鎮守府海域に近付く、二隻の艦がいた。
一つは艶やかなモミアゲを長くしたような髪型こげ茶色の防具を纏った、航空戦艦。
もう一つは、海賊のようなマントに服装、眼帯が特徴の軽巡洋艦の少女だった。
??「…」
眼帯の少女は目に映る鎮守府を寂しげに見る。
横の少女はその様子を見て、心配する。
??「木曾さん…?
どうして、そんな悲しそうな顔をするんですか?」
『木曾』、と呼ばれた少女はハッと我に返る。
木曾「…この木曾が悲しい顔など…
…いや、多分していたんだろうな。
ここに帰ってくるたび、思い出す…」
木曾は一か月前の事を思い出しているようだった。
木曾「『大鳳』、お前はそのまま鎮守府に向かえ。
俺はちょっと寄るところがある」
大鳳「…分かりました、木曾さん。
ここまで案内してくれて、ありがとうございました」
大鳳は木曾にぺこりと頭を下げた後、鎮守府に向かって進んでいった。
木曾(あの提督なら…大鳳も扱えるだろう)
木曾は大鳳を見送った後、墓石のある丘へと向かっていった。
そして、大鳳はようやく勇たちの宿舎に付く。
大鳳「ここが、私がこれからお世話になる場所…!
こんばんわーっ!!」
期待に胸を膨らませていた大鳳は、宿に入り大声で挨拶をする。
すると、厨房の奥から瑞鳳がニュッと顔を覗かせた。
割烹着姿でエプロンをつけたまま、玄関まで走っていく。
瑞鳳「は、はいはーい。
どなたですかー?」
瑞鳳が玄関に付くと、そこには見慣れない少女が立っていた。
大鳳「こんな夜間にごめんなさい、私は大鳳と言います。
本日付けで、勇提督の指揮下に置かれました!」
凛とした顔立ちに、しっかりとした言葉使いの大鳳。
瑞鳳は新艦の着任の話は聞いていないので、首を傾げる。
そこに、厨房から出てきた鳳翔もやってきた。
鳳翔「どうかしたの、瑞鳳?」
瑞鳳「あ、鳳翔さん。
今日って、新造艦が配備されるとか聞いてませんよね?」
鳳翔「いえ…?あの、どちらからの紹介ですか?」
鳳翔も聞いていなかったので、大鳳に疑問で聞き返した。
大鳳「正式な軍の紹介ではなく、ここを紹介してくれた人が『木曾』と言えば
分かると…」
鳳翔「!!!」
木曾という名前を聞いて驚く鳳翔。
鳳翔(木曾…あの子、無事だったのね…)
しばらく黙っている鳳翔に、瑞鳳も大鳳も心配そうにのぞき込む。
二人の視線に気づいた鳳翔は、気を取り直して大鳳を見つめる。
鳳翔「でも、困ったわね。
今は勇提督だけではなく、他の重役たちもいないのよ…」
大鳳「え?」
そこに、吹雪と芳佳が玄関に入ってきた。
吹雪「あれ、瑞鳳に鳳翔さん…どうかしたんですか?
って、この子…どちら様です?」
瑞鳳「大鳳っていう、本日付けでここに配属なった子らしいよ。
吹雪こそ、その隣の子は?潜水艦の子?」
芳佳(吹雪ちゃんも言っていたけど、潜水艦ってどういう意味かなぁ…?)
芳佳「私、宮藤 芳佳です!
ブリタニア連邦の基地からやって来ました!」
鳳翔「!では貴女は報告に会った、第501統合戦闘航空団の…」
瑞鳳「迷子扱いされてるっていう…」
芳佳は「えぇえ!?」と驚いた声を上げた。
そう、芳佳はネウロイ接近を伝えるためにここに来たが、道中に謎の砲撃を受けて
海に落ちた為、予定より時間がかかってしまったのだ。
ふと、芳佳は大鳳と目が合う。
芳佳「…あれ?もしかして、ウィッチの方ですか?」
大鳳「え?ウィッチ?いえ、違います」
芳佳(違うんだ…何か雰囲気があったんだけど…)
吹雪は宿全体が静かすぎることに気付く。
吹雪「あの、鳳翔さん?何かあったんですか…他の皆は…」
鳳翔「他の子は…」
―政府のホテル、アライダの部屋―
アライダに散々責められ、体中汗だくになり、息も途切れ途切れの赤城。
しかし、アライダは驚いていた。
約1時間は愛撫し続けたのに、赤城は大きい嬌声の一声も上げない精神の強さに。
不思議そうにしているアライダに対し、赤城はゆっくりと目を合わせる。
赤城「はっ、はっ…たし、かに貴女にはこの身、捧げたようなもの…
だけど、私の…一航戦の誇りだけは、渡さないッ…」
アライダ「一航戦の誇り…!」
この瞬間、アライダは背筋が震えるほど興奮した。
この赤城という少女の気高き誇り。美しい肢体。強い瞳。
屈服させたいという黒い欲情が湧いてきたのだ。
アライダはベッドの下から、自前の乗馬鞭を取り出した。
赤城はその鞭を見ると、これから何をされるのか理解でき、身を固めた。
アライダ「ふ…ふふ…いいぞ、いい…!
では、その一航戦の誇り…粉々に打ち砕いてやろう!」
赤城「…!」
アライダは鞭の先をペロリ、と人舐めしあと赤城を仰向けからうつ伏せに体を入れ替える。
その後ヒュンッと鞭が空を切り、赤城の背中を打つ。
赤城「…う、ぁ…っ!!」
乾いた音とともに、背中に焼けるような痛みが走る赤城。
背中が弓沿いに反るが、歯を食いしばって痛みに耐える。
赤城「うっ…くっ…!」
アライダ「ふふふ…あと、何発耐えれるのかなっ!」
二発目を振りかぶるアライダ。
だが、その腕を後ろから誰かが強い力でつかみ取る。
アライダ「!?」
アライダが振り返ると、そこには怒りの目をした加賀がアライダを睨みつけていた。
その後ろからは、勇が無言で歩いてきていた。
アライダ「竹田…勇!?」
赤城「!?」
勇はアライダを無視して赤城の方に歩いていく。
赤城は信じられない、と言った顔をしていたがすぐに枕に顔を伏せてしまう。
勇「赤城さん…」
赤城「…勇、提督…どうして…どうして来たんですか」
赤城の体が震える。
声も鳴き声になってきていた。
赤城「…こんなこと、政府に知られたら…
今度こそ、提督は、もう…!」
赤城の質問に何も言わず、勇は赤城の手錠を解き、自分の上着を着せる。
赤城の瞳からはポロポロと涙の滴が流れていた。
赤城「こんな…何のために、私はっ…!
私は、提督…貴方を救いたかったのに…!」
勇の顔を見ると、赤城はもう我慢できなかった。
ただひたすら、大声で泣き出した。
勇は赤城をギュッと抱きしめ、頭を撫でる。
勇「…すまない。
俺の為に、こんなことになってしまって。
赤城さんが犠牲になるようなことに…
怖かっただろう…」
赤城「う…うわぁあああああ!!!!
あああああああああっ!!!!」
赤城は勇の胸を叩きながら、号泣する。
勇「でも、もう大丈夫。
赤城さんが苦しむことはない。
…帰ろう、赤城さん。
俺たちの宿舎に」
赤城「てい…とくぅううう!!!
うわぁああああぁ、ああああーーーっ!!!」
チラッとアライダを見る勇。
加賀は未だに強い力で、アライダの腕を握りしめている。
勇「アライダ中将。
赤城は返していただきます。
赤城を宿舎に送り届けた後、私は軍法会議に出頭します。
…加賀さん、離してあげてくれ」
加賀はスッとアライダの腕を離す。
そして、とても強く憎しみが籠った瞳でアライダを睨みつけた。
アライダ「…」
すすり泣き、勇にしがみ付く赤城をお姫様だっこしながらホテルを後にする。
あの後アライダは何も言わず、ただ勇たちを見送った。
ホテルの外にはマスクの少女たちの姿は無く、全員撤収したようだった。
加賀「提督…」
加賀は勇のことが心配でならない、という顔をしていた。
そんな加賀にニッコリと笑顔を向ける勇。
勇「大丈夫。
俺が処罰されても、また新しい提督が来るさ。
そしたら加賀さんたちが…」
そんな勇の返事にカッとなる赤城と加賀。
赤城・加賀「貴方の代わりなんていませんッ!!!!」
…と、二人は気付いたら大声を出して勇を驚かせていた。
赤城と加賀はお互い顔を見合わせたが、その瞬間道中の照明の光を遮る
『何か巨大な影』が三人の上を通った。
三人「…!!!?」
上空を見る。
そこには、とても巨大な、黒いボディに赤い斑点がところどころにある
『航空機』のような形をした何かが空を浮いていた――――
第二十話 「貴方の代わりはいません」