艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~   作:ゆ~

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艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~ 第十四話

 勇の大きな食卓の前に集まる5組。

その5組のチームの手には、それぞれが作った料理が持たれていた。

 

 伊勢「さて、試食の順番は決めていません…

    自己申告にて、提督に食べてもらってください!

    早い者勝ちよっ!」

 

 日向「本当のところ

    伊勢の奴が順番考えるのを面倒くさがっただけだと

    思うが、よろしく頼む」

 

 望月「し、司会者あたし並みにやる気ねぇ~…」

 

 伊勢の言葉を聞き、我先にと勇の前に飛び出す金剛と比叡。

 

 加賀・瑞鳳・吹雪・雷「あっ…!」

 

 金剛「さっきは伊勢のアンポンターンにシテやられたケド、

    今度はアドバンテージとったヨ!」

 

 比叡「そうです!アドバンテージ取りました!

    …お姉さま、アドバンテージって、何ですか?」

 

 両手を腰に当ててドヤ顔していた金剛は、比叡の一言で苦い顔になる。

周囲は苦笑していた。

 

 金剛「…アンポンタンはここにもいたネ。

    …さて、提督ッ!私たちのラブ・フードをイート(食べろ)ッ!!」

 

 高価そうな装飾の皿の上に、美味しそうなコテージパイが盛られていた。

勇は肉とポテトの香ばしい香りに、コテージパイに目が釘づけになった。

周囲からも驚きの声が上がっている。

 

 勇「おお…こいつは…!?」

 

 金剛「イギリスの定番料理っ、コテージパイデース!!

    お次は比叡の出番ネ!!」

 

 比叡「はい、お姉さま!

    私特製の比叡カレー!!

    門外不出の最高の出来ですッ!!」

 

 加古・五十鈴「げっ!!!!」

 

 比叡が持ってきた大鍋に加古が反応した。

その中に門外不出の最高の出来の比叡カレーがあったが、近くにいた金剛が匂いを嗅ぐと

鍋を置こうとする比叡の手を掴んだ。

比叡は振り返ると、金剛は何とも言えない表情をしていた。

 

 比叡「お姉さま…?」

 

 金剛は何も言わず、鍋を開けてスプーンで一口食べる。

その後、身体硬直・多汗・顔面蒼白。

足元もおぼつかない様子で、立っているのがやっとの状態の金剛。    

     

 古鷹「金剛先輩、何かあったのかな?」

 

 加古「食べちまったか…あのカレーを…」

 

 古鷹「加古…?」

 

 五十鈴「あれは先々週の…いえ、細かい事情は省くわ。

     とにかく、比叡先輩が遠征に出かける前に

     私と加古に料理を作ってくれていたのよ」

       

 那智「ほう、初耳だな」

 

 加古「それが、あの比叡カレー…」

 

 古鷹「あっ…」

 

 金剛は何も言わず、カレーの入った鍋と比叡を連れて式場内から

立ち去って行った。

 

 ポカーンとする一同。合掌する加古と五十鈴。

 

 伊勢「え、えーと…さて、金剛タッグはどうやら棄権のようで。

    お次は誰が行くかなー?」

 

 伊勢の言葉の後に、今度は雷・電コンビが前に出てきた。

二人は煮込みハンバーグと豆ごはんを作ったようだ。

 

 勇(学校の給食を思い出すなぁ)

 

 雷「さ、司令官。

   食べて頂戴!」

 

 電「い、電の豆ごはんも食べてほしいのです」

 

 勇は二人から食事を預かり、それぞれ一口食べる。

 

 勇「…おお、これは…このハンバーグ、何て柔らかい!

   それに、豆ごはん…こ、この米はただの米じゃないな!」

 

 驚いて振り向く勇に、ドヤ顔の雷。

 

 雷「ふっ…牛乳を入れてあるのよ!

   今度自分で作るとき試して見なさいっ!」

 

 電「豆ごはんも、もち米を混ぜてあるのです!」

 

 勇「成る程…道理で…ソースも辛くもなく…(逆にちょっと甘いが)

   うん、美味しい!」

 

 勇の美味しいという言葉を聞いて、嬉しがる二人。

その様子を見て、焦った瑞鳳が前に箸って出てきた。

  

 瑞鳳「てっ、てて提督!

    こ、今度は私達のも食べてみて!」   

   

 瑞鳳が持ってきた食事は、揚げだし豆腐に卯の花、炊き込みごはんだった。

さらに、片手にはだし巻き卵まで用意されていた。

 

 勇「むっ!こ、これも美味しそうだ…」

 

 瑞鳳の後ろから鳳翔もやってきた。

 

 勇「鳳翔…さん。」

 

 鳳翔「ふふ、勇提督。

    ゆっくりと味わってくださいね」

 

 鳳翔の言われるがままに、食事を一つ一つ食べていく。

丁寧な作りに、味付け。そして、勇の挙動を見逃さず見守る瑞鳳。

 

 ふと、勇は(何で瑞鳳はこんなに俺を見てくるんだろう?)と疑問が過ぎったが

最後のダシ巻き卵を食べた瞬間、気にしなくなった。

 

 勇(い、今までの料理…間違いなく鳳翔さんの味付け。

   いつもより気合が入っていて、驚いたが…

   このダシ巻き卵、上手い!!)

 

 瑞鳳はじっと感想を待っている。

その様子を見ていると、このダシ巻き卵を作ったのか誰か勇は分かった。

無言で瑞鳳の頭を撫でてあげる。

「ぴゃっ」という声を上げる瑞鳳。

 

 勇「…美味しかったよ、瑞鳳。

   …鳳翔さん」

 

 瑞鳳は勇の言葉を聞き、しばらくボーッとしていたがハッと我に戻る。

顔をかぁっと赤らめて、そそくさと鳳翔の後ろに隠れる。

その瑞鳳の頭を撫でてあげる鳳翔。

 

 日向「これで3チームの試食タイムが終わったようだな」

 

 伊勢「さぁさぁ!残りは加賀・赤城チームと

    吹雪・摩耶チームだ!

    どちらが先に提督に食事を振舞うのかっ!!」

 

 伊勢がマイクを持って机の上に立ち登る。

それを慌てて引きずりおろす那智と五十鈴。

 

 伊勢「な、なにをするきさまらー」

 

 五十鈴「超弩級戦艦がなんて恥ずかしい真似を!」

 

 那智「いいから降りろ伊勢!」

 

 一方会場では、加賀と赤城が勇の前まで来ていた。

揚げたての旬の野菜・エビの天ぷら、更にはお造りを用意していた。

加賀の持っていた天ぷらを見て、勇は思わず涎を飲み込む。

 

 加賀「…勝負事とは関係ありません。

    純粋に業務に励んでいる貴方に食べて貰いたくて作りました。

    …どうぞ」

 

 加賀はいつもの表情でそう言って、天ぷらが盛られたお皿を勇に渡そうとする。

しかし、赤城によってその手は抑えられる。

驚きの顔で赤城に振り返る加賀。

赤城はいつもよりニコニコしているみたいに見えた。

 

 赤城「提督、このお食事は加賀と私が提督のお口まで

    運びますね(はぁと)」

 

 加賀・勇「!!!?」

 

 赤城はそう言うと箸を加賀に渡す。

加賀はパクパクと声の出ない口で抗議していたが、

極上の微笑み赤城スマイルに反抗できずしぶしぶ箸を取る。 

天ぷらを箸で取り、勇の前に運ぶ加賀。

 

 勇「か、加賀さん」

 

 加賀「…これは、今日だけの特別です」

 

 そう言って勇の口に天ぷらを運んだ。

サクサクでジュッと熱い衣生地、甘く素材の味を生かした天ぷら。

まさに究極の天ぷらだった。

勇がゆっくりと味わっていると、いつものジト目でこちらを見ている加賀に気付く。

 

 勇「…加賀さん、また…作ってくれるかな?天ぷら

   俺、加賀さんにの天ぷら好きだな」

 

 加賀「…!」

 

 勇は「また食べたい」と加賀に伝えると、クルッと体を反転させてしまった。

プルプルと体を震わせており、勇の方に顔を向けられないほど顔が紅くなっていた。

 

 加賀「…き

 

    …気が向いたら、ですよ」

 

 加賀はポツリと一言言うと、やはり振り向かず式場から去って行った。

 

 赤城「ふふ…

    さ、次は私の番ですね提督。

    お口にあえばいいですが…」

 

 今度は赤城が鯛の造りを勇の口に運ぶ。

仰天するような新鮮な鯛の歯ごたえ、味に勇は驚きを隠せない。

 

 赤城「四国の愛媛から調達しました、真鯛の造りです」

 

 勇「何て贅沢な味わいなんだ…」

 

 思わずお酒を要求してしまうところだったが、まだ昼で勤務中なので

勇は我慢することにした。 

 

 勇「赤城さん、ありがとう…」

 

 勇がお礼を言うと、赤城は丁寧にお辞儀した後

加賀の後を追うように式場外まで下がっていった。

その後、鯛の造りをいじっと見ていた伊勢がポツリと一言。

 

 伊勢「…後で焼酎出してこにゃ」

 

 日向「…好きにしろ、全く」

 

 呆れた日向は、最後に残った吹雪・摩耶コンビに料理を提供するよう伝える。

すると、摩耶はキッチンの中に入り、お櫃を取り出した後吹雪に指示した。

 

 摩耶「…おう、吹雪!注文取ってこい!」

 

 吹雪「ヘッ、へい摩耶さん!」

 

 駆け足で勇の元に走っていく吹雪。

 

 吹雪「て、提督!

    ご注文をどうぞ!!」

 

 吹雪が勇に「鎮守府寿司」と書かれたおしながきを手渡す。

勇は何となく吹雪たちがやりたかった料理が寿司だと感づいていたので、

そんなに驚いた様子を見せなかった。

 

 勇「…じゃあ、まぐろ、えび、イカ、穴子、いくら、さば

   これでくれるかい?」

 

 吹雪「わ、分かりました!」

 

 摩耶の元に引き返していく吹雪。

注文の内容を伝え、調理に取り掛かる二人。

 

 霞「料理経験はあるんだけれど、あの面々が相手じゃ

   ちょっとやそっとの知識で作った料理では対抗できない…

   だが!寿司なら勝てるわ!」

 

 陽炎「ふーん、その心は?」

 

 霞「寿司が嫌いな日本人はいないわッ!!」

 

 陽炎「(´・ω・`)」

 

 吹雪がネタを仕込み、その後摩耶が握り更に盛る。

綺麗に寿司が並べられた皿を、勇のもとに持っていく吹雪。

どの寿司のネタも小さくなく、綺麗に切られており丹精に握られている。

 

 勇はまぐろから、順々に食べていく。

じっとその挙動を見ている吹雪。

摩耶も、チラッと勇の方を見ている。

 

 勇は寿司を食べ終わると、ゆっくりと顔を上げる。

 

 勇「…吹雪、摩耶さんと寿司の作り方、練習したんだな」

 

 吹雪「え…」

 

 勇「寿司を握るって、実は技術が必要なんだ。

   何も練習せずこう綺麗な寿司は作れないよ」

 

 吹雪「えっ…あ、えと…」

 

 勇「頑張ったね、吹雪」

 

 そう言って勇は吹雪の頭をやんわりと撫でる。

吹雪は顔を赤らめ、下を向いている。

摩耶も満足そうな、一仕事終えた顔をしていた。

その後、勇は立ち上がり伊勢のもとへ向かう。

伊勢からマイクを預かると、周囲の少女達に向けて話しかける。

 

 勇「…今日は、こんなに素敵な食事会を開いてくれてありがとう。

   まだ新任の立場でも、みんなの手助けになれるよう仕事を頑張ってるが

   一層頑張ろうという気持ちになったよ。

   これからみんなには激戦が待っているが、負けずにいこう!

   …共に強くなり、励もう。

   これからも宜しく頼む!」

 

 勇はそういうと、周囲から多くの歓声と拍手が上がった。

吹雪も、勇を頼もしそうに見ている。

 

 勇「さて…どの料理も本当に美味しかった!

   どれが一番だなんて俺には決められないな…

   こうなったら、皆にも食べて貰って再審査してもらおう!」

 

 吹雪・摩耶・雷・電・瑞鳳・鳳翔・加賀・赤城・金剛・比叡「えっ」

 

 伊勢「おおー…そう来ましたか、提督…」

 

 日向「…と、いうことだ。

    お前たち、頑張れよ」

 

 上記5組「えぇええええええ!!!?」

 

 

 

―その後吹雪たちは、艦娘たち全員分食事を作った。

 審査は投票制となり、後日伝えられることとなったのだった…

 

 

                        第十四話 「提督、お料理祭です!その4」

 

 

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