艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~   作:ゆ~

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艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~ 第四話

     -鎮守府 勇の宿舎-

 

 勇は双眼鏡を使って鎮守府近海を見ていた。

朧と若葉が会敵して発砲した際に、爆発の光が見えたからだ。

しかし流石に距離が遠く、どの物体も米粒ほどにしか見えない。

 

 勇「くそ…何が起こっているのか全然分からない」

 

 冷静さを取り戻したものの、相変わらず状況が分からずイラだつ勇。

後ろの襖が開き、そこから鳳翔が入ってくる。

先ほどまでの柔らかな笑顔ではなく、鳳翔は複雑な表情をしていた。

 

 勇「…鳳翔さん」

 

 鳳翔「…提督」

 

 それ以上鳳翔は何も言わなかった。

砲撃戦の音が響く中、二人は動かない。

 

 しかし、勇は追求しなくてはならない。

今後の自分の任務が、最早常軌の逸した過酷な任務である可能性。

 

 そして何より、自分の知らない「何か」が日本海域で起こっていることを、

勇は知らなければならないのだ。

 

 勇は足元に極秘資料があるのに気が付き、拾う。

 

 勇「…さっき目を少し通したんですよ、これ」

 

 パラパラと乾いた音を立てて極秘資料を広げる。

それでも鳳翔は黙ってその状況を見ている。

 

 勇「教えてください、鳳翔さん。

   一体この鎮守府海域、いや日本の海域で何が起こっているんですか」

 

 勇はじっと鳳翔の目を見て、極秘資料を突きつける。

鳳翔はしばらく黙っていたが、ゆっくりと勇から極秘資料を受け取った。 

 

 鳳翔「…日本は

    …日本海軍は、深海棲艦隊の突如の襲来に敗退を繰り返し

    ほぼ全海域が敵に占領されました」

 

 勇「-------!!!」

 

 鳳翔「深海棲艦の侵攻が止まらず、ついにこの鎮守府海域まで

    迫ってきたのです」

 

 鳳翔「それに対抗すべく、政府は…」

 

 

     -鎮守府正面近海-

 

 二人に気付かれずに後方に回った駆逐艦イ級が飛び出す。

 

 朧と若葉はそれに反応し、素早く振り返り砲撃した。

 

 しかし、わずかに二人の砲撃は狙いをかすめ、直撃には至らなかった。

身体の一部を小破したイ級は、二人の前で激しく着水する。

そして、急スピードでイ級は旋回し、二人から離れる。

 

 同時に、砲撃を中止していた3旗のイ級も、こちらに向けて進軍してきた。

 

 朧「ちっ…!」

 

 若葉「迂闊だった。

    もう少し接近に気付くのが遅れていたら、どちらかはやられていた」

 

 急ぎ態勢を整えようとする二人。

しかし、その隙をイ級たちは逃さなかった。

 

 イ級「グバッ!!!」

 

 イ級4旗による、砲撃が始まった。

二人に向かって、4つの砲撃が直線状に飛ぶ。

 

 その5秒後、4つの砲撃は激しく海面に着弾した。

朧も若葉も被弾は無かったが、海面に砲撃が着弾した余波の影響で

二人はバランスを崩してしまう。

 

 なおも続く砲撃。

 

 二人は動くことが出来ずに、その場に固定されてしまった。

 

 朧「くっ…しつこい!このままじゃ…」

 

 勝利を確信したのか、4隻のイ級型は二人に向けて進行を始めた。

そして、再び狙いをつけ、砲撃しようとしたその時。

 

 

 「ドンッ…」

 

 

 大きい砲撃音がなったと感じた瞬間、イ級型のうち一隻が爆散し、炎上した。

 

 残った3隻すべてのイ級型は進行をやめ、砲撃のあった方向へと旋回する。

 

 その先から、猛スピードで接近しつつ、砲身に新しい弾を詰めている摩耶の姿があった。

 

 朧「あれは、摩耶さん!」

 

 若葉「どうやら間一髪助かったか」

 

 摩耶の姿を見て笑顔を取り戻す二人。

イ級3隻は、摩耶に応戦するためスピードをあげて接近する。

摩耶は、不敵に笑い攻撃態勢を取る。

 

 摩耶「よくもあたしの後輩を苛めてくれたな…

    礼はたっぷりさせてもらうぜっ!!」

 

 摩耶は右手の砲身を構えて、狙いを付け、撃つ。

 

 「ドンッ」

 

 その砲撃は一隻のイ級に直撃し、撃沈させた。

残りの二隻はひるまず、直進しながら砲撃を続ける。

 

 摩耶「甘ぇッ!」

 

 直撃コースを紙一重で避け、多少態勢を崩しながら反撃する摩耶。

 

 そして、右方向を進行していたイ級に見事直撃させた。

摩耶は一気に、3隻も撃沈させたのだ。

 

 後ろからやっとの思いで追いついてきた吹雪は、驚きを隠せなかった。

 

 吹雪(凄い火力…!さすが重巡型艦、摩耶さん!)

 

 残されたイ級は状況は不利と判断したのか、撤退を始めようとする。

だが、摩耶がそれを見逃しはしなかった。

 

 摩耶「逃がすか!吹雪、撃てっ、雷撃だ!」

 

 吹雪「はっ、はい!」

 

 摩耶の指示通り、右方足につけた魚雷の安全装置を解除する。

そうして、慎重に逃亡し始めているイ級に狙いをつける吹雪。

 

 緊張で、額から一滴の汗が流れた。

 

 吹雪(敵との距離算出、方角よし…!

    だ、大丈夫…訓練通りに、訓練通りに…!)

 

 イ級がスピードを上げて、逃亡を図る!

 

 吹雪「お願い!当たってぇ!!」

 

 同時に、吹雪の足に付いた61cm三連装魚雷から、魚雷が発射される。

 

 猛スピードで海中を潜行し、イ級を追う魚雷。

 

 気付いたイ級は逃れようと方向を変えるが、魚雷はあっという間にイ級に追いつき、直撃した。

海上に大きな水飛沫が上がった。

 

 見事、吹雪はイ級を撃破したのだった。

 

 吹雪は茫然と立ち尽くし、その様子を眺めた。

初めての実戦、初めての撃墜。

 

 それは、どれも吹雪が今まで感じたことのない、衝撃的で頭が真っ白になる体験。

 

 近づいてくる摩耶や若葉たちの賞賛の声も聞こえず、ただ吹雪は青い空を見上げていた…  

 

 

 

                        第四話 「提督、初実戦です!」 完

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