艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~   作:ゆ~

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艦隊これくしょん ~ハジマリノ物語~ 第五話

 ドック作業員「艦が帰ってきたぞーーー!!」

 

 19:00

 

 戦闘を終え、帰還した四人。

慌ただしく作業員たちが持ち場に走り、作業の準備を始める。

誘導者が四人をドックに赤ランプで誘導する。

 

 その中で無表情だが、少し怒った表情の加賀が腕組をして待っていた。

 

 ドックに入った途端、朧と若葉は疲れ切っていたのか、へたり込んでしまった。

その様子を見て、吹雪と摩耶は顔を見合わせる。

 

 吹雪「…お疲れでしたね、朧ちゃんに若葉ちゃん。

    摩耶さん、入渠の準備が整ってるみたいなんで、連れて行ってあげましょうよ」

 

 摩耶「ったく、しょうがねぇなー…

    おい、朧。立つぞ」

 

 吹雪は若葉を、摩耶は朧を立ち上がらせて、肩を組む。

そして、そのまま一緒にドック(船渠)まで歩いていく。

 

 若葉「すまないな、迷惑をかける」

 

 吹雪「ううん、気にしないでよ。

    本当に無事で良かった」

 

 摩耶「確かにな。

    あたしらが来たから何とかなったが…

    お前ら、ドックから上がったら演習だからな!」

 

 朧「う…分かりました、朧…頑張ります

   …あ、加賀さん」

 

 四人の前に腕組みをして加賀が待っていた。

加賀は朧と若葉の身体の状態を見た後、じっと目を合わせる。

 

 加賀「…貴方達に言いたいことがあるけど…

    今はドックに入って休んできなさい。」

 

 加賀はそう言うと振り返り、宿舎に戻っていった。

 

 摩耶「…報告書はキチンと上げとけよ?

    加賀さん、ちょっと怒ってやがる」

 

 とその後、摩耶は加賀に聞こえないように苦笑して二人に忠告した。

 

     -勇の宿舎-

 

 鳳翔「…では、夕食を作って参りますので、提督はどうぞお風呂へ。」

 

 鳳翔はエプロンを羽織り、一階へと降りて行った。

その立ち振る舞いや雰囲気は、まるで「お母さん」であった。

鳳翔に言われた通りに、勇も着替えを用意し一階へと降りていく。

 

 一階に降り、左を曲がる。

そこで、胸の辺りに何かがぶつかると同時に、

「きゃっ」と可愛らしい声が聞こえた。

 

 ゆっくりと下に視線を下してみると、

摩耶とは違うセーラー服を着た少女がこちらを見上げていた。

 

 その少女は、右目は金色の瞳を、左目は輝いた瞳をしていた。

 

 勇「あ…すまない、考え事をしていたもので…大丈夫?」

 

 ??「いえ、大丈夫です。

    …もしかして」

 

 少女は勇に近付き、背伸びのようにつま先を上げ、勇の顔を覗いてきた。

その無防備で愛らしい少女の仕草に、勇はなぜか照れてしまう。

 

 ??「失礼ですが…間違ってたらごめんなさい。

    竹田 勇…司令官ですか?」

 

 勇「え…そう、だけど?君は?」

 

 勇が司令官だと分かった少女は、ニコッと微笑み、二・三歩下がった。

 

 ??「初めまして司令官、わたし『古鷹』と言います。」

 

 そうしてゆっくりとお辞儀をする。

どうやらとてもしっかりした子のようだ、と勇は感心した。

 

 勇(古鷹、か…じゃあ、この子も…)

 

 勇は先ほどの鳳翔との会話を思い出し、表情が曇る。

 

 古鷹「その桶や着替えを見たところ、今からお風呂ですか?

    入浴場でしたら、このまま真っ直ぐ行っていただいて、

    突き当りの右側の方を入ってください」

 

 方向を手で指して、丁寧に教える古鷹。

ハッと我に返った勇は、お礼を言い古鷹の言った通りの道に進む。

古鷹は、その後姿をじっと見つめていた。

 

 古鷹(あの人が…

    私たちの運命を救ってくれる提督…

    後で加古にも挨拶するように言わなくちゃ)

 

 

    -宿舎 大浴場-

 

 カコーン…と気持ちの良い桶を置く音が聞こえる。

他にも、湯が静かに流れる音も途切れ途切れに聞こえてくる。

 

 浴場の湯気の中で、3人の女の子が入浴していた。

 

 加賀「ふう…」

 

 ??「あー生き返るー、風呂が命の洗濯とはよく言ったわー」

 

 ??「そうだねー…ん?加賀さん、どうかしたの?」

 

 加賀「…いえ、別に。

    加古、瑞鳳。

    貴方達、そろそろ上がったら?

    随分長い間入っているけど」

 

 加古・瑞鳳「えっ」

 

 瑞鳳「いや、加賀さんは瑞鳳達より10分以上早く入ってましたよね?

    …むしろ加賀さんの体のほうが心配なんですけど」

 

 加古「うんうん」

 

 加賀「…そうね、言われてみればそうだったわ」

 

 加古「そうッスよー。

    …あ、でも古鷹が待ってっかな。

    やっぱり先、上がるわー」

 

 『加古』という名の活発そうだが気だるそうな少女は、湯から上がる。

 

 瑞鳳「瑞鳳も、鳳翔さんの夕食のお手伝いに行かなきゃ…

    それじゃ加賀さん、先行くね」

 

 そういいながら、湯で蛸みたいに赤くなっていた『瑞鳳』という少女も湯から上がった。

二人が出て行ったあと、加賀は物憂げな表情で立秋の月を見上げる。(露天風呂なのだ)

 

 加賀(製油所地帯沿岸に出撃した赤城さん達がまだ帰ってこない…

    何かあったのかしら…)

 

 2日前に発った一艦隊が、まだ帰還していないことを心配しているようだ。

 

 加賀(それに思った以上に敵の進行が速い。

    竹田 勇提督と作戦会議を開いて、今後の案を聞かないと)

 

 ようやく加賀も風呂から上がる。

バスタオルで体を巻き、タオルで頭を包んで、扉をあける。

 

 …そして、同じタイミングで服を脱ぎタオルを腰に巻いた勇が、扉の前に立った。

 

 目が合う二人。

 

 勇「え」

 

 加賀「!」

 

 二人とも今の状況が頭の中で処理できず、動けなくなってしまった。

勇は、背筋が凍りついた。

顔からもそれが判断できるほど、青ざめた表情だった。

 

 加賀も普段のキリッとした釣り目の表情ではなく、完全に目が大きく開いており、

風呂の余熱で顔がほんのり赤くなっていた。

 

 勇「…」

 

 加賀「…」

 

 お互い沈黙が続く。

 

 勇「…てくれ」

 

 加賀「え?」

 

 勇「…すまなかった、一発叩いてくれ。

   けじめをつけたい」

 

 なるべく加賀の裸体を見ないように、視線を横にずらしている勇。

 

 加賀「え…は、はぁ」

 

 加賀はとりあえず勇の言うとおりに、一発平手打ちをした。

乾いた音が、

 浴室内に響く。

 

 加賀「あの…そ、それでは失礼します」

 

 加賀はそうして頭を下げた後、そそくさと更衣室へと逃げて行った。

 

 勇(綺麗だったな、加賀さん…

   しかし、古鷹ちゃん…

   後でどういうことなのか聞いとかなくては)

 

 俗にいうラッキースケベ(?)というものがあったので

勇はそんなに怒っていなかった。

 

 そうして浴室に入ると、後ろから加賀の声が聞こえてきた。

 

 加賀「勇提督…あ、あの

    この後歓迎会を用意してますので、なるべく早く来てください」

 

 そう言うと、加賀は部屋から出て行った。

 

 勇(加賀さん、テンパってたなぁ…

   可愛かった)

 

 先ほどの加賀を思い出し、少しニヤニヤしてしまう勇。

しかし、そのニヤニヤも長くは続かなかった。

 

 浴室の扉が開かれる。

 

 吹雪「ふー、初めての実戦で、緊張して汗かきました…」

 

 摩耶「初めてにしちゃ上出来だったぜ。

    お前、雷撃戦の才能あるかもなっ!」

 

 朧「うわぁっ、摩耶さん!?う、後ろから胸を掴まないで!」

 

 若葉「百合か…悪くない」

 

 勇(えっっ!!!!?)

 

 

 勇の長い初着任の一日は、まだまだ波乱が続きそうであった…

 

 

 

                        第五話 「提督、艦が帰還しました!」 完

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