶を淹れてもってくる鳳翔。

勇は一礼した後、ゆっくり立ち上がる。

 

 勇「鳳翔さん、お米、炊けていますか?」

 

 ニッコリと微笑み、頷く鳳翔。

勇はニコッと微笑み返すと、一階に降り、厨房に入っていく。

その後から、加賀、赤城、鳳翔が入っていく。

 

 夕焼けの映える海岸を進み、鎮守府のドックまでもう少し。

深雪と霞に近づく吹雪。

 

 吹雪「霞…深雪?」

 

 霞「…なによ」

 

 深雪「な、何だよ」

 

 吹雪「ありがとう」

 

 微笑んで言う吹雪の言葉にかぁっと顔が赤くなる二人。

周りも何も言わず、無言の笑顔であった。

 

 鎮守府ドックに着き、そのまま宿舎へと戻る彩花艦隊。

そこには、日向と伊勢が笑顔で待っていた。

 

 安心と疲労が一気に来て、宿舎前にへたり込む少女たち。

伊勢と日向は彼女たちに肩を貸し、ゆっくりと立たせる。

 

 伊勢「お疲れ様、あんた達頑張ったじゃない」

 

 日向「さぁ、行くぞ」

 

 雷「え、行くって…どこによ?」

 

 雷の言葉に答えず、伊勢と日向は宿舎に戻っていく。

少女たちはお互い顔を見合わせながら、その後に続いた。

 

 そのまま付いていくと、食堂につく。

 

 そこには、大きな櫃に沢山入ったおにぎりと、沢山の惣菜があった。

 

 少女たちは時が止まったように動かない。

そして、厨房から割烹着を着た勇が出迎えた。

 

 勇「任務ご苦労、皆お疲れ様!

   さぁお腹が空いただろう、飯にしよう!」

 

 勇の言葉に吹雪が一つの涙をこぼす。

 

 吹雪「…ました」

 

 吹雪「お腹が…空きましたぁっ…!!」

 

 わっと泣いて勇に飛びつく吹雪。

他の少女も泣くのを止められず、泣きながら勇に飛びついた。

 

 その後、金剛が天井に釣っていた久寿玉の紐を引き、割る。

 

 

 ―お帰りなさい!彩花艦隊!―

 

 

 その日の鎮守府の宿舎の明かりは、夜遅くまで暖かく光り輝いていた…

 

  

 

                        第十話 「提督、ただいま!」 完

 

  

 

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