「藤丸立香…いい名前じゃん!」
「ホント?!良かったぁ〜。」
藤丸は安堵したように肩から息を吐いた。
「あそういえば私も言ってなかった。茅森月歌です。よろしく〜。」
「ルカかぁ!カッコイイね!」
「イケてるだろ〜。」
茅森はドヤるようにピースをした。
「で、りっかはセラフ使えるの?」
「セラフは使えな…りっか?!」
驚きの余り藤丸は椅子から飛び出すように立ってしまった。
「うん。立香だからりっか。ダメならりっちゃん、リッチ、フッジーとか。」
「いやいやいや!りっかでお願いします!」
藤丸は手をバタバタと振りながら顔を赤くして慌てるように言った。
その時藤丸が黒い手袋をしていることに気づいた。
診察で手袋をする事自体当然ではあるが使い捨ての物を使用する。
だが藤丸のは長期に渡って使うようなしっかりとした物であった。
(カッコイイけどなんでつけてるんだろ。)
茅森は一瞬の事であったが少し気になっていた。
「えっーと私はマスター候補だよ。」
「候補?マスターじゃなくて?」
気持ちが落ち着きゆっくり座り直す藤丸に聞き返した。
現在セラフを使える事は同時にマスターでもあるからだ。
「マスターの適正値が高いだけなんだよね。けど、何故か召喚が上手くいかなくてね。うーん…詠唱は噛まずに言えたんだけどなぁ…」
藤丸は腕を組み頭を傾げていた。
「てことは生徒じゃないんだ。」
「そうだよ。まぁ予備スタッフって感じ。研究室にも生徒なのに研究員やってる子がいるって聞くし。まさに適材適所だね。」
「なるほど。つまりギター出来るからシール剥がしが得意って事と同じか。」
「んん??んー…?」
真顔で話す茅森の謎理論にさらに顔を歪ませる藤丸であった。
このセンスについて行くには一苦労が必要だと後に藤丸は痛感する。
「そういや写真撮るの好きなの?」
茅森は藤丸の仕事机に目線をおとした。
パソコンの横には複数の写真立てが置いてあった。
「写真を撮るというより人と関わるのが好きかな。こうなる前は色んなとこ回ってたんだよ。」
「へぇ〜。てことは海外も?」
「もちろん!フランス、イタリア、イギリス、アメリカ…沢山行ったね。まぁほとんどは仕事関係だったけど。」
藤丸はアルバムを見返すように優しい笑みを浮かべ話していた。
「めっちゃ気になる!」
「そうだよね。外があんなんじゃ観光どころか生活するのも大変だしね。」
キャンサーの襲来により人類はドームというコロニーに避難しており、外に出れるのはセラフを使える茅森のような女子のみとなっているからである。
「話したいのも山々だけどそろそろ部屋に入れるんじゃないかな。」
藤丸は壁にかけてある時計をチラリとみた。
「あっ!やべぇ!あの怖い教官に叱られる!」
「そうだねぇ。遅刻しそうなら私が言っとくよ。」
「マジか!助かるぅ〜!」
茅森は申し訳なさそうに手を合わせ少し頭を下げた。
「じゃぁまたね
茅森はそう言い慌てるように部屋を出た。
「…面白い子だね。それにしてもドクターか…」
藤丸は少し笑みを浮かべ白い天井を見た。
「私しっかりやれてるかな…」
その言葉は静かになった部屋にこだました。
幕間と同時並行で書いてたのもあったんですけど構成自体は何となくあったのでそのままやりました。
何となく察する点もありますがまぁオイオイネー…