艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~   作:ゆ~

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艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~ 第十三話

 大森元帥「一体何だね…竹田くん、この騒ぎは?」

 

 8月16日 09;00

 

 ここ、鎮守府式典会場は将校達ではなく、艦娘が座敷を広げ集まっていた。

その中央で、5組の料理人たちが腕を組んで睨み合っていた。

彼女たちの間では、キッチンに食材、料理用具が取り揃っていた。

 

 伊勢「よーし、揃ってるわねー!皆、おはよう!」

 

 マイク音量も重なって、伊勢のテンション高く大きい声が

式典会場内に響いてきた。

 

 表彰状台は改造し、リポーター用に造り替えられていた。

そこに、伊勢と日向が並んで座っている。

無言のオーラを出して座っていた日向が、ようやく口を開いた。

 

 日向「…おい、伊勢」

 

 伊勢「ん!?ちょっとちょっとー、日向ー!

    そんなローテンションじゃダメでしょ!

    あたし達、リポーターなんだから、

    もっと元気出さなきゃいけないでしょ」

 

 そんな日向のオーラを物ともせず、伊勢はマイクを握りしめて力説する。

ジロッと伊勢を見る日向。

 

 日向「…私たちも料理大会に出場するのではなかったのか」

 

 日向の地獄の底から出てくるような声に、伊勢は「えー」と可愛くむくれる。

 

 伊勢「だってこっちの方が面白そうじゃない!」

 

 伊勢がまるで悪びれもなく言ったことに対し、日向はため息一つ付く。

その横でキリッと立っている那智と五十鈴コンビ。

 

 那智(日向 相変わらず大変だな)

 

 五十鈴(もう諦めついてんのね…長年の付き合いって奴かしら)

 

 伊勢はマイクを持ちなおし、再び海上を見る伊勢。

海上には、金剛と加賀がお互いの相棒を差し置いて火花を散らしていた。

 

 金剛「オヤ、何してるんデスカ加賀?

    まさか加賀もテートクとのバーニング・キッスを狙っているノカ?」  

 

 加賀「万年発情期の貴女と一緒にしないで。

    私は勇提督に日頃の感謝をお返ししたいだけ」

 

 その様子を笑顔で見守っている赤城と、緊張のある表情の比叡。

 

 比叡(金剛お姉さま…!比叡がお手伝いします!

    お姉さまの手に勝利を!)

 

 金剛「まぁナイスファイトを期待するデース」

 

 加賀「…誰に言っているのかよく考えることね」

 

 お互いそう言った後、踵を変えキッチンに向かった。

この時、二人の胸中の言葉は

 

 「こいつにだけは負けたくない」

  

 で、あった。

 

 横で修羅場を見て、顔が青ざめていく瑞鳳。

鳳翔の袖を掴んで、ガクガクしていた。

 

 瑞鳳「あ、あの二人…オーラが違う…?!」

 

 その瑞鳳の手の上に優しく手を重ねる鳳翔。

瑞鳳は鳳翔の顔を見上げる。

 

 鳳翔「私たちもあの子達に負けないように…頑張りましょう。

    瑞鳳だって、気持ちは負けてないでしょう?」

 

 鳳翔の励ましに瑞鳳は気を持ちなおす。

向かい合わせで給食員の格好をして立っている雷・電。

だが、雷は何だか落ち着かない様子だ。

 

 電「…?どうかしたのです、雷」

 

 雷「…吹雪と摩耶がいないのよ…」

 

 電「そういえば、いないのです。

   あの二人も出場すると聞いてるのですが…」

 

 雷と電が、辺りを見回していると後ろから大きな摩耶の声が聞こえてきた。

 

摩耶「あたし達はここにいるぜっ!!」

 

 一同「…?!」

 

声のした方に全員振り返る。

そこには、ねじり鉢巻に調理服、下駄を履いた吹雪と摩耶。

二人とも顔つきは真面目そうだが、やや無理をしているように見える。

全員がポカンとしている中、霞と陽炎が心配そうに見ていた。

 

 陽炎(…やっぱさ?あの恰好、必要なかったんじゃない?)

 

 陽炎が周りに聞こえないように霞に話しかける。

霞も声のボリュームを少なくして答える。

 

 霞(まずは恰好から入らせたんだから、今更脱がすことなんて出来ないわよ。

   …それに、あの料理は職人服着ている人が作ると

   何となく美味しそうに感じるでしょ?)

 

 陽炎(…言いたいことは分かるけど…)

 

 伊勢は気を取り直してマイクを取る。

一呼吸した後、「バンッ」と机を一叩き。

 

 伊勢「おぉーっと!満を持して現れた吹雪・摩耶コンビ!

    なんと板前の格好で登場だァーッ!!」

 

 日向「この格好に何の意味がるのか見物だな」

 

 何気にノッてきた日向。

司会者席の下では勇が白露に腕を引っ張られ連行されていた。

後ろでは大森元帥が優しく手を振っていた。 

 

 勇「お、おいおい…何なんだよ、この騒ぎは?!」

 

 白露「いーからいーから!

    ほらっ、一番いい席だよっ!」

 

 大型の一人用のソファに座らされる勇。

勇の目の前には、戦闘態勢が出来ている少女たちが待ち構えていた。

 

 伊勢「さーて、舞台は整ったようです!

    それでは試合の前に、選手それぞれの思いを勇提督に

    伝えてあげてください!」

 

 勇「え!?」

 

 驚いたのは勇だけではなく、選手たちもだった。

本来この告白タイムは無かったもので、伊勢のとっさの思い付きであったからだ。

 

 加賀・吹雪・摩耶・電・比叡・瑞鳳「…!」

 

 何人かが狐につままれた顔をしている中、金剛が不敵な笑みを漏らす。

 

 金剛(伊勢も中々サプラーイズが上手いネ…

    これに乗らず二…)

 

 金剛が一歩踏み出そうとするが、先に赤城が勇の前に立つ。

ニコッと笑顔で礼をする赤城。

 

 赤城「提督、加賀が自分から人にお料理を作ってあげることなんて

    滅多なことではしないですから、

    じっくり味わって食べてくださいね?」

 

 勇「は…はい」

 

 赤城は勇が頷いたのを見た後、クルッと振り返りキッチンまで戻る。

後ろでは、先手を打たれた悔しさでジト目になっている金剛がいた。

 

 金剛(クッ…そう言えば加賀には赤城がついているのネ…

    敵に回したら強敵ヨ…)

 

 他の少女も勇の前に出て、しぶしぶ告白を始めた。

 

 加賀「赤城さんが何か言ったようですが、気にしないように」

 勇「あ、えっと」

 加賀「気にしないでください」

 勇「はい…」

 加賀(今日の私はいつもより真剣です…勝ちに行きます、提督)

 

 比叡「お姉さまと比叡の愛情料理、楽しみにしててください!」

 勇「え…ああ、愛情?!」

 比叡「そうです!恋も、料理も!司令官には味わって頂きます!

    本当はお姉さまのお料理は私が食べたかったんですが、

    今回に限っては特例で…」

 

 雷「愛情料理なら私だって負けてないわよ!

   ね、司令官」

 勇「い、雷さん?」

 雷「なぁに司令官♪」

 勇「その格好、似合うね…」

 雷「…♪電ー、電ー!」(パタパタと足音)

 

 鳳翔「…」

 勇「ほ、鳳翔さん。

   どうしました、じっと俺の顔を見て…」

 鳳翔「い、いえ…私も腕によりをかけて、お料理しますね。

    ほら、瑞鳳…」

 瑞鳳「は、はい!…てて、提督っ!!」

 勇「う、うん?」

 瑞鳳「が、頑張るから!あたし頑張るからっ!!」

 勇「あ、は、はい頑張って…」

 

 摩耶「…お、おい勇」

 勇「摩耶さん?どうかした?」

 摩耶「あたしの格好…好きでやってんじゃねーからな」

 勇「そ、そう。

   ええと、突っ込もうか迷ったんだけど

   谷間が見えています」

 摩耶「!!こ、このバッカ野郎がぁー!!」(バッコーンと殴り飛ばされる勇)

 

 吹雪「い、勇提督!

    私、この日の為に摩耶さんと修行してきました!」

 勇「し、修行」

 吹雪「はい!丹精込めて握りますからね!」

 勇「(あー、この格好はそういう…)

   分かった、楽しみにしてるよ。吹雪」

 吹雪「任せてくださいっ!」

 

 伊勢「…さて、会場の皆さん!

    選手たちの告白タイムも終わったようです!

    …それでは、各自調理を始めて」

 

 金剛「Wait a moment!(ちょっと待テ!)

    私の告白タイム飛ばすんじゃないヨ!)

 

 最後の告白を待ち構えていた金剛より、試合開始による抗議が出る。

伊勢と日向はお互い顔を見合わせて頷いた後、日向がゆっくりとマイクを持った。

 

 日向「…始めてくれ」

 

 金剛「ファーック!!」

 

 試合開始の合図が始まり、少女たちは一斉に調理を開始する。

 

 …それから30分後、勇の前に食事が運ばれるのだった―

 

 

 

                        第十三話 「提督、お料理祭です!その3」

 

 

 

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