―鎮守府ドック―
勇と戦艦・正規空母の艦娘たちのみがドックに入ることを許可されていた。
もう話すこともない、横たわっている摩耶に泣きながらくっ付いている吹雪。
勇はあまりの現状に、思考が働かない。
勇「…」
ただ、そこに立ち尽くすしか出来なかった。
その横で、泣くことを我慢しすぎて身体をガクガクと震わしている古鷹。
金剛も、間に合わなかったことに自分に対し憤りを感じていた。
伊勢は摩耶に近づき、ゆっくりと頭を撫でてあげる。
伊勢「…摩耶、あんた…
鳥海の後を追うような真似して。
この大馬鹿…カッコよかったわよ」
日向は泣きじゃくる吹雪の肩に手を置く。
そのまま、優しく諭しドックから連れ出す。
加賀も、古鷹をなだめドックの外に連れて行った。
赤城「…提督。
摩耶を、運びます。宜しいですか」
勇「…お願い、します…」
担架で摩耶を運び出す赤城と伊勢。
勇はその摩耶の顔を最後まで見送った。
完全に姿が見えなくなった後、勇はその場に膝をつき、号泣した――
摩耶を運び出し、寝室へ寝かせる。
海水で濡れた身体を拭く赤城と伊勢。
伊勢「…赤城、多分昼には政府の人間が来るわ。
提督を軍法会議にかけるために」
赤城「…ええ」
伊勢「どうする?」
摩耶の身体を拭き終わった二人は立ち上がる。
赤城は真剣な顔で伊勢の問いかけに応じる。
赤城「…大丈夫、その問題は私が何とかする」
伊勢「赤城…?」
赤城は、摩耶の部屋から持ってきていた鳥海の眼鏡を
摩耶の手に握りしめさせる。
赤城「…お疲れ様、やんちゃ娘…」
赤城は摩耶の顔を撫でると、ポツンと一滴の涙が摩耶の顔に零れ落ちた。
それから二時間後、軍の四輪駆動軽汎用車が宿舎に向かって走ってきた。
その車には、海軍のアライダという女性中将が乗っていた。
アライダ「…政府の許可もなく戦艦を出撃させ、
更には重巡艦一隻失うとはな。
竹田提督、大した失敗だな…」
銀髪に緑色の瞳の黒い軍服の女性は、これから起こることを楽しそうにしていた。
しかし、急に車が止まったことにより彼女の気分を害した。
アライダ「どうした?…ん?」
アライダ中将の目に映っていたのは、道中で道を塞ぐように立っている赤城がいた。
アライダ「…正規空母…赤城…!!」
車から降り、赤城に近づくアライダ。
赤城は凛とした表情で、アライダと対面する。
腰に着けた乗馬鞭を取り、ペチぺチと片手で鳴らしながら赤城を見下ろすアライダ。
アライダ「…これはこれは。
何の用かな?正規空母 赤城」
赤城「どこへ行かれるのかと気になってしまって」
フッと鼻で笑うアライダ。
アライダ「当然…竹田提督のもとへと。
今回の失策についての追求のため連行する」
赤城「あら?それは誤りですよ」
逆に今度は赤城がニコッと笑顔を見せる。
その笑顔と返事に、ムッとするアライダ。
赤城「今回の作戦の采配は私が考えたものです」
アライダ「…!?」
赤城「艦隊の総責任者は私です。
金剛を援護に行かせたのも、この私の判断です。
勇提督には一切関わりのないことです」
その強い意志の瞳に、アライダは気圧される。
アライダ(美しく、強い…これほどの艦娘を動かす勇提督とは…)
だが、その後アライダはこの赤城が無性に欲しくなった。
最強の正規空母「赤城」を、勇から奪う。
赤城「…私を、政府に」
この可憐で華やかな女性を自分だけのものにしたいという、欲望が沸き上がった。
赤城の頬に手を伸ばし、ゆるりと撫で上げるアライダ。
アライダ「気が変わった。
竹田提督を政府へ連行するのは中止しよう」
赤城「…?」
アライダ「代わりに…お前を頂くとしよう。
正規空母赤城」
赤城「…!」
―赤城と加賀の部屋―
勇も部屋に戻り、落ち着いたことを赤城に報告するために加賀が部屋に
戻ってきた。
しかし、部屋には赤城がおらず、加賀は首を傾げた。
辺りを見回すと、机の上に一つの封筒がそこにあった。
加賀「…これは?」
加賀が封筒を手に取り封を開け、中の文章を読む。
その内容を見て驚いた加賀は、勇の部屋に駆け込んだ。
部屋で報告書を書いていた勇は、いきなり加賀の訪問に驚く。
勇「加賀さん!?ど、どうしたんだ」
加賀「い…勇提督っ!これを!!」
加賀の様子を見てただ事ではないと感づいた勇。
加賀から赤城の封筒を受け取り、読む。
そして、封筒をグシャッと握り潰す勇。
そのままガタッと立ち上がり、鬼の形相で加賀に振り向く。
勇「加賀さん、行くぞ」
加賀「!」
勇「あの人を取り返しに行く」
そんな時、五十鈴が何かの書類を持って中に入ってくる。
五十鈴「勇提督ーっ、連合軍統合戦闘航空団の『第501統合戦闘航空団』から
こっちに迷子が来てないかって」
勇「五十鈴、後でだ!」
物凄い勢いで飛び出した勇に吹っ飛ばされ、3回転廊下を転がる五十鈴。
加賀も勇に続いて飛び出す。
でんぐり返し状態の五十鈴。
そこに歯磨きしながら歩いてきた陽炎と目が合う。
10秒ほど時が止まる二人。
陽炎「…五十鈴先輩、何してるんですか?」
五十鈴「不愉快です…」
そして、また場所は移り鎮守府の浜辺。
まだ摩耶の死が受け入れられず、傷心の吹雪が歩いていた。
吹雪(摩耶さん…私、摩耶さんがいないと、どうしたらいいか…)
ふと、空を見上げる吹雪。
途中、松の木の枝に引っかかってぶら下がっている少女を発見する。
吹雪「え!?た、大変!!」
急いで駆け寄り、松の木を登る。
その少女は、髪に両方外ハネがあり、上はセーラー服、その下にスクール水着を
着ており、足には戦闘機を彷彿させる何か機械が付いていた。
どうやら着陸の衝撃で気絶してしまっているようだ。
吹雪「…」
吹雪「服装からして、潜水艦…いや、違うかなぁ。
誰だろう、この子…」
第十八話 「提督、謎の女の子です」